○有村治子君 自由民主党の有村治子です。
私は、自由民主党・無所属の会を代表して、
政府四
演説について質問いたします。
数々の経済指標が好転しています。
安倍総理の下、
日本経済は回復に向け再び力強く歩み始めています。この勢いを
東日本大震災からの復旧
加速に向けていただきたいと念じ、まず、
総理が最重要項目とされる
復興についてお伺いいたします。
間もなく
東日本大震災より二年の三月十一日を迎えます。直近の世論調査においても、
復興に必要な
財源を
確保するための増税を肯定する民意が示される一方で、
復興予算が適切に使われていないと感じている世論が実に八割に上ります。
復興予算と銘打ちながら、
被災地再建と直接
関係のないような
予算の使われ方は、納税者たる
国民との
信頼を損ねます。民主党政権時代に明らかになった
復興予算の流用問題を私たちは正していかねばなりません。
しかし、来年度の
復興予算においても、財務省が、
被災地における検査装置の復旧等という項目で、実は十億円を超える
予算を関西の税務署改修費用などに充てようとしていたことが自民党内の勉強会で明らかになりました。他省庁の
予算をチェックし、税の適正執行をつかさどる財務省ですら、このような
予算流用の意図を持ち得るのだということに私はショックを覚えました。
国家
予算が必要なところに適切に執行され、税の無駄を省くことは
国民益につながります。しかし、その一方で、自らの権益を広げ、
予算拡大を狙う各省庁の省益があります。本来は、国家
国民益と各省庁の省益や
方向性を一致させていくことが最も望ましい姿ですが、
復興予算を精査すると、
被災地の
復興や
国民全体の利益に反する省益が各省庁を駆り立て、
予算付け替えの動機になっているような事案が見受けられます。
当然のことながら、
復興予算も
国会で審議、議決を経て
成立したものであり、
国民の代表として
国会で議席をお預かりしている私たち議会人にも、もちろん重要な審議
責任があります。そして、事実、与野党の
国会質疑を通して
予算の流用を見破り、是正できた実績も数々あります。しかし、
復興予算の個々の項目の下に
復興以外の
事業が巧妙に入れ込まれ、もっともらしく仕上げられた
予算書からは、省庁からの内部告発でもない限り、
予算の付け替え、からくりの全貌がなかなか見破れない、こういうもどかしさにじくじたる思いをしてきた与野党議員は少なくないはずであります。各省庁のこのモラルハザードを起こさない行政風土をつくることこそ、
政治のあるべき姿です。
そこで、提案申し上げます。本来、公益、
国民益に資する
予算であれば、
復興予算という大義名分を隠れみのにしないで、正々堂々と一般会計に
予算項目を立てるよう省庁に徹底する。説明
責任が負えないような案件は、そもそも
予算に計上しない。その周知徹底を図った上で、納税者に全く
理解されないような極端な付け替えが発覚した場合には、その
予算編成に携わった省庁のみならず、
予算案を上げてきた部、局の
責任の所在を明らかにして、次年度の
予算においても
社会的ペナルティー、制裁があるという緊張感を持って
予算編成に当たっていただきたいと
考えます。
安倍総理は、
被災地復興予算の流用など、批判を招くことがないよう使途を厳格化すると度々発言されています。各省庁を束ね、行政全体として流用を防ぐための具体的方策を、
総理、お聞かせください。
先日のアルジェリアにおけるテロ事件では、残念ながら、誠に残念ながら、
日本は最多の犠牲者を出しました。今回犠牲になられた方々は、エネルギーの安定供給という
国益の最前線に立っていた同胞です。
日本人が国際的なテロの標的になってしまう事案が厳然たる事実として存在する中、例えば
日本人だけが人質に取られてしまった場合、
日本政府は、危機にある邦人をしっかり保護できる
体制や
法整備、自前のルートを
確保できるのでしょうか。
海外で
活躍する
日本人の多くは、
日本のパスポートを持っていることの価値を語られます。同時に、経済的豊かさなど、その価値ある国籍ゆえに
日本人がテロや国際紛争のターゲットにされるという状況を断じて許してはなりません。次のターゲットを生まないためにも、危機における邦人保護
体制を築いていくことが
安倍政権、私たち自由民主党の、
国民の命を守る上で大事な
課題だと
認識いたします。
憲法の精神、法治国家としての秩序と信用、テロに対し、一丸となって立ち向かうという
国際社会の要請、
国民の安全を守り切るために全力を尽くす国家と
国民との
信頼という主要な価値のはざまで、どのような整理をし、
日本政府としていかなるメッセージを内外に発せられるのか、その方針、進捗状況を
総理にお伺いいたします。
次に、
教育問題、学力
全国調査について伺います。
平成十九年に、四十三年ぶりにやっと再開できたこの
全国学力調査は、
平成二十二年からは児童生徒のたった三割だけを対象とする抽出調査に変わってしまいました。長年、文部科学省を敵視し、
教育政策で対峙してきた
日本教職員組合、日教組が幅を利かせる民主党政権が全員
参加方式の学力調査
制度をゆがめてしまったからです。
学力測定がイデオロギー対立に振り回されるようなことはあってはなりません。世界に目を向けて
活躍が
期待される
日本の
子供たちの確かな学力を測定し、伸ばす手段の
一つとして、長期的、
全国的な動向が把握できる全員
参加での調査をこれからも継続すべきだと
考えますが、
政府の長期的展望はいかがでしょうか、文部科学大臣に伺います。
全国学力調査については、調査結果の公表も大事なテーマです。様々な世論調査は、一貫して全員
参加の学力調査の毎年の
実施と測定結果の公表を支持しています。
しかし、
民主党政権下の昨年十二月に文部科学省が定めた
平成二十五年度、来年度の
実施要綱では、都道府県が市町村の結果を公表したり、市町村が学校別の結果を公表したりすることを禁止しています。
果たしてこれが妥当な方針なのでしょうか。税金で学力テストを
実施しながら、個人
情報を除いた学校別の測定結果や
傾向すら
国民の前に公にせず、そこで得られた知見や考察を次年度以降の
教育方針に反映できる形で
国民に還元しようとすらしない。このようなことがまかり通るのであれば、文部科学省は、いまだ
民主党政権下の
影響下、とりわけ
日本教職員組合、日教組に引っ張られているのではないかと
国民から疑念を持たれても仕方ありません。特定の
政治勢力、圧力団体から決別をするという覚悟を決めてこそ、
教育の正常化が図られ、世論の支持が集まるというものです。
下村文部科学大臣は、民主党政権時代に作られたこの方針を見直すことに言及されました。大事な御決断だと支持をいたします。文部科学省も、これら世論の声を直視し、堂々と確かな学力づくりに邁進していただきたい。必要であれば、各自治体の
判断も尊重しつつ、学校ごとの結果を公表できるようにすべきだと
考えますが、
検討状況はいかがでしょうか、お尋ねいたします。
また、調査結果は、単なるランキングの発表に流れる
傾向を厳に戒め、
努力した自治体や学校、生徒
自身が粘り強く取り組んできた内容こそが評価されるように公表していただくことが肝心です。学力測定から得られる考察を、確かな学力、豊かな生活習慣を育む
国民全体の価値ある知恵にまで高めていただきたいと願い、伺います。
総理は、施政
演説において、男女が共に子育てと仕事を両立できる
社会の
実現を掲げられました。働く母親にとって保育は切実な問題であり、重点化していただいたことを率直に歓迎します。
そこで、保育をめぐる問題について質問いたします。
私
自身、二人の
子供の母親として保育園にお世話になる中で、片時も目を離さず
子供たちの安全を見守ってくださる保育園の先生方の献身的な働きとプロ意識に頭が下がる思いです。
待機児童の
解消が指摘される一方、当の保育園にあって、保育士の
人材確保が思うように進まず、離職率も高いという状況が現在
全国的に見られています。
努力して保育士の資格を取得されても、実際にはその資格を生かせず、残念ながらほかの仕事に就かれる方も少なくありません。
その大きな要因の
一つは、保育士の処遇にあります。給与面を見ると、全業種の平均賃金は月三十二万円となっていますが、保育士は二十二万円と、十万円も少なくなっています。
平成二十四年度
補正予算では、保育士の待遇
改善のために四百三十八億円が計上されました。これ自体は有り難いことですが、抜本的な
対策も必要です。
田村厚生労働大臣は、これまでも保育の充実に一生懸命取り組んでいただきました大事な同志です。
安倍政権として、より長期的な視野に立った保育園の
整備、保育士の
処遇改善にどのように取り組んでいかれるのか、田村大臣、お聞かせください。
次に、
我が国が直面する領土問題についてお聞きします。
韓国では、国史という教科の国定教科書で見開き二ページにわたって竹島、
韓国で言うところの独島について記述し、その詳細を
子供たちに伝えています。
一方で、
日本の
子供たちは、
我が国固有の領土がどこからどこまでなのか、健全な国土、領土意識を持つための基本的
情報すら教科書で十分に教えられていません。このような現実について、
安倍総理並びに文部科学大臣は、いかなる御
所見を持たれ、領土
教育は本来どのようにあるべきだとお
考えでしょうか、伺います。
自衛官、海上保安官、警察官、消防士などの皆さんが、事あらば危険を顧みず公の安全のために職責を果たせるかどうかは、練度を高める日々の修練とともに、多くの
国民にその職責の重要性が
理解され、支持されているかどうかにもよります。今この瞬間も領土・領海・領空の国境線を守っていらっしゃる自衛官、海上保安官、警察官等の諸官に対し、
さきの
演説を始め、
機会をとらえて敬意と感謝の念を示されている
安倍総理の姿勢に心から共感をしています。
領空や宇宙空間のみならず、サイバー空間までもが防衛の対象となる現在においても、古代より言われてきた海を制する者が世界を制するという言葉が本質的に伝える地政学的、戦略的な海の重要性は、何ら変わっていないと私は
認識しています。
総理は、施政
演説で、海における法の支配の重要性について強調されました。今、まさに尖閣諸島周辺海域において中国による力の行使、誇示が頻繁に起こり、国際法に基づく秩序が脅かされています。
先日、中国海軍の艦船が海上自衛隊の護衛艦に対して射撃管制用レーダーを照射する事件が発生しました。
総理も防衛大臣も、不測の事態を招きかねない危険な行為だった、大変異常なことだと控えめな発言に徹しておられましたが、果たして中国は事の重要性を本当にわきまえているのだろうか、
一つ間違えば戦争を引き起こすおそれもあったじゃないかとの強い抗議、懸念の声が
国民から上がったのも当然でありましょう。
歴史上、突発的、局所的な小競り合いによって紛争や戦争が勃発してしまった例は残念ながら数多くあります。法の支配による
地域の安定、秩序を脅かし、強引に海洋権益を
拡大しようとする大国を隣に持ちながら、海洋国家
日本の安全をいかにして守るのか。中国の挑発に乗らず、平和的に対等に伍していく安全保障
政策の方針を伺います。
我が国の国防費はこの十年ほとんど変わっていませんが、昨日、発表された中国
政府予算案については、中国の二〇一三年度国防費は実に十一兆一千百億円、この十年でおよそ四倍にも膨らみ続けていることが判明しました。
総理は、この中国国防費の規模、またこの二十年間、たった一年の例外を除いて、毎年国防費が一〇%以上ずつ増長している
傾向をどのように
認識、解釈されますか。
日本にとってこれは軍事的脅威ではないのでしょうか、しっかりとした御
意見を伺います。
平成の御代になってから二十五年、四半世紀がたちました。この間、アメリカでは四人の
大統領が
政治の中枢を担い、イギリスでも五人の首相が政権を担当、同じ敗戦を喫したドイツにおいてはたった三人の首相が長期政権を担い、EUにおけるリーダーシップを発揮し続けています。この間、
日本の首相は、二十五年間で実に十五人、十六回の交代がありました。毎年社長が替わる
企業が信用を保てるはずがありません。毎年首長が替わる市区町村において、長期的視野に立った投資などできようはずもありません。いわんや、一国の宰相がどうして務まるでしょうか。
近年、私たち
国民は、
日本の首相が精根尽きて朽ち果てていく姿を続けざまに見てきました。首相が窮地に立たされたときに、ベストコンディションではない状況の中で下した
政治的
判断が更なる支持率急落と不信を招き、内閣や
与党、霞が関の官庁においても人の心が離れていく遠心力が働き、その足下を突き崩すかのように外患の危機が迫り、外国首脳とのトップ会談がセットできないまま退陣せざるを得なくなるというパターンです。
歴代の首相が疲労こんぱいの上、八方ふさがりになって次々と枯渇していくのを毎年のように近くで目にするたびに、これは、各首相御
自身の資質の問題のみならず、むしろシステムとしての
制度や慣習に大幅な
改善の余地があるのではないかと
考えるようになりました。今この点を是正しなければ、今後も、
日本の首相が毎年潰れて、刻々と動いていく世界の中で
日本だけが取り残されてしまう危惧があります。
一体どうすれば、
日本の看板である首相を摩耗させることなく、国家の意思決定に際して確かな
判断を重ね、国運を切り開いていくという宰相本来の仕事に多くのエネルギーを割いてもらえるのか、切実な問題として
認識しています。
かつて首相を務められた麻生副
総理は、
総理大臣という職責はどす黒いほどの孤独に耐える能力を求めてくる、
日本の首相は事務的作業などで忙殺される時間が長いゆえ、先進国首相の中でも最も忙しく、その一方、権限は最も少ないという偽らざる実感を吐露されています。
ならばこそ、伺います。どこをどう
改善すれば、国家のトップリーダーを摩耗させ、枯渇させ続ける
日本の現状から脱却できるのか、
日本丸の漂流を打ち止めるために、行政と
政治、内閣と
国会はいかなる距離感を持つべきなのか、行政機関はどのように内閣を支え、
国民に奉仕するのが健全なのか。首相が毎年のように交代するという不幸な轍を直視し、
日本の
政治は今こそ度重なった失敗を乗り越えていかなければなりません。
かつて転落の修羅場を自ら経験され、その経験をも腹にぐっと据えて、国家の未来に貢献すべく再び最前線に立ち上がられた
安倍総理、麻生財務大臣に、
日本の国力を守る基盤としての首相職をどう守っていくべきなのか、忌憚のない教訓と知恵を敬意を持ってお伺いいたします。
近年続いてきた
日本の凋落をここでしっかりと食い止める、
日本の本来の国力に見合った経済力、
外交力、
教育力、文化発信力をつくり固め成していくためには、
国民から
信頼され、安定感があり、
国際社会の信用を得る長期政権を打ち立てることが何より重要だと確信しています。当然のことながら、これは、いかなる政党のためでもなく、
日本の再起を懸けての悲願であります。
私たちの安全、繁栄の基盤である
日本の未来を懸けて、信じられる
政治、決められる
政治を確立したいです。
国民が誇りを持ってそれぞれの分を果たし、
安心や幸せ、希望を育む真っ当な
国づくりを進める
安倍政権、私たち自由民主党でありたいという意思と
決意を明確にして、私、自由民主党、有村治子の質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔内閣
総理大臣安倍晋三君登壇、
拍手〕