○
松浪委員長 平成二十一年度
決算、
平成二十二年度
決算及び
平成二十三年度
決算についての
議決案は、
理事会の
協議に基づき、
委員長において作成し、
委員各位のお手元に配付いたしております。
これより
議決案を朗読いたします。
平成二十一年度、
平成二十二年度及び
平成二十三年度の
一般会計歳入歳出決算、
特別会計歳入歳出決算、
国税収納金整理資金受払計算書及び
政府関係機関決算書に関する
議決案
本院は、各年度
決算について、
予算執行の実績とその
効果、
会計検査院の
検査報告などに重点を置いて
審議を行ってきたが、さらに
改善を要するものが認められるのは遺憾である。
一
予算の執行
状況などからみて、所期の目的が十分達成されるよう、なお一層の努力を要する
事項などが見受けられる。
次の
事項がその主なものであるが、
政府は、これらについて特に留意して適切な措置を執り、その結果を次の常会に本院に
報告すべきである。
1
決算の参照書類である「国の債務に関する
計算書」に多数の誤りがあったことについては、
決算に関連する各計数の信頼性を損ないかねない重大な事態であり、誠に遺憾である。
政府は、深く反省するとともに、二度とこのようなことが生じないよう
改善し再発防止に取り組むべきである。
2
財政健全化については、国の
財政は、国と地方を合わせた公的債務残高が年々増加の一途を辿り、非常に厳しい
状況にあることから極めて重要な課題であると認識しなければならない。
政府は、
財政運営に対する信認を確保するため、国と地方の基礎的
財政収支の黒字化、公的債務残高の対国内総生産比の安定的な低下を可能な限り早期に実現すべきである。そのため、昨年八月に策定された「中期
財政計画」を踏まえ、
財政健全化に向けた
現実的かつ具体的な道筋を可及的速やかに
国民に示すべきである。また、基礎的
財政収支が黒字化された場合であっても、依然として多額の国債費の支払が必要となることを
国民に対し十分に周知すべきである。
あわせて、歳出面については、社会保障支出の見直しに取り組むとともに、
行政事業レビュー・
政策評価の適切な反映など
予算のPDCAを徹底し、税金の無駄遣いを削減し、
予算の重点化・
効率化を進め、歳入面については、
政策税制の適正化に向けた取組を進めるなど、歳入・歳出
改革に全力で取り組むべきである。
補正
予算の編成に当たっては、その規模が過大にならないよう事業の必要性等の精査を厳格に行い、
財政規律の確保に努めるべきである。
また、
予算統制の
観点、
財政の健全性の確保の
観点から、ストック及びフローに関する国の
財務情報を把握することが重要であり、インフラ資産の固定資産台帳の整備等の検討とともに、複式簿記、発生主義に基づく
財務諸表の開示に努めるべきである。さらに、税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現のため、マイナンバー
制度の活用等を含めた税の徴収基盤の一層の強化を図るとともに、税務当局の職員の能力の向上に努めるべきである。
3 東
日本大震災からの復旧・復興については、一昨年、復興
予算の使途が問題となったことに続き、自治体などが基金を造成して行う復興事業においても同様の事態が見受けられ、これらについて、
政府において使途の厳格化の対応が図られているが、他方で、多額の繰越、不用額が生じているなど、復興に関する問題は未だ解消されていない。
政府においては、復興関連の事業に対し適切に点検を行い、事業用地の取得迅速化のために既存の
制度の抜本的な見直しを含め、被災地に必要かつ十分な支援が確実に届くよう最大限の努力をするとともに、引き続き震災関連死の防止に全力で取り組むべきである。
また、被害総額の算定方法の妥当性、これまでに投下された復興
予算の規模の適正性、民間に対する補償の在り方、効率的かつ迅速な復旧・復興の進め方について、あらゆる知見を活用して徹底した検証を行うべきである。特に今後発生が予測されている南海トラフ巨大地震については、百六十九兆円を超える被害額が見込まれていることを想起すれば、より
効果的な復旧・復興の対応策が求められている。今回の震災を教訓に様々な視点から検討を行い、対応に万全を期するべきである。
東京電力株式会社による被害者への賠償金の支払い対応については、迅速かつ誠実に行われるよう指導すべきである。
なお、
会計検査院においては、今回の復興関連の事業について、
正確性、
合規性、
経済性、
効率性及び
有効性の
観点から
検査を行うとされている
会計検査院法の趣旨に沿った
検査が行われているとは言い難いとの指摘もある。各事業の適正性及び
政策効果の検証を一段と深め、
国民の負託に応えるべきである。
4 社会保障
制度の
改革に当たっては、給付の重点化、
制度運営の
効率化を進めることにより、
国民負担の増大を抑制しつつ、世代間格差を是正する
制度を実現すべきである。また、救急医療体制の整備、医療従事者、介護従事者の十分な確保、後発医薬品の普及促進、国公立病院等の経営
状況の
改善等に全力で取り組むとともに、リビング・ウィルの
制度化を含めた終末期医療の在り方についての検討を加速すべきである。
さらに、生活保護
制度の運用に当たっては、被保護者の自立支援を充実させるとともに、不正・不適正受給対策を推進すべきである。
社会福祉法人の
財務については、透明性を高めるとともに、内部留保の使用目的を明確化するよう指導すべきである。
5 エネルギー
政策については、原子力規制
委員会の任務の遂行における独立性の確保に十分留意すべきである。また、高速増殖原型炉もんじゅにおいて機器の保守管理に多数の不備が発生したことは極めて遺憾である。本件に係る責任の明確化を図り、再発防止の体制整備に全力で取り組むべきである。また、現在使用されていないリ
サイクル機器試験施設については、その利活用方策を早急に検討すべきである。さらに、放射性廃棄物の最終処分地の選定作業が遅延している現状にかんがみ、
国民の理解の促進、地元住民への
説明等において国が主導的な役割を果たすべきである。
また、太陽光発電等の
再生可能エネルギーの普及が促進されるような環境整備に努めるとともに、最先端の技術開発を推進すべきである。
6
我が国経済については、長期にわたるデフレと景気低迷からの脱却を実現することが直面する課題であるが、その後も長期的に安定した成長を実現していくためには、規制緩和を推進しつつ、道州制を見据えた経済成長戦略を実行していく必要がある。
また、内外の潜在需要を顕在化させつつ、中小企業やベンチャー企業が
効果的に資金調達できる枠組みを検討するなど、民間投資を喚起する必要がある。加えて、観光資源等のポテンシャルを活かし、世界の多くの人々を地域に呼び込む社会の実現に努めるべきである。
成長戦略を実行するには、
日本国内のみならずグローバル化を活かしたヒト・モノ・カネが自由に行き来できる環境を整備することが必要であり、それを支える足元のインフラのひとつである
日本籍船の海上輸送の国際競争力強化、船員の確保・養成を図り、経済安全保障を強化していくことは重要な課題である。また、世界的な水問題に対し、
我が国企業の強みを生かしてその解決に貢献するため、水ビジネスの積極的な国際展開を進めるべきである。
労働者の賃金上昇と雇用の拡大によってデフレからの脱却を図るよう
政府としても引き続き必要な役割を果たすべきである。また、
行政職場における臨時非常勤の増加に留意し、その処遇
改善を図るべきである。
7 独立
行政法人
改革に当たっては、
国民に対する
説明責任を果たすために、運営費交付金の使途を明確にして、透明性のある効率的な業務運営を行うよう見直しを進めるべきである。また、法人役員の責任の明確化、監事の機能強化、再就職規制の導入等により徹底した内部統制の確立を図るべきである。
8 航空
行政の実施に当たっては、国際競争基盤としての空港の重要性を十分に認識し、首都圏空港、近畿圏・中部圏空港、一般空港それぞれの機能が十分に発揮されるよう役割の明確化を図るとともに、各空港の利便性の一層の向上に努めるべきである。また、企業
再生への対応に当たっては、会社間の健全な発展、安全対策の適切な実施について、十分配慮する必要もある。
9 拉致問題の解決に当たっては、拉致事件の規模や被害者数が想定以上に大規模となる可能性が生じていることにかんがみ、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、特定失踪者の消息解明、また、拉致に関する真相究明などに全力をあげて取り組むべきである。
二
会計検査院が
検査報告で指摘した不当
事項については、本院もこれを不当と認める。
政府は、これらの
指摘事項について、それぞれ是正の措置を講じるとともに、綱紀を粛正して、今後再びこのような不当
事項が発生することのないよう万全を期すべきである。
三
決算のうち、前記以外の
事項については不法又は不当な収入支出は認められないため
異議がない。
政府は、今後
予算の作成及び執行に当たっては、本院の
決算審議の経過と結果を十分考慮して、行
財政改革を強力に推進し、
財政運営の健全化、
行政の活性化・
効率化を図るとともに、
政策評価等の実施を通じた
効果的かつ効率的な
行政を推進し、もって
国民の信託にこたえるべきである。
以上が、
議決案の内容であります。
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