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政府参考人(
宮本聡君) ありがとうございます。
経済産業省からは、お
手元にございます
水ビジネス国際展開への
取組及び
水ビジネス国際展開における
官民連携という
資料に基づきまして御
説明させていただきたいと思います。
まず一ページ目でございますが、
世界の
水ビジネス市場を概観しております。
右下の
グラフを御覧いただきたいんですが、二〇二五年の
地域別の
市場予測でございます。
南アジア、中東などの
地域の
市場が高
成長を遂げるとともに、
国別で見ますと、中国、サウジ、
インドなどの
国々が高い
成長率とともに
規模におきましても有望な
市場となっております。
続きまして、左下の
グラフでございますが、これは先ほど
国土交通省様の方からも御提示がありましたが、二〇二五年の
事業別分野の
市場予測でございます。
市場の大宗は伝統的な
水処理技術の領域、いわゆる
ボリュームゾーンとなっておりますが、
成長率で見ますと、
海水淡水化、再
利用水など、
日本の
技術上の優位が高い
部分で、いわゆる
成長ゾーンと言われる
部分で上回っている
状況でございます。
続きまして、二ページでございます。
日本の
水ビジネスの構造を概観しております。
下の図表を御覧いただければと思いますが、
各国の
水ビジネスの
プレーヤーを部材、部品、
機器製造という
分野、それから
装置設計、組立て、
建設という
分野、それから
運営、保守、
管理という
分野に分けて表示してございます。
海外企業、いわゆる
水メジャーと言われる
企業につきましては、例えば
フランスのヴェオリア、スエズなどはこうした全部の
分野に対応しておりますし、他の
欧米諸国等も複数の
分野に横断的に対応しているところでございます。そして、彼らはプライムコントラクターとして
事業権全体を獲得するというケースが多くなっているようであります。
一方、
日本企業でございますが、
水処理膜などの
水処理技術を有している
機器メーカー、それから
設計、組立てなどを請け負う
エンジニアリング会社、それから
国内で
水道事業運営を行っていただいている
地方自治団体など、
分野ごとに異なる
プレーヤーが多数存在するという
状況でございます。そして、
日本企業は、
事業権を獲得するというよりも、むしろ出資のみ、あるいは
機器の納入のみというサブコントラクターの立場で参加することが多いようでございます。
一ページめくっていただきまして、三ページでございます。
では、
日本の
水ビジネスが
国際展開する上で抱える
問題点は何か、
課題は何かという点でございます。
まず、第一でございますが、
日本の
企業は、これまで
国内の
水事業で
事業経験を積む機会が少なかったことから、
国際入札案件で必要となる、
事前資格審査で求められることが多い
事業実績というものが不足しております。
それから第二に、
海外での
水ビジネスは、やはり
先方の国や地方自治体の
事業に参画するという場合が多うございます。また、
現地の
通貨建て、あるいは
長期にわたる契約である場合が多うございます。したがいまして、これはどうしても
企業のみでは対応できない多大なリスクを伴うということでございます。
第三に、
国際競争力の
関係でございますが、
日本の
企業の
技術は極めて高い
評価を
海外で受けていることは確かでございますが、その反面、どうしても高
コストになっているということは否めない点でございます。もちろん、
コスト削減の
努力は必要なわけでございますが、やはり各
企業あるいは
政府としましては、
長期的なライフサイクルで考えた場合、
コストベネフィットという点では、
日本の
技術、
日本の機械含めて、
先方にもメリットがあるという点を理解してもらう、そういう
努力が必要かと思っております。
続きまして、四ページでございます。
これらの
課題を克服するためには、当然ながら
官民連携による
取組というものが不可欠なわけでございますが、それに当たりまして具体的には以下の
四つの
視点が重要ではないかと考えております。
まず第一に、先ほど申し上げました、不足している
事業経験を補うために
事業経験を持つ
プレーヤーをつくり出すということかと思います。
第二に、
政府主導で
案件形成の段階から関与することで、
事業経験の不足する
日本企業でも
事業に参画できる、こういう
可能性を高めていくことではないかと思います。
第三に、
政府の
支援等によりまして
実証事業を
実施いたしまして、
日本企業の優れた
水技術への
評価を高めて、その導入、普及の促進を図っていくということが考えられると思います。
第四は、若干違う
視点ではございますが、
資源獲得など他の
事業との連動を図ることなども考えられると思います。
以下、この
四つの
視点についてそれぞれ
政府の役割と
支援について簡単に御
説明していきたいと思います。
五ページ、お願いいたします。
まず第一の
視点であります
事業経験を積むということでございます。
右下の図を御覧いただきたいのですが、その方法としては、既に
事業経験のある
海外の
水事業者と共同
事業を
実施する、あるいはその
事業者を買収する、又は
国内で
水事業を行う
実績のございます地方自治体との
協力事業を
実施する、このようなパターンが考えられるわけでございます。このような
事業実績を積むために、
政府としましては、例えば共同
事業や買収に当たって産業革新機構等の出融資による
支援、それから必要に応じて
政府による働きかけなどを
実施していくことも必要かと考えております。
六ページ以降、より具体的な例を幾つか挙げさせていただいております。
まず六ページですが、
事業経験のある
海外水事業者を産業革新機構を活用して実際に買収した事例でございます。これはオーストラリアで横浜市相当の約三百万人に水処理
事業を
展開している
企業、ユナイテッド・ユーティリティーズ・オーストラリアという
企業を三菱商事、日揮などが買収した事例でございまして、その際に産業革新機構も出資するとともに、東京都さんの方でも
技術協力の面で御
支援いただいた
案件でございます。結果として、
国際入札に必要な
事業実績というのを獲得ができたという事例でございます。
続きまして、七ページでございます。
これも、
事業経験のある
海外水事業者にこれは資本参加をした例でございます。フィリピンのマニラの西地区というところで東京都二十三区相当の給水
人口を抱える
水事業者、マニラッドというところに
日本企業が出資した例でございます。これに対する
政府の
支援としましては、これに先立ちまして経済省でFS
調査を
支援いたしまして、そこでの信頼
関係をベースにこうした
事業が成り立っているわけでございます。
続きまして、八ページ目、お願いいたします。
これは、第二の
視点であります
事業形成段階からの関与ということでございます。これにつきましては、特に
政府の関与というのが当然ながら有効なわけでございます。具体的な
政府の役割と
支援につきましては、真ん中の赤字で囲んだ
部分でございますが、簡単に申し上げますと、水道
事業のマスタープランの段階からの関与、それから
政府間の対話やトップ
セールスなどを通じた働きかけ、あるいはプレFS、モデル
事業、ODA
事業、こうしたものを活用した受注環境の
整備、それから
研修等の
人材育成協力を通じた
相手国の
技術力の向上、あるいは
相手国の雇用創出への
貢献、こうした形で
政府として
事業形成段階からできるだけ
相手国との対話を重ねていくということも必要かと思います。
下に幾つか具体的な事例がありますが、次のページ以降で幾つかの例をもう少し
説明させていただきたいと思います。
九ページをお願いいたします。
これは、
政府間の
政策対話という形で
政府が関与した事例でございます。二〇一〇年に経産省とサウジの水電力省間で日・サウジの水
政策対話という
会議体を立ち上げ、さらに、二〇一一年には国交省さんにも参加いただきまして、経産省とサウジ・水電力省との間で覚書、MOUを締結し、その結果としてブライダ・ウナイザ市というところで、横浜市も含みます横浜コンソーシアムというところが事前
調査事業を
実施しているところでございます。今後、サウジの
人材育成にも
貢献しながら、数年後に民営化される
市場での
案件の獲得を目指しているところでございます。
続きまして、十ページでございます。
これは、今度は、
官民が
連携して
国際会議への参加を通じて
案件形成に関与した例でございます。これは、まさに今年の一月、アブダビで
水資源、水処理をテーマにいたしました
国際会議、
国際見本市、第一回
国際水サミットというのが
開催されたわけでございますが、
政府としましては、
日本の水関連
企業によるジャパン・パビリオンへの出展の
支援、それから財団法人の中東
協力センターによるビジネスミッションの派遣、それから
国際会議の場におきまして
政府の立場から
日本の
水ビジネスの優位性を御紹介するなど、全面的な
支援をさせていただいたものでございます。中東
地域を
中心にしまして、こうした
活動を通じて
世界的に
日本のビジネスの良さが強くアピールできたものではないかと考えております。
続きまして、十一ページでございます。
これは、今度は、
官民一体となったミッションの派遣の例でございます。
これも最近の例でございまして、今年の二月に
水分野に特化した水ミッションを初めてイラクに派遣いたしました。御高承のとおり、イラクは戦後の復興が大分進みまして、水を始めとしました
インフラの需要というのが急速に高まっております。また、元々、
日本への信頼あるいは
日本企業への期待というのは非常に大きい国でございます。
ただ、一方で、欧米あるいは中国等の
企業が進出する中で、どうしても治安上の理由などがありまして
日本企業の進出が遅れているという
状況にあります。このため、
政府として
官民ミッションということを組むことで
企業を後押しするとともに、実際、
現地で日・イラクの合同水
セミナーを
開催したり、二国間の
協力の共同声明を採択することなどで今後の
案件形成を強く
支援していきたいと思っている次第であります。
それから、十二ページでございます。
例としては
最後でございますが、これは同じく
官民一体となった
セミナーでございます。ミャンマーの例でございますが、
国土交通省さん、厚労省さん、それから
JICAさんと共催でこうした
セミナーも
開催してございます。
十三ページをお願いいたします。
第三の
視点ということで、
日本の高効率・省
水技術の実証ということでございます。
現在も、新興国
中心に導入される
上下水道は基本的に伝統的な
技術をベースにしたものでございます。もちろん、これらの
技術も引き続き重要ではありますが、将来的な水需要の増大にこたえるには、
膜処理技術、再生
利用など、
日本が優位を持っております高効率・省
水技術の導入、普及、これも大変重要なことかと考えております。このため、
政府として、例えばNEDOによります
海外での
実証事業、こうしたものを通じまして、諸外国において水処理に関するモデル
事業を
支援しているところでございます。
具体的な例が下に幾つか挙がっていますが、
一つだけ、次のページで具体例を御
説明いたします。十四ページでございます。
これは、生活排水や工業水などによる富栄養化ということで、水の汚染が問題になっております中国の湖沼、湖、沼での実証実験の例でございます。雲南省のテン池というところで、NEDOの委託
事業として、日揮という会社の高効率オゾン処理
技術を用いた水の浄化、水質浄化の実証
プロジェクトを
実施したものでございます。水質の浄化はもとよりでございますが、この過程で有機物質も回収し、これを肥料として活用するということも図られております。また、この実証の結果については、中国におきまして湖沼浄化の先進事例として高い
評価を得るとともに、その
評価を活用いたしまして、日揮という会社におきましても実際の
事業展開を図っているところでございます。
続きまして、十五ページ、十六ページ、これは若干御
参考ということかもしれませんが、
水ビジネスが
資源獲得と連動した事例の紹介でございます。
済みません、十六ページに飛んでいただきまして、これは豊田通商というところがアルゼンチンのオラロス塩湖、塩の湖でございますが、ここでリチウムの
資源開発の権益を獲得した事例でございますが、その際に、その開発に伴って必要な水、あるいは周辺の住民の皆様への生活用水の
提供、こういうことを可能にするため、
水資源の確保、水処理システムの
管理運営の
調査をまず
実施したところでございまして、それについて高い
評価を
現地から受けたという事例でございます。
資源供給国の中にはやはり水問題を抱えた国も多くございますので、
日本からの水
関係技術の
提供ということを通じまして、両国、両
地域にとってウイン・ウインの状態につなげられればと思っているところでございます。
最後になりますが、十七ページでございます。
今まで、具体的な事例で、
政府の役割と
支援、あるいは
官民連携の
視点について述べてきましたが、
最後に、
水ビジネスの
国際展開に当たりまして、言わば横断的に必要となってくる
政策対応の方向について、ごく簡単に二点だけ触れさせていただきたいと思います。
第一は、
政策金融
支援の更なる充実、活用促進ということでございます。
日本の
政府機関によるファイナンスの機能というのは、
国際的に見て非常に有効なツールとなっています。最近も、そこの
参考にございますように、逐次、機能の拡充が進められてきているわけでございますが、今後とも、
国際ルールの中でニーズに即した機能
強化を図り、
日本の
水ビジネスを後押ししていくことが必要かと考えております。
第二点は、
政府、自治体、
企業が一体となった
市場開拓でございます。これまでも逐次申し述べてきましたように、
水ビジネスの
国際展開に当たっては、
政府全体、そして
国内で
水事業の豊富な
運営管理経験をお持ちの地方自治体、ここが
企業と一体となって
事業を推進していくことが何よりも重要かと考えております。
特に、近年、
政府の関与の仕方としては、そこの
参考にございますけれども、単に個々の
プロジェクトに対するトップ
セールスや金融
支援だけではなくて、
相手国の言わば面的な開発、ミャンマー、
インドネシア、
インドなどに見られます面的な開発から関与していくこと、これが強く求められているという
状況にあると思います。
いずれにしましても、経産省としては、
関係各省、水
関係機器等の製造メーカー等の
企業、そして地方自治体の皆様と
連携しながら、引き続き
水ビジネスの
国際展開を強く後押しできればと思っております。
ありがとうございました。