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谷垣国務大臣 これは、論者によって随分違うんだろうと思います。
私は、この法曹養成制度の改革がありましたときに、幾つかの問題点があったと思うんです。
それは、まず、あのころは、議論が起こった当時は、合格者は大体五百人ですね。五百人というようなことではとても需要に応えられないではないか、参入障壁が起こって、裁判なんかも時間がかかるじゃないかというような議論が盛んでございました。だから、もう少し
法律家をふやす必要があるという議論があった。これは、十分理由のあった議論だと思います。
そこで、そのところは、五百人ですと、要するに、こういう言葉を使うといけませんが、私自身がそうだったからあえて使いますが、留年を重ねてなかなか就職もできない、司法試験に受かれば九回の裏で逆転満塁ホーマーだというような気分もございまして、大量に司法試験浪人がいて、就職もできず、司法試験浪人を続けていることの心細さなどを私は非常に感じておりました。ですから、プロセスで選ぶということは、当時の私には非常に魅力的に映ったことも事実でございます。
しかし、何が問題であったかといえば、ロースクール、アメリカでは法学部のある
大学なんというのはございません、学部を終えたらロースクールに入って、法曹としての道を歩みます。それを一種学んだわけでございますが、
日本には法学部という明治以来の長い伝統を持った
大学がたくさんございまして、それは必ずしも実務
法律家をつくる教育をしていたわけではない。いわゆる文科系の教育基盤を幅広く提供するという、その
意味で貴重な役割、重要な役割を果たしてきたと思いますが、プロの
法律家養成としては必ずしも十分なものではなかったということがあると思います。そういう法学部というものが相当な勢力を持っている上でロースクールを、接ぎ木したと言うと言葉は悪うございますが、そういうことがあったと思います。
それで、今までの法学部を持っている
大学は、自分のところのプレスティージを維持するためにはロースクールを持たねばならないというような衝動もあったと思いますし、参入障壁をつくることに対する先ほど申し上げたような反発もあって、自由にやれと言ったから余りにもたくさんのロースクールができてしまったというのが
現状だろうと思います。
そのことが合格率も低くし、それから、なかなか合格しない、あそこへ行っても相当人生を空費してしまうかもしれないというようなことが起こってきている。それに対してどうしていくかということになりますと、先ほど来、少し本当に成果が上がっているところにいろいろな支援も集中していこうというような動きが今あるんだろうと思います。
そういう問題と、それから、先ほど
委員が
指摘された問題だと思いますが、学部を終えて、そしてロースクールへ行って、そして司法試験に受かったら司法研修所へ行くということになりますと、どんなスピードで通過しても、かなりの年になっている。そのときに、では
法律家以外の別の企業に就職しようといっても、採るのはも
うちょっと若い人だよなというようなことが
現実にはあったと思います。
それから、私の感じているもう
一つの問題点を挙げますと、研修所の機能をある部分ロースクールで代替するという発想がございました。
私は、合格者が五百人程度の司法研修所を出た者ですが、非常に手厚い教育をしていただいたと思います。非常に優秀な実務家が集まって、相当厳しい、ハードな訓練を課していただいたのはありがたいことだったなと思っております。しかし、それだけの人間を、優秀な実務家を教育に割くということは、実務にとっては相当な負担だったと思います。
では、その機能をロースクールに代替させるといって、どこにそれだけの優秀な実務家が教育に向かっていけるのかという問題が私はあったと思っております。それで、しかも、参入制限をするな、それから、自分のところの法学部のプレスティージにはロースクールも必要だとなると、たくさんのロースクールが生まれて、そこに質の高い実務教育をしていく教官をどれだけ配置できるかという点、こういう点も非常な問題があったと私は思います。
今、そういったものをどうやって是正して、より効率のいい、より成果の上がるものにしていくかということで、ずっとこのところ議論をし、この
法務委員会でも御議論をいただき、また閣僚
会議も開いてやっているというところでございます。
委員の御
質問に直接答えないで私の思いを言ってしまいましたが、そういう中で、メリットと申しますと、先ほど階
委員にも御答弁申し上げたことはその
一つだと思います。従前の
日本の法学教育というのは、必ずしも実務をどれだけ意識していたかということが法学部教育にはあったと思います。そのことが、
日本の法学教育というものを中身の薄いものにしていた面も私は否めないだろうと思っております。
法科
大学院を設けることによって、
日本の法学教育機関の中に実務の意識というものが相当定着してきたというのは進歩だったというふうに私は思っておりまして、ここはやはり
日本の法学が成熟していくためにもぜひ推し進めていきたい、何とかここはその方向を進めていきたいという思いは私にございます。
いろいろ言い出しまして、どういうところにこの答弁のおしまいを落ちつけたらいいかわからなくなってきましたが、そういうようなことを閣僚
会議でも懸命に議論しまして、よい方向、よいボールを出していきたいと思っております。