○大口善徳君
公明党の大口善徳でございます。
私は、
公明党を代表して、ただいま
議題となりました、国際的な子の
奪取の
民事上の
側面に関する
条約、いわゆる
ハーグ条約、及び、国際的な子の
奪取の
民事上の
側面に関する
条約の
実施に関する
法律案、いわゆる
条約実施法案について質問いたします。(
拍手)
まず、本
条約及びその
実施法案の必要性についてお伺いします。
厚生労働省の統計によると、過去十年間の平均で、
国際結婚は年間約三万六千五百件、
国際離婚も年間約一万七千二百件弱で、
国際離婚におきましては、
平成四年の七千七百十六件から
平成二十三年の一万七千八百三十二件と、この二十年間で約二・三倍と大きく増加しております。このような
国際離婚の増加に伴い、子の
監護の問題は、国際的にも大きく取り上げられております。
本
条約の
締約国は八十九カ国に及び、G8では
日本だけが未
締結となっており、欧米を初めとする
条約締約国が、
我が国に対し、
日本への子の連れ去りがあった場合、子の
監護権の侵害問題の
解決が困難になっているとして、
我が国に早期の
締結を求めています。
そして、
締約国の
裁判所において、
離婚した
日本人親が子を連れて
我が国に一時帰国することが、本
条約の未
締結を
理由に許可されない事態が生じているほか、
我が国においても、
外国人親が
日本から
条約締約国に子を連れ去っても、
日本人親は何らの手段も与えられない現状です。
しかし、
日本の場合、
外国人親の
児童虐待やドメスティック・バイオレンス、いわゆる
DVから子やみずからを守るために子とともに帰国する事例が多数あり、子がもとの
居住国に戻されることにより、邦人の
保護や子の
利益に対する
懸念があり、
ハーグ条約を
締結することに慎重な意見もあります。
このような
懸念が指摘されている
ハーグ条約を締約する必要性、それが子の最善の
利益を確保することにつながるのか、締約しなかった場合の問題点はどのようなものであるのか、
外務大臣にお伺いいたします。
次に、
中央当局についてお伺いいたします。
実施法案では、
我が国の
中央当局を
外務大臣としております。
中央当局は、
条約締約国の
中央当局との連絡調整のほか、
日本国内においても、本国に連れ去られた子の所在の特定や、連れ去ってしまった親からの任意の
返還のための協議のあっせん等、重要な業務を課されております。
日本に連れ去られた子は北海道から沖縄まで全国各地に散在する可能性があり、
中央当局に課せられたこれらの重要な業務を
実施するに当たり、外務省はどのような組織、人員で対応していく予定なのか、
外務大臣の見解をお伺いします。
また、本
条約に基づく
返還の対象となる子は十六歳未満であり、子の福祉に十分配慮した対応が求められ、子の福祉に精通した専門家の配置が必要と思われますほか、
DVや
児童虐待などの支援業務に携わっている人材の配置も不可欠と思われます。
中央当局の体制
整備に当たっては、そうした専門家の方々の配置も予定されているのか、あわせて、
外務大臣にお伺いいたします。
次に、
中央当局からの子の所在等に関する情報の提供の求め等についてお伺いします。
DV被害者が、加害者から子やみずからを守るために民間シェルターに身を寄せることがあり、民間シェルターは、
DV被害者を一時的に受け入れ、その自立を支援しています。そこでは、加害者からの追及をかわすために、
保護した
被害者はもちろんのこと、団体そのものの情報についても厳重に秘匿されております。
実施法案では、
中央当局である
外務大臣は、子の
返還援助申請がなされた場合、
申請に係る子やその子と同居している者の氏名、
住所等を特定するため、国や地方の行政機関等のほか、政令で定める者に対し、氏名、
住所等に関する情報の提供を求めることができるとされていますが、もし、情報の秘匿が前提となっている民間シェルターに情報提供を求めることになりますと、
DV被害者との信頼関係を大きく損なわせるおそれも出てきます。
したがって、
中央当局が民間シェルターに情報提供を求める必要が生じた場合であっても、配偶者暴力相談支援センターや民間シェルターのネットワーク団体を通じて間接的に情報提供を求めるなど、できる限り、直接民間シェルターに情報提供を求めることがないように特段の配慮をする必要があると思いますが、
外務大臣の見解をお伺いします。
さらに、子らの所在等の情報収集に関しては、内閣府男女共同参画局及び民間シェルターのネットワーク団体の代表も交え、情報収集のためのガイドラインを作成することも必要と考えますが、
外務大臣の御所見をお伺いいたします。
また、
裁判手続が開始されても、
裁判所は、
中央当局から得た
日本にいる
親子の
住所等の情報を開示せず、裁判記録に含まれるその他の情報についても、子の
利益や
当事者等の私生活の平穏を害するおそれがある場合は開示しないこととし、さらに、
裁判所における記録の閲覧等の
手続の運用面においても、子を連れ帰った親が
DV被害を受けたと疑われる事案については、国内
DV事案の記録の取り扱いと同様に、
親子の所在の記録が外部に漏れないように配慮すべきと考えますが、
法務大臣の御所見をお伺いします。
次に、子の
返還申し立て事件の裁判管轄についてお伺いいたします。
実施法案では、子の
返還申し立て事件の裁判管轄を
東京家庭裁判所及び
大阪家庭裁判所の二庁のみに限定しております。この裁判管轄は、子の住所地等により
決定されることになり、子が北海道にいる場合は東京家裁に、沖縄にいる場合は大阪家裁に裁判管轄があるとされ、子を含め関係者が
裁判所に出廷する際は、経済的、時間的に負担を強いることになると思われます。
管轄裁判所を東京家裁及び大阪家裁の二庁に限定した
理由と、
当事者の負担を軽減する方策について、
法務大臣の見解をお伺いします。
次に、子の
返還拒否事由についてお伺いします。
子の
返還拒否事由の一つである
実施法第二十八条一項四号には、「
常居所地国に子を
返還することによって、子の
心身に
害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること」とありますが、連れ去った
日本人親がもとの
居住国に入国できない、逮捕、刑事訴追のおそれがある、もとの
居住国への帰国後の生計維持が困難等の事情がある場合、また、連れ去った
日本人親が、過去の
DVのために、もとの
居住国に戻るとPTSDの精神症状が出て、子が耐えがたい状況に置かれると認められる場合などは、同第二十八条二項の重要な考慮要素として、
返還拒否事由に該当することになるのか、
法務大臣にお伺いします。
さらに、子の
返還手続の裁判において、
日本に帰った親が、
DV被害等の有無を立証するため、
中央当局を通じて、在外公館における
DV相談
内容の記録、
外国の病院の診断書、
外国の警察の相談記録等を入手できるようにし、また、家庭
裁判所による職権調査等が積極的になされるべきと考えますが、
外務大臣、
法務大臣の見解をお伺いします。
次に、在外公館における体制
整備についてお伺いします。
在外公館においては、
DVや虐待を受けた邦人や子の相談に適切に対応していくこと、
DV等の相談
内容を記録保存しておくことが非常に重要であり、現地の支援団体とも連携するなどして、在外邦人の支援体制を構築しておくべきであると考えます。
また、子をもとの居住地に
返還することになれば、その国の
裁判所で
監護権に関する裁判が行われることになりますが、現地の弁護士をあっせんしたり、支援
制度や支援機関を紹介するなどの
援助も必要になってくると考えます。
また、邦人
保護の観点から、
DV被害等のため緊急に帰国する必要があると認められる邦人に対しては、パスポートの発給などの帰国支援を行うべきであると考えます。
このように、
ハーグ条約締結に向けた準備の中でも、在外公館の支援体制の構築は大変重要だと考えますが、
外務大臣の御所見をお答えください。
次に、家庭
裁判所の
審理における
援助についてお伺いします。
DV等を原因として、やむを得ず
日本へ子を連れ帰ってきたような場合には、
外国人親から家庭
裁判所に子の
返還申し立てがなされた場合、子を連れ帰った
日本人親が家庭
裁判所の
審理に臨むに当たり、弁護士を依頼する費用や
外国の書面を翻訳する費用が工面できないこともあろうかと思います。
我が国では、法テラスによる
民事法律扶助
制度により、弁護士費用等の一時立てかえが可能ですが、
ハーグ条約案件の特殊性による翻訳費用の高額化について、現行の上限を撤廃し、適切な対応をすべきと考えますが、
法務大臣の具体的な
対策をお伺いいたします。
次に、子の
返還の代替執行についてお伺いします。
実施法案において、子の
返還を命ずる
決定の具体的な執行方法として、間接強制を前置していますが、実際に子が
返還されない場合には、代替執行を行わざるを得ません。
実施法案においては、「執行官は、」「子に対して威力を用いることはできない。子以外の者に対して威力を用いることが子の
心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合においては、当該子以外の者についても、同様とする」と
規定されております。
しかしながら、実際において、親から子を引き離すことになりますので、子が大変大きな精神的ショックを受けるおそれがあると思われます。代替執行を行う際には、慎重の上にも慎重な対応が不可欠と思いますが、代替執行を行う際の子に対する配慮をどう講じるのか、ガイドラインの作成も含め検討すべきと考えますが、
法務大臣の御所見をお伺いします。
次に、
面会交流における連れ去りの防止についてお伺いします。
日本にいる子に対する
面会交流申請がなされた場合、面会
申請を行った親が、面会の際に、子を
日本国外へ連れ去ってしまうおそれが全くないとは言えません。子の
返還申し立て事件については、家庭
裁判所に事件が係属している間は、家庭
裁判所による
出国禁止命令により、子の連れ去りを防ぐ
対策が講じられております。
面会交流の際にも、子の連れ去りを防ぐ何らかの
対策が必要であると考えますが、
外務大臣の見解をお伺いいたします。
次に、
ハーグ条約の適用関係についてお伺いします。
ハーグ条約は、「この
条約が当該
締約国について効力を生じた後に行われた不法な連れ去り又は留置についてのみ適用する」としておりますので、効力発生前に生じた不法な連れ去りや留置は対象とならず、
実施法案にもその旨が明記されています。
そこで、
条約適用の有無を判断するため、特に不法な留置の起算点が問題となりますが、これにつき、
法務大臣の見解をお示ししていただきたいと思います。
次に、運用実態の把握についてお伺いいたします。
ハーグ条約を
締結した際には、何よりも子の
権利利益の
保護が第一に考えられるべきもので、
中央当局は、子の
権利利益の
保護が図られているかを監視しておく必要があります。また、
実施法案施行後、定期的に運用実態を調査、検証し、その
内容を公表し、
国会に
報告することが必要だと考えますが、
外務大臣の御所見をお伺いします。
最後に、
条約の受諾書の寄託の時期についてお伺いします。
ハーグ条約は、受諾書等の寄託後の三カ月目の月の初日に効力が生じることとされております。
条約締結に対しては、
早期締結を求める意見もありますが、関係者に対する
制度の周知を十分に行うとともに、
中央当局及び在外公館における体制
整備には万全を期しておくべきと考えます。
今
国会において
条約が
承認された場合、体制
整備を整える準備期間をどれくらい確保して受諾書を寄託されるのか、
外務大臣にお伺いいたします。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣岸田文雄君
登壇〕