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麻生国務大臣 これは、田沼
先生、多分
一つが
デフレ。これが大きな
理由は、やはり
デフレだと、金を持っていさえすれば何もしなくても資産価値は目減りしない、むしろ値上がりするという
意味において、インフレのときと
デフレのときでは金の使い方が全く違う、これが一番大きな
理由の背景だと思います。
二つ目は、この二十年間、先ほど言いました一九八九年の株の大暴落、九二年からの土地の大暴落、あの辺から数えてかれこれ二十何年たつんですが、その間、
日本の場合は、資産の
デフレーションによって、
企業は資産の目減りによって、銀行との貸借で見れば債務超過になっておったということだと思うんですね、ほとんどの
企業は。債務超過になっているがゆえに新たに金を借りられない。
したがって、どうすればいいかというと、多くの
企業は借入金の返済というものを利益の利用率の一番に上げる、利益は全て借入金の返済に充てるということをやっていきましたので、九三年、四年、五年、六年、七年とずっと銀行は金を返済し続けられて、当時、
企業は約五十兆円ぐらいの金を銀行から短期、長期、中期で借りていたんですが、それの返済がどんどん始まって、返済の方が多くなっちゃった。銀行というのは、金貸しですから、金を借りてくれるやつがいなかったら成り立たない職業ですから、金を借りずに、どんどん返されたら成り立たないということで、銀行が倒産し始めたのが九六、七、八年、あの辺のころだったと思うのです。
それをうまいこと結果的に救うことになったのが、銀行から金を借りてくれた人がいた。それはすなわち、
政府が国債という名で年間三十兆円ぐらいなものを借りてくれたがゆえに、結果的に銀行は倒産することをせずに済んだというのが、多分もうしばらくすると歴史家が言うんだと思いますけれ
ども、そういう評価になるんじゃないのかなと私は思っています。
したがって、
日本の場合、
企業はどうしたかといえば、じいっと持っていた。
デフレなんていまだかつて、さきの戦争で負けてこの方やったことがないものですから、経営者の人たちも、インフレの
経験しかない人はわけがわからないから、じいっと持っていた。設備
投資しようにも、何が売れるかわからぬ、給料は、みんな、そこそこ払っていればもうこれ以上いいじゃないか、配当も、そこそこ、一割配当すればというので、じいっと持っていて、気がついてみたら、二〇一二年度に三百四兆円だったか、何かものがたまりにたまってしまったんだという結果論が、そこまでたまっちゃったんだと思っています。
私は、やはり
デフレではありませんよ、インフレになるんですよ、あなたの持っていた金はこれから毎年二%ずつ目減りしていくんですよというような意識の変革が経営者に起きない限りは、経営者はなかなか金を使おうとはしないと思いますので、二%のインフレターゲットというのは決して間違っていないと思っています。
もう一点は、
企業が新しいものに対してイノベーションを起こして何とかしていくということをやっていくのには、やはり経営者の意識も、きちっとした経営を、ただじいっとしていたらもうかっちゃったなんというのは、それは経営じゃありませんよ、そんなもの。少なくとも、何らかの新しい
リスクをとるんだと思う。
だから、例えばイノベーションというと難しく言うけれ
ども、よく例に引くんですけれ
ども、大阪紡績、今はなくなりまして、たしか東洋紡というのだと思いますが、
世界で
最初に最大のイノベーションをやったのは多分東洋紡だと、
世界の
経済産業の歴史を知っている人なら必ず言うんだと思います。
いとへんをやっていた会社ですけれ
ども、この会社が
世界で
最初に工場の中に電気を採用したんです。当時はランタンというかランプしかなかった時代ですから、当然、二直、夜中の二交代はできなかった、下手すれば燃えちゃうから。したがって夜はできなかったんですが、大阪紡績というところは、明治十二年にエジソンだか誰かが電気を発明した二年後か四年後かにはもう既に電気を採用しております。結果的に、これで二直ができるようになった。二直というのは生産率が倍に上がったわけですよ。これにまさる生産効率なんかは二つとありません。これが
世界一と言われるイノベーションなんですよ。最も安いイノベーションですよ、僕に言わせれば。
結果として、これは偉大な発明、発見と僕は思います。これは一工場の人が考えただけのことなんですけれ
ども、エジソンは有名だけれ
ども、この大阪紡績の方は、知っている人なんか大阪には一人もいませんから。
だから、そういった
意味では、私は、
日本というのは、こういったところが
日本の持っている強みなのであって、今後とも、そういったものをきちんとやっていくようにしていくのが、
日本としての、国としてのあるべき方向なんじゃないのかなと思いますので、こういった新しい
中小企業の何とかというようなものは、思わぬもの、おっというものが出るのであったら、それを、よくやったといってわあっとやる。そういった姿勢、そういった雰囲気というものが国の中にないと、
日本という国はなかなかやっていきにくいだろうなという感じが、私の率直な実感です。