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参考人(
種岡成一君)
全国電力関連産業労働組合総連合の
種岡でございます。
今日は、
意見を申し上げる機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
最初に、私
ども電力総連の組織のことについて若干御紹介を申し上げたいと思います。お手元に、私
どもの職場の実態をまとめました「
電気を届ける現場から」という資料を作らせていただきました。一番後ろの方を御覧をいただきたいと思います。
私
ども電力総連、現在、約二百四十の組合、二十二万人の組合員で組織をしている労働組合の団体でございます。
電力にかかわる様々なこと、発電から送配電、設備や部材、部品の製造、建設から保守メンテナンス、さらには保安、お客様サービスに至るまで、
電力関連
産業に携わる者二十二万で組織をしている団体でございます。そこには記載をしてございませんけれ
ども、この二百四十の組合のうち約七割の労働組合が従業員三百名以下の企業で働く労働組合員で組織をされているところでございます。
今日は、
電気事業法の改正について御
意見申し上げさせていただくところでありますけれ
ども、既に衆議院におきましては御審議をいただいて修正が行われたというふうにお聞きをしているものでございます。
冒頭一点だけ、私
どもの基本的な思いを申し上げさせていただきたいというふうに思いますけれ
ども、どういった政策であっても、それを達成するためには、そこに携わる者全てがその政策遂行のための
目的をしっかりと
理解をして、そのための方針も
理解をしながら
改革のための方策を推し進めていく、そういうことが極めて重要だというふうに思います。
しかしながら、今回審議をされております
電力システム改革、現時点では
電力関連
産業に携わる者にとってみて、その
目的でございますとか
手段、必ずしも全て分かるということではなくて、分かりづらいものになっているのではないか、そんなふうに
考えているところでございます。
一つには、一昨年から今日まで様々な
検討行われてきたわけでございますけれ
ども、この
検討の
段階から直接
電力関連
産業に携わる者がその
検討に参画をする機会がなかった、このことが要因の
一つなのではないかというふうに思います。この
法案の審議、ここまで進んでいるわけでございますけれ
ども、携わる者全てが
改革の方針をしっかりと共有して進めていかなければ
目的が達成できない、そのように
考えているところでございます。
私
ども電力関連
産業に携わる者にとってみると、これまで
国民生活あるいは
産業活動に不可欠な
電力の安全、
安定供給、このことにしっかりと使命感を持ちながら、そして、その使命感を持って様々な仕事に取り組んでいるということに自信を持って取り組んできたわけでございますし、まさにそのことに働く喜びを持ちながらこれまでこの
産業に取り組んできたというふうに思います。
しかしながら、先ほ
ども申し上げましたとおり、現在のこの審議の状況の中で、これからの
目的あるいはその手法を必ずしも十分
理解をできる、そういう状況にはなっていないのではないかというふうに感じているところでございます。
この
電気事業制度改革につきましては、平成七年以降四回にわたって
制度改革が行われてきたわけでございますけれ
ども、我々働く者にとってみますと、社会的要請に対しても、
安定供給と競争促進の両立、このことを通じてお客様の
利益拡大につなげていく、そういう目標に対してしっかりと前向きに取り組んできた、そのように
考えているところでございます。
現在、我々
電力関連
産業に働く者としては、当面の取組として大きな取組、五つほどあるというふうに思います。
一つは、大震災以降、それ以降も様々な自然災害、水害等も発生をしているわけでございますけれ
ども、それぞれの大
規模自然災害によって被災をされた地域の復旧復興、このことにしっかり
電力関連
産業に働く者として取り組んでいかなければいけないというふうに思います。
それから、大変御迷惑をお掛けをしております福島第一
原子力発電所の
事故、この完全なる収束と賠償支援、そしてこの
事故を教訓とした
原子力施設の安全対策の着実な実施、これらにも取り組んでいかなければいけないというふうに思います。
さらには、厳しい需給状況の下での
電力の安全、
安定供給の確保ということも我々に課せられている
課題でございますし、節電のお願いでございますとかあるいは
電気料金値上げのお願い、そしてそれらに関係をいたしました徹底した
経営の
効率化、これらについても我々
電力関連
産業に働く者、取り組んでいかなければいけないというふうに思っているところでございます。
今日、お手元にお配りをしておりますけれ
ども、我々の職場の実態、五ページ目以降にお手元の資料に記載をさせていただいてございます。是非後ほど御覧をいただければ幸いだというふうに思います。
そんな中で、我々のところに今職場の組合員から多くの
意見が届いてございます。代表的なものを
三つほど御紹介をさせていただきたいというふうに思います。
一つでございますけれ
ども、自然災害の早期復旧や夏場の
供給力確保にも真剣に取り組んできた。しかしながら、最近、
電力システムの問題点が露呈した、このように言われているけれ
ども、我々が長年やってきたことは間違っているのか。
二つ目の
意見でございますが、
原子力発電所の運転再開が見通せない中で、
供給力を支える火力
発電所などでは限られた検査期間の中で思うようにメンテナンスもできていない。まさに綱渡りの需給状況が続く中で、
老朽火力の計画外停止リスクの不安が高まる一方で、停止することを許されない緊張の中で、何としてもお客様に
電気をお届けするために歯を食いしばって運転を続けている。
三つ目でございますが、追加燃料費をコストダウンで吸収するには限界がある。雇用や
産業の空洞化ということも言われている中で、大震災以降、節電に多大なる御
協力をいただいてきたお客様も同じ働く仲間であり、さらに、復興再生に向けて必死に取り組んでいる被災地の
方々も含めて
電気料金の値上げのお願いをせざるを得ないことが働いている者としてはつらい。こんな
意見が組合員からは届いているところでございます。また、こうした職場実態も背景にいたしまして、誰が将来この国の
電力の安全、
安定供給を支えていくのか、そういった人材にかかわる
課題も職場からは提起をされている、こういうことが私
どもの職場の実態でございます。
今回の
電力システム改革、
東日本大震災を受けまして前の前の政権から論議がスタートし、今日に至っているというふうに承知をしてございますけれ
ども、今日までの論議経過を振り返ってまいりますと、果たしてこうした私
どもの職場の実態に思いをはせていただきながら
検討していただいたのか、あるいは、こうした職場の実態、現物をしっかり目で見ていただいた上で論議が進んできたのか疑問を感じざるを得ない、そういったところが
電力関連
産業で働く者の率直な思いなのではないか、こんなふうに
考えているところでございます。
その上で、改正
電気事業法の審議に当たりまして、私
どもとして三点の御
意見を申し上げたいと思います。
第一点目でございますけれ
ども、
電力の将来にわたる安全、
安定供給が確保され、真に中長期的な
国民利益にかなう
改革となるように、今後の制度設計に万全を期していただきたいというふうに思います。
発電部門と送配電部門の相互連携によります
安定供給、人身安全も含めた安全の確保、お客様の保護のための施策、将来の
供給力確保など、今後の
改革の成否を左右する根幹事項だというふうに
考えてございますけれ
ども、いずれもこれらの具体策につきましては今後
検討する、こういう位置付けに現在なっているのではないかというふうに思います。
この
法案の基になってございます政府の審議会等の
検討の中では、単に全面
自由化し、発送配電分離をすれば、
電気料金は下がり、
供給力は増大し、
再生可能エネルギーが普及する、こういった論議もあったというふうにお聞きをしているところでございます。今後の
検討を進めるに当たりましては、生じるおそれがあります負の側面につきましても、是非丁寧な検証をお願いを申し上げたいと思います。
本日お配りをしてございます冊子の二十四ページ目以降に若干紹介をしてございますが、既に諸外国において、いわゆる全面
自由化だとか発送配電分離などを実施している諸外国の状況について、私
どもも諸外国の労働組合と連携をし、調査をしてきたところでございますけれ
ども、
電気料金水準の高騰でありますとか、
発電所あるいは送配電設備など中長期的な設備形成の停滞、
需給逼迫の常態化、
供給責任所在の不明確化、あるいは自然災害発生時における復旧作業の支障、それぞれ様々な
課題も生じているというふうに聞いているところでございます。
是非とも、今後の制度設計に当たりましては、
改革に伴う諸
課題についてしっかりと検証を進めていただき、その克服のための必要な制度や措置を講じた上でステップ・バイ・ステップで取り組んでいく、そのことをお願いを申し上げておきたいというふうに思います。
また、私
ども働く者にとってみましては、あらゆる場面を想定をした安全の確保、このことを是非ともきちんと確立をしていただきたいというふうに思います。このことは絶対に必要な条件だというふうに
考えているところでございます。発電部門、送配電部門、あるいは販売部門との連携の不備によりまして設備
事故あるいは人身災害が発生する、そのようなことがあっては決していけないというふうに
考えているところでございます。
二点目でございますけれ
ども、
電力システム改革は、
我が国の
エネルギー政策が直面する喫緊
課題、これをしっかりと解決した上で進めていただきたいというふうに思います。現在、需給の状況、極めて逼迫をしているわけでございますので、この問題をしっかりと解決をしなければいけないというふうに思います。
我々の
原子力の職場では、大震災の直後から、福島
原子力発電所の
事故を教訓といたしまして、ハード面、ソフト面、様々な面で、まさに寝食を忘れ、血眼になりながら安全対策を講じてきているというふうに思います。是非とも、この安全対策講じたものについては、科学的見地、技術的な実効性、国際的な視点から公正に
審査をいただいて、その結果、安全性の確認がされた
原子力発電所については、
立地地域の
皆様の
理解と信頼を得ながら円滑に再
稼働が果たせるようにお願いを申し上げたいというふうに思います。そして、そのためには、安全
審査を担う
規制機関には是非とも万全な体制を整えていただく、このことをお願いを申し上げておきたいというふうに思います。
さらには、
我が国の
エネルギー政策全体と
電力システム改革の論議、きちんと整合性を合わせ、同期を取りながら進めていただくことをお願いを申し上げたいというふうに思います。さらには、
原子力損害賠償制度などにつきましても、これまでの
法案の成立時の附則でありますとか附帯決議などを踏まえ、しっかりと御論議をいただければ有り難いというふうに思います。
最後、三点目でございますけれ
ども、
電力の安全、
安定供給を担うのは現場の力である、このことを是非ともこれからの審議の中できちんと御
理解を賜れればというふうに思います。
これまでの安全、
安定供給を支えてきている人材、その人材の確保でありますとか技術、技能の維持、継承、このことはこれからもしっかりと確保されていかなければいけないというふうに思います。働く者の労働の尊厳、雇用の安定や人材の確保、育成、技術、技能など、まさに現場力の維持、継承、これに支障が生じるようなことがあれば、
電力の安全、
安定供給ということはなし得ないのではないかというふうに思います。
さらには、私
ども労働組合の立場からしてみると、憲法、労働基準法などに基づく労働組合の団体交渉権と労使自治、このことを是非ともこれからも保障していただきたいというふうに思います。その上で、今後、
小売全面自由化ということになるのであれば、いわゆるスト
規制法に関しても労働者の基本権保護という
観点から検証が必要なのではないか、このように
考えているところでございますので、この点につきましても御論議をいただければ有り難いというふうに思っているところでございます。
最後になりますけれ
ども、
電力の安全、
安定供給、いつ、いかなるときでもそこに携わる人の営みによってなし得ているというふうに思います。三百六十五日、二十四時間、そこでしっかりと働いている、そういう現場の第一線の状況を思い浮かべていただきながら御論議をいただければ大変有り難いというふうに思っているところでございます。
以上、私の御
意見とさせていただきます。引き続きの御指導をお願い申し上げます。
ありがとうございました。