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小出参考人 皆さん、おはようございます。
富士市
産業支援センターのセンター長の
小出でございます。
本日は、このような場にお招きいただいて非常に光栄に思っております。
私も、
産業競争力強化法案に
賛成の
立場からお話をさせていただきたいと思います。
同時に、私自身、
中小企業支援の現場、最前線に十二年間携わっておるわけでございまして、その経験の中から、本日は、
中小企業活性化のあり方、その支援の大切さについて皆様方にお話しできれば幸いに思います。どうぞよろしくお願いします。
私は、もともと、静岡県にございます株式会社静岡銀行の銀行員でございました。二十六年間在籍しておりまして、銀行の中においてはMアンドAのアドバイザーを長くやっておったんですけれども、ちょうど二〇〇一年の二月、当時の銀行の
経営者の方針で、公の
産業支援、
中小企業支援あるいは創業支援の世界に出向の形で現役の行員をかかわらせるということで、全国の金融機関の中でも極めて珍しいチャレンジだったんですけれども、それに指名されました。
当初は二年の約束だったんですけれども、たまたますごくうまくいってしまいまして、結果的には七年半にわたって現場に出向の形でおりました。静岡市で二カ所の支援施設の立ち上げと運営、その後、浜松市の施設の立ち上げと運営という形で、現役銀行員の出向の
立場でかかわらせていただいたわけでございます。
私は、生まれ故郷が今やっております静岡県
富士市なのでございますけれども、
富士市の
行政から、非常に
地域経済が疲弊してしまって困窮をきわめている中で新たな流れをつくりたいということで、新たな支援センターづくりを
計画している中、ぜひ銀行をやめてその立ち上げにかかわってくれないかということで、小さな会社をつくり、その運営を受託するという形で二〇〇八年の八月から今の
富士市
産業支援センターエフビズがスタートしたわけでございまして、以来、五年三カ月やっておりました。その中で見えてきたものをこれから順にお話ししていきたいと思うんです。
お手元に資料を一つお配りさせていただいてございます。
三ページをごらんになっていただきたいと思います。
私は、この世界にかかわっている非常に数少ない
民間の人間だろうと思っておりますけれども、ずっと考えておりますのは、
経済産業省の皆様方あるいは
中小企業庁の皆様方がおつくりになっているさまざまな施策、
制度、ハードに関しては、実はとてもよくできている、完璧な状態でございます。にもかかわらず、残念ながら期待した成果が出ていないとお感じになっている
委員の皆様方も多かろうと思います。
これもやはりある面で事実でございまして、原因はどこにあるかというと、支援
人材の部分、私どものような支援の最前線に立つ人間、ここに大きな
課題を抱えてしまっているのではないかというふうに私は考えております。
日本の九九・七%が
中小企業なわけでございます。ここの再生なくして
日本の
経済の再生はなかなか思うようにいかないんだろうと思います。それに際して、
効果的な支援を行うことのできる
人材の育成並びに輩出、そういった
人材がいるような支援の拠点が必要じゃないか、こういうふうに考えたんです。
四ページをちょっとごらんになっていただきたいと思います。
私が
民間の
立場から公の支援の世界にかかわっている中で、支援そのものについてどう考えたかということについて述べさせていただきたいと思います。
支援、支援、支援というと一体何をやっていいのかよくわからないだろう、これを単純明快、ビジネスチックに考えたらどうなるかというふうに考えたんです。
日本の九九・七%は
中小企業と先ほど申し上げました。その一〇〇%の
人たちが経営的な
課題、悩み、問題点を抱えておるわけでございますが、これは
皆さん御
認識のとおりだと思います。
その同じ一〇〇%の
人たちが今よりもよくありたいと考えているはずなんです。その意思をなくすと廃業してしまいますので、何としても生き残りたいだろう、ならば、我々のような公の支援機関のなすべきことというのは単純明快だろう、その悩み、
課題、問題点をうまく受け入れて、それをよくする方向に持っていくことが我々支援機関のなすべきこと。
つまり、この中身は何かというとコンサルだ、ビジネスコンサルティングに間違いないだろう、公によるところのビジネスコンサル、これがやるべきことではないかと我々は考えたわけでございます。
であるからして、求められているのは結果だ。一生懸命やっているということじゃなくて、成果が求められているというところなんですね。成果を出すことによって
中小企業の皆様方に
活性化を促していく、これが我々のミッションだろうというふうに考えたわけでございます。
結果が出ればどうなるかというと、当然ながら、
地域の
中小企業の皆様方はみんな悩みを持っているわけでございます。そこに行けば自分
たちがよくなるというような拠点があれば必ず人は集まってくるだろう、であるからして、支援施設の
活性化のバロメーターは間違いなく来場相談件数にあらわれるだろうというふうに考えておりました。
私どもには、今現在、月間二百五十件の相談が寄せられておるわけでございます。ちょっと後ろのページをめくっていただきますと、七ページにその推移が出ておりますけれども、年々年々相談件数がふえて、昨年度までは月間の相談件数が平均二百件だったのが今は二百五十件。もう朝から晩まで、多分この時間も何社か来て、
皆さんが我々のアドバイザーと一緒に知恵を絞っているところだと思います。こんな状態でございます。
ちょっとページを戻っていただきまして、五ページに参ります。
先ほど申し上げましたとおり、
富士市
産業支援センターは二〇〇八年の八月にオープンしたんですけれども、この運営形態というのは極めて全国的には珍しいと言われております。公の支援センターでありながら、純粋な
民間企業に運営を受託させているわけでございます。恐らく、私が
認識している限りにおいては、純粋な
民間企業が運営しているのはこのケースだけだと
認識しておりまして、なおかつ、やることの中身そのものに大きな違いがあるというふうに考えております。
六ページをごらんになっていただくと、
三つの切り口で分けてみました。
我々は、単なるアドバイスではなく、具体的なソリューションを提案しようというふうに考えております。つまり、具体的な
解決策、こうすればもうかるという具体的な戦略を提示するのが我々の仕事だろうというふうに考えております。
二つ目として、ワンストップ・コンサルティングと書きました。私どもは、さまざまな
分野の専門家がそろっておるわけでございます。全員で十一名のアドバイザーがいるんですけれども、この
人たちが一つの案件に対して、個別に扱うのではなく、みんなで総がかりになってコンサルをしていこう、こういうような形態をとっておりまして、これがまさにワンストップ・コンサルなんだろう。
もう一つの特色として、当然ながら、継続的なフォローをする、結果が出るまで徹底的におつき合いしましょうね、こういう形。もちろん、公のサポートなものですから、一切お金は取っておりません。無料でございます。
こんな形でやっておりますと、八ページを見ていただきたいんですが、私どもがユニークな
中小企業支援を行っているということで、全国各地から、このモデルをうまく自分
たちの
地域に引っ張りたいというふうなお話がございました。そんな中で、
幾つかの
地域で、私どもと同様の考え方、ノウハウを持ったやり方で展開しておるわけでございます。
一番最初に私どもに目をつけていただいたのが、実は東京の巣鴨信用金庫でございまして、今まで巣鴨信用金庫はこういった
中小企業支援を全く行っていなかったところ、この必要性を今現在の
経営者の方が強くお感じになって、行員を五人、トレーニーとして派遣していただきました。その人間が、豊島区がつくったとしまビジネスサポートセンター、区の支援センターの最前線に立っておって、非常ににぎわった
状況と聞いております。こんな形態のものが現在各地で行われております。
さらには、
経済産業省さんが私どもの
取り組みに対して非常に強い関心を持っていただいて、現在、よろず支援拠点という形で、
委員の皆様方も御存じかもしれません、全国で最大四十七カ所をめどに、エフビズ的な支援を全国に配置できないかということで御検討なさっておるわけでございます。
そうはいっても、具体的に一体何をやるのかということについては、なかなかイメージがつかめないんだろうと思います。それについて、残された時間の中で簡単に触れていきたいと思います。
九ページをごらんになっていただきたいと思います。
左上の司技研さんのケース、これは、私どもに相談に来たのが二〇〇八年の八月の中旬でございました。当時の当社の環境というのは、極端な売り上げの減少で困っていたわけでございます。中川社長いわく、バブル期を頂点としてずっと売り上げが下がっていたんだ、今までいろいろなことを講じたんだけれども、全く
効果なし、もはやどうしていいのかわからないんですという、いわばどん詰まりの
状況で来たわけでございます。自動車
関係の試作部品をつくっている会社です。
私どもは、これに対してどうするかというと、実は決算書をつついたりはしません。これでやらなきゃならないことというのは、売り上げを伸ばすことなのでございます。決算書をつついても残念ながら売り上げが上がらない中で、この会社の特色をつかんでいこうということで、徹底的にお話を聞いたところ、当社が、自社として見るとさしたるセールス
ポイントとは考えていない、当たり前の
サービスとして考えておった超短納期の納品、三日間で試作部品をつくるというところに着眼しまして、これをベースとして新
サービスを展開しようというような提案をしました。
試作特急
サービス3DAYという
サービス名までつけまして展開したところ、直後の三カ月間で新規の取引先が五十先とれた。翌年からは、某自動車メーカーから直接的にホームページを通じて話が参りまして、今やそのメーカーと直取引で、その会社の取り組んでいる電気自動車の試作部品を大量に受注しているというところでございます。また、当然ながらV字回復をした。
ぜひ着目していただきたいのは、この司技研を再生させた試作特急
サービス3DAYを達成するに当たって、一体幾らお金がかかったんだろうというところでございます。新たにつくったのは、手書きでつくったチラシをカラーコピー機で刷っただけでございまして、数万円もかかっておらないわけでございます。基本、お金をかけずに流れを変えた、真のセールス
ポイントを生かすという知恵を使って流れを変えたというわけでございますけれども、こういった知恵を出すのが我々のような支援センターのなすべきところだと考えております。
その下の資料をちょっとごらんになっていただきたいと思います。
次のページの真ん中にマルミヤ食品という会社がございます。
この会社が相談に参りましたのは、昨年の五月でございました。一九七八年ぐらいにたしか創業した会社だと思うんですけれども、当時も、長期にわたって売り上げが低迷して、従業員さんも残すところ一人、もはや廃業だということで社長さんが相談に来たわけなんです。
我々が着眼したのは、実は、本
人たちが自分
たちの弱みと思っていた、
設備が老朽化してしまっているがゆえに小ロット生産しかできないというところだったんですけれども、その小ロット生産そのものが強みになるんだということをアドバイスしました。ターゲットを絞ってしまって、最近非常にニーズの高まっている飲食店向け、あるいは農業者向けのレトルト食品製造に傾けたらどうかということで提案したわけでございます。そうしたところ、瞬時に大量の受注が参りまして、今や従業員さんもふやされてV字回復、こんなような状態でございます。
このケースにつきましても、これをやるに当たって何か新しい
設備をしたわけではございません。的確なアドバイスをすることによって流れを変えるというところです。これは、ターゲットを絞るという知恵を我々が提示したわけなんですけれども、私どもは、こういった具体的な知恵を出すようなサポートが求められている、まさに
中小企業の再生にはこういった知恵が必要ではないかというふうに考えております。
実は、私も長いことこの世界におりまして感じますのが、
中小企業、小規模
事業者向けのアドバイス、コンサルティングというのは、かなり高度なコンサル力を要するのではないかと考えるわけでございます。理由はと申しますと、
皆さん御存じのとおり、残念ながら、
中小企業、小規模
事業者というのは、人、物、金について、全てに
課題を抱えておるわけでございます。こういった制約条件の中で流れを変えられるようなアドバイスというのはやはり知恵出しでございまして、知恵の出せるようなコンサルティングを有するような支援機関が必要だということでございます。
次のページをごらんになっていただくと、こういった
中小企業支援の現場に行くと、ニーズは多様にあると言われておりますけれども、実は、最大のところが売り上げの問題だということがわかっていただけると思います。
私どもでいうと、全体の相談の八八%が売り上げに関する悩みを持っていて、売り上げ増を何らかの形で達成したいというのが最大のニーズでございまして、これは静岡市でやっても浜松市でやっても同じような結果でございました。ですから、目指すべきサポートの最大注力するところは、どうやったら具体的に売り上げを上げることができるかという、知恵出しをするようなアドバイスだろうと考えております。
一方、当然ながら、起業の相談も多いわけでございます。私は十二年やっておりまして非常に驚いている現象がございまして、何かというと、今年度に入りまして創業の相談が急増したことです。
私どもは、昨年度まで、創業の相談は月間十一件でございました。それが、今年度に入りまして四十二件というふうに急増したわけでございます。このグラフを見ていただくとよくわかるところでございます。九月に至っては五十五件、先月は、途中までが五十一件だったんですけれども、先月末までですと六十五件でございます。当然ながら、それに伴って創業者も数としてはふえるわけでございまして、九月も十月もそれぞれ五件ずつの起業家が生まれて、
事業をもう既に開始しておるわけでございます。
こういった
観点から考えてみますと、今
政府が目指しているところの創業率を倍増させるということは決して無理な数字ではなく、達成可能だと私自身は考えております。ただし、その部分においてはやはり
効果的かつ
実行力のある、成果の出せる支援が必要だし、その配置が急務ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
後のページには、私どものアドバイザーにどんな人間がいるかということも書いてございます。御参考にしていただければ幸いに思います。
現在検討を進められております
産業競争力強化法におきましても、
中小企業支援の大切さをより一層訴えていただいておるわけでございます。ぜひ早期に
成立して、
日本の
中小企業の皆様方に新たなイノベーションが生まれるような流れができることを切に願っております。
これで私の発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)