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参考人(
藤田孝典君)
NPO法人ほっと
プラスで
代表理事をしております
藤田と申します。
今回は、貴重な
意見陳述の
機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私の方からは、今回出されております
法案について懸念される箇所が主には二点、大きく分けて二点ありますので、その点について私の
意見を述べさせていただこうと思っております。
まず一点目ですけれ
ども、一点目は、この
法案によって
生活保護が真に必要とされている方のところに行き届くのかどうかというところで懸念があります。
これは、まずは
書類の
提出、
生活保護の
申請時に
書類の
提出を求めるということで、特別な事情がない限りは
書類を求めていくということが記載されております。
私
どものところには、
年間約三百名の
生活困窮状態にある方が
相談に来られています。多くの方が
書類の
添付等をできないような
状態で、もう逃げ込んでこられる
相談が相次いでおります。これは、DVの
被害者、夫からの
暴力の逃げてこられる
被害者の方もそうですし、
ホームレス状態にある方の
相談もそうです。あるいは、
派遣切りと言われるような、いまだにリーマン・ショック以降も続いていますけれ
ども、そういった
企業からリストラされてしまって
相談が寄せられる、家賃滞納して
相談が寄せられるというような
事態が相次いでおります。そういった方は、
生活保護の
申請窓口に行ってもそういった
書類を用意できないということがもう一般的にあります。なので、私
たちは、そういった方と
一緒に
福祉事務所に同行しながら、
生活保護の
申請に付き添うということをやっております。
こういったいわゆる
水際作戦と言われますけれ
ども、
福祉事務所の
現場で今何が行われているのかといいますと、必要な人が真に
生活保護を受けられないという
事態がもう多発、横行している
現状があります。なぜ私
たちの
支援団体や
全国の
弁護士、
司法書士等が
福祉事務所の
窓口に
申請者と
一緒に同行しなければならない
事態が起こっているのかということは、これは、現に
生活保護の
申請権が侵害されている事案が多数あるからだということを認識しております。
なので、先日も私は、四十代の
母子家庭の
お母さんと
生活保護の
申請窓口に付き添うということをしてきました。四十代の
お母さんと八歳の女の子ですね。夫からの
暴力を受けて、
お母さんは
子育てしていますので、
パート収入だけでは
十分生活が営めないという方でした。なので、
パート収入七万円では暮らせませんので、
埼玉県内ですけれ
ども、
保護申請に付き添わせていただいて、足りない分の
生活保護費を支給してもらおうということで付き添いました。
この
お母さんは一度、
生活保護の
申請窓口に
相談に行かれています。そのときに何を言われたかといいますと、前の夫を頼ってください、あるいは頑張って
仕事をもう少し
収入があるものを見付けてくださいということを言われます。
子育てをしていてどうしてこれ以上の
収入が得られるでしょうか。なので、私は、それについては、今、努力はもう十分この
お母さんはしていますので、足りない分は
生活保護で何とか認めてもらいたいということで
保護申請をして、今は
生活保護の、足りない
部分を受け取りながら暮らしをしています。
現に、今も私
たちの元あるいは仲間の
弁護士の元には日々そういった、
生活に困窮していてもうどうにもならないという
方たちが
福祉事務所の
窓口に行っているんだけれ
ども、声を聞いてもらえない、
申請が受け付けてもらえないということが相次いでおります。今回の
法案が更にそういった
水際作戦、本当に必要な
人たちが
保護を受けられないというような
状況にならないかどうかをもう一度、再
審議をしていただけたら有り難いと思っております。実は、こういった
事例はもう山のようにあるということが
実態、私
たちの
現場の感覚ですので、これについては引き続き御
審議をいただきたいと思っております。
もう二点目ですけれ
ども、これは多様な
自立支援、多様な
生活支援を認めるような
内容になっているのかということをもう一度、再度
審議をいただけたら有り難いと思っております。
これは何かといいますと、まずは就労ありき、まずは
仕事を見付けて
生活保護から抜けていってください、特に
稼働年齢層と言われる二十代から六十代前半の
方たちについてはまずは頑張って働いてください、特に
生活保護申請した後三か月から六か月の間で、まあ強力な
就労指導というんですかね、そういったもので
早期に働いてくださいということを言われております。
私
たちの元には
稼働年齢層の
方たちが
生活保護を求めて
相談に来られるということが相次いでおります。
稼働年齢層の
方たちが
生活保護の
窓口になぜ行き着かなければならないのかということをもう一度考えていただけたら有り難いと思います。一般的には何かの理由がなければ
生活保護の
窓口にはそういった
稼働年齢層の
人たちは行き着かないんですね。どういった
方たちが私
たちの元に
相談に来られているかといいますと、
うつ病があって働けない、あるいは
障害、最近だと
企業も非常に厳しい
状況がありますので、頑張って働いてくれということで劣悪な
雇用環境の中で就労せざるを得ないというような
相談者も相次いでおります。なので、
うつ病や
障害、
病気を患ってしまって
生活保護の
窓口を頼らざるを得ない、もう働けない
状態になってしまうということが相次いでおります。
なので、
子育てをしているという方、あるいは低
収入でどうにもならないという方、頑張って働いても
収入が満たないという方、あるいは
障害、
病気を発症してしまって若いんだけれ
どももう働けない
状況になっているという方、そういった
方たちが、
生活保護しか現
段階では給付される
セーフティーネットが十分整備されておりませんので、こういった
方たちが
生活保護を頼らざるを得ないという
実態があります。なので、これは、
生活保護を頼らざるを得ないのは本人の責任ではなくて、私
たち社会が
セーフティーネットを整備できてきたのかということをやっぱり問われているんだと私は認識しております。
なので、これは、まずは就労ではなくて、
社会保障審議会、これは厚労省の諮問
機関でありますけれ
ども、私もその
委員として参加しましたが、そこでの議論は、まずは就労ではなく多様な
自立を支えるような
支援をしていきましょう。その中には、伴走型
支援とか寄り添い型
支援、寄り添ってその人に何が必要なのか、まずは就労ではなくて、
病気を治すということが必要な場合には
病気を治すための
支援をしていきましょうというような、そういった多様な
自立支援が模索されておりました。
今回、
法案として出されているものは、そういった多様な
自立、多様な
支援を
現場ができるものになっているのかということを再度確認いただけたら有り難いと思っております。
天野参考人もおっしゃいましたけれ
ども、ニーズは非常に
現場で複雑化、多様化しております。なので、そういった複雑多様化する
人たちに対して一くくりにまずは就労というものでそれがうまくいくのかということは、これは
現場の私
たちの感覚としてはなかなか難しいだろうということが正直な実感としてございます。
私
たちの元には、
生活保護を
申請した後、そういった、まずは就労、頑張って働いてくださいという
就労指導が行われるという方からの
相談も相次いでおります。これは私の失敗した
経験なんですけれ
ども、三年前、三十代の男性を
生活保護の
申請に付き添って、
うつ病がある男性なんですが、身寄りがなくて頼れない、誰も頼れなくて、もう一度就職する先が見付かるまでは
生活保護を何とか受けていこう、再就職を探していこうということを考えていた方なんですが、その男性は
うつ病があってなかなか働けないんですね。そういう
状況をケースワーカーが十分把握することはなく、三十代という年齢だけを見て、頑張って働いてください、ハローワークに何度も行ってくださいというような過度な
就労指導が行われてしまいました。その男性は、もう
うつ病があってつらいんだけれ
ども、ハローワークに一生懸命頑張ったんでしょうね、その後、その男性はそれを苦にして自殺をされてしまうということがありましたけれ
ども、その後、おうちを拝見した限りだと、求人票がもう山のように出てきましたし、遺書としては、もうこれ以上
病気で働けないし
仕事が見付からない、つらいんだという一言を残して自殺されるという事件がありました。これは私の大きな失敗
経験として今も心に強く残っております。
そういった、年齢だとか、本人の事情を酌まないで、まずは就労ありきというような
自立支援が行われていくとどうなるのかということは、これはもう
全国で多発しておりますけれ
ども、私が抱えたその三十代の男性と同じような事件が起こっていかないのかということを非常に危惧しております。これは
厚生労働省からも出されていますが、
一般世帯の方と比べて
生活保護受給世帯の方の自殺率は二・二倍高いということも挙げられております。なので、
生活保護受給者に対して自殺のリスクが非常に高い存在としてとらえながら、そういった
方たちに対しては丁寧な
生活支援を行っていくということが大事なんだということで、もう一度議論いただけたらと思っております。
これは
最後になりますが、この
法案によって
国民の生命と
生活がもう左右されるんだというような
法案であるということを、重要な
法案だということで、もう一度しっかり議論いただけたら有り難いと思っております。これは、この
法案によって
生活保護が本当に必要な人が行き着かない場合には、
全国で餓死、孤立死が今も相次いでいますが、これが更に進行するのではないかということを
現場では危惧しております。さらには、それが行き着かないとどうなるのかというと、自殺されるという方も
全国では相次いでおりますし、本人も
生活保護を受けていても自殺をされてしまうという方もいらっしゃいます。
あとは、本当に必要な方が
生活保護に行き着かないとどうなるのかというと、その人が、例えば最近は増えていますけれ
ども、窃盗だとかお金を盗んで
生活をせざるを得ないという
方たちも何件かは増えてきております。なので、犯罪という形までその
生活保護受給者あるいは
生活困窮者が追い込まれている、犯罪という結果として出てきてしまっているということもありますので、そういった様々な
社会問題を生み出さないためにも、この
法案は要としての役割がありますので、何とか再度再考いただけたらと思っております。
最終的には、
全国の
支援団体、
弁護士、当事者……