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参考人(
関戸昌邦君) 全国
商工会連合会理事で
神奈川県
商工会連合会会長の
関戸でございます。
神奈川県の相模原市、行政合併前の旧津久井町で印刷業を営んでおります。本日は貴重な機会をちょうだいしまして、厚く
御礼を申し上げます。
小規模
事業者の
立場から二、三
意見を申し上げたいと思います。
まず初めに、手短に私どもの組織について説明をさせていただきます。
私ども
商工会は、昭和三十五年に制定をされた
商工会法に基づきまして、主として町、村の地区に設立されている
地域経済団体であります。お手元の資料にありますとおり、現在、全国で一千七百の
商工会が設立をされており、会員
事業者数は約八十七万、組織率は約五八%となっております。会員の九五%が従業員二十人以下の小規模
事業者であり、四二%は従業員がおりません。また、
個人事業主が全体の六〇%を占めてございます。
お手元の資料の
日本地図を御覧ください。赤い部分が
商工会の設立されている
地域でありまして、御覧をいただいているとおり、地図の大半が赤く塗り潰されています。また、東
日本大震災の被災地のほとんどは
商工会の
地域でした。中山間部や離島など、人口減少や高齢化が進んでいる
地域が多く、また商店の廃業などによる買物難民の増加も深刻な問題となっています。
商工会は、金融、税務、取引先開拓など、
地域の
中小企業・小規模
事業者の
経営相談、
支援を行うことを使命とする組織であります。それに加えて、良好なコミュニティーの維持や生活者不便の解消などを使命に主体的な
役割を担っております。また、商工業者
自身も、
事業を営む傍ら、消防団やパトロール隊に加入をして防犯、防災に努めております。
商工会の特徴としまして巡回相談があります。小規模
事業者は、
経営のトップであるだけでなくて、営業部長も管理部長も経理部長も兼ねていますから、昼間相談に行く時間は割けません。このため、職員自ら
事業所を訪問をして
経営相談に乗っております。職員一人当たり全国平均で年間四百四十回、私の地元の津久井
商工会では七百回以上の巡回相談を行い、
経営上の悩みを解決しています。特に、リーマン・ショック以降、年末、年度末の
資金繰りが厳しくなる時期には、巡回訪問の強化、休日返上で金融
支援に取り組んでいるところです。
先生方におかれましては、
商工会という組織は
地域の
事業者と密着しつつ
活動してきていることを御
理解いただきたいと思います。
民法の
改正案について、借り手の
立場から御
意見を申し上げます。
新聞などで、
第三者保証人が
破産などの法的
整理や、最悪、
自殺にまで追い込まれる事件が度々報道されております。実際、私の知り合いでも不幸なことになってしまった人がおりますので、
保証制度自体を見直す必要があるという
考え方に変わりはありません。
現在、
金融機関が
金融庁の
監督指針に基づき、
原則として
第三者保証人を取らない
融資が主流となっております。しかし、全国
商工会連合会が昨年の九月、十月にかけて実施した中小・小規模
企業の金融円滑化対応実態
調査の結果では、
法人、
個人を問わず、約一割の
事業者がいまだに
第三者保証人を
金融機関から求められているという実態がございます。言い換えれば、それらの
事業者は
第三者保証人を立てなければ
融資を受けられない、受けることができない、その
可能性があると考えられます。また、金融円滑化法が終了する直前と直後に実施した
金融機関の
融資状況等に関する
調査結果によりますと、
保証の追加を要求されると回答した会員の
事業者が三から四%存在している実態もあります。
私は、
第三者保証人を付けることが良いとは全く思っておりません。しかしながら、金融業界の経済原理や実情を考えると、今回の
法案では、まず懸念されるのは、
第三者保証人を付けて
融資を受けている
事業者が貸し渋りに遭うことや、新たな
資金調達が困難となるような事態が多く発生するということであります。
問題点の一としまして、例えば、引退した
創業者が株式を保有し続け
経営に関与し続けることは、
中小企業において多く見受けられます。このような場合、引退している
創業者が連帯
保証することで
信用力を補完し
資金調達している場合もありますが、この
法案によると
保証人は
代表者に限定されますので、
創業者は連帯
保証人になることはできません。
創業者に現役復帰してもらえばいいじゃないかという
意見もあります。しかし、現在経産省、
中小企業庁で進めている円滑な
事業承継にも逆行することとなると思います。
問題点の二でありますが、次に
個人事業主についてであります。
法案では
第三者保証を
法人にしか
依頼することができなくなるため、
第三者保証により
資金調達している
個人事業主にとって非常に不利益が生じるのではないでしょうか。例えば、
経営者の配偶者が実質的に
経営に
影響力を持っている場合でございます。いわゆる
金融機関のプロパー
融資を配偶者の
保証で受けていた場合、
法案ではそのような
保証は不可となりますので、
保証協会や
保証会社を通じた
融資を利用せざるを得ません。選択肢が限られてきてしまうし、
保証料が新たに発生するなどコストアップにもつながってしまいます。
問題点の三でありますが、さらに、
創業しようとする者にとっても不利益が考えられます。これから新たに
創業しようとする人は、当然ながら
信用力が余りありません。現在は、そのような
信用力の弱さを親兄弟の連帯
保証により
信用力を補完して
融資を受けている
ケースなどがあります。
法案ではそのような
ケースは一切認められず、
保証協会等による公的
保証か不動産などの物的担保がなければ
資金調達の道はなくなります。こういうことでは起業マインドにも冷や水を掛けることとなるのではないでしょうか。
ここで、実際に
第三者保証で
融資を受けた
事例を紹介したいと思います。私が知っている
創業者の
事例です。
その
創業者は腕が良い塗装工で、勤務先から独立しました。しかしながら、勤務先に言われるがまま
資金調達を高
金利のノンバンクからしたことによって、独立後間もなく返済負担が重くなり、
資金繰りが苦しくなってしまいました。その
状況を見かねた親族が
自分たちの貯蓄から
資金を貸すことを考えたのですが、このようなことがあるたび、いつまでも貸し続けることはできないとの
判断から、
自分たちが連帯
保証してあげるので
銀行に
融資相談に行くよう勧めました。結果として、その
創業者は親族の連帯
保証を条件に
銀行から
融資を受けることができました。今では軌道に乗っています。
法案によりますと、このような善意での連帯
保証も
禁止されることになります。起業しようという若者が少ない時代にあって、その
流れに拍車を掛けることになりかねないのではないでしょうか。
私は、そもそも連帯
保証について、
保証する側が十分な
理解をせずに連帯
保証していることが問題であると思っています。それは貸し手側の説明不足なのか
保証する側の
理解不足や安易な考えなのか分かりませんが、
法律で
規制するよりもそのようなことを是正していくこと、また、
金融庁の
監督指針がしっかりと守られ、半ば強制的に
第三者保証が求められないようにすることの方が先なのではないでしょうか。
商工会は全国津々浦々にあります。
金融機関の目がなかなか届かない中山間
地域の
事業者に対しては、
資金繰り
状況など、地元の
商工会がしっかりと相談に乗ります。また、
金融庁の
監督指針を守らない
金融機関の情報なども
商工会は
事業者の声を通じて把握することができます。
このような相談スキームを活用したものとして、今年で創設四十年となります、
商工会で推薦している
日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫で実施している無担保、無
保証、低
金利のマル経
融資制度があります。
改正案への代替案として、マル経
融資のスキームなどを
参考に、
商工会などのモニタリング
機能を条件として、無
保証融資のスキームの創設なども考えられるのではないでしょうか。
金融機関が
融資先
企業をモニタリングすることに伴うコストアップの削減は、
商工会等の機関によるモニタリングにより代替できると考えます。
商工会は、職員や会員
事業者だけでなく、おかみさんや四十歳以下の若手後継者の組織も二十万人弱有しております。
金融機関のモニタリングの代替先としてそうした
商工会の内部組織が大いに
活動し、無担保
融資の推進につなげられるよう、国と
地域の
金融機関で拠出したモニタリング基金のようなものをつくり
活動費を助成していただければ、新たな無
保証融資の
確立にもつながっていくものと思われます。
次に、景気対策について申し上げます。
そもそも、
債務保証も景気が上向いているときには大きな問題とはならないと思います。
日本経済はアベノミクスにより景気回復が進んでいると言われております。しかし、私の地元では、バス路線など公共交通機関が次々と廃止され、通勤通学の足がなくなっていることなどから、交通の便の良い近隣都市部に若い世代が第二の住居を構え、若者が減っている
現状にあります。そのようなことから、
地域で五十年、百年と続く老舗の和菓子屋や時計眼鏡店、土建屋、
飲食店などが店じまいするなど廃業が多いというのが実感です。
中小企業・小規模
事業者の
経営環境はまだまだ非常に厳しく、今まさに存亡の危機に立たされていると言っても過言ではありません。特に、原材料や電気料金の値上げなどのコストアップ、さらには二段階の消費税率の引上げなど、どうやって
事業を続けていけばよいか悩んでいる
事業者の方が数多くおります。
特に、消費税の増税に関しては、
平成九年に税率三パーから五パーに引き上げて以降、
企業数は
平成九年当時の五百十五万
企業から現在は四百二十万
企業にまで減少しています。また、
平成十七年に免税点を三千万円から一千万円に引き下げた際には、約十六万
企業の滞納
企業数が増加したという実態があります。税金を滞納するということは、不渡りを出すのと同じく
金融機関との取引ができなくなるんです。倒産と同じことになります。
商工会としても、
経営上の悩みを抱えた
事業者をしっかりと支えてまいります。
先生方におかれましても、
日本経済の活力の源泉と言われている地方の
中小企業・小規模
事業者にも景気回復の実感が感じられるよう政策のかじ取りを行っていただきたいと強く要望いたします。
本日は、非常に厳しい
状況にある
地域の
中小企業・小規模
事業者の
立場から
法案に対する率直な
意見を述べさせていただきました。
繰り返しになりますが、私としましては、
第三者保証契約を結んだことにより
破産や
自殺に追い込まれる事実は容認できません。しかしながら、
個人の
第三者保証まで
法律で
規制してしまうと、これまで
第三者保証により
資金調達していた
事業者や、
資金調達の助けとして自ら
保証人になることを申し出る
ケースさえ認められなくなる。そうなると、
中小企業・小規模
事業者の
資金調達手段が硬直化し、これまで以上に
資金繰りの悪化につながると思いますので、
中小企業の
資金調達に悪
影響を及ぼすような
法案には借り手の
立場として
異議を唱えざるを得ません。
中小企業・小規模
事業者の
資金繰りが悪化し廃業せざるを得ない
状況等が相次げば、経済の安全弁が壊れ、結果的に我が国の
経済活動を沈滞させてしまうのではないかと懸念しております。
どうか
先生方には、どうすれば
中小企業・小規模
事業者が円滑に
資金を
調達できるかについて、
民法の分野だけでなく様々な角度から総合的に
検討していただきますよう重ねて
お願いして、私の
参考人としての
意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。