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海江田万里君 私は、
提案者を代表し、安倍
内閣に対する不信任
決議案の
趣旨を
説明いたします。(
拍手)
まず、
決議案の案文を朗読いたします。
本院は、安倍
内閣を信任せず。
右
決議する。
以上であります。
次に、私たちが本
決議案を
提案する理由を
説明いたします。
安倍
内閣が発足して一年がたとうとする今、安倍
内閣は、いよいよその本性をあらわにし始めました。自分に不都合な議論を封じ、
国民の声を顧みず、
国会など数を頼んで踏み潰してやれという強権政治。その本質が表に出たのが、特定秘密
保護法案の強行
採決であります。
安倍政権は、民主主義国家の秘密
保護法制としては極めてずさんな法案を
提出し、
国会における熟議によってそれを正しいものにしようとするどころか、数を頼みとした強権的な
国会運営によって欠陥法案を無理やり成立させて、あわせて、
我が国の議会制民主主義を危機に陥れようとしています。
まず、安倍
内閣が
提案した特定秘密
保護法の基本的な考え方そのものが、民主主義にとって極めて危ないと言わざるを得ません。
国会審議の場は言うまでもなく、メディアから一般市民まで
国民の各界各層から、特定秘密
保護法については、さまざまな問題と懸念が示されてきました。
例えば、
政府による恣意的な秘密指定がなされ、
国民の知る権利や基本的人権が不当に侵害されるのではないか。
国民は、強い危惧や懸念、不安を感じ、徹底的で慎重な
審議を求めてきました。いや、今も、それを強く求めています。
国民の不安は、
政府が行ったパブリックコメントに九万件の声が寄せられ、そのうち八万件は反対だったことにもあらわれています。最近の世論調査でも同様、圧倒的な多数が反対と答え、たとえ
賛成と考える人も、慎重な
審議を求めています。
今も、
国会の外、日本各地で、この法案には反対、もっと
審議せよとの声が上がっています。しかし、安倍総理は、耳を塞ぎ、この
国民の声には耳を傾けようとはしていません。
国民の声を無視する総理は、この国のリーダーたり得ません。
国の存立や
国民の安全のため、
政府として、特に秘匿が必要な
情報はあります。それは守られなければなりません。しかし、
国民主権のもと、
政府の
情報は、基本的に
国民のものであります。
国民に正しい
情報が広く豊富に
提供され、開示されることによって、民主主義は守られ、
国民は
政府のあり方や政策について正しく判断できるのだと考えます。
国民の知る権利と必要な秘密
保護のバランスをとることが肝心です。
私たちは、
政府による秘密の範囲は必要不可欠なものに限定して適正に
管理するとともに、
政府内部のみならず、
政府から独立した、真の第三者機関によって秘密
保護の状況を監視でき、一定期間の後には原則公開され、歴史の検証を可能とする制度をつくるべきであります。
しかるに、安倍政権の特定秘密
保護法案は、秘密の範囲は曖昧で、それをチェックする仕組みも、恥ずかしいほどお粗末でした。これでは、官僚や時の政権に都合のよいように秘密指定が恣意的に行われるおそれが大であり、それは、過去の外交密約でも明らかです。
自由民主党、公明党、
日本維新の会、みんなの党による四党修正も、
政府原案の根本的欠陥を糊塗するだけであり、本質的な改善策となっていません。
国民はそのことをわかっています。だから、四党修正が行われた後も、この法案に反対する声は、強まりこそすれ、衰えることを知りません。
この法案がいかにひどいものであるか、それは、ここ数日の
政府・与党の対応が如実に証明することになりました。
安倍総理は、十二月四日、会期中の成立に焦ったせいでしょうか、一夜漬けの、思いつきのような唐突さで、第三者的な機関を閣議
決定で設けると答弁しました。しかし、
政府原案にも四党修正案にも、法案のどこにもそんなことは書いてありません。もちろん、衆
議院でも、そんな話は全くありませんでした。唐突に泥縄の行政対応を持ち出し、
国民の批判の目をそらそうという、とんでもないごまかしであり、朝令暮改のきわみであります。
朝令暮改なだけではありません。安倍総理の
提案した
情報保全監視
委員会なるものは、事務次官級の官僚によって組織されるそうであります。要するに、官僚による秘密指定を官僚がチェックするものではないでしょうか。被告人に裁判官をやらせるようなものであります。第三者機関でないことはもちろん、第三者的な機関とさえ呼べません。国際的にも笑われるような、恥ずかしい仕組みであります。
言葉だけで重層的なチェックと言っても、私たちは、そして
国民は、だまされません。
そして、昨日、与党は、
内閣府にもう一つ、チェック機関をつくると
提案しました。今度は、政令で、二十人規模の部屋とのことです。
行政の内部に、権限の弱い形式的な組織をふやしたくらいで、何が改善するというのでしょうか。こういうのを、恥の上塗りと言うのであります。もちろん、
国民は、そして私たちは、だまされることはありません。
安倍総理は、よほど、外からの第三者のチェックが怖いのだと見えます。
私たちは、
情報公開制度の充実のための
情報公開法の強化、
改正、秘密にされた行政文書が勝手に廃棄されないための公文書
管理法の
改正が必要であり、その上で、必要な、最低限の秘密保全法制を図るべきとしましたが、安倍
内閣は、一顧だにせず、
国民各界の声をあざ笑うがごとく、強行
採決を連発しました。
国民の知る権利が不当に侵害されないかについても、全く不透明です。
安倍総理は、
国民の知る権利へ配慮する規定を入れたと豪語しました。しかし、民主主義の基本となる、
国民の知る権利、報道や取材の自由、表現の自由について、
行政機関の長は配慮するだけなのですか。これは、民主主義のために何より最大限守られるべき、基本中の基本なのではありませんか。
また、
政府案では、
処罰の対象者は、公務員だけでなく、広く一般
国民にまで及びます。秘密を漏えいした者への懲役十年以下という厳罰化だけでなく、秘密漏えいがなくとも、相談したり、唆した者にも、懲役五年以下の罰則が導入されています。
しかるに、その
処罰対象となる
行為は曖昧で、
政府が恣意的に判断できます。公務員側の
情報提供ばかりか、取材や報道の活動も萎縮し、
国民の知る権利が脅かされる可能性が高いと言わざるを得ません。
政府案では、
行政機関の長が、
国民や
国会に対する秘密
情報の
提供をコントロールすることになっています。これでは、
国会や国
会議員の活動が不当に制約されるおそれがあります。いわんや、安倍政権を党側で支える石破幹事長の、デモをテロと同一視するかごときの暴言においては、安倍自公政権の危険な本性を如実にあらわすものと言わざるを得ません。
これほど重要な法案であるにもかかわらず、そして、これほどひどい法案を
提出したにもかかわらず、
政府・与党が
国会審議に臨む態度には、誠実さ、真摯さが欠けていました。
国家安全保障特別委員会では、与党議員の空席が目立ちました。そして、法案担当の森大臣の答弁は、
法律の根幹にかかわる安全保障の定義に始まり、不正確で、その場しのぎの答弁に終始して右に左に揺れまくり、誰もが信頼することができませんでした。
国民の声を真摯に聞くべき公聴会にしても、衆参ともに中央公聴会は開かれず、衆
議院では、地方公聴会で全ての参考人が反対ないし慎重
審議を述べたにもかかわらず、翌日には、そんなことはお構いなしで、強行
採決しました。
参
議院では、地方公聴会を前日になって
委員長が職権で決め、そのために、本
会議途中で
議長が
委員長報告を遮って本
会議を休憩し、公聴会を開催するという、前代未聞の議会運営を行う始末でした。そのあげく、特定秘密
保護法案のために、安倍政権の意に従わないからといって、何ら運営に瑕疵のない民主党の
委員長を解任し、
政府の言いなりになる
委員長にすげかえるという、議会の魂を売ったとも言える、浅ましい運営が行われました。
国民が、徹底した、慎重かつ十分な
国会審議を求めているのにもかかわらず、安倍政権は、民意を無視し、問答無用で拙速に
審議を打ち切り、衆
議院、そして参
議院で
採決を強行しました。こうした安倍政権の乱暴な議事運営そのものが、議会制民主主義を否定する所業以外の何物でもありません。
それもこれも全て、安倍総理が、何としても今
国会中に特定秘密
保護法を成立させよという指示を出したからです。こうした暴挙をここで容認すれば、
我が国の民主主義、立法府は壊死すると言わざるを得ません。そんなことは絶対に許すわけにはいきません。
そもそも、安倍総理は、この臨時
国会を、日本経済を立て直すための成長戦略
国会と位置づけたはずではなかったのですか。また、
国民が不安に思う食品虚偽表示問題に本来消費者担当大臣として率先して取り組むべき森大臣は、何をしていたのですか。
安倍総理、私たちは、二〇〇七年六月にも、あなたの
内閣に対して不信任案を突きつけました。その理由を、改めて、今ここで読み上げましょう。
安倍総理の、民主政治の基礎である立法府を軽んじる、独善的で危険な政治姿勢です。口先で
国会が決めることと建前を言いながら、実際は、中身のある十分な
審議を求める
国会の声を全く無視して、官邸から指示を出し、立法の府である
国会を行
政府である官邸のあたかも下請のように扱って、次々と与党に強行
採決をさせてきました。この安倍総理の議会軽視の姿勢は、議会人であれば誰も許すことはできないはずです。
安倍総理、あなたの強権姿勢は、当時と全く変わっていません。短期間で退陣した前回の経験を教訓にこれまで隠してきたあなたの本性が、いよいよあらわれてきました。
私たちは、まさに、
国民の声を聞かず、
国会をないがしろにし、
我が国の民主主義の発展にとって危険とも言える安倍
内閣に、一刻も早い退陣を求めるものであります。
以上、安倍
内閣を信任せずの理由を申し述べ、
趣旨説明といたします。(
拍手)
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