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原田(義)
委員 今、いわゆる
広報の
予算を紹介していただきましたけれ
ども、
国際政治、
国際社会の中で、当然、
政府から出てくる
予算だけで物事が処理されているわけではありません。
ここに私、
資料五と六とお配りをしておりますけれ
ども、では、先ほどの
中国、
韓国がどれぐらいの
広報活動、いや、私は、
広報と
情報戦略というのは似て非なるものだと実は思っておりまして、今、
広報を
説明されましたけれ
ども、この二カ国の抜き刷りをちょっと出してみました。
これは実は、
外務省に、それぞれの国が
国際戦略の中でどれぐらい
情報活動をやっているかと調べましたら、それぞれの国に十四、五ページずつの
資料が出てきました。その一ページずつを出したんですけれ
ども、これを見ると、本当にすさまじい
活動をしているということが見てとれるわけであります。
一つ、
資料五の方の、「
中国独自の主張に基づく
宣伝活動」と書いていますけれ
ども、どういうことをやっているか。これは、
米国において、
シンクタンク交流を通じた
発信の
強化、
議会工作としての
米ロビーイング事務所との契約、
CCTVアメリカ開局、それから、
孔子学院という
言葉がございますけれ
ども、これは有名な昔からのあれですけれ
ども、
世界に約九百
拠点、これはいろいろ、
文化施設ではありますけれ
ども、
中国語を教え、またその
地域を学習する、ただ、実際には、やはり国のそういう
情報をしっかりその国に普及する、こういうことらしいんですけれ
ども、これもその一端でございます。
時間がありませんが、
資料六、「
韓国による
情報発信」、これを見ていただきましても、
政府のみならず、地方自治体、
民間団体等々、それから、司法府、
裁判所も、私から見ればやはり動員されているなという
感じもしないではありません。さらには、
政府関係機関、
シンクタンクといって、同じようなことが書いてありますが、
世宗学堂という、この真ん中辺に書いております。これは、
海外拠点に、今、四十四カ国に九十カ所といった数字があります。実はこれは、先ほどの
孔子学院をまねたというか、それを学んで、
韓国が今、
世界各国に普及しているということのようであります。
云々云々で、これぐらいの意図的な
戦略的情報活動をやっておるということ。これはほんの一部であります。
先ほど、
日本の
外務省、
内閣府の
広報予算を教えていただきましたけれ
ども、私は、これは比較のしようがないけれ
ども、はるかに十分ではない、こういうふうに思っております。
割かしクオリティーペーパーで「選択」という雑誌がありますけれ
ども、その中に、
韓国や
中国は
米国内での
ロビー活動では今や完全に
日本を圧倒している、
日本はどこで
こんなに差をつけられたんだろうかと。さらには、
日本は甚だしい周回おくれだ、運動会で一周おくれておる、ワシントンでの
日本の
存在感、
外交力はどんどん希薄になっていると、非常に
危機感を持ってこの論文は書かれておるわけであります。みんな何となく
感じていることだと思うんですけれ
どもね。
それで、最近にどう直接結びつくかはわかりませんけれ
ども、今、よく
アメリカで言われますけれ
ども、
慰安婦像があちこち、何カ所かに既に建てられておる、それから、
日本海の呼称問題で、ついにバージニア州では
州議会だかでこれが通過した、こういうようなことになりました。これは恐らく、我々が気がつかないところでしっかり
外交活動、
情報活動をこれらの国がやっている、その結果がこういう形になっているのではないかな、こう思うわけであります。
実は、
日本海呼称の問題を今申し上げましたけれ
ども、私、六、七年前にどこかの
委員会の
視察旅行でヨーロッパに行ったときに、そのときに実はこの問題が大きく出ていましたよ。そのときに、私らは手分けして、少なくともイタリアとかポーランドとか、何カ国かに向かって、これは大変な話だということを申し上げました。そうしたら、それぞれの国が、それは
日本の言うのがもっともだ、こういうことを言っておったものですから、私は、個人的にそういう体験があったところに、せんだってバージニア州がそれを
州議会で決めたということに、本当にびっくりしておるところであります。
時間が余りありませんので、私が言わんとするところは、外交においても、いわゆる
広報、正しいと思ったことを透明性のもとで世の中に伝えるということも大事でありますけれ
ども、
情報戦略というか
情報発信というのは、やはりもう少し戦略的でなければならないなというのが私の意見でございます。
たまさか戦略という
言葉を少し勉強してきましたら、戦略というのは、特定の目標を達成するために長期的な視野と複合的思考でもって力や資源を総合的に運用する技術であり科学である、広辞林的にこういう
言葉が載っていました。戦略というのはいろいろなところで使われます。これは、
政治ではもちろんでありますけれ
ども、会社の経営やら学校の経営、全てにこの戦略という
言葉は出てくるわけであります。
この
言葉自身は軍事用語であるようでありまして、古くは孫子の兵法からこういう問題は出てきたし、近世では、マキャベリが、軍事思想の祖と呼ばれているんですけれ
ども、君主論を書いたイタリアの十五、六世紀の学者であります。そのマキャベリの理論を一番勉強して、それを実戦に役立たせたというのがナポレオン一世だそうですよ。それをしっかり勉強して、実際の国の統一戦争に使った。彼自身は戦略を、大戦術、こういうような文章で語っておるわけであります。
また、そのナポレオン一世のさまを学問的にフォローしたのが、カール・フォン・クラウゼビッツ。彼は、一八三一年、「戦争論」の中で、要するに、戦術とか戦闘だけでなくて、戦略をしっかり立てるということがいかに大事なことか、クラウゼビッツ、これはもう戦争学の一番の泰斗でありますけれ
ども、こういうことを言ったということであります。
ちなみに、今、「軍師官兵衛」というのがNHKで出ております。私
どもの福岡県も非常に大事なところでありまして、軍師官兵衛はどちらかというと戦略家と言われておりますけれ
ども、彼自身は戦場における立派な将軍でございましたし、あわせて、三人の将軍にまみえて、戦略家としての名前を残したわけであります。
いずれにしましても、一定の目標、すなわち、国益を守るためには、諸
外国としっかり分け合うためには、やはり真面目な手段、またちゃんとした外交、しかしその裏には、相当総合的な、また複合的な戦略がなければならない、こんなことを感ずるところでございます。
言いたいこと、十分ではありませんけれ
ども、戦略、ストラテジー、ストラテジックな外交をぜひまた
外務大臣に実践していただきたい、こう思っております。
時間がなくなりましたので、今度、いよいよオバマ大統領を
日本にお迎えすることになりました。これは極めて大事なエポックだと思います。このオバマ大統領の訪日に当たって、当然のことながら、
総理また
外務大臣、いろいろな思いをめぐらせながら、これからの日米外交また
国際政治に臨んでおられると思いますので、その辺のことをお聞かせいただきたい、こう思っております。