○荒井
委員 マイナンバー制の審議がとうとうここまで来たのかという感慨でいっぱいでございます。
と申しますのは、先ほども後藤さんからお話がありましたけれども、二〇〇〇年の年に
IT基本法という
法律ができたんですね。この
IT基本法の
民主党側の
審査担当官といいますか、担当を私がいたしました。そのときに、
政府が提出した
IT基本法を、野党として修正要請をしたんです。その修正要請の内容は、「社会経済構造の変化に伴う雇用その他の
分野における各般の新たな課題について、適確かつ積極的に対応しなければならない。」という項目を入れたんですね。
これはどういうことかというと、
ITというのは確かに便利なんです。とても便利なものであります。しかし、便利さゆえに負の側面もある、マイナスの側面もある。先ほど雇用の面のお話がありましたけれども、雇用の面だけでなくて、最近極めて
指摘をされているのは、
情報の流出や、あるいは犯罪がそれに絡むということであります。
二〇〇〇年のときには、そういう
情報の大量の流出でありますとか、犯罪に多様に利用されるということまでは考えが及びませんでした。ただ、雇用の面で、
ITを使うことによって雇用の削減につながっていくのではないだろうか、そういう
思いがありましたので、雇用の面をここに書き込んだのであります。
野党が
政府提案の
法案について修正
協議を本気になってやった、そして与党提案の目玉政策であったこの基本法に賛成をしたということは、それまで余りなかったかと
思います。そのとき
民主党の政調会長が
岡田さんで、
岡田さんは、それはおかしい、野党としては反対を貫くべきだということを
指摘されて、当時
岡田さんとやり合った覚えがあります。
そういう
ITなんですけれども、
ITというのは一体なぜこういう宿命を負っているのかというと、これは軍需産業の転用だからなんですね。もともと軍需産業から、軍需産業というよりも、
情報通信の軍需化の利用技術だったわけです。それを
民間に流用していった、そういう成り立ちがありますから、
ITを破っていくとか、あるいはハッカーみたいなものが、ある種の軍事技術として育てられていったというところも私はあるんだろうというふうに
思います。それが
ITの宿命なんだろうなと
思います。
このマイナンバー制は、私も閣内にいたときにこれを担当いたしましたから、これがこういう形で
法案化されてきた、いよいよ審議になってきたということは大変喜ばしいというふうに思うんですけれども、しかし一方、
国民的に見たら、
個人情報の流出、そういうことに対する懸念というのは極めて高いんですね。大変高いです。この点から、私の
質問をこの点に集中させていきたいと思っております。
今皆さんのお手元に、私が作成をいたしました資料をお持ちだと
思いますけれども、「各国の共通
番号制度をめぐる
情報流出事例」というのをお渡ししております。これを見ると、膨大な
情報が流出をしているということですね。
比較的うまくいっているだろうと思っていたアメリカが、
社会保障番号関連の成り済まし犯罪。これはぜひ
甘利さんに、二〇一一年のアメリカのたしか上院だと
思いますけれども、上院の公聴会、ホームページで公開されていますから、それをぜひお読みになったらいいと思うんです。
このときの被害者が、二〇〇六年から二〇〇八年の三年間で一千百七十万件。これは件と書いてあるから、人かどうかよくわからないんですけれども、一千百七十万件なんです。そして、二〇〇三年、これはどうして二〇〇三年なのかわかりませんけれども、連邦取引
委員会の算定で、損害額が年間五百億ドルという
数字が出ているんです。日本円に換算すると四兆円です。
これだけ膨大な
情報がアメリカでは流出をしてしまい、この犯罪捜査に四苦八苦しているというのが今のアメリカの現状です。
アメリカが
社会保障番号を使って、いろいろなものに利用したんですけれども、とうとう一番の利用手であったアメリカ国防総省がやめました。余りにも被害がひど過ぎると。イラクですとかアフガニスタンから帰ってきたアメリカの軍人が、本国に帰ってきて口座を開こうとしたら、口座を開けない。どうしてか。
社会保障番号が盗用されていて、借金漬けになっていて信用がないからというのがあっちこっちで出てきたんですね。ということで、アメリカ国防総省は
社会保障番号を使うのをやめちゃったんです。これがアメリカの現状でした。
次に韓国。韓国が一番
ITが進んでいる、あるいは住民登録
番号をいち早くスタートさせたんですね。これも驚くなかれ、二〇〇八年から二〇一一年の四年間ですか、一億二千万人が被害に遭っているんです。ハッキングだとか、あるいは、販売といいますから、実際にビジネスベースで販売し合ったんでしょうね。そういう事件が起きているんです。韓国の人口は五千万人ぐらいですから、一億二千万人というのは、この四年間で、全ての
国民が二回ぐらい被害を受けているというのが実態なんですね。
これをどういうふうにマイナンバーの中では防いでいくのか。犯罪捜査ですから、警察も非常に関心を持っていると思うんですけれども。
これは、利用範囲でありますとか、それから何に使うかということととても
関係があります。
韓国の場合には、
民間に相当大々的に開放したんですね。それがこの結果を呼んだのではないかというふうに言われています。あるいは、
システムのつくり方にもいろいろと欠陥があったのではないかというふうにも言われています。
アメリカの場合には、
システムが、一九三五年ですから、かなり古い段階でつくられていたので、そういうセキュリティーの件ではおくれていたのではないだろうかというふうにあります。
しかし、一番の大きな問題は、利用範囲をどういうふうに限定するのかということだったんです。
民主党政権のときには、この利用範囲は公的な利用に限るという限定をいたしました。そういう点でです。余り
民間に使うと、あるいは
民間に開放させると、こういう事例が発生しやすいということが
理解できていましたから、公的な利用に限定をしようじゃないかという議論をしてきました。
しかし、今度、自民党
政権になりましたら、三年目にはそれを見直しする、
民間にも開放していくんだ、幅広い利用目的の道を残したというふうにとれます。これは、ある
意味では、セキュリティーの面では極めてもろくなっているというふうに私は思うのでありますが、この点、いかがでしょうか、
甘利さん。
〔
委員長退席、関
委員長代理着席〕