○塩川
委員 日本共産党の塩川鉄也です。
私は、最初に、
政府の
人件費削減政策というのが国立のハンセン病療養所の
職員体制に
影響を与えて、結果としてハンセン病の元患者、入所者の方の待遇の改善に逆行するような事態になっている、こういう現状について、
政府の施策の
もとでそれが行われているということについての
大臣の所感をぜひお伺いしたい。あわせて、坂本副
大臣もたしかハンセンの議懇のメンバーだったと思いますが、一言いただければと思います。
私もこの間、草津の栗生楽泉園や多磨全生園に足を運んで、入所者の方のお話を伺い、また、所長を初め
職員の方のお話も伺ってまいりました。
多磨全生園でいただいたパンフレット、厚生労働省が作成をしている、学校の学習教材に使われている「ハンセン病の向こう側」、こういうパンフレットの中でも、ハンセン病についての歴史的な経緯が紹介をされております。
戦前においても強制的な隔離が行われる。感染性も低い、戦後はプロミンによって完治をする、こういう病だったにもかかわらず、らい予防法という国の
法律によって強制隔離政策がずっととられてきた。この
もとで、元患者の
皆さんの人権が侵害をされ、また社会復帰の道が断たれ、生活再建の道も閉ざされる、こういったことが行われてきたわけであります。
パンフレットでは、こういった元患者の
皆さんが置かれた
状況について、
親や兄弟姉妹と一緒に暮らすことができない——。
実名を名乗ることができない——。
結婚しても子供を生むことが許されない——。
一生療養所から出て暮らすことができない——。
死んでも故郷の墓に埋葬してもらえない——。
こうした生活をハンセン病患者は長い間強いられてきました。あなたは想像できますか?
このように呼びかけております。
こういったハンセン病の患者の方の暮らし、あなたは想像できますか。
だからこそ、ハンセンの元患者の
皆さんが裁判にも訴えて、こういう人権回復を求める運動に取り組み、熊本地裁での原告勝訴の判決を踏まえて、国は、ハンセン病問題の早期の全面解決ということで、原告の主張を受け入れ、控訴をしませんでした。そういう中でのこの間の
政府の対応があったわけであります。
二〇〇九年四月に施行されましたハンセン病問題の解決の促進に関する
法律があります。
そこでは、ハンセン病問題とは、隔離政策に起因して生じた問題、つまり国の誤った政策によって生まれた問題なんだ、このことを明らかにして、前文においては、国の隔離政策に起因してハンセン病の患者等が受けた身体及び財産に係る被害その他社会生活全般にわたる被害の回復には、未解決の問題が多く残されている、とりわけ、ハンセン病の患者であった者等が、地域社会から孤立することなく、良好かつ平穏な生活を営むことができるようにするための基盤整備は喫緊の課題であり、適切な対策を講ずることが急がれている、このように
指摘をし、その中で、
法律の基本理念として三点を挙げています。
一つが、隔離政策によって加えられた被害の回復。入所者の生活環境が地域社会から孤立することなく、安心して豊かな生活を営めるよう配慮すること。そして三つ目に、全ての人は、ハンセン病患者であった者等に対して、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはいけない。
このように出されている
法律が全会一致で成立をしたところであります。そういう中での
政府の施策が問われている。
こういう現状について、
平成二十一年七月九日、これは衆参の本
会議で、国立ハンセン病療養所における療養体制の充実に関する決議、これも全会一致で採択をされております。衆議院の決議においてはこのように述べております。
ハンセン病の患者は、「らい予防法」を中心とする国の隔離政策により、偏見と差別の中で多大の苦痛と苦難を強いられてきた。
国立ハンセン病療養所の入所者については、視覚障害などのハンセン病の後遺障害に加えて、その
高齢化に伴い、認知症、四肢の障害等を有する者が増加している。
国は、
平成二十年六月に成立したハンセン病問題の解決の促進に関する
法律の趣旨も踏まえ、国立ハンセン病療養所における入所者の療養の質の向上を図り、入所者が良好かつ平穏な療養生活を営むことができるようにするため、その責任を果たす必要がある。
政府においては、国の事務及び事業の合理化及び効率化の必要性は
理解しつつ、入所者の実情に応じた定員の在り方及び療養体制の充実に万全を期すべきである。
右決議する。
まさに国立ハンセン病療養所の
職員体制について、特別の
措置、配慮を行うべきだというのが国会の決議であります。入所者の療養生活を支えることは国の責任であり、まさに
公務で行うべき仕事となっております。
入所者の
皆さんの
平均年齢は八十二歳を超えておられます。看護も必要です、介護も必要です、さまざまな介助も必要となっております。当然そこには人手がかかるわけであります。
例えば、お風呂にも毎日入れるわけじゃないんです。週に二日とか。どうしても介助が必要ですから、その人手の限りもあって毎日の入浴も楽しむことができない。また、
高齢化もあって、食事の際に、誤嚥、気管の方に、肺の方に入ってしまう、こういう事態がたくさん生じて、これを機に亡くなられる方も少なくないという現状になっております。そういう点でも、入浴や食事の際の介助、介護に人手が必要だということが、より一層ふえてきているというのが今の入所者の置かれている
状況であります。
いわれのない差別によって家族の
皆さんと引き離されたのが、この元患者、入所者の
皆さんであります。そういう入所者の
皆さんにとって、療養所の
職員というのがいわば身内、こういう思いでいらっしゃる。そういう身内の
皆さんの待遇改善を願う、これもまた当然の気持ちではないでしょうか。
しかし、
職員の増員こそ必要なのに、定員合理化計画があります。これで枠がはまっているんです。そのために、五年間で一割減らしましょうという方針、こういう
もとで厚労省の枠もはまり、ハンセンの療養所の枠もはまり、この間減らされてきた。
これは困るということを入所者の
皆さんが訴えて、こういうことについて、それこそ、昨年においては、実力行使決議まで上げて、全国のハンセン療養所の入所者協議会、全療協の
皆さんがいわば直談判を訴えてこられた。官房長官にも要請をされた、こういう取り組みがこの間行われてまいりました。
何とか今年度については現状を維持するという
状況とはなりましたけれども、この先について何らの確約もありません。そもそも、増員を求めてきたのに減らされてきた、それがとまっただけであって、増員という
状況にもなっておりません。
そこで、
新藤大臣と坂本副
大臣にお聞きしたいのは、こういう国の定員合理化計画にそもそも問題があるんじゃないのか。全療協の
皆さん、あるいは議懇の
皆さんも訴えておられるのが、こういった
法律や国会決議がある中で、せめて入所者のいらっしゃる療養所における
職員体制については、定員合理化計画の枠外、例外扱いをしてほしい、こういう特別の要請もされておられるわけであります。こういう
見直しこそ行うべきではないのか。
その点で、こういうハンセン病の元患者、入所者に対する国の責任についても、お感じのところをあわせてお聞かせいただければと思っております。