○小池(政)
委員 みんなの党の小池政就です。
みんなの党は、これまで
憲法に対して、基本理念は維持しつつ、
統治機構の改革を主とする
改正の
内容につき当審査会で述べてまいりました。本日は、幾つか補足という点で述べさせていただきます。
まず、自衛権につきましては、侵略戦争を放棄し、平和を追求するという
前提において、
我が国の
国民と国土はとことん守るという立場から、
我が国を防衛し、また、国際平和に貢献するため、自衛権の
あり方について明確化していくとしてきました。これは、自衛権については、当然、
我が国は、国連憲章第五十一条で定めるように、個別的及び集団的自衛権を保有するものという
前提に基づいております。
集団的自衛権の
検討に当たっては、まずは、今現実に直面している
我が国が自衛権を行使する前の段階での対処や自衛権に基づく行動の中身を
規定したガイドラインの
検討、例えば周辺事態法等を通しての
検討が必須と考えます。
また、仮に集団的自衛権行使を認めるとした際の
手続としても、
憲法解釈の変更は、過去の
国会審議における内閣
法制局からの答弁にあるように、政府の
憲法解釈の権威を著しく失墜させ、ひいては内閣自体に対する
国民の信頼を著しく損なうおそれもあるとの懸念も拭えないことから、結局、
法制局長官のみならず当時の安倍晋太郎外務大臣、谷川和穂防衛庁長官が答弁しているように、
憲法改正という手段をとらざるを得ないという
前提も含めて
検討しなければならないと考えております。
次に、第九十六条についてであります。
みんなの党は、
国会の発議要件を緩和し、
国民投票は維持すると主張してきました。発議要件として
国会両院での三分の二の賛成を要し、後に
国民投票の過半数をもって決するというハードルは、見直す必要があると考えます。
米国でも、確かに議会の上院、下院の三分の二を条件としているものの、地方議会の州の四分の三の賛成があれば効力を持つものとし、
国民投票はありません。また、議会の両院の三分の二の賛成についても、
日本の
規定にある総議員の三分の二ではなく、出席議員の三分の二であり、一万件を超える
修正案の提出により過去二十七回
改正が行われた決議の中では、結果として総議員の半数を少し超える得票で可決された例も見受けられます。
それでは、軟性化するにしても、果たして二分の一が適当なのでしょうか。これは、
国民投票の過半数を要件とする
規定に合わせたものと考えますが、言いかえれば、
憲法改正に対する
国民の
意思と同等の
国会の
意思を要件とすべきで、現状では、
国民の
意思をはるかに超える
国会の
意思が必要であるという
前提に基づいていると考えます。
安倍総理は、本
国会において、同様の
趣旨の答弁を何度も行っております。
例えば、平成二十五年二月八日の
衆議院予算
委員会では、「幾ら
国民の五〇%、六〇%、例えば七〇%の方々が
憲法を変えたいと思っていたとしても、三分の一をちょっと超える
国会議員が
反対をすれば、それは指一本触れることができないということはおかしいだろうという常識であります。」と答弁しております。
ただし、現行の
選挙制度では、
国民の投票による政党の得票率と実際の議席獲得数が大きく異なることもあり、特に、衆院の小
選挙区制、また、参院の
選挙区制では、得票率を大きく超える議席数が得られるということも過去の
選挙結果が示しています。
国民の
意思が過小でなく過大に反映され得る点も、留意する必要があります。
選挙では、確かに、複数の争点が重なり、
憲法改正だけに
国民の
意思が反映されているとは限りませんが、
憲法は国の根幹であり、各政党がどのような方針を示しているかは有権者にはある程度周知の事実であり、その点では、
政党政治を基礎とし、候補者の所属政党を判断基準に投票される
選挙結果が有権者の
憲法に対する一定の
意思を示しているとも言えます。
我が党は、一人一票比例代表制による
選挙制度の改革ということも訴えておりますが、これは、一票の格差の抜本的是正のみならず、政党の得票率をより正確に
国会の議席数に反映させることになり、この場合の総議員の二分の一という要件には根拠が備わります。
国会の発議要件の緩和には、
選挙制度の
あり方を踏まえた上で、どの程度の軟性化を求めるかという考慮も必要と
指摘しておきます。
また、
国民投票に関しては、当審査会でも審議されたいわゆる
三つの
宿題が争点となってきましたが、実際に
国民投票を実施する際の広告、宣伝、報道等の活動についても、再考する余地があると考えます。
国民投票は、テーマが具体的に示されることもあり、これまでの郵政
選挙や政権交代
選挙同様、そして、それ以上に世論が一定の方向に流れやすいという性質を含んでおります。そうであるからこそ、投票に当たっては、より広告や報道の中立性が要求され、
国民が
賛否の両方の
意見に触れることができるよう配慮すべきであります。
この精神に基づき、各議院において組織される
国民投票広報
協議会は、
憲法改正案の
内容や、賛成、
反対の
意見、そのほか
参考となる情報を
国民に提供するものとしています。
しかしながら、現状は、
国民投票広報
協議会以外の広告、宣伝、報道等の活動の
対象と
内容については、全く規制がありません。例えば新聞広告についても、掲載する団体や個人、枠の大きさや
内容等が規制されることはありません。放送法第四条の
一般的規制はありますが、罰則はありません。
唯一の例外として、発議をした日から起算して六十日以後百八十日以内において実施される
国民投票の期日十四日前からは、
国民投票広報
協議会が行う広告放送を除き、
国民投票運動のためのラジオ、テレビの広告放送が制限されるという点のみです。果たして冷静な判断がなされるか、懸念は残ります。
最後に、我々
国会議員には、
国会法に
規定された
憲法改正案提出の条件を満たすことは必ずしも困難ではなく、真に必要な
改正案であれば、第九十六条に限定することなく、廃案となる
可能性も恐れず、
国会内でその
意思を表明すること、審議を通して意義や課題を明らかにするという役割もあることを忘れてはならないと考えます。
以上です。