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谷岡郁子君 みどりの風の
谷岡郁子です。
今日の
質疑では、放射線医学の
専門家であり、元
国会事故調委員であった崎山比早子さんを
参考人としてお呼びしたいと考え、御本人からの承諾も得ておりました。しかし、その希望は理事会における
自民党の反対でかないませんでした。私が各種
委員会で元
国会事故調の
委員を呼ぼうとして拒否をされましたのは、これで五回目ないしは六回目であります。多くの同僚議員も同じ目に遭っております。よく分からない理由で
自民党等に拒否をされ続けているのであります。
国会事故調は、二〇一一年十二月に
国会で新たな法律を議員立法で作ったという形で設置されました。六か月間で
調査をするように命じられて、二〇一二年六月二十八日に
報告書が出されました。六か月間の
調査中、
国会議員は接触を禁じられ、終わった後も参議院
委員会に
委員たちを呼べない状態が十一か月続いております。
事故調がその勧告の第一として
調査を
国会が継承するように求めているという事実があるにもかかわらず、我が参議院としてこれにこたえられていないという不誠実であります。
そもそも、
委員の人選は
自民党を含む各党の協議で行われました。国民のために
国会が
事故調で仕事をするのにふさわしいと選んだ人々であります。この人たちを今、
国会に元
事故調委員だからという理由で呼べないのであります。こんなばかな話がありますでしょうか。
事故調の言うところの癒着の一部に
自民党が積極的にかかわっているということを疑われても仕方のない事態になっています。
自民党が
原子力村の一部でないのなら、また、
安全神話の復活のために
国会自身が選んだ有識者の意見を封印することが目的ではないのなら、直ちに態度を改めて、
国会として
委員たちを、そしてその知識と経験を生かしていただくということをお願い申し上げたいと
思います。
さて、今朝の時点で崎山さんを
参考人として呼べないことが判明いたしましたので、私の
質問状を送り、その回答を崎山さん本人から送付いただきました。ここでこれを公表することに同意いただいております。その内容を申し上げます。
一の
質問。
事故調査
報告五.二.三の記述で、電気事業者は学会に対しても様々な働きかけをしてきたとあり、国際会議出張費の負担や都合のよい研究支援を行ってきたとあるが、このような結論を導き出すに至った資料に
参考人は目を通したのか。
答え。はい、電事連のたくさんの資料に目を通し、重要と思われるところを
報告書に書き写しました。これは今日の資料でお出ししております。
二、その中で、非がん影響に関する研究に関し、最近、EUを中心に
科学的知見が不十分であっても予防原則の観点から厳しい放射線防護
基準にすべきだというようなことが言われている中で、厳しい放射線防護
要求とならないよう研究を進める必要があるとあったのは事実か。そして、現在でもこれは続いており、
政府の政策はこのような慣行、文化に引きずられていると思うか。
答え。はい、そのとおりに書いてあったことです。そして、文化、慣行に引きずられているかということについては、そう
思います。ただ、電力会社だけがイニシアチブを取ってそうしているのではなく、
政府も
原子力政策を進めていく上でそうする方が得策であると考えていると
思います。それは二〇一一年十一月の文科省から小中高校生に配付された放射線等に関する副読本の内容から見ても明らかです。また、
事故以前から文科省が放射線教育フォーラムを通じて学校の
先生に対して行っていた放射線安全教育からも分かります。また、ICRP
委員は、
政府の放射線審議会、
原子力安全
委員会、学会の顧問等を兼任しておられる方もいますので、放射線研究者には大きな影響力があると考えます。
三、子供の放射線被曝に対する感受性は大人より高いか、それはどの程度だと言われているか。
これは、発表する人によって随分違います。
国会事故調報告書では、
米国科学アカデミーの低線量電離放射線被曝の健康リスク
委員会からの
報告書、BEIR7のデータを採用しています。それによれば、例えばゼロ歳の女の子は四十歳の男性の約七倍、四十歳の女性の四倍感受性が高いとなっています。また、ドイツ、スイス、イギリスの
原発周辺に住む五歳以下の子供に小児白血病が統計学的に有意に上昇しているという
報告もあります。この場合の線量は年間一ミリシーベルト以下です。さらに、イギリスの自然放射線が高い
地域に子供の白血病が増えているという
報告があり、蓄積線量五ミリシーベルトで統計的な有意差があります。
四、現在の
福島県で周辺
地域の線量から考えて母子避難をしている人々は大げさであり、過剰反応だと考えるか。
答え。上に述べたことを考えれば、子供の将来のために避難したいと思うことは母親にとって自然な感情だと
思います。
五、
政府や
福島県が健康リスクを子供の甲状腺がんに限定し、甲状腺の超音波検査のみ行っていることに対しどう考えるか。
答え。山下氏等がまとめた
報告書、チェルノブイリ
事故後十年の中にある論文では、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺ホルモン、抗サイログロブリン、抗マイクログロブリンを調べています。このうち、ATG、AMGは上昇しており、TSHとT4の値から甲状腺機能亢進症は〇・一四%、甲状腺機能低下症は〇・一三%に見られたとしています。すなわち、甲状腺細胞の障害により自己免疫疾患となり、機能異常が引き起こされているというものです。増えたのはがんだけということではないということです。
六、予防原則に立つとはどういうことか。
放射線の影響は時間がたってから現れ、しかも遺伝子の変化ですから、変化が出てしまってからでは元に戻りません。それから
対策を立てても既に遅いのです。低線量放射線の影響はチェルノブイリ
事故で明らかにされているので、その影響が出る前に
対策を立てておくのが賢明だと
思います。
七、ほかの異常として国際的にどのような疾病がリスクとして考えられているか。
ヤブロコフ等著でニューヨーク
科学アカデミーから出版された「
調査報告 チェルノブイリ被害の全貌」という本があります。ちょうどこの四月に岩波書店から翻訳が出ました。それによりますと、あらゆる臓器に障害が現れます。免疫力が低下することによる感染症の増加、チェルノブイリエイズとも言われています。消化器系、心臓血管系、呼吸器系、内分泌系、神経系疾患などが増えています。特に子供の体が弱くなって、一人で幾つもの疾患を抱える子供が多いということです。これは若年性の老化とも言われ、深刻な問題です。
国会事故調の第七回
委員会で、ウクライナ非常事態省水文気象学局中央地球物理観測所副所長のタバチニー氏も同様なことを証言しておられました。
では、それはどういうふうな形でこの異常を調べればよいのかという
質問に対しましては、答えは、障害が起きるのは甲状腺がんだけだという先入観を捨て、体全体の機能について丁寧に診察していくことが必要ではないでしょうか、心臓血管系の変化は、心電図や眼底検査を行えば、子供の体への侵襲がなく有用な情報が得られると
思います。
以上です。
私は、崎山さんは、低線量放射線被曝の影響が完全に明らかになっていない現状では、予防原則に立って、あらゆる
可能性を排除することなく、
原発事故の被災者たちの健康を守り、異常の早期発見をするために血液検査等の全般的な健康モニタリングが必要だと訴えておられるだけだというふうに思っています。それなのに、
事故調報告書五百二十一ページからの数ページに明らかなように、電事連を始めとする業界は長年にわたって都合の良い意見を言い、
安全基準を緩めるために働いてくれる御用学者たちを多数養成してきました。そして、その人々を使って、予防原則に立って国民を守ろうとする意見を封殺してきたということです。資料に当該部分がございます。
パネルを御覧いただきたいと
思います。(資料提示)このパネルは
事故後の血液検査の有無を表しています。チェルノブイリでは、山下
俊一さんら自身が
日本の笹川財団の費用を使って血液検査を行いました。
東海村のジェー・シー・オーの
事故後も、一ミリシーベルト以上の人々には血液検査を行いました。また、範囲の外の人でも希望者には診断をやりました。なのに、
福島の
事故の後では、その必要性は各界やまた被災者から訴えられているのに、その願いは退けられ続けています。石原
大臣、それはなぜですか。