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松田委員 なぜこういう質問をするのかというと、いわゆるデフレ克服というのが、やはり
金融機関の信用創造というか、それが伴わないとなかなかできないんじゃないかという認識があるからであります。
一般に、通貨をふやせばそれだけ物価が上昇するという、
経済学では貨幣数量説みたいな考え方があるんですが、ただ、通貨をふやしたところで、実際に人々がこのお金を使って支出に回さないと、通貨の回転速度といいますか、これが下がって、結局、資産ストックが積み上がる。千五百兆円という個人金融資産がありますが、それが積み上がったり、あるいは国債が積み上がるという形で、やはりフローの中にマネーが回っていかないと、なかなかデフレというのは克服されないのじゃないかというふうに思うわけであります。
その中で、中央銀行ができるのは、金融市場にマネーを、いわゆるマネタリーベースといいますか、昔でいうとハイパワードマネーを供給するということができるんですが、そこから金融部門が実体
経済にどれだけ信用創造するかということが結果としてマネーサプライをふやしていくことにつながるということであります。
これは、日米欧のこれまでの経験から見ましても、例えば、日本は、九九年からマネタリーベースというのは大体二倍ぐらいになっているんですが、マネーサプライは二割ぐらいしかふえていない。アメリカやヨーロッパ、いわゆるユーロ圏なんかでも、中央銀行はマネタリーベースを三倍ぐらいふやしてもマネーサプライは三割ぐらいしかふえていない。結局、いわゆる非伝統的な手段といって中央銀行が債券、国債なんかを買っても、それで銀行部門に資金が供給されても、それが中央銀行に対する準備預金として積み上がるということになってしまうと、中央銀行のいわゆる資産と負債が両建てでバランスシートが拡大するだけで、市中のマネーがふえることにならないというような経験を結構先進国がしているわけですね。
そういう点からいうと、どうもこの金融
政策だけで物価目標とかあるいはデフレ克服というのはなかなか困難なので、
アベノミクスというのは
財政政策で公共投資を拡大する、需要を拡大するとやっているんですが、これも
経済効果では一時的なカンフル剤、そう言われている。やはり
民間需要中心の持続的な成長に結びつくためには、信用創造を
民間の
金融機関がしっかりとやっていかないとデフレ克服はできないのじゃないかというふうに思うわけですね。
しかし、銀行の状況を見ていると、どうも最近というか、ずっとこのところそうなんですが、貸出先がない、事業性のある、収益性のある貸出先がなかなかないんだ、資金需要がないというのが銀行側の
説明で、一方で、
中小企業とか借り手の方は、銀行が貸さないからなかなか収益性のある事業が展開できない。卵が先か鶏が先かみたいになってしまって、結果として、預金残高は、銀行に対する預金はどんどんふえていますけれども、国債の運用が専らふえてなかなか貸し出しが伸びないという現象が起こっているわけですね。
九〇年代後半ぐらいまで、預貸率、いわゆる預金に対する貸付残高の比率ですが、大体一〇〇%ぐらい日本の銀行はあったのですが、このところ大体七割ぐらいまで低下している。それから、
中小企業向け貸出残高は、二〇〇〇年ごろに比べて、ある数字では六十兆円ぐらい減っているというような数字もあるんです。
不良債権の処理というのを昔やっていたんですが、それがめどがついてもう十年ぐらいたっても
中小企業向けの残高が低下してきている。これは、もちろん
企業の資金需要が低迷しているというのもあるんですけれども、やはり
金融機関のサイドでリスク回避的な与信態度というかそういう問題が相当あったのではないか、これがデフレが継続してきた
一つの原因なのではないか。
もちろん、金融行政御当局もいろいろ努力をされてきたと
思いますが、それを十分克服できなかったのじゃないかというふうにも
思いますけれども、この点については御当局の認識はいかがでしょうか。