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参考人(
田中淳君)
東京大学の
田中でございます。今日はこのような
機会を与えていただきましたことを御礼申し上げます。
総合防災情報研究センターという何か舌のかみそうな長い名前でございますが、
地震と火山を理学的にメカニズムを解明する
地震研究所と、それから
都市基盤を研究している、工学的に扱っている
生産技術研究所と、人を扱っているというとちょっと幅が広いんですけれども、
情報学環、
三つの
部局が共同してつくりました
センターで、
略称サイダーと称しております。
三つの
部局の
サイダーなので、
三つの
サイダー、
三ツ矢サイダーと称しておりますので、御記銘いただければと思います。
商品名が出ましたので、ちょっと
議事録からは削除していただければと思います。
そんなことを申し上げさせていただいたのは、実は私は人を扱う立場ということでございますので、ややちょっと
皆様、
先生方からの御
期待から見ると変化球になるかもしれませんけれども、日ごろ考えていることをポイントを
お話しさせていただければというふうに思っております。
まず、
南海トラフの
巨大地震とそれから
首都直下地震、これは
地震像がどうなるかというのは、ある
意味かなり
多様性を持っていて分からないところがございますけれども、いずれにせよ、空間的に極めて広いということ、それから
被害量が大きいということが
大前提になってまいります。そのときに、
被害を減らすということが一番大事になってくるわけですけれども、じゃ、どこまで
被害を減らすのかという、
災害対策には必ず低減してしまうところがございますので、どういう
対策を取るのかというところの一種の
基準みたいなものが必要になってくると思います。
そういう面では、
一つ災害対策をお考えいただく上で、今まではやはり
地震動に始まり、
被害からスタートをしていったのですが、迅速な
復興、円滑な
復興を遂げるために何が必要なのかと。そのためには
被害はやっぱりここまでに抑えなきゃいけないと。あるいは、少なくとも
人的被害、人命はとても大事なものでありますけれども、
復興に立ち上がっていくためには、やはり人的な
被害を減らさないと周囲の
方々は動けないというところがございます。そういう面では、最終的な
生活再建を円滑に進めるために
トータルプランニングをどうしていくのかということで、そのためにはやはり
事前対策がとても大事だというふうに思っております。
そこで、お手元の資料に書かせていただきましたが、
大前提としては、
事前の
被害抑止であり、要するに住宅の
耐震化がとにかく最優先であるということを
一つ指摘をさせていただきたいというふうに思っております。
続きまして、
広域性と今
被害量ということで、
二つの軸で説明させていただいたのですが、
広域性というのもある
意味で分かっているようで分かっていないようなところがございます。やはり、
南海トラフの
広域性というのは、分かりやすい例でいうとヘリコプターの
航続距離、片道で行ける
距離を超えてしまうということですね。つまり、
ロジスティックスが極めて難しくなる範囲になってしまう。したがって、
広域性という、ただ、ずたっと広いという
意味だけではなくて、
災害対策を考えるときの
ロジスティックスの
可能性という
一つの物理的な
限界を前提に議論をして、そこで
実効性を高めておく必要があるということを感じております。
そのためには、恐らく
港湾と、今
首都高速の方からも
お話がありましたが、
高速道路を中心とする
基幹道路網でどれだけ早く流通を
確保できるのかということが大事になってくると思っています。そのための
計画も必要なのですが、実は、やっぱりちょっとやや不明確になっているのが、
道路啓開、
港湾の
啓開のときに、
港湾の
啓開の場合には
船舶等、
民有資産であっても除去してよいことになっているんですが、
道路上はやや曖昧なんですよね。なので、
道路に放置された
車両をもうブルで
啓開してよいかと言われると、やや
個人財産というところがあって、その辺の整理が実は必要なんじゃないかという気がしています。
それで、そういう面では空間的な広がりが大きいというので、
焼津市長さんがいてなかなか申し上げにくいところもあるのですが、やはりこれだけ
広域になってくると、
市町村主義で今成立している
災害対策基本法というのには
限界があるというふうに思っています。やはり、それぞれの
市町村によって
被害の形態も違いますし、余力も違ってまいりますので、ある
程度広域ブロック化をして、
事前対策から
復旧復興まで、かなり強力な
体制を組まないと私は難しいんではないかと思っております。この辺は、後で
焼津市長の方にコメントをいただければと思います。特に、直後はそういう世界に入ると思っています。
その中で、
一つ皆様にも思い出していただきたいのは、
東日本大震災で遠野市が
後方支援計画というのを立ち上げました。これは、
事前から
計画を立てていたことで、かなり有効だったという部分もありましたし、それから、やはりその後の中で、どこまでどう続けるのかというところにも難しいところもあって、かなり
市長は悩まれたところもございました。
やはりこういう
後方支援、
一つの
市町村がお互いに支え合うという、
市町村を超えた枠組みですね。
一つは、やはり非常に、通常の
市町村行政を超えるような話は出てくると思いますし、また
南海トラフの場合ですと、場所によって
被害の受け方、様相が変わってまいりますので、それぞれに合わせた
対策が必要になってくるということで、
ブロックがどの
程度がいいのかということは、また
先生方にもお考えいただければというふうにも思っております。
それから、
首都直下に関しては、確かに
南海トラフに比べると
広域性は低いというふうにも言えますが、これは様々な社会システムのハブになっていますので、ある
意味では被災が全国、あるいは下手すると国際的に波及をしてしまうという
意味での極めて大きな
広域性を持っているということでございます。
ちょっと、大分前になりますので御記憶いただいていない場合もあるかもしれませんが、世田谷電話局の前で火災が起きた。まあ洞道内で火災が起きたんですが、一か所の火災でこれは全国のATMが使えなくなる、あるいは物流システムが使えなくなるということが起きているんですね。これはもう明らかに、それよりも大規模なことが起こり得るという
広域性だということでございます。
そういう面では、実はその外力、
地震、津波の想定外というのを今防ぐために、
南海トラフの
巨大地震もやりましたし、
首都直下もやっているわけですが、実は社会システムがどうなるのかということをやはり詰めておく必要があるということだと思っています。
被害量については、もう明らかに応援量、供給量を超えた形で入ってまいります。今回の三・一一の場合に燃料が非常に大きなネックになりましたけれども、実は供給量は全然問題はなかったんですね。稼働率をちょっと上げればカバーできる範囲でした。むしろ問題だったのは、流通するためのタンクローリー、もっと言えば運転手の、かなり特殊な技能を
要求されますので、その人間の問題であったわけです。
ところが、恐らく南海になりますと非常に大きなインパクトを持ってまいります。
一つの例を申し上げますと、今LNGというのが日本は非常に多い、いろんなところで使っておりますけれども、その七割が三大港に入ってきます。
南海トラフということは、つまり名古屋と大阪が止まるということを
意味しますから、全体の七〇%の三分の二が止まってくるということになります。これは全国波及ということになります。その中で、やはり
長期化するということは必然的になりますので、本当に今までの応急仮設、災害
復興公営住宅という一本道でよいのかということはどこかで御
検討いただければというふうに思っています。
それから、非常に被災率が高いということ、全国の三割が被災地になるということは、やはりかなり大きなインパクトを持ってまいります。
ひとつここで例を
三つ挙げさせていただきますと、今、日本の金融資産残高一千兆円と言われていますが、かなり国債が迫ってきています。関東
大震災のときには、実は国は外債を発行しています。国内の資金は民間及び
市町村のために残したんですね。そのときの利率が七%です。今のギリシャと同じなんですね。これは何を
意味するかというと、
復興需要、
復興投資をしてもしても、全部それは海外に出ていってしまうということを
意味します。類似の例は兵庫県南部
地震で、兵庫県の
復興投資のうち九割が県外に出ています。このことは何としても防がないと厳しく、実際には関東
大震災の外債は戦後まで残って、戦後のあのバブルで飛んでいったというところがございます。それぐらい実は大きな話なんだという気がしているということでございます。
残された時間があと四分ぐらいでしょうか。少し最後の八、九、十、十一、十二辺りで
お話をさせていただきたいというふうに思っています。
今申し上げましたように、やはり三・一一というのは大変激甚な災害でございました。また、原子力発電事故という厳しい
状況で、今福島の
方々を中心として非常に苦労されていらっしゃる。これが何とかできなかったのかという思いはもちろんありますし、今何かできないのかという思いもたくさんあるわけですけれども、三・一一の被災者の
方々が、多分国が助けてくれる最後の災害だねという言い方をされていました。それぐらいにやはり財政的な
課題ということはきちんと議論をしていただきたいというふうに思っています。
それから、今の被災地を見ていますと、非常に多くの
方々が、国も、そして行政もいろんなところで獅子奮迅の戦いをしていらっしゃるんですね。ところが、
一つ一つの営為はいいわけですが、ややそこで問題になっているなと思っているのは、
復興の
対策がやはり事業単位で認定されているということです。これはやはり、現場ではいろいろと組み合わせなければ、現場のニーズに合った形で再構成をしていくというのが
市町村の仕事になるんですね。ところが、やはりその事業単位の認定というのが
市町村の創意をややそぐ側面、もちろん力を与えている部分の方が大きいと思いますが、そぐ部分があるということだと思います。
そういう面では、これはこの
委員会の
先生方にお願いをするのかよく分かりませんけれども、やはり
復興ということを考えたときには、事業単位の認定、これは国としても一生懸命やっていますし、制度も一生懸命考えているんですけれども、現場からの
距離感も含めて考えれば、やはりさっき申し上げたような
ブロック化というようなところを中核に一括交付金のような形に是非していただけるような道を探っていただければというふうに思っています。
それから、十番、十一番、一括で
お話しさせていただきますが、行政の対応力を超えます。これは自衛隊
一つ取っても超えます。つまり、そのことは民間の力をお借りしなければいけないということです。ただ、今の日本の
防災対策は、民間の力を、協力を求めるということにはなっているんですが、民間の力を伸ばすための環境基盤というのができているというふうには余り認識しておりません。つまり、
首都高さん、こういうことをお願いねという話はあるんですけれども、
首都高が
対策を取る上で、お金だけではなく、こういう情報とかこういうような想定があるんだとかという、そういう
事前の情報基盤を是非
整備するようなことも含めてお考えいただきたいということと、もう
一つは、阪神と違って
東日本大震災で非常に大きな問題になったのは、地域産業の再生です。特に、三陸地域は地域の産業が非常に特化をしていて、そこでやはり営んでいる方がたくさんいらっしゃるんですね。地域の産業の再生なくして地域生活の再生はないんですね。
ところが、産業政策から見ると、災害
復興は今、利子補給というのが非常に通常です。やはり、そこでは
限界がある
可能性がありますので、中小企業庁さんがグループ化補助金等いろいろな手を打っていらっしゃいますけれども、
東日本大震災のきちんとした評価も踏まえながら、産業政策、南海、
首都直下は明らかに産業政策です。そこを是非御
検討いただければというふうに思っています。
そして、最後ですが、恐らく
南海トラフと
首都直下、特に
首都直下の場合には被災地の概念、定義が変わると思いますので、いわゆる激甚
災害対策法的な被災地のとらえ方だとうまくいかなくなるのではないかということを思っているということでございます。
以上でございます。
どうも御清聴ありがとうございました。