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安藤分科員 ありがとうございます。
本当にこの中小
企業の事業の承継というのは大きな問題だと思いますし、これによって地方の
企業が継続できなくなるということもあるわけですね。今までも事業承継
税制というのはありましたけれども、大変に
使い勝手が悪いということで、今回
かなり改善がされたと思っております。
そういった
意味で、これをもっと周知をしていただきまして、中小
企業の皆様にぜひとも活用していただきますように、
政府の方でも周知徹底をよろしくお願い申し上げたいと思います。
いよいよ時間もあと少しですので、
最後の論点に移っていきたいと思います。
上智大学の名誉教授の渡部昇一
先生の著書にこういう本があるんですね。「税高くして国亡ぶ」という本があるんですけれども、その冒頭に相続税の話が出てまいりますので、少し読ませていただきたいと思います。
すみ分け理論や猿の研究者として専門外の人たちにも広く知られる今西錦司氏は、日本が世界に誇る生物学者であった。その庭には、ケヤキやエノキやクスやイチョウなどの木が茂っていた。今西氏はこうした自宅の庭の木を見ながら読書し、思索し、独創的な著述をした。大木の多いこの庭のことを、近所の子供たちは今西の森と呼んでいたという。
ところが、この今西の森の約半分が、氏の一周忌の前に切られてしまったというのである。理由は相続税のためである。
当主が死ねばその家から、強盗団が定期券を持って通っても盗み切れないほどの財産を税務署が奪っていく。今西家でも、相続税を払うために土地を物納せざるを得なかった。今西の森の巨木のあるところが物納されることになった。ところが、税務署は、木の生えた土地ではなく更地にして提供せよと指示をしてきた。かくて今西の森は、当主が死亡しただけの理由のために、国の命令で切り払われることになった。これは、今から十年ほども前、
平成五年の話なのであるが、私には殊のほか印象が深い。
ということですね。
今西の森のようなことは、日本じゅうで毎日起こっている。消えていくのは森だけではない。何代も続いた蔵も、当主が死んだだけのことで、昔ならば反逆でも起こさなければ科せられなかったような懲罰を受けて、つまり、残酷な税を割り当てられて姿を消していく。古い日本の文化、民間に残った文化、これが本当の
国民文化であるのだが、これは、近い将来、きれいさっぱり日本から消えるであろう。アメリカの無差別じゅうたん爆撃からも原子力爆弾からも免れたものが、税金のために根こそぎ消え続けている。
こういった文章があります。
私の選挙区は、京都府の第六選挙区というところで、京都の一番南のところなんですけれども、宇治の平等院で有名なところでございます。この平等院というのは藤原頼通が別荘として建造したものでございますけれども、この当時に、平安
時代に相続税があったら、平等院というのは今残っているんだろうかということを思うんです。
ことしの一月十五日の京都
新聞に、こういった社説が載っています。
相続税の課税拡大を
政府・
与党が
検討している。低
所得者層ほど
負担感が強い消費増税を控え、富裕層への課税強化で格差是正を図る狙いだが、消え行く京都の伝統的な町並みに追い打ちをかけないだろうか。建造物保全にも目配りをしてほしい。
瓦屋根や格子が美しく、暮らしの文化と結びついた京町家が年々、失われている。家主が住み続けたくても町家を壊さざるを得ない一因が、高額な相続税の支払いである。
京都市が二〇一〇年に発表した京町家約四万七千戸の実態調査では、回答者の約四割が、相続にかかる
負担を懸念していた。居住者の
高齢化も進んでおり、事態は切迫をしている。
町家は、維持修理費の
負担も重いが、都市部で地価が高いだけに、資産課税が古都の景観保全の上で長く課題になってきた。
門川大作京都市長は、全国一律の相続税では、どんどん売らざるを得ないと
危機感を口にする。京都市と京都府は昨年、適切な管理を条件とした京町家に対する相続税の納税猶予措置や、市民が残したい建物や庭園は文化財に準じて相続税や固定資産税を優遇するように国に
要望した。
京町家は年二%ずつ減少しているとされています。相続対策で町家取り壊しを急いだ人もおり、納付した人は少ないようでも相続問題が強く影響しているとの
指摘もある。個人やNPO、自治体の努力、工夫で町家を守るのは限界がある。
都市部にある京都の歴史的な町並みは、市民だけでなく、日本の共通財産。相続税の課税の裾野を広げるならば、国はあわせて景観保全の施策を真剣に
検討し、配慮が求められる。
ということなんですね。
税制改正の話をしているときに、文化の話というのは余り出てこないように思います。財政再建とか格差
社会を是正するとか、またプライマリーバランスを保つのが大事ということがキーワードになっておりますけれども、本当は、税は国家なりと言われるように、
税制の考え方というのは国家観というものが強く反映をされなくてはならないと思います。
日本はどのような文化を育んでいくべきなのか、こういった文化や民間の活力をどうやって引き出していくか、これがやはり
税制には求められると思います。
自民党は、保守政党として伝統文化を大切にする政党でございますが、これは
麻生大臣にぜひともお伺いをしたいと思いますけれども、文化を守って、そして育てていく
税制のあり方というのはどうあるべきか、
大臣にちょっと御
見解をお伺いしたいと思います。