○藤井孝男君
日本維新の会の藤井孝男でございます。
質問に先立ちまして、台風二十六号が、
伊豆大島を
中心として、甚大な
被害をもたらしました。まことに痛恨のきわみでありますけれども、命を落とされた
皆様方に対して、深甚なる弔意と、そして御冥福をお祈りいたしたいと思います。また、同時に、多くの方々、多くの
地域で被災された
皆様方に対しましても、心からなるお見舞いを申し上げたいと存じます。
さて、本日、
国会に上程された
安全保障会議設置法等の一部
改正法案について、
日本維新の会を代表して
質問を行います。(
拍手)
また、後ほど、関連ではありますけれども、
特定秘密保護法案についてもお聞きをいたしたいと存じます。
まず、
国家安全保障会議、いわゆる
日本版NSCについてです。
国家の
安全保障を多角的、総合的に担う専門
組織を
政府内に置くことは当然の
措置であり、米国は
もとより、多くの国々は、その国力に見合った
組織や
機能を持っています。
米国では、一九四七年にNSCが
創設され、一九六二年のキューバ
危機でケネディ大統領が活用したことで知られます。一九八〇年代末のブッシュ大統領政権で
現行の運用方法が確立されました。
一方、
日本ではどうか。東
日本大震災における福島第一原発で事故が起きたとき、
安全保障の
観点が欠如していたため、各省庁でばらばらの
対応となり、
情報も錯綜しました。結果、大混乱になったわけであります。
だから
日本版NSCが必要だとの
指摘は強く、我々も、
安全保障の
機能強化に
異議を唱えるものではありません。
日本を取り巻く
安全保障の
環境は、ここ十年で劇的に
変化いたしました。
冷戦下、
日本は、米国の
抑止力に
安全保障を依存してきましたが、これからは、
日本の
外交、
安全保障の
役割は、米国と均質なものを求められる時代です。国際社会における責任ある立場、
役割を果たすことが期待され、それを実行することが、
日本の生存の道であります。
日本が米国などと密接な
情報交換を行う
必要性は、増すことはあれ減少することはないのであり、主権
国家、
地域大国として
安全保障機能を
強化することは必要不可欠。
日本が主体的、スピーディーに
安全保障上の
対応をしていくことが問われています。
これまで、
安全保障、
危機管理は、
官房長官が
司令塔となり、その下に官房副
長官、
危機管理監、官房副
長官補が
設置され、相当数のスタッフが
官房長官を補佐してきました。
日本版NSCは、これまで
内閣官房の各部署が担ってきた
機能と重複しないように制度設計されていますか。
日本版NSCでは、
国家安全保障担当補佐官は一人とされていますが、専属スタッフは何人いるのでしょうか。
国家安全保障局長にしても、
総理との間に
官房長官、官房副
長官がおり、
総理と
安全保障局長との間で十分なコミュニケーションがとれるのか、懸念されます。官房副
長官の下に
国家安全保障局長を置くのではなく、補佐官の下に
安全保障局長を配置すべきではないでしょうか。
補佐官に官僚機構に対する指揮命令
権限がなければ、本当の意味で
総理補佐ができるかどうか、疑問があります。
これらの点について、
官房長官はどうお
考えでしょうか。
NSCが有効に運用されているのは、米国、ロシア、台湾といった大統領制の国に多いと
指摘する専門家がいます。
日本版NSCの
機能を効率的に発揮するには、首相
権限を強くしなければなりません。そうは思いませんか。
効率的かつ迅速な決定ができる制度としなければ、これまでの国防
会議や
安保会議などと同じく、形骸化を免れないのではないでしょうか。
日本版NSCでは、各省庁がそれを重視しないなど、そのやり方、運用を間違えれば、官僚のセクショナリズムが強まったり、
情報が出てこない問題、利害調整の不足、いざというときに省庁が勝手に
官邸に報告を上げる、
連携できない等、さまざまな問題が起きるでしょう。過去の国防
会議や
安全保障会議のように、全てとは言いませんが、
安全保障政策においては
機能が形骸化してしまった歴史があります。その二の舞になりかねません。
これまで、
内閣の
機能を
強化するため、
安全保障会議と
内閣官房は何度も
機能強化を重ねてきました。しかし、
外交、
安全保障の調整や戦略策定、
脅威への
対応など、複合的な
課題に直面し、十分な
対応ができたと言えますか。
組織いじりだけをしても、
日本の
危機管理能力は向上しません。制度設計が重要なのです。過去の教訓から設計しなければ、同じことを繰り返すのです。
米国のNSCも、その運用が確立するまでは属人的要素があり、補佐官が国務
長官や大統領と対立するなど、混乱を招いたこともありました。イラク戦争では、
情報の失敗や省庁間の対立等もあり、
日本が本当に有効な
組織とするには、よほど
考えないといけません。
以上の懸念に、
官房長官はどのようにお
考えでしょうか。お答えをお願いいたします。
二点目は、
情報分析
機能です。
日本版NSCは官庁から
情報を吸い上げるとしていますが、
政策決定のための
情報が、米国CIAのような独立した
情報機関がないため、その
情報が本当に十分かという、そもそも論をまず
指摘したいと思います。
日本では、外務や
防衛、警察などに
情報収集部門がありますが、
情報収集に当たる専門集団を根本的につくり直し、
国家安全保障局は、その専門集団からの
情報を整理し、分析に徹することが必要ではないですか。それとも、現状の、外務省、
防衛省、警察庁、公安調査庁、そして
内閣調査室を
情報収集機関とする
体制をこのまま続けるのでしょうか。
国家安全保障会議の
創設に関する有識者
会議も、
情報機関そのものを
強化していくことが別途必要と
指摘しています。
日本版NSCは、
情報を精査、分析し、
政策に変える存在であり、
情報機関ではありません。その
考え方は正しく、
情報機関とNSCは、まさに車の両輪として走ってこそ、効果を発揮するわけです。NSCが必要な
情報を
情報組織に要求する
権限もなければなりません。
独立した
情報機関の
設置は重要なことです。この点について
総理はどのようにお
考えか、お伺いいたします。
日本版NSCの問題は、有能かつ専属するスタッフをどれだけ集められるかも鍵となると
考えます。
内閣官房に照会したところ、スタッフは、外務省、
防衛省など、出向で来ると思う、任期は二、三年で、
専門性を持つなら長くなるとは思うが、恐らくそういうことになると、担当者から回答がありました。
新たな
組織を立ち上げても、各省庁からの寄せ集めではだめでしょう。
政策オプションを的確に提示できる人物と、
情報を的確に取り扱うことができ、かつ長期的に腰を落ちつけて従事する人材が数多く必要であり、人事は、役所の順送り人事でやるべきではありません。
外交、
安全保障は専門的で幅広い分野であり、
政策の提言というのは、国際
政治に知見を要し、極めて高度な知識が求められます。
内閣官房は、こちらの照会に数十人と回答していますが、専門家などによると、米国のNSCは約三百二十人、英国では約二百四十人ほどの規模とされています。仮に
日本版NSCが五十人程度としても、その程度の人材で足りるのでしょうか。そもそも、
日本版NSCでは、どのように
地域ごとの部署、
課題ごとの部署を置くのかも明らかにしていません。
これらの人員、
体制、
機能をその程度で足りると本当に
考えているのか、
官房長官の御見解を伺います。
さて、
情報機関の
整備と不可分な
課題として、まだ
国会には提出されておりませんが、本日
閣議決定された
特定秘密保護法について
お尋ねします。答えられる範疇で結構ですので、御答弁をいただきたいと存じます。
そもそも、
我が国の
安全保障のため、
秘密が漏えいされることはあってはなりません。
外国の
情報機関から満足に
情報が入らないとされることについても、例えば、
日本に話せば二日後には新聞に出てしまうとの不満や不信が、外国
政府、特に米国側にあることも事実でしょう。
日本では今もなお、
防衛機密が外国に流れているとされますが、それら外国の
情報機関によるスパイ
活動は
国家機関絡みであり、実態把握は難しく、さらに
日本にはスパイ
活動を取り締まる
法律がないため、
世界からスパイ天国などという不名誉なレッテルまで張られてまいりました。
情報公開はあらゆる
情報に適用されなければなりませんが、公開してはならない義務も国にはあります。
自衛隊を含め、外国の潜水艦
情報など、当然、公開してはならない
情報があります。こうした
情報は、軍事
安全保障上、公開すべきでなく、知る権利、報道の自由などとは無
関係であります。こうした公開してはならない
情報を守ることが、今の
日本に必要であります。
かつて中曽根政権で出されたが廃案となったスパイ防止法の
趣旨に基づく
法案が必要なのではないでしょうか。
スパイ
活動を取り締まることを強調した法
整備が必要ではないのかというこちらの照会に対して、
内閣官房の担当者は、条文案を踏まえ、人を欺くなどにより
特定秘密を取得する行為や
特定秘密の漏えいを教唆する行為を処罰対象としており、
特定秘密を厳格に
保護することと相まって、いわゆるスパイ
活動から
特定秘密を
保護することについても相当の効果があるものと
考えると回答してまいりました。
つまり、
日本人、外国人を問わずということですが、この条文の文面では、
現行の刑法でも摘発できると思わざるを得ません。
外国
政府のスパイ、またはその傘下の協力者が欺いたと立証することは簡単でしょうか。外国
政府に
情報を流す目的で
情報を取得するというスパイ
活動に対して、
法案で、それら行為には明確に摘発すると強調した
内容につくり直すべきではないのでしょうか。
暗躍する外国の諜報機関の者がほかの外国人や
日本人を操るケースは至るところにあり、大学などの研究者、留学生、ビジネスマンなどにも及んでいます。こうしたケースに明確に
対処可能な
法律とすべきではありませんか。
総理はどのようにお
考えか、お聞かせください。
二点目は、
特定秘密の指定のあり方についてです。
平成二十二年、神戸海上保安部の
海上保安官が、
中国漁船による海保巡視船体当たり事件にかかわり、石垣海上保安部が作成したビデオ映像をネット上に流出させた事案があったのは、記憶に新しいところです。
この事案では、明らかに、時の政権が
政治判断によりビデオを非公開とし、国益を損ねたのではありませんか。流出したビデオによって、明らかに
中国漁船が海保の巡視船に体当たりしてきたことが明確になったのではありませんか。
内閣官房の担当者は、この事案では
特定秘密に該当しないと回答しましたが、誰が、どのように、該当しないと
判断するのですか。行政機関の長が
判断するというだけでは納得できません。長が誰で、どのように
判断するのかということが問題なのです。
日韓で
外交問題となっている慰安婦に対する聞き取り調査も、現在明らかにされていません。
内閣官房の担当者は、こちらの照会に対し、
特定秘密には当たらないと回答していますが、これも、誰が、どう
判断するのですか。
私が強調したいのは、官僚が
特定秘密として
大臣に上げ、
大臣が
特定秘密として指定するとしていますが、
官房長官も加わり、あれもこれも
特定秘密だと言い出したら、切りがないということです。
大臣が、所管の
特定秘密について、役人が暴走していないかどうか、気づくことができるのでしょうか。官僚、そしてそのときの政権のやりたい放題になるのではありませんか。
時の政権、時の
政治家に都合の悪い
情報、さらに、政局絡みで
特定秘密を恣意的に指定する
可能性があるということです。
可能性があるというよりも、ふえると予測されるわけです。
しかも、政権交代で
大臣等がかわれば、
特定秘密ではないものが
特定秘密となり、逆に、
特定秘密だったものが恣意的な
政治判断で解除されるということもあり得るわけで、それこそ、
世界の笑われものになるのではないですか。
この点について、
総理はどのようにお
考えか、お聞かせください。
私たち
日本維新の会は、自立する
国家、自立する
地域、自立する個人という哲学を基本に、これまで先送りされてきたさまざまな問題に真正面から取り組み、国の仕組みを変えていかなければならないと
考えております。
国の
安全保障を
強化する
政府の仕組みを改めていくことは喫緊かつ重要な
課題であり、小手先の改革でなく、真に
機能する制度設計であることを求めて、私の代表
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇〕