○玉木
委員 民主党の
玉木雄一郎です。
今週も、この愛すべき
農林水産委員会で
質問に立たせていただきまして、ありがとうございます。
まず一言、昨日の特定秘密保護
法案について、強行採決が行われたことについては抗議を申し上げたいと思います。数がたくさんあるからといって、少数
意見に耳を傾けない、こういった姿勢は、私は民主主義に反することだと思います。
ここ農水
委員会は、与野党を超えて、
日本の
農業の、農政のこれからのあり方を建設的に議論する場だと信じておりますので、我々は少数の数しかありませんけれども、そこに聞くべきこと、傾けるべき
意見があれば、ぜひ前向きに捉えていただいて、それを政策に取り入れる、そういった態度でぜひ向き合っていただきたい、このことを
最初にお願い申し上げたいと思います。
あわせて、行政が持つ
情報については、それをいたずらに隠したり、あるいはごまかしたりすることがあってはならないというふうに思います。その意味では、正確に
情報を伝えていくことは、これは農政に限らず、行政にとって大切な責務だと思っております。
その意味で、きょう、
法案の
内容に入る前に、先般発表されました、この間の一連の農政の大きな改革について、そして、それが農村あるいは
農家の所得に対してどういう影響を与えるのか、こういったシミュレーションといいますか見通しが示されたわけでありますけれども、このことについて、まず
確認をさせていただいて、
法案の中に入りたいと思います。
以前も配った資料が一部入っておりますけれども、お手元に資料をお配りさせていただいております。
資料の一に「おさらい」というふうに書いていますが、以前の
委員会でも申し上げました、いわゆる
日本型直接
支払いが直接
支払いにはなっていなくて、
農家の直接の所得の向上にはつながらないのではないのかということを問題提起させていただきました。
それを受けて、資料の二を見ていただきたいんですけれども、これが、今般、二次元だったものが三次元になって、少し拡充して、具体的な、今回決定された
予算措置も踏まえた、農村における所得等の変化ということで模式図が出されております。
このことについて、まず見ていただきたいのは、左の下に、「
農業集落における所得等」の合計と書いております。それが八百八十八万円から約一千万ぐらいにふえますねということなんですが、言わずもがなでありますが、これは
農家一戸の所得がこうなっているわけではなくて、あくまで集落全体の所得等が八百八十万から約一千万にふえますねと。これが、
全国平均すると一一三%、つまり一三%
程度ふえるという
内容だと思います。
あわせて、この積算根拠になっている資料も
農林水産省から見せていただきましたけれども、一枚裏返して、資料の三と四をあわせて見ていただきたいんですけれども、幾つかの前提条件を置いてシミュレーションをしていますということが書かれております。
日本の一
農業集落の平均的な耕地
面積が三十四ヘクタールで、うち田んぼが十九ヘクタール、畑が十五ヘクタールということで、もろもろいろいろ前提を置いて計算しているということであります。
その結果、資料の四にあるように、新聞あるいはさまざまなメディアにも、
農家所得が一三%ふえるというふうになっておりますが、結論から申し上げると、これは極めてミスリーディングな
内容になっていると私は思っています。
資料の二に戻っていただきたいんですが、まず、「
農業集落における所得等」ということになっておりますけれども、行政でありますから、
農林水産省は大変正確に書かれてあって、さすがに「所得」と「等」をきちんと書き分けているということであります。つまり、逆に言えば、この中に含まれているのは、所得じゃないものも含まれているということを、裏から見れば明確に書いてあるわけであります。
私は、ここで
指摘をしたいのは、この「所得」と「等」のそれぞれの増加です。つまり、一三%分、所得が幾ら増加し、「等」が幾ら増加しているということを
農林水産省の資料から見てみますと、実は、
農家所得が八百八十八から一千一に、農村所得がふえることになっていますけれども、百十三万円ふえているんですね、百十三万円。このうち「等」に当たる、このポンチ絵でいうと上に書いていますけれども、今度新しく設けられる、直接
支払いだと言っていた多面的
機能支払いでありますけれども、これが、百十三万円の増加分のうち四十九万円を占めています。つまり、増加分のうち四三%分が、所得そのものではなくて、「等」の方でふえる計算にまずなっております。これは
確認してください。
私がきょう申し上げたいのは、この所得の方の話を少し申し上げたいのは、所得も、この積算を見ると、何でふえているかというと、減るものがあってふえるものがあって、減るものは、まず、この集落においては、
主食用米の所得は百十四・五万円減ります。これを見ていただくと、四百二十万から三百五・五万円のところで確かに減っていますね。これは、いわゆる戸別所得補償の固定払いなどが半額になることも踏まえて、この農村集落における
主食用米の所得は百十四・五万円減ります。一方で、麦とか大豆は変わりませんという計算になっていて、大きくふえるのが
飼料用米なんですね。
飼料用米は、二つの要素でふえます。まずは、
面積がふえるということでふえます。ここに書いてあるように、
主食用米から回ってくるのが一・一ヘクタール。これまで不
作付地だった一・五ヘクタールのうち一・一ヘクタール分がさらに回って、それが全部
飼料用米に回るという計算になっています。つまり、二・三ヘクタール平均である
飼料用米の
水田が五・五ヘクタールに、約二・四倍にふえるという、
面積がふえることによって所得がふえるという計算がまずあります。
二つ目の所得増加要因は、ここに書いてありますけれども、数量払いを導入することによって、今まで反当たり八万円を払っていたものが十・五万円になるということで、その十・五万円を
単価として掛けることによって、つまり
飼料用米の
面積は二・三ヘクタールから五・五ヘクタールに一三九%ふえます。それに対して、そのふえた
面積に対して、
交付単価が八万円から十・五万円に三一%ふえるという二つの掛け算で計算して、
飼料用米における所得は約三倍以上ふえるという、ここが大きく響いてきているわけです。
問題点として申し上げたいのは、ここの
モデルの
事業として書いているところに
飼料用米の
交付単価十・五万円を言うのはいいんですが、
全国平均の
飼料用米に対する
水田活用の交付金を計算するときには八万円の
単価を使うべきだと思うんです。というのは、標準的な数量をもとにして、つまり、例えば標準偏差というのは、平均のところが多くなって、その両側がだんだん減っていきますけれども、標準に比べて単収を上げた人には、ある種の御褒美として、より高い
単価が最大十・五万円まで払われる。平均標準よりも単収が低い人に対しては、最低五・五万円までそれは少なくするということであります。
ですから、ある特定の優秀なところを取り上げて
モデルとして書くのはいいんですが、
全国平均の
交付単価を計算するときには、そのあらゆるものを合わせるので、それは最終的に平均の八万円に寄ってくるはずであります。
ですから、私が申し上げたいのは、この中で非常にチャレンジングな前提を置いている。もちろん、これは政策ですから、目指すべき
方向を書くのはいいんですが、
面積が約二・四倍にふえる、二・三ヘクタールから五・五ヘクタールにふえることはぎりぎり納得しましょう。ただ、全ての
農家に対して、
飼料用米をつくる
農家に対して、あたかも全員に十万五千円が払われるように計算するのは明らかに私は間違っていると思うんですね。
それで、あえて
交付単価だけ八万円のままにして計算をしますとどういうふうになるかというと、加えて、
先ほど申し上げた、実は増分の四三%を占めている「等」の部分を差し引いて、本当の
農家の所得、あるいは農村の所得ということを計算しますと、細かい計算は省きますけれども、実は、米が百十四・五万円減り、
飼料用米は、
面積は二・四倍だけれども、
単価は、平均八万円にすると、九十六万円しかふえないことになるんですね。そうすると、差し引きで十八・五万円、
農家の所得は減ります。率でいうと、マイナス二・三%です。
これは、
生産数量目標をなくすにもかかわらず、米価は今と
一定、そして
飼料用米の
作付を今より二・四倍ふやしても、
飼料用米の値段も下がらない。こういう前提で計算して、フルにやって、
先ほど申し上げたように、「等」を除いて、きちんとした平均的な
飼料用米の八万円の
単価を入れたときの平均的な
農家所得は十八・五万円、率にして二・三%下がるんですね。これは今私が計算していますけれども、ぜひ計算してほしいんです。
委員長、これを
農家の所得、そして平均値です、標準収量である八万円のところで計算をし直した、具体的に
農家の所得がどうなるのかということを出してもらいたいんです。「
農業集落における所得等」ではなくて、
農家における所得の変化をこの
委員会にぜひ出していただきたい。このことはぜひお願いしたいと思います。
委員長、いかがでしょうか。