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竹内参考人 おはようございます。
一般財団法人計量
計画研究所の
竹内と申します。よろしくお願いいたします。
私は、
都市計画、
交通計画のプランナーとして、
地方自治体、あるいは中央政府の政策形成、これらにいろいろなコンサルティング活動を四十年以上やってまいりました。その経験の中から幾つか
お話を申し上げたいと思います。その中で、特に仙台
都市圏に長い間かかわってまいりましたので、そのことも交えて
お話ししたいと思います。
初めに、コンパクトシティーに向かっている現状でございますが、仙台
都市圏も、コンパクトシティーという言葉ではございませんが、同様の趣旨の
目標像を掲げて進んできております。
例えば、直近の二〇一〇年と、それから二〇〇〇年の国勢調査を比較いたしますと、鉄道の
沿線、とりわけ鉄道の駅周辺で
人口は明らかにふえてございます。仙台
都市圏は、大変車の移動が便利なところでございますが、それでも、そういう
人口増加が見られます。
これは、二〇一〇年は、例の東日本大震災の前のデータでございますので、震災以後はどうかということを見ますと、震災以後、震災前に
都心部にかなり供給された
集合住宅、マンションがほぼ完売となりました。それから、
都心部ではなくても、少し離れた鉄道
沿線、とりわけ地下鉄の
沿線でございますが、そこにはいろいろ、中層、高層のマンションができたりしております。このあたりも完売いたしました。そして、やや
外側の中層、高層の
住宅につきましては、先ほど森市長が御指摘になられましたが、より
郊外のいろいろな団地のところに以前に住まわれた方が、駅周辺のマンションに移住する。もとの
住宅をそのまま保持されている方もおられますし、そうでない方もおられます。そのようなことで、明らかにコンパクトシティーへの動向が、こういうもので見られるかと思います。
先ほどちょっと、仙台市もコンパクトシティーを標榜している云々と申し上げましたが、実は、仙台
都市圏でこのようなことを初めて検討したのは、もう四十年も前のことになります。四十年前に、今は開通しておりますが、地下鉄南北線というものを建設しようということになりました。
私が当時、いろいろ提言申し上げたのは、周辺にいろいろ工場も展開する、あるいは、これから
人口が倍増するというような構想になっていて、
市街地も大分広まります、そういうようなところに地下鉄が一本ぐらいできたところで、とてもカバーできるものではない、だから、まずは
軌道のネットワークをもう少し充実する、具体的には地下鉄をもう一線ということで、これが今現在建設中で、あと二年ほどで開通いたしますが、それと在来の旧国鉄の線を
都市鉄道にする、こういうことを申し上げました。
もう
一つは、こっちが大事でありますが、鉄道はやはり速度が速いし、大変指向性の強い移動手段でありますから、黙っておけば、相当遠くまで
市街地は広まります。ですから、その特性を生かして、うまく産業構造に合うようにするべきであるということで、実際の
空間的な形としましては、地下鉄
沿線にできるだけ多数居住していただく、それから、それらの就業地は
中心市街地に多くはあるであろう、やはり支店経済の町でありますから、
中心部にそういう集積が起こるだろうということで、それを帯状型
都市構造というふうに名づけて、やってまいりました。途中で、帯状多核
都市構造とか、幾つか名前は変わりましたが、いずれにしても、そういうような考えが四十年前にあって、現在もそれらは市のマスタープランに色濃く反映した形で残ってきております。
そのころから現在に至るまで、地下鉄の周辺に住んでいただくとはいいましても、これはとても簡単なことではありません。地下鉄の駅の周辺に再
開発事業を
計画していただき、あるいは区画整
理事業を
計画していただき、あるいは、民間の
事業者にぜひ駅周辺に
立地をしていただきたいという運動を続けて、やってまいりました。
ですから、今回、
都市再生法の改正と
地域公共交通活性化法の改正、この
二つが同時に取り扱われるということは、ようやく、四十年間いろいろ苦労したことが、ここにとうとう
法律になって結実したのではないかというふうに思いまして、私は大変歓迎しているところであります。
これは仙台のことでありますが、全国ベースで考えますと、このコンパクトシティーの提案は、社会資本
整備審議会の中に
市街地整備研究会というのが設けられて、当時は集約型
都市構造と言われていますが、それが提案されたのが
平成十四年であります。そのころ、
都市再生法も施行されたわけであります。
そして、コンパクトシティーを実現するための重要な手段であります、先ほどの仙台の例でいけば
軌道のことでありますが、それらを支える
法律が、実は以前はなかったわけでありますね。これをいろいろ、実は我々は国会の外から応援活動をさせていただきまして、二〇〇七年に、今改正の俎上に上がっております
地域公共交通活性化法というものができたわけであります。これは二〇〇七年。その間、さらに
交通政策基本法もできました。
それから、全国の市町村、マスタープランをつくっている
都市が八百四十四というふうに国土
交通省から伺っておりますが、その中で、何と、コンパクトシティーを位置づけているというようなところが五〇%、四百二十三の
都市になっております。それから、これからというようなところが百十六あるというふうに伺っております。このように、全国各地で、こういう政策を支える
法律が大変待たれているというふうに私は考えております。
これが、コンパクトシティーだけ、あるいは
公共交通だけ、これではとてもだめです。やはり、
二つが一緒になったものをやっていただけるということが今回とてもうれしく思いますし、これの意義を国民的によく把握していただきたいなというふうに思っているところでありまして、今回の審議は大変時宜を得た対応ではないか、こういうふうに思います。
もう一点、今回のことで評価したいのは、これは非常に雑駁な話になりますが、
交通と
都市計画は別だと先ほど
浅見先生もおっしゃったわけであります。これは経験上、私もずっと感じておりますが、世間で言うところ、こういう違う分野のものについて、その間には高い壁がある、こういうことになっております。いわゆる縦割りの壁であります。それを今回、同一の場において審議してくださる。残念ながら
法律は
二つ、もちろん、目的が違いますから
二つはいたし方ありませんが、同時に審議をして、しかも内容は、両者、非常に強く連携を求めているというところで、これは、非常に異なる部局、異なる活動を、それらにまたがっているものを
一つに扱うという非常に大きな英断をもってやられているということになりますので、これも国会の活動について大きく評価いたしたいと思います。
ということで、今回の
二つの法の改正について、私は基本的に賛成の方向でございますが、ただ、幾つか注意をしていただきたい点がございます。
一つ目は、一緒になるということでありますが、目的も、扱う対象も違います。実際に動かしていくのも、
地域公共交通活性化の協議会、それから
都市再生の協議会、こういうものが別々にできるわけでありますが、これを何とか一枚の
計画につくっていただきたい。もちろん、全部が一枚にはならないと思います。違うところの記述がもちろん含まれますから、だから全部がなるとは限りませんが、少なくとも
空間的に共通している、そういう
範囲のことについて、一枚の
計画にしていただきたい。
一枚の
計画にするためには、協議会の運営から始まり、
計画の策定の仕方もあり、できた後の
計画をどうやって管理、推進するか、そういうこともあり、いろいろな細かいことがあります。これらについて、速やかに具体的な活動に着手して、それが滞りなくできるようにしていただきたいと思います。
二つ目は、今回の
二つの法を読ませていただきますと、大変いろいろな
支援措置がついておりまして、これは大変いいものだというふうに思っております。しかし、
二つの
計画を一枚にするというところで申し上げましたとおり、これを推進していく役割、主体が重要であると思います。
お隣にいらっしゃる森市長さん、
富山市がなぜここまで進んできているのか。これはやはり、
富山市長さんを初め
富山市の職員の
方々、これが日夜努力されているからだと思います。もちろん、公共団体の職員の方が汗水垂らして活動するということは当然、あるいは当然のようにやっていただかなくてはいけないわけでありますが、必ずしもそれだけで全部カバーできるかということがあると思います。ですので、このような
エリアマネジメントを行う主体、こういうことについて、もっとフォローアップできるように、この法の以後、進めていただきたいというふうに思うわけであります。
それから、
三つ目は
公共交通になりますが、
公共交通は、
軌道の数は各
都市で必ずしも十分ではありません。やはりバス
交通に依存するところが多いと思います。
バス
交通については、幹線、支線を分けるというような
方法が一般的でありますが、幹線、支線を分けていくということになりますと、
利用者からすれば、乗りかえがふえるという可能性があります。そこで、乗りかえ抵抗をできるだけ少なくしたい。乗りかえ抵抗を、バス停の到着スケジュールで調整するというのが
一つ考えられます。これはバスロケーションシステムなどによってかなりできてきているわけでありますが、もう
一つは料金問題です。
乗りかえのたびに初乗り料金を取られるというのは、やはり
利用者としては非常に抵抗感を感じるところであります。ですから、これが抵抗がないように、あたかも物理的には、今、共通ICカードで、すっと通れますが、お金はその都度高く取られるというのでは、やはり
利用者にとってはつまりませんので、こういうような
事業環境が整えられるような、この法の次かもしれませんが、ぜひお願いしたいなと思います。
それから、その次は、もう
一つ厄介な問題でありますが、こういう
空間の中に実際やっていきますと、
交通安全の問題を避けて通れません。今、ここの中で出てくるものでありましても、例えばトランジットモールのようなものを希望する
自治体もあるかと思います。そうしますと、直ちに路面の
交通安全の問題が重要になります。これは残念ながら、この国土
交通委員会の外にかかわる問題でありますので、しかし、現場では一緒ですから、この点についても何とか取り上げられるようにお願いしたいと思います。
以上は、今、この法の中の注意して進めていただきたいという点でありますが、その他に、
二つだけ残っている課題。
一点目は、先ほど料金問題を申し上げましたが、それから
富山市長さんもちょっと触れられましたが、やはり
公共交通事業についての、今は独立採算でやるということになっております。この独立採算について、例えばこの二法であっても、
まちづくりと
交通の連携、それから、これのうたい文句でいけば、福祉、教育、観光、その他いろいろな、もろもろの点についての連携を、この
交通事業について求めるというようなことがうたわれております。そうしますと、どういうような費用
負担、どういうような支払い方、そういうことは別としましても、やはり
公共交通事業の独立採算制について、改めて議論が必要ではないかということであります。
それから、もう一点は、これは非常に悩ましいところではありますが、
人口が減り、労働力
人口も減り、こういうような時代になったときに、先ほどの、例えば
地域の
計画を動かしていく
地域の担い手、これは今後どうなるだろうか。例えば、具体的には、バス
交通をオペレーションする運転手はどうなのか。従来は、運転だけやればいいけれども、これからの運転手は、介護の知識もなければいけないし、いろいろなことを要求されるかもしれない。こういうようなところにあって、人材の育成というのは、やはり長期的に考えなければいけない問題だと思います。
以上で報告を終わります。(拍手)