○本田
参考人 先進国一
医師不足と言われている
日本ですけれども、その
日本でもまた一番
医師が少ない埼玉から参りました。ことし還暦を迎えて、もう外科医を引退したいと思っても、外科医が二人減ってしまいまして、引退できずに、今後、何かあって
医療事故にでも巻き込まれたらどうしようかなということを本当に真剣に考えている本田でございます。
きょうは、千載一遇のチャンス、しかも恐らく二度とないであろうということで、たっぷり資料をつくって持ってまいりました。インターネットをごらんになっている方は、フェイスブックで配信しておりますので、ダウンロードしてほしいんですけれども、これと新聞記事、あと、「輝け!いのち」というものに関する、四種類を持ってまいりましたので、まずこのパワーポイント版をごらんいただきたいと思います。
十二、三分ぐらいまでだと思いますので、ちょっと早口になりますけれども、御容赦をいただきたいと思います。
まず、
日本で十年間以上、私は
医師不足に関して訴えてきたんですけれども、正しい
情報が伝わっていない、しかもグローバルスタンダードと比較していない、これが決定的に問題だと思います。
二ページ目をごらんください。
四月二十四日、オバマ大統領が来日したときに、我々は、全国から約五千五百人が集まって
国会を包囲する活動を行いました。事前に
議員会館で記者会見もいたしました。
ほとんど大手メディアは報じてくれませんでした。ここにいらっしゃる皆さんはこの活動を御記憶でしょうか。これが
日本なんです。頼まれなくても
医療事故とかたらい回しは何回でも報道してくれるんですけれども、本当に重要なことが報道されない。
これが次のページでございます。三番。我々から見ると、
日本国憲法二十五条は
日本では守られていないですね。
法律があるだけでございます。
それで、まず五番をごらんください。パワーポイントです。
これは、テキサス大学のがん
センターのマンパワーと
日本の愛知県がん
センターのマンパワーを比較したものでございます。右側の黄色いところは、アメリカが何倍いるか。全然比べ物にならないんですね。人手が圧倒的に少ない。
次のページをごらんください。六番でございます。
その基本が、土光臨調のときにも出た、
医療費亡国論という
考え方があって、
医療費にお金をかけると経済発展の邪魔になるということが基盤になってきているというのが
日本の
医療の
現状です。
その下の七番をごらんいただけると、
日本の
医師数、一九六〇年から二〇一〇年まで、ずっと
医療費亡国論で、
医師を減らせば
医療費も低下できるだろうということで、削減に次ぐ削減をされてまいりました。ほかの国は
医療の進歩とともに
医師をふやしています。当たり前です。専門家がいなければ質が高い
医療は
提供できないから。ところが、
日本はそれを怠ってきたんですね。
この少ないところで、御記憶の方もいらっしゃると思いますけれども、
医学部定員の削減の閣議決定が一九九七年にされて、その後、新卒の
臨床研修制度が導入されましたから、研修医が大学から外に出なくなったということで
地域医療が崩壊したわけでございます。
その次の八ページをごらんください。
これは、全国の
地域別
人口当たり
医師数です。赤は
日本の平均。確かに、赤の
日本の平均から見ると東京、京都は多い。しかし、OECD平均と比べてください。OECD平均にさえ東京、京都も追いついていない。これを
偏在というんですか。これは普通は絶対数不足と考えるんですね。
その中で一番少ないところが、私が住んでいる埼玉県。ですから、埼玉県には住まないようにと全国で講演しているときにお願いしているわけでございます。相対的にまた
医師不足になってしまう。
その下の九番をごらんください。
これは、全国の各
地域別の
医師数。一番多い東京、京都、これは先ほど申しましたが、東京、京都もOECD平均より少ないんですよ、そこをゼロとしたときに、各
地域が何人
医師数が少ないか。これは私が必死で計算いたしました。先ほどの
医師不足が問題になっているという山梨県は、ちょうど真ん中ぐらいのランクでございます。
一番下の埼玉、ごらんください。ザ・ミゼラブル。今、埼玉に一万人
医師数がいるんですけれども、
人口当たりの
医師数は東京、京都の半分、五〇%です。これに単純計算いたしますと、五〇%少ないということは、埼玉だけで一万人不足しているんですよ。大丈夫ですか、これで。一万人ですよ。
ですから、昨年、御記憶の方いらっしゃるでしょう。三十六回たらい回し、二十五
病院。あれは、残念ながら、うちの
地域の
患者さんでした。私が十年以上活動して頑張ってまいりましたけれども、結局、結果的にこういうふうになってしまうんですね。
ところが、救急の場合、問題なのは、一人一人だから。例えば高速道路の事故とか海難事故のように、みんなが注目してくれないんですよ。一人一人、全国で起きているんです、これは。これを直さないでいつ直すのと私は言いたいわけでございます。
そして、その次のページをごらんください。十ページ。
日本の場合、そしてまた非常に深刻なのが、
医師の絶対数不足に加えて、これがキーワードです、絶対数不足に加えて
偏在があるんですね。
ここでごらんください。
日本の救急医は、アメリカの
人口当たりに比べると、たったの一四%です。
ですから、
日本の救急医は、ほとんどの
病院は救急じゃない
医師が救急をしているんです。しかも、朝から働いて、真夜中だけ救急医になって、そして次の日、夕方まで働くんですね。専門じゃない人が重症な救急の人を、皆さん、診られると思いますか。無理ですよ。
だから、いたし方なくたらい回しになる。ベッドがいっぱいの場合は、いたし方なくたらい回し。だけれども、これは受け入れ不能です。たらい回しているんじゃありません。ここもぜひ誤解を解いていただきたい、こう思うわけでございます。
そして、救急だけじゃなくて、ちなみに、がんの診療に必要な病理は二割、放射線科は三割、麻酔科は三八%。
今でも
日本の
地域の中核
病院では、救急の場合、夜間とか日曜日に麻酔医じゃない人が麻酔をかけているんですよ。麻酔医じゃない人が。こんな先進国はありませんよ、皆さん。それでも
医師がすぐ
偏在が解消するという方がおかしいんですね、私に言わせると。
これだけ必要な専門医がいない、一人何役をやっている。例えば外科医ですと、外科の
手術以外に、内視鏡をやったり、麻酔をしたり、あと、抗がん剤治療をする、これは難しいんです、今すごく複雑になっていますから。しかも緩和ケアもしなくちゃいけない。一人何役、五役ですよ。そして救急で、ずっと三十六時間働けと言われているんですよ、ずっと。これでいいんですか。
それで
医療事故だけ個人責任を問うのが導入されたらどうなると思いますか。私がそろそろ引退したいと思っているのは、そこにも理由が
一つあります。ここまで真面目にやっていて、
医療事故で個人責任を問われるんだったら、早目にやめないと危なくてしようがないですよね。というわけでございます。
そして、その下の
医師不足をごらんください。
日本の
医師数のカウントの問題。十一番のスライドでございます。
先進国の中でびりから三、四番目なんですけれども、右側をごらんください。
日本だけ
医師の労働時間が非常に長い。
しかも、
日本の
医師の場合は、
医師のカウントに九十歳以上の
医師まで入っています。ほかの国は六十代で引退しているみたいです。当たり前ですよね。九十の人で手が震えているのに
手術してもらいたくないでしょう。これが当たり前なんです。ところが、
日本は高齢
医師までカウントして、そして
偏在が問題だと言っているんですね。
次の十二番をごらんください。
日本の勤務医の労働時間。非常に長い。ここでも七十歳以上のデータがあるので、私が言っていることがうそじゃないということが左側のグラフで御理解いただけると思います。
あと、右側のグラフをごらんください。男も女も断トツ一位、
日本の
医師の勤務時間。
これからの若い人は、私たちみたいに月月火水木金金で働くと思いますか、皆さん。無理ですよ。家庭も大事にしたいんですよ。だって、
医師が家庭
生活が危ないままにいい
医療を
提供できるわけないでしょう。
医師だって人間だものということなんですね。しかも、女性
医師がふえている。こういうことを考えないと、まずい。
そして、十三番は、
日本の
医師数には高齢
医師が含まれているという証明でございます。
そして、次のグラフをごらんください。十四番です。あと六分ちょっとですね。
これは、ずっと
医師を抑制してきたところを赤枠で囲んであります。本来、抑制しなければ、これだけの
医師数が輩出されていたんですね。ところが、抑制してしまった。そして、今、ちょっとだけこの青い三角をふやしました。これですぐ
医師が充足すると思いますか。私にはその考えが理解できないんですね。これで充足するとどうして考えるんだろう。
ちなみに、十五番をごらんください。
日本の医
学生数は今でも先進国最低レベル。
日本が推測するときには、今の
世界の
医師数に十年ぐらいで追いつくというんですけれども、
世界はもっとふえているんですよ。だって、
医療が進歩すればどんどん専門医が必要になるわけですから、進歩すればするほどふえるわけです。例えば外科でもいろいろな分野が分かれていきますから、本当に
医学部定員を抜本的にふやさないと大変なことになりますね。
十六番。きょうは
看護師さんの代表がいらっしゃらないので、私、ちょっと
看護師さんのこともお話ししておきたいと思いますけれども、
看護師さんも大変ですよ、夜間も働いていて。だから、
看護師さんのこともきちんと考えてあげないといけないと思います。
十七番です。
医療事故に関して。これは自治医科大学の安全学の専門家の先生がつくられたスライドをお借りしました。
医療現場というのは、十八番をごらんいただければわかるように、一番危ない。ちょっとしたことでミスが起きやすいんですね。一番安全なのが原発ですから。一番安全なものでも事故が起きることがあるんですから、
医療で事故が起きるのは本当に日常茶飯と考えなくちゃいけないわけです。
そして、十九番。
医療現場の三N。お金がない、人が足りない、時間がない。これが本当に実感なんですよ。私も、この連休中も何回か
病院に足を運びました、気になる
患者さんがいらして。そして、プラス、管理が不十分。
私に言わせれば、何でこんな大事なことを地方の一勤務医が十年以上やっていなくちゃいけないんだと非常に疑問なんですね。もっと、本来、
医療界にもちゃんとリーダーの方たちがいるんだから、グローバルスタンダードと比べて
医療費をきちっと上げるべき、
医療者をふやすべきと何で言わないんだろうなというのが私が本当に残念なところでございます。
二十番をごらんください。
医療事故に関して、もうアメリカでは、多くの
医療事故を分析して、人は誰でも間違えるという結論に達しました。ですから、
医師にもちゃんと休ませよう、専門性を持たせよう。アメリカでは、例えば処方箋、忙しい医者には書かせない。忙しい医者が処方箋を書くと必ず間違えるから。
ところが、
日本の場合、処方箋を書くのは、腫瘍内科の専門医じゃない人が、当直明けで勉強する時間もないのに書いているんですね。これは事故が起きるのは普通なんですよ。
それで、その下をごらんください。二十一番。
WHOが推奨する
医療事故のグローバルスタンダードでございます。この七つの条件のトップスリー、
報告の結果処罰を受けるおそれがないようにする、個別
情報は決して明らかにされないようにする、処罰権限を持つ当局から独立する。
このトップスリーを外れた事故調を今
立ち上げようとしているんですね。だめでしょう。一番事故が起きやすいような
状況を放置して、事故調までグローバルスタンダードからどうせだったら全部外れちゃおうというのは、ちょっと余りにも、私は本当に乱暴なやり方だと思っているわけです。
その次をごらんください。
何が問題かというと、個人責任を問わないのであれば、事故の結果を
患者さんとか
患者さん側の弁護士さんに渡したら、そこからもう
情報も公開になってしまうし、幾らでも個人責任を問われるわけでしょう。これだけはやめてもらわないと、我々の年代でもう疲れているのがこれでどんどんやめたら、本当に
医療崩壊がもっと加速すると私は思うわけでございます。
二十三番。あと、
医療費に関して。これも、
日本の
医療費は高い高いと言われます。
二十四番のグラフをごらんください。
日本の
医療費は先進国最高にうまくコントロールされています。一番安いんです。しかも、その
日本が一番国民自己負担が高い。これはまずくないですか。経済大国というのは、何を豊かにするために経済大国になったんでしょう。私は、これはおかしいと思うんですね。
二十五番は、その証拠です。中医協できちっと抑制された
医療費。先進国最高に
医療費を抑制したのがうまい
日本というのが我々の見方でございます。
あと二分ぐらいですね。
二十六番。これは、
日本の
医療費がいかに安く抑えられているか。
例えば、急性虫垂炎、盲腸炎で
手術すると、
病院がいただけるお金が三十万ぐらい。ほかの国は全部高い。先進国で一番
日本は安く抑えられているわけですね。だから、
病院では、我々を補助する
医療秘書さんを雇う金もない、赤字が多い、こういうわけでございます。
二十八番。もう
一つ問題は、これは、左側、経済財政諮問
会議で、
日本のベッド数がすごく多いというグラフが出ました。
しかし、そのときに、アメリカで本来は含まれている右側のナーシングホームを外したところ、超
急性期病院のベッド数だけ出されて、
日本の
病院は多い、無駄が多い、こういうふうな話が進んでいます。
今、ナーシングホームとかを充実していますけれども、これを充実させないでベッド数を減らしたらどうなるかは、もう
説明の必要はないと思います。
三十、三十一は、時間の関係でちょっと割愛させていただきます。
ただ、三十一はちょっと大事です。七対一が少なくなると、せっかくちょっと労働環境がよくなった
看護師さんの待遇がまた悪化する危険性があります。
それが三十二番です。それでなくとも少ない
看護師さんの数をもっと減らすような政策はだめです。
三十三番。では、どうしたらいいのか。
三十四番のページに書いてありますように、まず、
医師の実働数をカウントすること。九十歳以上でほとんど仕事をしていない人は、
医師としてカウントしてはいけません。何時間労働しているか、カウントするべき。
三十五番。
医師も少ない、医
学生数も少ないということを考えるべき。
三十六番。ちゃんとナーシングホームなどを充実させるべき。
三十七番は、緩和ケア病棟も全国で差があるということです。
そして、そろそろ最後ですけれども、ですから、解決するためには、
医学部の定員をふやさなくちゃいけない。しかし、そのときに、既存の
医学部はやめた方がいいです。建てるのも大変、スタッフも必要。二、三十人のメディカルスクールを、大学
卒業の学士を対象にしてつくるべきです。
それと、三十九番。これがすごく大事になるんですけれども、
日本より
医師が多いアメリカでは、
医師を補助する、先ほどナースプラクティショナーの話も出ましたけれども、フィジシャンアシスタントという職種があります。
日本でも、MEさん、臨床工学技士が昔創設されました。
世界一
医師不足で
看護師不足の
日本こそ、フィジシャンアシスタントの導入を急ぐべきです。
四十番は、アメリカで実際に働いているそういう
人たちのスライドです。
四十一番。最後です。私は、昨年、キューバを見に行ってまいりました。キューバは、皆さん御存じのように、アメリカの厳しい経済制裁の中でも、
医療も教育も無償。そのキューバは、やはり
高齢化に対応するために、こういうふうに具体的数値目標を挙げています。
日本の場合は、診療報酬点数で馬にニンジンみたいにするんですけれども、数値目標を挙げて、
地域でどれだけの
急性期病院、どれだけの救急医、どれだけの腫瘍内科医、どれだけが必要だという目標を設定すれば、おのずと
医師の必要な養成数もわかるわけでございます。
きちんとしたデータのもとに考えてほしいということで、最後にヒューマンチェーンの活動のこれを出して(資料を示す)、私のプレゼンを終わります。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)