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2013-06-12 第183回国会 参議院 憲法審査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十五年六月十二日(水曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員の異動  六月五日     辞任         補欠選任      江崎  孝君     榛葉賀津也君      蓮   舫君     大島九州男君  六月十二日     辞任         補欠選任      大島九州男君     田城  郁君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         小坂 憲次君     幹 事                 小西 洋之君                 藤本 祐司君                 松井 孝治君                 中川 雅治君                 西田 昌司君                 野上浩太郎君                 藤川 政人君                 西田 実仁君                 江口 克彦君     委 員                 足立 信也君                 北澤 俊美君                 櫻井  充君                 田城  郁君                 谷  博之君                 玉置 一弥君                 直嶋 正行君                 前川 清成君                 増子 輝彦君                 水岡 俊一君                 磯崎 仁彦君                 宇都 隆史君                 片山さつき君                 熊谷  大君                 中曽根弘文君                 中原 八一君                 山谷えり子君                 魚住裕一郎君                 谷合 正明君                 松田 公太君                 佐藤 公治君                はた ともこ君                 井上 哲士君                 亀井亜紀子君                 福島みずほ君                 水戸 将史君                 舛添 要一君    事務局側        憲法審査会事務        局長       情野 秀樹君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基  本法制に関する調査  (新しい人権)     ─────────────
  2. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) ただいまから憲法審査会を開会いたします。  日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題とし、「新しい人権」について自由討議を行います。  まず、「新しい人権」について、各会派一巡による意見表明といたします。  時間が限られておりますので、委員の一回の発言は五分以内で願います。発言時間の経過につきましては、終了時間になりましたらベルを鳴らしてお知らせいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、順次御発言願います。藤本祐司君。
  3. 藤本祐司

    藤本祐司君 ありがとうございます。  まず、議論前提を述べたいと思いますが、憲法公権力の行使の在り方を規制することを目的としているという認識で進めていきたいと思います。  つまり、憲法とは、主権者である国民国家機構等公権力を委ねるとともに、その限界を設け、これを自らの監視下に置きコントロールするための基本ルールであるということの位置付けであると思います。つまり、憲法上の人権は、国家国民関係に適用されるものであって、私人相互間を直接的に規律することは憲法役割ではありません。  また、全ての国民個人として尊重されると憲法十三条にも規定されております。さらに、人権の実現と保障国際社会共通利益認識されています。全ての人間が生まれながらにして固有の奪うことのできない権利を持つという考え方に立っていると思います。それゆえ人権、新しい人権考える際は、日本特有権利としてとらえるのではなくて、国際社会共通概念としてとらえることが必要だと思っています。  なお、国民権利及び義務を定めた憲法第三章は、保障すべき人権全てを網羅しているわけではありません。それゆえ社会環境変化し、社会構造個人価値観多様化、複雑化するに従って、憲法制定時には想定していなかった新たな権利利益憲法保障されるべき権利へと進んで、成長することは認識しておかなければなりません。その変化過程で、現代社会要請に対応して新しい人権をどのように取り扱っていくかという課題が生まれてきているのだと思います。こうした社会変動に対応するためにも、人間の尊厳の維持にとって不可欠な権利確立が求められています。  こうした議論前提を踏まえ、新しい人権憲法に組み込むかどうかを検討する際は、保護すべき新たな利益個人人格的生存に不可欠として一般社会に承認されたものなのか、価値観多様化の中で他の人権と調和できるのか、憲法に書き込むことで我々の生活価値観にどのような影響を及ぼすかなどを考慮して検討することが必要だと思います。  確かに、いわゆる人権カタログでしょうか、人権カタログを充実させることによって人権創造機能としての最高裁判所の審理がしやすくなると思います。また、憲法規定することによってシンボリックな意味合いも大きくなってくると思います。  一方で、人権カタログを容易に膨らませることは人権インフレ化を招きかねません。インフレ化が過ぎると、権利権利のぶつかり合いが生じる可能性も大きくなります。また、憲法は多数の人権だけではなくて少数の人権保障することにその意義を持っていると思います。さらに、憲法が示した理想が過ぎて現実性が乏しくなると、憲法信頼性も揺るぎかねません。このような点に十分配慮して新しい人権考えていく必要があると思います。  さて、新しい人権代表例でありました環境権プライバシー権、知る権利について少し見解を述べたいと思います。  これらの権利憲法に書き込んだ場合、日本の姿勢を示すという意味では大変意義のあることであるとは思います。ただ、環境権権利としての権利性確立は、まず、環境基本法を始め個別の環境保護立法整備で対応できるかどうか、ここの点をしっかり検討することが必要だろうと思います。プライバシー権は、幸福追求権やその背後にある個人尊重理念によって基礎付けられると思います。知る権利は、広義的には表現の自由を支える基礎的権利であると解釈でき、いわゆる情報受領権、あるいは情報収集権に含まれると考えられます。この知る権利は、マスメディア表現の自由と衝突するものでもあり、行政情報の公開を求める権利となれば、国や地方自治体の秘密の保持の要請と調整する必要が生じてくると思います。  結論を申し上げますと、この環境権プライバシー権、知る権利につきましては、憲法で事細かく規定することはできませんし、それを権利性を持たせていくというためには、まずは法律整備することが優先順位として高いのではないかなというふうに思います。少なくとも、憲法改正をする理由として、このような新しい人権が優先するということではないのかなというふうに思っております。  そういう意味で、この新しい人権については、権利性確立をまず考えた上で慎重に検討していく必要があるのかなというふうに思っております。  以上です。
  4. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、中川雅治君。
  5. 中川雅治

    中川雅治君 自由民主党中川雅治でございます。  新しい人権につきまして、自由民主党としての意見を申し述べます。  この問題につきましては、平成十七年四月に取りまとめられた憲法調査会調査報告書で、全党が原則として憲法保障を及ぼすべきであるという認識で一致しております。また、そのときの議論では、憲法上の規定を設けるべきであるとする意見が趨勢となっておりました。  今回の憲法審査会における調査におきましても、憲法上の規定を設けるかどうか、新しい人権規定する場合においても、国民権利として規定すべきか、国の責務として規定すべきか、また、人権制限根拠である公共福祉概念についてなど、様々な論点について参考人から御意見を聞き、質疑を行いましたが、参考人や各委員意見は分かれていたと認識いたしております。  自民党におきましては、昨年四月に憲法改正草案を発表いたしました。この草案は、前文に基本的人権尊重することを規定するなど、基本的人権普遍性重要性に立脚したものとなっております。また、草案においては、人権規定について、我が国歴史文化、伝統を踏まえたものであることが重要だと考え現行憲法の「基本的人権は、侵すことのできない永久権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」という規定を、基本的人権は、侵すことのできない永久権利であると改めることとしております。  さらに、現行憲法公共福祉概念は、その意味が曖昧で分かりにくいものなので、草案では、公共福祉を、公益及び公の秩序に変えることとしております。そうすることで、憲法によって保障される基本的人権制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことが明確となります。  審査会における議論の中で、公の秩序に変えることによって人権が大きく制約されることになるのではないかとの指摘がなされておりますが、あくまで概念明確化するものでありまして、そうした疑念は生じないと考えております。  草案においては、基本的人権尊重する考えに基づいて、時代変化に的確に対応し、国民権利保障を充実していくため、新しい人権憲法規定することとしております。具体的には、いわゆるプライバシー権保障に資するための個人情報不当取得禁止等、知る権利に資するための国政上の行為に関する国民への説明責務環境保全責務犯罪被害者等への配慮知的財産権がそれでございます。  なお、国政上の行為に関する国民への説明責務、それから環境保全責務、それから犯罪被害者等への配慮につきましては、個人法律上の権利として主張するところまでは内容が熟していないと考え国側責務として規定することとしております。  特に、環境権につきましては、環境保全するのは国民権利として環境権規定するだけで達成できるものではなく、国家国民対立関係に立つわけではありません。国家国民が共に協力し環境保全を実現していくべきものという考えに立ちまして、環境保全について国民に協力を求める規定も定めております。  ここで一点申し上げておきますが、新しい人権憲法規定しなくても法律保障すればよいという意見に対して、我々は、憲法規定を設けることで、法律改正だけでは国民権利を廃止することができなくなり国民権利保障はより強固となる、国民権利が確実なものになると考えて、憲法規定すべきとしております。  以上のような新たに規定を設けるべきとした新しい人権以外にも、草案においては、国民権利義務に関して、国等による宗教的活動禁止規定明確化公益及び公の秩序を害することを目的とした活動等の規制、在外国民保護についての規定も設けております。  現行憲法が施行されて六十六年がたち、その間一度も憲法改正がなされずに来ました。この間の時代変化を踏まえて国民権利保障を充実させていくためにも、新しい人権憲法規定を設けるべきであるということを申し上げまして、私の意見表明とさせていただきます。
  6. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、西田実仁君。
  7. 西田実仁

    西田実仁君 公明党西田実仁でございます。  新しい人権につきまして、意見表明をさせていただきます。  憲法の骨格を成す基本的人権尊重国民主権、恒久平和の三原則は、人類の英知ともいうべき優れた普遍の原理であり、人権民主、平和の憲法精神国民生活日本社会の隅々まで定着させ開花させる闘いに全力を尽くすというのが公明党の基本的な立場でございます。  憲法改正につきましては、現憲法は優れた憲法であり、人権民主、平和の憲法原則を堅持しつつ、環境権など、時代の進展に伴い提起されている新たな理念を加えて補強する加憲が最も現実的で妥当であるとの考えでございます。  民主主義国家憲法は、国家のためにあるのではなく、国民幸福追求、第十三条のためにございます。また、人権保障拡大国民主権徹底民主主義国家歴史流れであり、したがって、憲法改正の視点は、国民幸福追求のための人権保障拡大国民主権徹底でなければならないと考えます。加憲が最も現実的で妥当であるのはそのためであります。  公明党は、加憲で検討すべき新しい人権について、より積極的に明示すべきという立場でございます。憲法に明記することによって事前の人権保障を可能とし、時代変化に対応した積極的な立法措置を可能にすることが望ましいと考えます。  昨年の常会で本審査会は、「東日本大震災憲法」をテーマに、大震災人権保障統治機構国家緊急権について議論を行いましたが、参議院らしい試みとして評価もございました。そのときの小坂会長の冒頭の発言は、私たちは、この未曽有の大災害で被災された方々のことを片時も忘れることなく、憲法について率直かつ建設的な議論を行っていきたいということでございました。今後も、この言葉の意味を確かめながら審査会を進めていく必要があると考えております。  そこで、加憲すべき新しい人権としてまず挙げられるのが環境権であります。  原発事故による放射能汚染の現状に鑑みれば、生存権との関係環境権考えるべきではないかと考えます。原発は国の重要施策であり、その事故による放射能汚染のために町や村が消滅の危機に瀕している。まさに国民生存権が問われているという状況であります。  憲法の二十五条、全ての国民は、健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有するとされますが、そこに健康が維持できる良好な環境の下で生活する権利と、それを保全する責任を加えてはどうかという考え方であります。新しい人権の一つである環境権及びその裏側としての環境保全責任を追加しようという考え方であります。  ここでいう健康が維持できる良好な環境とは、権利の主体である個人生活環境意味しますけれども、その保全責任は、現代世代の将来世代に対する責任までも含むものと考えます。  さらに、人間生活環境のみならず、自然との共生も含んだ生態系全体にわたる環境保全する責務も国に対して課す加憲も検討されるべきであると考えます。否、むしろ、環境権対象自然環境に限定をし、その保全回復目的とすることで憲法上の権利の格上げができるとの学説も有力でございます。  東京電力福島第一原子力発電所事故以後の日本では、国が、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活を確保するため、放射能汚染の除去、公害の防止、自然環境保護及び整備、その他の環境保全に努めなければならない責務があると言わざるを得ない状況にあります。もちろん、環境権は生成中の権利ではございますけれども、一方で、環境が破壊されていく現実と向き合うとき、構成され続ける権利として加憲対象となり得ると考えます。  その他、新しい人権として加えていくべき人権にはプライバシー権名誉権、さらには知る権利生命倫理犯罪被害者権利や生涯学習権、裁判を受ける権利などの議論が党内においてなされていることを付しておきます。  以上でございます。
  8. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、松田公太君。
  9. 松田公太

    松田公太君 みんなの党の松田公太です。  新しい人権に関して、みんなの党の意見を申し述べます。  まず、みんなの党は、統治機構改憲を掲げております。すなわち、主権者である国民の意思を反映し、時代要請に即した憲法を保持していくべく、一院制、首相公選制地域主権型道州制、政党規定の新設、重大事案についての国民による直接投票制度の創設、改正手続簡略化などを主張しております。  さらに、近時、九十六条の先行改憲論が各所で議論されておりますが、みんなの党は、九十六条の改正自体を否定するものではないものの、その前にやるべきことがあると考えております。  この立場は、新しい人権との関係でも極めて重要な意味を持ちます。と申しますのも、既に判例上、実質的に憲法上の権利として認められているプライバシー権や、自由権としての知る権利を例に挙げるまでもなく、憲法上の人権も無制限に保障されるものではなく、公共福祉による制約が課せられます。もちろん、法律上の権利憲法上の権利は次元を異にするものではありますが、仮に新しい人権憲法規定されたとしても、この事実は変わりません。  では、誰が制約を課すのかというと、立法権を持つ国会であり、行政権、更に言うと広範な裁量権を持つ官僚機構なのであります。  しかし、さきの衆議院選挙は、高裁レベルとはいえ違憲判決が続出している状態であり、政府が提出している〇増五減区割り法案でも一票の格差が実質的には二倍以上となる選挙区が多数生じることが明らかです。ちなみに、みんなの党は、応急措置的には〇増五減より有効な十八増二十三減を提案させていただいております。さらに、現在の官僚主導政治においては、憲法上の権利さえ恣意的な解釈により制限され得る状態にあるのです。  このように、憲法改正以前の問題が我が国には横たわっております。国家という車のモデルチェンジをする前に、新しい車が実際に走ることができるように中枢の機能を開発しておかなければなりません。規範や建前は、実態や本音のルール確立していないと空回りしてしまうものでございます。まずは現行憲法規範徹底する、そこが議論のスタートであろうかと思います。  このような観点からも、みんなの党が昨年の四月に発表いたしました憲法改正基本的考え方において、新しい人権については言及しておりませんでした。しかし、日本国憲法施行から六十六年、時代流れとともに、現実とのそごや不都合が生じ、新しい人権概念が求められる可能性は否定しません。  特に、環境権については、公害が顕在化したのは高度経済成長期以降で、憲法制定時には想定されていなかったものです。公害で苦しむ人たちにとって、立法措置を待たなければ救済の道がなかなか開かれてこなかったのは事実であり、東京電力福島第一原子力発電所事故以降、環境権条文化を望む声が一段と高まるもので、自然な流れであると言えます。  一方で、近時の憲法改正論は、国民権利を制限し、さらには義務規定を増やす方向での論調も多々見られます。しかし、憲法は、国家権力を統制し、国民人権を守るものであります。新しい人権議論する際にもこの前提を決して忘れてはなりません。  以上のように、新しい人権についても論点が多々あり、立法措置で十分なのか、憲法に明記すべきものなのかは今後更に議論を深めていかなくてはなりません。  以上をもって、みんなの党の意見表明とさせていただきます。
  10. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、はたともこ君。
  11. はたともこ

    ○はたともこ君 生活の党のはたともこでございます。  新しい人権についての我が党の見解を表明いたします。  我が党では、いわゆる新しい人権については、憲法上しっかりと明記すべきであるという考え方に立っている。  まず第一に、戦後、我が国政治的、経済的に発展を遂げてきた中で、当初の憲法制定過程で想定されていなかった諸権利が発生してきたことは明らかであり、その権利重大性を鑑みれば、今日、憲法上明記することは不可欠な情勢と言える。十三条の幸福追求権で全て読め、明文化は不要であるという立場については、そのように考えるとなると、人権各論規定は不要であるということになってしまい、幾ら憲法が性質上抽象度の高い法規範であるといっても、逆に法解釈をめぐって混乱をもたらすこととなる。したがって、新しい権利も含めて、最低限必要な諸権利については憲法上当然明記することが必要であると確信するものである。  次に、それでは、どういった新しい人権を明記することが必要なのかについて申し上げたい。  まず、我が党が新たに明記すべきと考え権利プライバシー権である。  現代マスメディア情報のはんらんやインターネット文化の浸透、それらの現代社会的影響を考慮した場合、国民個々人にとってもはやプライバシーを守ることは極めて難しいものとなっている。その一方で、実際にプライバシーを侵害された場合の人々の精神面や実生活に与える影響には誠に大きなものがあると言わざるを得ない。例えば、一たび個人プライバシーにかかわる情報インターネット上に載れば、あっという間に拡散し、個人権利という観点から甚大なる被害をもたらすこともある。したがって、みだりに個人にかかわる情報を公開されないというプライバシー権については、その重大性に鑑みても、是非これを憲法上の権利として守っていくべく、現行の十三条の解釈としてではなく明記されることが必要不可欠である。  また、知る権利についても明記される必要があると考えている。  いわゆる知る権利については、国民主権国家を維持発展させていく上で絶対に必要な権利であると考える。特に現代行政国家においては、政治行政部門が管理し、国民権利義務影響を与える際の基礎となっている情報が膨大かつ複雑に存在している。国民政治参加行政参加に対して本権利の果たす役割重大性に鑑みれば、これは法律事項ではなく憲法に明記することが相当な権利と言うことができる。また、知る権利は二十一条から解釈可能という見解については、あくまで表現の自由の反射的効果としてのものであり、明確な権利として規定されているとは言い難い状況にある。  第三に、環境権に関連して、国による環境保全責務についても明記すべきである。  環境については、特に戦後、高度成長社会の中で多くの国民大気汚染水質汚染を始めとする公害に苦しめられてきたことを考えれば、それを保全することは国民生活を守るという意味で不可欠の国の責務である。良い環境を享受するということは、健康で文化的な生活を送る上での最低限の基盤である。環境権をめぐって今日訴訟上の問題が発生した場合、一体環境権というものがどこまで及ぶのか明確ではないため混乱を招くことが間々ある。もはや曖昧な解釈では権利保障が十分になされているとは言い難く、今や環境について憲法に明確に位置付けることは喫緊の課題であると言える。諸外国の例を見ても、多くの国々で環境権環境保全責務憲法規定されるようになっている。環境権という権利の形で憲法に明記することも考えられるが、国による施策を実効的なものにするためには、国による環境保全責務憲法に明記する方が現実的ではないかと考える。  最後に、犯罪被害者等への配慮について忘れるわけにはいかない。我が国憲法は、三十一条以下、加害者人権については多くの条文が存在しているが、一方で、被害者人権について明記されていないのであり、この点、大いにバランスを欠くと言わざるを得ない。本来、犯罪被害者やその家族の人権こそ守られる必要があり、犯罪被害者等への配慮について早急に憲法に明記されることが望ましい。  以上、簡単であるが、我が生活の党の新しい人権についての見解として申し上げるものである。  終わります。
  12. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、井上哲士君。
  13. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党井上哲士です。  日本国憲法は、十一条で基本的人権は侵すことのできない永久権利だと定めた上で、十三条で包括的な幸福追求権保障しており、その上で個別の詳細な人権カタログを定めるという懐の深い構造になっております。  環境プライバシーを本気で擁護するならば、憲法の根拠に基づいて立法で具体化することが必要かつ可能であります。現に、これらは、言葉としては現憲法条文には明記されていないものの、憲法民主的な解釈から当然導き出されるものとして裁判の規範ともなり、行政ののっとるべき重要な原則として定着をしております。  新しい人権を追加するためだけに改憲する必要は乏しく、立法で解決できるというのが参考人共通した意見だったと思います。  小山参考人は、憲法を改正するのであれば、新しい人権は当然その有力候補になるとしつつ、新しい人権のためだけに憲法の改正をする必要はない、立法府がその責務を十分に果たせば、逆説的に新しい人権条項は要らないかもしれないと述べられました。  高橋参考人は、環境権が大事だというならば法律によって実現するということがまず最初にやるべきことであり、現になされてきたとした上で、ぎりぎりまで環境配慮した法律を作って、これ以上は駄目だ、でも国民はこれ以上の環境整備を求めているんだということになったときに初めて憲法で書こうということになるが、現在の立法体制はそこまでは行っていないと述べられました。  土井参考人は、まず立法で広く合意を形成しながら、これならいけるんだという話になった段階でちゃんと憲法に書いて守っていくべきだと述べられました。  一方、三十年にわたって自民党の改憲論議に付き合ってきたと述べられた小林節参考人からも、改憲論議をファッショナブルにさせるため、改憲論議の突破口としての新しい人権考えておりました、新しい人権は必ずしも改憲によらなくて済むという発言があったことも重要だと考えます。  去年の憲法記念日のときに、朝日新聞がアメリカの法学者が行った百八十八か国の分析というのを報道して大変話題になりました。世界の憲法にうたわれている権利の上位十九までを日本国憲法が全て網羅している、大変先駆的なものだというのがこの研究者の結論でありました。  日本憲法は、世界でも最も先進的な人権条項を持っております。問題なのは、幸福追求権を定めた上で、こうした先進的な人権条項のある憲法であるにもかかわらず、現実はそうなっていないことにあります。現実に合わせて憲法を変えるのではなくて、憲法のこの先進的条項に合わせて現実を変える努力こそ国会に求められていると思います。  被災地の実情については先ほどもありました。今なお多くの方々が厳しい避難生活を強いられ、原発事故の被災者は、現在と未来への展望も持てずに、自分たちは見捨てられた、憲法が適用されていないと、こういう発言参考人からもありました。今こそ憲法原則に立った被災者の生活やなりわいの再建に政治、国会が全力を尽くすことが求められていると思います。  また、社会保障の問題でいいますと、憲法二十五条を根拠とする生活保護制度の改悪が行われようとしております。国が生活に困窮をする全ての国民に対して必要な保護を行って、その最低限度生活保障することを生活保護制度は目的としております。最低限度生活とは、国民が単に辛うじて生物としての生存を維持できるという程度のものではなくて、人間に値する生存を意味するものであります。ところが、現実は、自助や共助の名の下に、生活保護を必要としている人が窓口で排除されたり削減をされている、それに更に拍車が掛けられようとしております。  憲法生存権をしっかり守り生かすことこそ、私は、今、国会と政治に求められることであって、社会保障の拡充こそ憲法要請であるということを強調しまして、意見表明といたします。
  14. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、亀井亜紀子君。
  15. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 みどりの風の亀井亜紀子でございます。  みどりの風の考え方を御説明したいと思います。  我が国憲法論は、現行憲法が一度も改正されていないので変えるべきであるという論と、一度も変えたことはないのは、現行憲法憲法を変えてはいけないから、変えてはいけないという、その極端な二つの主張の間で論争を続けていると感じております。  私たちは、憲法改正自体には反対ではありません。憲法は改正可能であるべきだと考えています。けれども、立憲主義の観点から、つまり、憲法とは他の法律と違って国民国家権力を縛るものであるという考え方に立つこと、手続が大事だと考えております。  その観点で新しい人権考えたときに、二点、つまり、国民から新しい人権を明記すべきであるというそのような強い要求があるかということ、二点目は、新しい人権を明記しなければ目的が達成できないのか、この二点に絞られると思います。  そのような観点参考人の方々の意見をお聞きしましたけれども、皆さん、憲法改正をしなければ目的が達成できないというようなことはどなたもおっしゃらなかったと記憶をしております。慶應大学の小林参考人は、新しい人権というのは改憲論議の突破口であった、しかし必ずしも改憲によらなくてもよいとおっしゃいました。また、慶應大学の小山教授も、新しい人権のためだけに憲法改正をする必要はないとおっしゃいました。ほかの参考人も、新しい人権を明記したからといってそれだけで保護されるわけではない、ほかに法律が必要であるということもおっしゃいました。  こうしたことを総合して考えますと、新しい人権を明記するためだけに憲法改正をする必要はないのではないかと思います。現行憲法の十三条の幸福追求権でかなり読み込まれていると考えておりまして、具体的に人権を個々に書き込むことは人権インフレ化が起こると懸念をいたしております。  憲法は、国民が幸福な生活を追求するために国家というサービス機関を統制する道具にすぎないと小林参考人がおっしゃっておりました。幸福追求権のところでかなりの人権を読み込むことができると思っています。むしろ、みどりの風は、二院制の定義を明記すること、各院の役割分担、また代表の選び方、これは選挙制度に直結する問題でして、ここをきちんと整理することが急がれると思います。その点で、これは憲法改正をしないとできないと考えております。  以上です。
  16. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、福島みずほ君。
  17. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  参考人の皆さんから基本的人権について、新しい人権について深い話をしていただきました。  社民党は、新しい人権について憲法上の規定を設ける必要はないという考え方です。新しい人権は、憲法人権規定を踏まえて、国民の運動により発展的に生み出された権利です。様々な新しい権利保障していくことは非常に重要なことです。  そして、まず第一に、この新しい人権は、日本国憲法十三条、二十五条など、現憲法人権規定により根拠付けられます。日本国憲法は、時代に即応した新しい権利を抱き取るような柔構造、時代に弾力的に対応できる構造になっております。  高橋和之参考人は、幸福追求権とは、自律的生に必要不可欠な権利を抽象的なレベルで包括的にとらえた権利ということになり、この包括的な権利から具体化されて取り出されたのが個別的権利だという理解になりますと発言をされました。新しい人権のインフレ現象を起こし次々に憲法規定するのではなく、包括的に保障されているものの中に包含されていると考えることが妥当です。  第二に、新しい人権を最も有効的に保障するのは法律規定することです。  高橋和之参考人は、まず考えるべき対応方法、対処方法は、法律によりその権利保障することであります、権利侵害が私人あるいは行政により行われる危険が大きいような場合には、この対処方法が有効に働くでありましょうと発言をされています。  かつて情報公開法案が国会で審議されているときに、社民党は知る権利規定するべきだと論陣を張りましたが、残念ながら受け入れられませんでした。それぞれの法律において人権保障されるべく法律を変えていく、そういう法律を作るべく国会はもっと努力すべきだと考えます。  第三に、裁判を通じて新しい人権を創造していくことです。  高橋参考人は、憲法解釈として可能な範囲内なら、新しい人権を裁判所を通じて創造するということも憲法の禁止するものではないと解釈することもできますと述べています。実際、裁判や判決の積み重ねで様々な人権が承認されてきました。  第四に、新しい人権憲法規定することで、その人権を逆に狭める場合もあると考えます。  自民党日本憲法改正草案では、プライバシー権利ではなく、何人も、個人に関する情報を不当に取得、保有し、又は利用してはならないとし、個人情報不当取得の禁止を規定しています。これでは、ジャーナリスト、議員、市民が情報を取得しようとすることがこれに触れる場合が出てくる、そういう危険も生じてまいります。  また、環境権については権利ではなく、国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならないとしております。責務としているわけですが、このことによってどの程度環境権保障されるでしょうか。環境基本法や様々な環境に関する法律を更に環境を重視する方向で改正すべきことこそ、まず国会はやるべきです。政治が脱原発も決定しないで環境への責務ということも実は理解ができません。  第五に、新しい人権規定するにしても、基本的人権公益及び公の秩序によって制限できるという自民党日本憲法改正草案の下では、新しい人権公益及び公の秩序によっていかようにでも制限できる極めて脆弱なものでしかありません。  最後に、社民党は、基本的人権、新しい様々な人権保障するために日本国憲法を更に生かしていくことの必要性を申し上げ、意見表明といたします。
  18. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、水戸将史君。
  19. 水戸将史

    ○水戸将史君 日本維新の会は、自立する個人、自立する社会、自立する国家を目指すことを基本的に柱に据えており、この理念を実現する観点から、現行憲法国民権利及び義務規定について見直しを進めていきたいと考えます。  換言するならば、国民基本的人権は最大限尊重されるべきではありますが、その一方で、個人は他者との共生の上に成り立つ存在であります。したがって、これまで保障されてきた権利の行使に際しましては、権利に伴う義務、自由に伴う責任を自覚し、他者の権利と自由を尊重し、個人権利国家、社会の利益の調整を図らなければなりません。  そこで、個人権利行使は、人権制約の視点から、公共福祉という曖昧な概念ではなくて、国の安全、公の秩序国民の健康又は道徳その他公共利益などの、より具体的で明確な概念規定すべきと考えます。  また、グローバル社会の到来を踏まえて、基本的人権保障は、参政権など権利の性質上我が国民のみを対象としていると解されるものを除き、日本に在住、在留する外国人に対してもひとしく及ぶ旨を明記する必要性を感じております。  そして、個人尊重及び男女同権に加えて、自立する個人を支える基盤となる社会の自然かつ基礎的な単位である家族の価値と、それを保護すべき国の責任人権の通則的原理として規定する方向を検討してまいります。  環境権につきましては、良好な自然環境を享受することは国民権利であり、同時に、その保全国家及び国民義務であると解します。  既に判例上確立されているプライバシー権情報公開法上、立法政策により具体化されている知る権利、さらに、国益に反しない限りにおいて、公的な情報の開示と説明を行う国の責任憲法上しっかり明記すべきと考えます。その延長線上には、例えば密室の談合を排した行政プロセスの可視化と称して、政策決定の過程の見える化を実現する制度を整備することも進めてまいりたいと存じます。  他方、知る権利と一定以上の関係を保持することになる表現の自由につきましては、個人の名誉やプライバシー保護、青少年の保護育成のために一定の規制を受ける場合があることもこの場において付記させていただきます。  以上です。
  20. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 次に、舛添要一君。
  21. 舛添要一

    ○舛添要一君 新党改革の基本的な考え方を申し述べたいと思います。  基本的人権は、近代においてフランス革命、アメリカ独立革命などを通して、普遍権利として人類が国家権力に対して営々と積み重ねてきたものであります。その前提の下で、国民主権民主主義、自由主義、基本的人権尊重普遍の価値として継承すべきであります。  憲法とは、基本的には、国家権力個人基本的人権を侵害することを阻止するためのものであります。一方で、現代社会状況は科学技術の進歩などで大きく変わってまいります。したがって、新しい人権についても付け加えることが望ましくなってきます。  具体的には、例えば障害者に対する差別の禁止、個人情報保護、国の説明責任環境権犯罪被害者権利、さらには知的財産権などであります。これらを法律のみでなく憲法で定めることは、その権利の不可侵性を担保するものだと考えております。  以上であります。
  22. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 各会派を一巡いたしましたので、他に発言を希望される方は、お手元にあります氏名標を立ててお知らせください。そして、会長の指名を待って御発言を願います。  発言については、お手元に配付をいたしております発言に当たっての留意事項のとおり、「新しい人権」を中心といたしますが、今国会議論をいたしました「二院制」を含め、他のテーマに及んでも差し支えありません。  時間が限られておりますので、委員の一回の発言は五分以内で願います。発言時間の経過につきましては、終了時間になりましたらベルを鳴らしてお知らせいたします。発言が終わりましたら、氏名標を横にお戻しください。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、発言を希望される方は氏名標をお立てください。  足立信也君。
  23. 足立信也

    ○足立信也君 民主党の足立信也でございます。  この発言の留意事項の中に新しい人権のみならず二院制のことも書かれておりますので、今国会では二院制と新しい人権でしたので、この二点について意見を申し上げたいと思いますが、その前に、今、舛添委員からも発言がありましたように、立憲主義というのは人類の英知、到達した英知だろうと私は思いますし、ですから普遍的であると。今フランスの人権宣言あるいは合衆国の人権条項の追加の話がありましたけれども、さらに百年前のイギリスの権利章典というものもあります。  しかし、これが欧米の考え方だという考え方を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、日本でも戦国時代、武田信玄の甲州法度ですね、この最初のときに、二十六条があるわけですが、二十五条まで作っていて最後の一条を空けていたと。で、家来の方が信玄のところに持っていってそこに書いてもらったと、信玄もこれを守る。というのが立憲主義、日本でも戦国時代からそういう考えがあったということも是非理解していただきたいし、私は、自民党の方々が自主憲法制定ということで、党是として集まられているのはそれは結構な話だと思いますけれども、この審査会の中でその立憲主義に立脚した発言というのがほとんど聞かれないというのが非常に私は違和感を持っておりまして、もっと自由な考え方の方が集まっているんではないかと、そのように思いました。  まず、二院制のことについてですが、これは二〇〇五年に衆参共に報告書が出た時点では、二院制の在り方、今の形でもいいんではないかということであったわけですけど、私が考えるに、それ以降、真性ねじれということもあり、また、憲法ができたのが昭和二十一年で、参議院の第一回の選挙は二十二年ですね。そこで、ハウスと内閣の在り方、これは衆議院については不信任案、それに対して解散権あるいは総辞職とあるわけですが、内閣と参議院の関係というのは規定されていない。それは憲法が先にできたからだと私は思っています。ということは、現在の議員である我々が、この長年の経過を経てその参議院というハウスと内閣の関係は一度きちっと整理しなければいけないんじゃないかと、私自身はそのように考えております。  それから、新しい人権についてですけれども、先ほどの御発言の中で参考人の先生方の意見をおっしゃっていましたが、やはり小林節先生のところは、前川さんの質問に答えて、訂正しますと。これは上告権の関係でそのようにおっしゃったわけで、私は、その明記されているものとそうでないものが対等に最高裁で、憲法に合致するかどうかというのを議論するのは非常に曖昧になってくると思います。  そんな中で、環境権については、私は、その一国で、一国の範囲で収まる状況では今ないと思っておりますし、私、九州ですけれども、例えばPM二・五、それから今後莫大に増えるであろうアスベストの飛散等々を考えると、環境権というものの考え方は国際的に日本がどうとらえているかというのは必要なことだろうと思いますし、それがないと国際的な協議の場でもやはり主張というのは弱くなるのではないかと、そのような観点を私は持っております。  以上です。
  24. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 前川清成君。
  25. 前川清成

    ○前川清成君 前川清成でございます。  各党代表の先生方が本当に丁寧に御準備をされてそれぞれの御見解を述べられたことに敬意を申し上げますとともに、私、いつものように思い付きで御発言申し上げることもお許しをいただきたいと思うんですが。  自民党の憲法改正草案の中で、現在の人権相互間の調整原理である公共福祉公益あるいは公の秩序に書き換えていることを私は前々から大変憂慮をしておりました。それを、過日、予算委員会で安倍総理に、安倍総裁にお尋ねした際は、分かりやすく書き換えただけだと、こういうふうにおっしゃっていたんですが、今日、中川幹事のお話を聞くと、人権相互間の調整に限らないんだと、それ以上のものが含まれるんだというふうな御発言がありましたし、維新もほぼ同じような御発言でなかったのかと思います。そうであれば私は大反対でございます。  人間が生まれながらにして自由で平等なんだと、個人として、人間として生まれてきたからこそ尊いんだというこの個人主義の考え方、あるいは基本的人権尊重というのはまさしく人類普遍の原理であって、人権相互の調整にとどまらずに、更にお国のため、社会のため、お上のためというふうな名目で人権制約されてしまう、そのことに道を開いてはならないと私は思います。  社会の変化に伴って、単純な人権相互間で済まない、そういう問題もあると思います。それは、例えば憲法の二十二条と二十九条、人権カタログの例えば二十一条の表現の自由や、そのほかの個別の人権カタログには現行憲法でも公共福祉という文字は入れておりませんが、二十二条と二十九条だけ公共福祉が入っていると。それはなぜかと。二十五条以下の社会権、生存権を実現するためには、経済的な自由、営業の自由に対する広範な制約を認めなければならないだろうと。  そうであれば、人権相互間の調整原理である十三条の公共福祉にとどまらないという思想自体は現在の通説でもありますし、私もそのように思いますが、営業の自由であろうが、財産権であろうが、表現の自由であろうが、何であろうが、全部公益、公の秩序によって、言わばお上によって制約されてしまうというのは、私は人権歴史そのものをもう一度見直していただく必要があるのではないかと、そんなふうに考えます。  それと、生活の党がおっしゃられましたように、犯罪被害者権利を明記するという方向自体は、私は賛成であります。ただ、その際に、もう一度くどいようですが人権歴史というのを振り返ってみたいのは、やはり国家権力こそが最大の国民の自由や平等に対する脅威でした。人権にとって最大のリバイアサンは国家権力でした。だから、国家からの自由というのが現在の人権カタログの中心になっているわけで、国家による人権侵害が最も先鋭化する場面というのは刑事手続。世論も、悪いことをしたやつなんだから少々人権を侵害しても構わないんだという雰囲気になってしまうと。それは良くないんだということで、現行憲法は三十一条以下に詳細な刑事手続の規定を設けているわけで、その歴史的な背景あるいは人権侵害の状況ということも勘案すれば、私は、犯罪被害者権利というのも大切ではありますけれども、同じように刑事手続における人権保障、これも大事にしていかなければならないのではないかと、こんなふうに考えております。  以上です。
  26. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 他に御発言はございませんか。  松井孝治君。
  27. 松井孝治

    ○松井孝治君 会長、御指名ありがとうございました。  私はこの場を借りて、会長代理という立場もございまして、小坂会長の下でいろんなこの国会で議論ございましたし、今日もいろんな委員会が重複しておりますけれども、委員間が活発な意見交換をできて、二院制そして新しい人権について参考人の先生方の御見識を引き出して、そして議論をこの数回にわたってできたこと、心から感謝を申し上げます。  私の個人見解を一言付け加えさせていただきますと、この特に新しい人権議論の中で、私は、立憲主義について議論が深められたというのは、今も委員の方々がそれぞれ各会派の御意見あるいは個人的な見解を含めて様々な御議論がありましたが、それは非常に結構なことだったと思います。  私自身は土井参考人、京都大学の法学部の教授の土井参考人に御意見を尋ねまして、従来的に、先ほど舛添委員の方からも御紹介ございましたが、立憲主義というのは国家権力をある種縛る、国民が縛る、その考え方だと思いますし、先ほど来我が同僚の前川委員や足立委員の御指摘もそういうことだったと思いますが、同時に、今のこの現代社会においては、立憲君主あるいは中央政府のみが公共を担っている存在ではない。要するに、様々な、それは地方自治体もありますし、地域社会もあるし、あるいは場合によってはNPOであるとか、あるいは企業ですらその公共の一端を担っているという状況の中で、純粋に二十世紀的あるいは十九世紀的に国家権力のみを縛るという憲法で本当にいいのかという議論は引き続きあろうと思います。  その意味では、私は自由民主党公明党さんがおっしゃっているようなことにも理解ができるわけでありまして、それは、誰かを、公共を縛るという議論だけではなくて、国民全体が統治者としてどのような社会をつくるのか、どのような国家をつくるのかというところの規範を私は新たな憲法というのは志向すべきだと個人的には考えているところでありまして、そういう意味では、党派を超えてそれぞれの主張がありますし、それぞれもちろん論争は活発にあるわけでありますが、いろんな意味で党派を超えて共通認識も得られたというふうに私は理解しておりまして、この間の会長のリーダーシップにも心から敬意を表したいと思いますし、また、この議論が引き続き、この国会においてもう機会はなかなかないかもしれませんけれども、また次の国会にわたって議論が建設的につながっていけばというふうに私は考えておるところでございます。  いずれにしても、憲法、もちろん憲法の重み、あるいは立憲主義というものを、我々人類がいろんな血を流し、いろんな不幸な過去の歴史も踏まえてこういう近代憲法というのができてきている、その状況を深く受け止めながら、今後、しかし、我々は、私は、個人的には憲法を不磨の大典にすることなく今の現代社会の潮流の変化に即応してしっかりと議論を深めていくべきであるということを最後に申し上げまして、私の個人見解にさせていただきます。  ありがとうございました。
  28. 小坂憲次

    会長小坂憲次君) 他に御発言はございませんか。  幹事の御理解をいただきまして、一言会長として発言をさせていただきたいと存じます。  当憲法審査会は、一昨年の十月、憲法を発議する唯一の委員機能を発揮する審査会として発足をさせていただき、初代会長としてその任に当たらせていただきました。以来、二年が経過したわけでございますが、東日本大震災もあり、そしてまた決められない国会などといういろいろな御批判あるいは御意見もございまして、当憲法審査会におきましては、二院制の在り方、そして新しい人権について当面のテーマとして審議をさせていただきました。  今日振り返ってみますと、それぞれの御意見は、調査会のこれまでの審査を踏まえた御意見がその根底にあるとはいえ、それぞれ新たに生まれてまいりました会派独自の特色ある御意見も踏まえて、大変傾聴に値する御意見が多々披瀝をされたと認識をいたしております。  まだ今国会は閉会をしているわけではございませんので、必要に応じ幹事の皆さんの御協議をいただいて当審査会は開会ができればと会長としては望んでおりますけれども、今回の「二院制」及び「新しい人権」を一つのテーマとしては区切りといたしまして、更なる憲法の、並びに憲法にかかわる基本的法制についての調査を進めていただきたく、皆さんの積極的な御参加の下に、日本のあるべき姿、そして市民生活の根底にある基本法制としての憲法のあるべき姿を皆さんとともに追求をしてまいりたいと存じます。  委員各位の積極的な御参加に心から感謝を申し上げ、当面、この二つのテーマを終了したことを契機といたしまして、一言時間がありましたので述べさせていただきました。  他に御発言はございませんか。  それでは、本日の調査はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十九分散会