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上場参考人 皆さん、おはようございます。
鳥取県から参りました
上場重俊でございます。よろしく
お願いをいたします。
まず、簡単に
自己紹介を申し上げますが、私は
県職員のOBでございます。生まれは
専業農家の長男、九代目として生まれまして、
宮沢賢治に非常に引かれまして、
地元の
大学を出て
農業改良普及員になりました。勤務の三分の一は
農業改良普及員をしておりまして、三分の一は県庁で農政をやったのでありますが、
商工労働部で
企業誘致や
ベンチャー育成や
不良債権の整理やいろいろなことを五年間やったこと、
最後は
企画部長をいたしまして
地方自治とかかわったことというのが、ちょっとほかの人とは違うかもしれません。
退職をして、現在、
財団の
理事長をしておりますけれ
ども、この間ずっと自宅の
農地を、父が亡くなって三十五年ぐらいになりますが、自分が耕しながら、村の人間として
地域で暮らしてきた、こういう者でございます。
現在の
財団の
仕事は、お
手元に
資料を配付しておりますけれ
ども、新しく
農業をしたいという人の相談や
お世話、そしてまた
農地の売買、
貸し借りの
お世話をしております。各県の
農業開発公社が、
貸し借りについては、大概、直近は
市町村の
円滑化団体に移されたのでありますけれ
ども、
市町村段階の
取り組みもありますが、私
どもが直接
貸し借りに力を入れておりまして、主に畑でございます。畑の
荒廃農地、
圃場整備済みの荒廃農地を
大型の
法人に
集積をいたしまして、お
手元資料の
末尾に
カラー写真も入れておりますので御
参考にいただきたいと思いますが、大きいものでは、現在、三市七
町村、二百十ヘクタールに及ぶ広域の
集積を果たしました。これは、私自身が長靴を履いて畑を歩きまして、
地元の
農業委員さんとタッグを組んでなし遂げた
仕事でありまして、何か、黙っていれば勝手にできるというものではないということを
冒頭お話を申し上げます。
鳥取県は、
田畑ともに八割方の
圃場整備が終わっております。
大型の
稲作農家もおりますし、園芸、畜産、それぞれ
農家は頑張っておりますけれ
ども、過疎、
高齢化の波が押し寄せてきまして、特に西日本は中
山間地域が多いものですから、今後どうするかという瀬戸際に立っております。
そこで、今回のこの
中間管理事業につきまして、これは足元を見て、十年先を見ますと、
現状のままではいかんともしがたいので、何やら新しい
制度が要るというのはみんなの
共通認識ではあります。県、
市町村、
農業委員会、
JAを含めて、現在準備にかかっているところなのではありますけれ
ども、結論からいって、非常に
現場はさめております。そのわけは、国で御
検討の
制度の
子細がまだわからないということもありますけれ
ども、
現場の実情が反映されたことにならないのではないかという
不安感が各
団体にございます。
農家の方はと申しますと、先般も、いろいろな人と出会って話すのでありますけれ
ども、ことしは米価が安くて、少し大きな
農家であれば一千万ぐらい所得が減る、その
状況の中で、転作がなくなるとかいろいろ
制度が変わるということになりますと、大変な不安に襲われまして、先行きが、見通しが立たない。大きな
主業農家ほどそういう傾向がありまして、とても
農地の
中間管理事業の話まで入れないというのが、きのう、きょうの
状況でございます。
とはいえ、それは当面のことでありまして、十年先を見てどうかということになる。また、いろいろな
施策が予算とともに上がってきますので、では、きょうここにかかっております
法案が、今後円滑に進むためには何が必要かということについて、
現場として五点に絞って
お話を申し上げたいと思います。
まず第一は、この
制度の
趣旨、
目的は何かということでありますが、私は、将来に向かって
担い手が成長していくために、その
ツールとして
農地の
制度はあると思っております。
農地の前に人ありであります。人に着目し、人が意欲を持つような、心の通った
制度であるべきだというのが私の主張であります。
この新しい
法律は、そもそも
基盤法の中で処理をされようとして
新法に至った経過がありまして、
農水省としては、
基盤法の
県基本方針と
新法の
基本方針は整合すべきだという御指導をいただいております。げにもっともだと思います。
しからば、両方の
法律の第一条
目的が、整合がとれているかどうか。私は、ちょっと読んだ感じでは、非常に
ばらばらではないかという感想を持っておりまして、
新法の第一条
目的の
末尾に、
農業の
生産性の
向上に資すると書いてございますが、これは、
中心となる
経営体の
生産性の
向上に資すると、そこにはっきりと
担い手というものをもっと浮かび上がらすことが必要ではないかと思います。
なお、それに加えて、
地域の
農業あるいは
農村の健全な
発展に資すると付記を願いたい。
そのことの
意味は、食料・
農業・
農村基本法がありまして、所要の
改正はあるにしても、大枠の理念は未来永劫大事なものであろうと私は思っております。その中で、
農業を営む人、また、かつては頑張っていたけれ
ども、リタイアをされる人に敬意を表しながら、丁寧に丁寧に、
農家の人に、耕す人に訴える、そういう丁寧な
作業が必要ではないかと思いますので、ぜひこれは御
検討を願いたいものと思っております。
二番目には、この
新法を
推進して、十年にわたって
担い手を育てていく、その道すがらは随分長いわけでありますが、その
推進体制をどうするかということであります。
現在も、
市町村、
JA、いろいろ集まっての
再生協とか
会議がございますけれ
ども、いささか、
会議のための
会議と、何やら
縦割りであったり、
ばらばら感が否めません。
だによって、
農地の準
公有化というような
お話も出たんだろうと思います。しかし、準
公有化というようなことを
国家権力でできるわけもありません。
私は、
JAも
農業委員会も含めまして、
担い手を育てていく、本当に主業的な
人たちのコーポレーションになっていくというような
制度のリニューアルだったりリフォームが絶対必要だと思いますが、その勢力を結集して、
運動論、
運動体がなければ
制度は維持できない、このように思います。
現在も、立派な
JAや立派な
農業委員会もございます。全部がそうだとは言いませんけれ
ども、そういうものを結集して、誰が旗を振るのか、
リーダーが見識と哲学を持って
農村を引っ張っていく、それは、この
法本体ではありませんけれ
ども、この法を載せるお盆として、そういうものが絶対に必要だと思っております。
なお、その
リーダーは、法で定める者でなく、
地域の中から公平公正で信頼の置ける人を選んでいく、そういうようなコンペティションがあってもいいのではないか、このようにも思います。
三点目は、
事業を
推進するための
マンパワーであります。
マンパワーは、
職員の数と
能力によるわけでありますが、
農地の
田畑の
筆数というのは、一枚ずつの数は人口の数ほどございます。すごくありまして、その一筆ずつに殊さら面倒ないわくがついております。
抵当権がついておったり、外から見えないものがいっぱいついておるわけです。それを扱うには人の数が要ります。
現状の
市町村の
職員数は、
交付税の
関係等もありまして、非常に絞られております。
マンパワーがございません。
介護保険や福祉につきましては、非常にたくさんの人が
高齢者の方の
お世話をなさっているわけですけれ
ども、
農地について、なぜそれが動かないかといえば、
マンパワーがないからにほかなりません。ここは非常に大事なことであります。
なおかつ、
農地法制が全部わかっていて、
農家の気持ちがわかっていて、
担い手がこうしたら
損益分岐が上回ってきますよというようなことが言える人はかなりスペシャルで、かつゼネラルな人材であります。
市町村の
職員は、県の
職員も、転勤、異動がございます。そういう中で、そういう特別な
能力を付与するような
資格であるとか、
土地改良には
換地士という
資格がございますけれ
ども、研修だとか、そういうことに、
現場の
マンパワーの
向上にこれは努めていただかなければならぬことだと思っております。
四点目は、
地域の
多様性について申し上げます。
地域の
多様性にどういうふうに対応するかということは、これは
地方自治の問題でもあり、殊さらに言えば、
民主主義の根幹にかかわることでありますが、
全国市町村は、
小学校単位に、明治二十二年の
町村制発布以来の
自然条件があり、
農業でいえば、作物があり、
担い手があり、神社やお寺があって村人の暮らしが成り立っております。
市町村も広域合併し、随分大きくなりましたけれ
ども、やはり
単位は
小学校単位だと思います。
そこが、これから
担い手をどうしようとしたときに、行動を起こすときに、
農地政策の
ツールはいろいろあっていいはずでありますから、
農地法三条もあり、
円滑化団体もあり、このたびの新しい
制度もできたというのは、新幹線の「こだま」や「ひかり」や「のぞみ」があるがごとく、携帯もいろいろあるがごとく、
ツールがふえるのはいいのであります。問題は、その
ツールを
地元の
市町村が使いこなすような、主体性が発揮されるような
体制がないと、これはだめだと思います。したがって、この
補助金はこの
ツールしか出ませんよという話になりますと、非常に動きにくい。画一的な
強制力は働きますけれ
ども、それが
逆目に入ることもあるのではないかと
懸念をいたす次第でございます。
私
どもの県でも従前の
制度でもって努力をしてまいりましたし、
全国そういうことだと思いますので、今回の新しい
制度をのせるときには、こういう場合はこういう
制度が有効だよというような仕分けとか、そういうものが必要かと思っております。
最後に、五点目に申し上げますのは、
耕作者が、
農家がだんだん亡くなっていきますから、新しい方を募集して、公募して、
配分、
貸し付けをしていく、それを
機構が行うわけでありますが、私は
新規参入をする若い方を扱っておって思うことは、
地元の人は大
歓迎なんですね。だから、小さかろうと大きかろうと、性悪説で、
新規参入する人をもとから何か悪い人のようなことを言っては失礼に当たるわけでありまして、
地元は大
歓迎をしてかかわってまいります。とはいえ、やはり
地域調和要件というのは、念のためにはなくてはならないが、基本的には性善説でそういう人とかかわって
地元がいるということを御認識いただく。その際、やりたいよという人が、たくさん手が挙がったときに、この法のもとに、私
どもの
機構が公平公正な
配分をする規定をつくることになっているんですが、私は非常にそれをつくる自信がございません。
なぜゆえにといいますと、やりたい人がたくさんのときには、現在、既に
標準小作料はありませんから、
地元で自然
調和的に強い人、弱い人の中で相場が成り立っていくわけですね。マーケットとまでは言いませんけれ
ども、みんなが動くわけです。そういう
状況のときに、この
制度をのせて、
上場理事長がするということは非常に無理がございまして、これは
大学の先生などとも御相談しながら、本当にどういう理屈が成り立つかということを
子細に
検討すべきことだと思っております。そこが成り立ちませんと、この
制度はそこでエンドということになりかねませんので、これは
法本体ではありませんけれ
ども、ぜひぜひ、またいろいろな英知を集めていただきますように
お願いをいたします。
時間が参りましたので、五点に絞りまして
意見を申し上げさせていただきました。
御清聴ありがとうございました。(拍手)