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田中参考人 兵庫県の
環境創造局長の
田中でございます。
本日は、本県の野生動物の
被害対策の取り組みについて御説明させていただきます。
おめくりいただきまして、まず二ページでございます。
本日は、森林動物研究センターというものについて御紹介しにやってまいりました。これは、
平成十九年に本県が県立として設立したものでございます。地図の方を見ていただきますと、ちょっと線がわかりにくいのですが、京都府との境あたり、丹波地方旧青垣町というところに設定しております。写真がこの施設でございまして、十九年、五億円程度の費用で整備したものでございます。
おめくりいただきまして、三ページですけれ
ども、ワイルドライフマネジメントを行う。これは、先ほどジャパンの
草刈先生の方から御紹介がありましたが、生息地
管理、
個体数管理、
被害管理、こういう観点を総合的に研究し調査し、そして実践活動を行う場として設立されました。
そして、おめくりいただきました次の四ページも、実は先ほどのスライドの中に出てきたのでありますが、若干だけ補足いたしますと、この左側の県立大学という姿と、森林動物研究センターという姿が表裏になっているということでございます。この真ん中の研究部というところが、大学の教員が兼ねておりまして、大学の性格とそれから
行政機関としてのセンターの役割を両方兼ね備えている。そこに、一番右側、
行政職員が入り込んで、研究と実践を両方行う場にしてございます。
ちなみに、この河合
先生あるいは林
先生というのは、哺乳類の研究では
世界レベルの
先生でいらっしゃいますので、こういう
先生を慕って研究がなされるというところも
一つの強みかと存じております。
おめくりいただきまして、五ページ。
これも、くしくも先ほどのスライドの中に出てきたのでありますが、研究員は、森林
環境や生態系、リスクマネジメントを行う。これを大学教員として行っている
部分があるということでございます。しかし、左下の四角の方に目をやっていただきまして、保全、
管理、行動制御、動物医学、生態系というふうに、甚だ研究めいたテーマが書いてございますが、研究員の
先生方は非常に実践的な視点というのを強く持った上で、
行政課題への即応に対してバックアップをとってくださっているということがございます。
一方、右側の森林動物専門員、これは県職員でございます。御承知かどうか、県職員には
農業系の技術職、それから林業系の技術職というのがございますが、実は、
鳥獣保護ということを主に専門にして入ってくる職員はおりません。特に林業系の職員、農林事務所というところに配置されておりますが、林業系の職員の中で、
鳥獣保護関連を担当する中で育成されていく、実践を通じて育成されていくというのが通常の姿でございますが、こういう職員の中からさらに研修を受講させまして、このセンターに配置することによって専門性を高めていく、こういう育成がなされております。
したがいまして、ここに参った専門員は、研究員と力を合わせて、研究員の成果をこなしつつ、そして
地域に還元するといったことを相当やっております。例えば、年間二百回以上のセミナー、講習等に出かけまして、延べにしますと大体一万人ぐらいの皆様に
お話をしたり、あるいは手とり足とりの指導ができたりしているということがございます。あるいは、年間二百回以上、集落に入り込みまして、例えば集落の方の
わなの仕掛け方あるいは
管理について、手とり足とり御指導を差し上げているという
状況がございます。
おめくりいただきまして、六ページですけれ
ども、主な機能としまして、まず、何といっても、大学という性格を持ちますので、調査研究機能ということがあるわけです。基礎データの収集、調査。そして、生息
実態調査、これは出猟カレンダーと申しまして、
狩猟者の登録をしていただきますときに、二千人を超える
狩猟者の方がいらして、そのときにカレンダーというものをお渡しして、
狩猟が終わったらこれを出してくださいねということで、いつ、どこで、どのような
狩猟を誰とということを記録していただきます。このカレンダーの結果が非常に生息
実態調査のもとになるということでございます。
それから、試料。
個体分析として、もちろん死体の分析もいたしますし、ふんを大量に集めまして、定点観測もしております。
こういったデータを加工分析しまして、将来予測、推定をするということで、センターとしては、やはり科学的データ、ある程度客観的なデータを集めるということに非常に注力しているということでございます。
おめくりいただきまして、七ページですけれ
ども、施策の企画立案の支援としまして、センターというところは、名前に言われますように、研究だけでなくて、
行政機関としてつくる
特定鳥獣保護管理計画の策定を支援するということで、ちょうどこのセンターができたのは十九年度でございますので、鹿と
ツキノワグマの第三期、これについては改定を支援しました。それから、
イノシシ、猿の第一期策定については、全面的に乗り出していただいたということがございます。そして、
平成二十四年度からの四本については、まさにセンターの方で御尽力をいただいたということがございます。
またおめくりいただきまして、八ページ。
これは、
兵庫県における
ニホンジカの生息
実態の把握ですけれ
ども、この四角は五キロメッシュ、五掛ける五のメッシュになっております。こういった中で、目撃効率という概念をつくりまして、
狩猟者一人が一日に一体何頭見るのかということを、先ほどの出猟カレンダーをもとにはじきます。そうしますと、非常に濃いところ、薄いところがわかってまいります。
ちなみに、一といいますのは、一人の
狩猟者が一日に一回
狩猟すれば一頭はいつも見ているという
状況があるということでございますが、やはり北部の但馬地方が非常に濃い。
そして、右側になりますと、これは経年の変化を見ております。真ん中の方は少し青が目立っておりますが、これは若干
減少したのかなという結果が出ております。しかし、南の方、神戸、阪神地区の方に接するあたり、あるいは姫路に接するあたりというのは赤くなっておりまして、この境界が少し南下している、赤が少し南下しているという
状況があるというふうにわかっております。
さらにおめくりいただきまして、九ページです。
これは、
農業被害と、それから森林の下層植生の衰退
状況。やはり北の方、茶色が濃いところは非常に
農業被害が多いということ。それから、下層植生、下の写真に出ておりますが、特に、右側の写真に比べて左側は山肌がむけております。衰退度二の
状況ですけれ
ども、こういった
状況が
兵庫県の真ん中あたり、森林が非常に衰退しているという
状況が出ているということもつかまえております。
さらにおめくりいただきまして、十ページ。
先ほどの出猟カレンダーあるいはふんの
状況などを総合的に解析いたしまして、頭数を推定するという手法を確立させております。これはいずれも、もちろん推定によるものでございますので幅がございますが、赤い線、これが真ん中、大体中央値ということで我々がよく使うものですけれ
ども、ピーク、
平成二十二年には十五万三千頭程度いた。これが一応ピークで、峠をおりたというふうに思っておりますが、
平成二十四年度の
段階で十二万二千頭、これは
捕獲の
効果が随分出ているというふうに見ております。今の
捕獲の
状況を続けると、今後六万頭程度まで減らすことができるのではないかという推計をしております。
おめくりいただきまして、ちなみに十一ページですけれ
ども、これは、現在、県の方が市町と連携しまして、そしてセンターの指導も仰ぎながら
捕獲を強めているという姿でございます。特に、
平成二十二年からは三万五千頭オーダーを
捕獲するということで、これは
狩猟が半分強、それから
有害捕獲が半分弱ということで、特に報奨金等を出して奨励をする結果、こういった形が生まれております。
ちなみに、御紹介しますと、一番下の行、
狩猟期間のところが、大体、
平成十年代は一万頭オーダーのところが
平成二十二年以降は二万頭オーダーということで、
狩猟期の
捕獲も、狩りといいましょうか、二倍程度になっている。
それから、これはちょっと
行政的な区分で恐縮ですけれ
ども、
個体群管理、一般有害と書いてあるところ、これはいずれも
有害捕獲を指しておりますが、特に二十四、二十五に向かって非常にふえているということがございます。これは、国の方の措置していただきました基金を使うことによって、非常に
捕獲のインセンティブが高まったという結果になっております。
おめくりいただきまして、十二ページ。
センターの方の役割に戻りますが、大きな役割として、やはり
地域の獣害を減らすということが大きな使命になってございます。そのために、
兵庫県では、ストップ・ザ・獣害という名前をつけておりますが、
捕獲班、これは
猟友会と言うべきですけれ
ども、集落、
行政の三者が協力しまして、
捕獲効率をアップするということで、個々に集落に入って指導するということでございまして、実は、この左下の表を見ていただきますと、
捕獲実績が二頭以下であった二十九集落について、一生懸命指導した、現地に行って指導したという結果、右のように、
捕獲数が十六倍に伸びました。これはやはり、なれていない方に対して、ちょっとコツを教えてあげるというところを指導するということによって、
捕獲は随分伸びるということをあらわしております。
そして右側の表は、こういう、細かな指導項目を守れば守るほど
捕獲頭数も伸びていくということで、やはり小まめな指導が物を言うという
世界かというふうに
思います。
めくっていただきまして、十三ページ。
これは市町、県民局、県民局というのは県の機関でございますが農林事務所が入っております、そしてセンター、この三者が一体となって、協力し合って、写真のように、現地に出向いて指導するということにしてございます。
それから十四ページですけれ
ども、さらに、センターの方では、科学的知見を応用しまして、AIゲートというものも開発いたしました。これは、効率的なタイミングで自動的に作動する電子制御ゲートでして、あらかじめ獲物の出入りをセンサーで監視しまして、一番頭数が入る、鹿が入った
状況というのを解析しまして、例えば一頭入っただけで扉が落ちるのではなくて、一番鹿がたまったと思われる瞬間を電子制御で選びまして、それで扉が落ちるということで、五頭、十頭が一度にとれるということを目指したものでございまして、これは特許もとっております。
それから、おめくりいただきまして、十五ページです。
さらに、生息地
管理としまして、バッファーゾーン整備というものも監修いたしております。漫画の絵を見ていただきますと、山の方からおりていったところに、黄土色で少し、犬がワンワンとほえておりますが、このあたりは抜き刈りをしております。要は、開けたところをつくることによって、いわば昔の里山をできるだけ再現しているわけで、こういうことによって動物は警戒する、したがって入りにくくなるというゾーンをつくっております。
これを防護柵とあわせて整備することによって、農村
環境の方ではこれは非常に人気の高い事業になってございます。特に、警戒心の強い
イノシシですと、柵がなくても、こういうものがあるだけで、人目に触れるという恐怖心でもってなかなか出てこないという
状況がございます。ただし、なれもございますので、防護柵をあわせて設置するということでございます。
さらに、十六ページ。
十六ページは、全国的な
状況と同じですので省略させていただきますが、要は、
狩猟者が大変減っているということ。そして、右側の表は、これは赤の斜線が高齢者の方ですので、六割ぐらいが六十代以上の方になっているということで、ここ五年、十年が勝負になるというふうに考えております。
さらに十七ページ。
こういったことを見据えまして、
兵庫県では、
狩猟者の育成講習、スクールというものも本格化して立ち上げることにいたしました。
狩猟に関心ある人の掘り起こし、あるいはよい師匠、同年代の
狩猟仲間との出会いというようなものをつくるために、県が先導しましてスクールを立ち上げるということで、初心者に近い方を
有害捕獲隊に参加できるレベルにまで、その入り口にまで誘導していこうというのが目的でございます。
こういった取り組みも始めたところでございます。
それから、めくっていただきまして、一方、肉の活用といった側面もございます。とるばかりではなくて、生物資源として利用するといったところに関しまして、シカ肉活用ガイドラインの作成といったことも支援をいただいております。もちろん、これはセンターだけの能力ではございませんで、県の中の生活衛生課のような保健部門にも入っていただいてつくったものです。
このガイドラインといいますのは、下の表に出ておりますとおり、食品衛生法、これは、食肉であれば、鹿の肉に限らず、食品製造上の衛生を定めた
法律として作用するものでありますけれ
ども、真ん中の四角の、「家畜の衛生的なと殺・検査等を定めた
法律」、と畜場法は家畜にしか適用されていないということがございまして、野生動物から由来する鹿肉というものには適用されていないので、ここは空白になっております。したがいまして、これを独自にガイドラインとしてつくりまして、
捕獲、搬入、屠殺解体、処理方法等の取り扱いを定めております。
最後になりますが、広域的な視点も持ちまして活動しております。
関西広域連合、私
ども兵庫県知事は関西広域連合長も務めておりますので、特に、本県森林センターの持つ知見というのを関西の中で活用するといった視点も十分に持っております。特に、広域連合では、今年度から、
ニホンジカ、外来獣などの
捕獲についても
対策を強化するということにしてございますので、一体的な活用をするということにしてございます。
以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)