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西脇参考人 東京工業大学の
西脇でございます。
本日は、
原子力規制行政の
在り方ということでプレゼンをさせていただく機会をいただきまして、大変光栄に思ってございます。
本日、プレゼン
資料を提出してございますが、パートワンとしまして
原子力規制委員会が抱える問題、パートツーとしてどのような姿が望ましいかということで
お話をさせていただきたいと思います。
三
ページ目に行っていただきまして、我が国の
原子力界は、
福島事故という過酷
事故を起こしまして、
事故後、
原子力界は自浄能力がなかったんじゃないか、こう言われたわけでございますが、実は、諸
葛参考人もおっしゃいましたが、
原子力法制研究会というのを二〇〇七年から五十名を超える産官学のメンバーでやってございまして、
原子力規制制度とか
規制法の全般にわたって検討を加えてございます。
この検討を受けまして、
事故の直前三カ月ですが、
原子力安全委員会が、当面の施策の基本方針の見直しの決定をされてございます。この
原子力安全委員会の決定を受けまして、実は、
事故後の三月二十六日に、
保安院は、基本政策小
委員会を立ち上げて過酷
事故を含む
規制のあり方の見直しをしよう、こういうキックオフをしようとしたやさきに
福島事故が発生したということでございまして、非常に遅きに失したということでございます。
そういうことで、
福島事故を受けまして、国会の方から、
規制委員会設置法あるいは
原子炉等
規制法の
関係法令の改正をしていただいたということになっておるわけでございます。
規制委員会発足後、この
原子炉等
規制法というのは過酷
事故までカバーしてございますので、
規制委員会は、世界に先駆けて、過酷
事故まで含むような
規制基準をつくられております。また、
原子力災害
対策指針もつくられ、現在は、十
サイト、十七基の
基準適合性
審査を行っておられます。一年八カ月の間にこれだけのことをやってこられたわけで、非常にその努力は多とするところではございます。
しかしながら、先ほど申しましたような経緯も考えますと、国会が求めたことをきちんとやられているのか、これをチェックすることがまず第一だろうと思ってございます。また、昨今の
規制委員会の行動を見ていますと、少し拙速に過ぎるところがあるのではないかということで
お話をさせていただきたいと思います。
五
ページ目でございます。これは、設置法の
議論に際しまして国会が求められたことでございまして、ここは釈迦に説法でございますので省かせていただきたいと思います。列記はしてございますが、これだけではなくて、もっと多くのことをお考えになってお求めになっておられるということが、読み返してみるとわかります。
六
ページ目ですが、ここは効率重視の弊害ということで五項目挙げさせていただきましたが、これについてはパートツーの方で詳細に述べたいと思います。
それでは、八
ページ目に行っていただきまして、
澤参考人もおっしゃいましたが、
独立、中立を孤立と誤解していないかということでございまして、これは巷間よく言われてございますが、
独立性の前提としまして二つございまして、それは、
国民、
関係各層の
意見をよく聞く、
調査をちゃんとする、調べる、その上で、
規制側が専門的な
知識を持つ、そしていろいろな
意見に惑わされることなく
独立して判断する、これが
独立性のキーポイントでございます。
しからば、
国民あるいは
事業者と対話をちゃんとしているのか、これは九
ページ目でございますが、ここはなかなか
評価が難しゅうございます。
実は、二〇〇七年に旧
保安院はIAEAのIRRS、
規制サービスのレビューを受けてございまして、この当時は、国会
事故調によりますと、
規制の
とりこになっていたという指摘がなされている時代でございますが、国際的に見ますと、IAEAのIRRSの指摘は、
保安院は運転者に指示し支配力を及ぼしている、あるいは、相互の理解と尊敬に基づき、フランクでオープンだが立場をわきまえた産業界との
関係が築かれていない、あるいは、良好な相互理解と信頼構築を促進すべきであるというふうな厳しい指摘がなされているわけでございます。これは決して現在の
規制委員会の話ではなくて、旧
保安院の時代の話でございます。
しからば、IAEA
基準において
ステークホルダーとの
関係はどういうふうに規定されているかと申しますと、許認可取得者等との対話のための公式及び非公式の
仕組みを、専門的で建設的な連携を図りながら構築しなければいけないことが求められておりますし、
規制機関の
プロセスや決定について、利害
関係者及び公衆にその
情報を伝えかつ協議する適切な手段の
確立を促進しなければならないということが求められております。
これに基づいて現在の
規制委員会をどう
評価するかということでございます。全体として
評価するのは非常に難しゅうございますが、例えば、
規制基準のパブリックコメントに対する対応でございますけれども、これは、学会なんかはパブリックコメントは一個一個答えを返すわけですけれども、実は答えが返されておりませんし、
委員会の中でもパブリックコメントに対する
議論というのはほとんどなされている記録がございません。
また、最近の
基準適合性
審査における
事業者との対話を見ていましても、先ほど
澤参考人がおっしゃいましたが、十分な
議論が尽くされていないという
状態になっておりまして、これは
規制側と
事業者側で結論が異なるのはいたし方ないとしても、相互信頼
関係を築くためには、なぜ相手がそういう主張をしているのかということがわかるぐらいまで
議論をしておかないと、これはもう結論が違った段階で相互不信
関係しか残らないということになりますので、
議論が尽くされているとは言えないのではないかというふうに思っております。
それから、十
ページ目ですが、
規制委員会は
合議制の
委員会としてできたわけですけれども、
規制基準あるいは
基準適合性
審査などにつきまして担当
委員方式というのを採用しており、事務局と一体となって業務を遂行しております。
この問題点ですけれども、
委員と事務局の間でどういう
議論がなされているのか、ここがはっきりしない、
国民からは見えないということになってございます。
さらに、この担当
委員方式は、事務局と一体となっておるために事務局の
監査機能が働かない、あるいは、
委員が表に立ちますから事務局の
責任感が低下するということを招いているのではないかという気がしております。
さらに、担当
委員が
委員会に出ておりますので、担当
委員以外の方が
委員会でなかなか発言しにくいというような
状況も生まれておりまして、結果として
委員会の
議論を不活発にしているのではないかと思ってございます。
アメリカのNRCでは、
運営総局、これは
規制庁に当たるところですが、それと
委員とは接触が原則禁止でございます。
委員会の場で初めて事務局と
委員が
議論をするということになってございます。
規制委員会も同様に、
委員会が事務局の
監査機能を持って、かつ
委員にはスタッフをつけて、そして
委員会を真剣な
議論の場として、
国民にその
議論の内容をお知らせするという方式にすべきだと考えてございます。
十一
ページ目が、実は、ポール・ディックマンさんという元NRCの
委員長首席補佐官のプレゼン
資料からとってきたものでございますが、コミッショナーズとEDOとの間にはエアギャップがあいておりまして、コミッショナーズはEDOを審判するという立場になってございます。ここがまさに、先ほど申し上げました接触禁止、
委員会の場で初めて
議論する、こういう内容を含んだところでございます。
次に、
炉安審、燃安審問題でございますけれども、これは国会の
先生方に申し上げるのは申しわけないわけですが、
炉安審は、米国のACRSをモデルとしまして、国会が安全
審査を行う法定の
委員会として設置を求められたものでございます。五十三年改正において、この法定の
委員会を政令に落とそうという政府原案があったわけですが、これは衆議院の方で修正されてございます。
今回の
規制委員会設置法につきましては、
炉安審の設置法上の記載ぶり、あるいは名称等は変更がないわけでございます。
さらに、法案提出者の横山衆議院議員の答弁によりますと、
原子力は多岐にわたり、
委員等で全てをカバーするのは難しいことから、日常の
規制が滞ることがないように審議会を常設して担わせるとお答えになってございまして、
炉安審等の位置づけ、あるいは役割は変更がないということがここからわかります。
しかしながら、
規制委員会はこのほど
炉安審をつくられたわけですが、内外のトラブル、こういうものに限定した役割を担わせるということで、
審査会という名称にもかかわらず、何ら
審査に対応しない、タッチしないということになってございます。
一方、
規制委員会は、
基準の作成や
基準適合性
審査に
有識者会合を活用してございます。この
有識者会合とは任意の集まりでございますが、
福島事故の反省としまして、
原子力安全委員会がつくりました指針の中の全交流電源の指針、ここは、実は
事業者に作文をさせたということがございます。この検討を行ったのは安全
委員会の中の任意の検討会でございまして、まさに、
規制委員会の
有識者会合のような位置づけの検討会が
事業者に作文をさせるということをさせてしまったわけでございます。
こういう反省、あるいは諸外国の例も
参考にしながら、設置
許可、
基準の制定、改正、これを諮問する
委員会、これが必要ではないかというふうに考えております。例えば
原子炉諮問
委員会とか核燃料諮問
委員会とか、こういうものが必要ではないかというふうに考えてございます。
この諮問
委員会は、
委員会への助言機関、事務局を監査する、監査、監督をする
機能を持った、
委員会への助言機関とすべきだというふうに考えてございます。
長年、実は四極諮問
委員会会合というのが米、仏、独、日の間で中断をされておりまして、これは
炉安審がないということから中断されておったわけですが、これも再開をしながら、
規制基準の整合化、国際整合化を図っていくべきだというふうに考えてございます。
また、つけ加えて申しますと、
福島第一
サイトですけれども、今後長期にわたる対応が必要となってきますので、ここについても、できましたら法定の諮問
委員会を設けた方がよろしいのではないかというふうに考えておりますし、地震、地盤に関しましては、
原子炉、核燃料
施設などなどいろいろな
施設に対して共通した取り組みが可能でございますし、また、地震の発生、伝搬、耐震設計などなどを総合的に判断する必要がございますので、ここも別途、専門の諮問
委員会のようなものがあった方が望ましいのではないかというふうに考えてございます。
次に、確率論、PRAは利用されているかということですが、
炉規制法の目的は、
国民の生命、健康、財産の保護、環境の保全となってございますけれども、本来であれば、このような
法目的を達成するために、許容される社会的
リスク水準を設定した上で、設計、施工、運転管理を通じてその達成を図るというのが本来のアプローチでございます。
このような手順をとることによって、一貫性、整合性がある
規制ができます。これは、一貫性、整合性がないと、弱い、安全水準が低いところに
施設全体の
安全性が下がってしまうということになりますので、一貫性、整合性をとるというのは非常に重要なことでございます。
また、このような手法、手段をとることによりまして、仕様
基準ではなく性能
基準で判断をするということができるようになります。
福島第一
事故はこのPRAを使っていなかったというところにも遠因があるわけでございまして、今後、このPRA手法を
規制基準の
改善等に生かしていく必要があろうと考えてございます。
また、現在実施されています
基準適合性
審査は、かなり試行錯誤をされておりまして、
澤参考人もおっしゃっていましたが、予見可能性が非常に低いという
状態になってございます。
PRAを使いますと、
事業者側もPRAを使って
評価ができますので、予見可能性が高まる。将来的には、標準
審査要領書、スタンダード・レビュー・プラン、これを整備するべきだと考えてございます。
また、
バックフィットにつきましても、
規制基準を性能
基準化しますと、代替手段を認めるということができるようになります。将来的には、
アメリカのような、バリューインパクト分析を含む
バックフィットルール、これを制定すべきだというふうに考えてございます。
研究者、技術者の養成につきましては、これは、文部科学省の所掌事務とされていたものが
規制委員会に移ってございます。JAEA等の
関係機関で教育訓練がなされていたわけですが、人の問題は安全と密接不可分な問題でございますので、
規制委員会としても、緊急時対応、核
セキュリティーを含めて、教育訓練体制、
規制委員会の職員だけではなくて、
日本国民の教育訓練をやっていくという体制をきちんと整備すべきだろうと思ってございます。
また、財源ですけれども、これも、
独立性をさらに確保するために、
事業者に課金をするというようなことによって、独自の財源を確保する必要があろうかというふうに考えてございます。
最後でございますが、役所というのは、どうしても前例踏襲あるいは自己正当化に陥りやすうございますが、安全文化の観点から申しましても、これまで構築した
規制基準、許認可、あるいは
組織運営体制、これを金科玉条のものとせず、不断に見直していくことが必要かと思ってございます。これに当たって、国会が大きな役割を果たしていただけるものと期待をしてございます。
以上でございます。(拍手)