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橘法制局参事 それでは、御指示に従いまして、二つ目の
宿題である
附則第十一条の
公務員の
政治的行為の制限に係る
法整備に関しまして、
国民投票法制定時における
議論の経過等について御
報告申し上げます。
先生方、お
手元配付の
衆憲資七十四号、これの表紙と目次をおめくりいただきまして、一ページ目の
条文をごらんいただければと存じます。
国民投票法附則第十一条におきましては、先ほどの
附則第三条の場合と同様に、この
法律が公布されてから三年間の
準備期間を経た
平成二十二年五月までの間に、
公務員が
国民投票に際して行う
憲法改正に関する賛否の勧誘その他
意見の表明が制限されることとならないようにとの
観点から、国公法や地公法等の
規定について
検討を加え、必要な
法制上の
措置を講ずるものとされております。
その趣旨は次のようなものでございました。
すなわち、現行の国公法や地公法、その他一般職、特別職のさまざまな
公務員に関する
法令の
規定では、
公務員の
政治的中立性の確保の
観点から、
一定の
政治的目的を有する
政治的行為が禁止されているところでございます。しかし、
憲法改正は
主権者国民としての究極的とも言える権利行使の場面であり、そもそもそのような
公務員制度の土台ともいうべき国家統治の基本構造を決する場面であることに鑑みれば、
公務員といえども、みずからの
意見を表明したり、それに基づいて他人に対して賛否の勧誘をする行為ぐらいは許容してもいいのではないのか、あるいは、許容すべきではないのかという問題提起がなされたところでございました。
しかし、これに対しましては、
憲法改正の
国民投票への賛否はいいとしても、それにとどまらず、他の
政治的目的、例えば特定政党への支持、不支持といった目的をもってする
政治的行為、例えば政党機関紙等の配布などを伴う場合もあることから、純粋に
国民投票の賛否に関するものに限定することを含めて、どのような行為を許容し、どのような行為については禁止することとするのか、その具体的な切り分けを
検討する必要があるとされ、この切り分けについては、本
法制定後三年間の
準備期間の間に、本
憲法審査会において具体的な制度設計の詳細を詰めるべきとされたところでございました。
なお、ここで御注意を要するのは、今申し上げたところからも容易に御
理解いただけますように、この二つ目の
宿題は、
公務員法制全般に関する
見直しという
観点からのものではなくて、あくまでも
憲法改正国民投票に関する限りのものであり、
憲法改正国民投票法の
改正という形で、本
審査会における
議論を通じて議員立法によって
措置することが当然の
前提とされていたということでございます。この点、先ほど御
議論いただきました
一つ目の
宿題が
政府部内における
検討を要請していたものであることとはその趣旨が異なっていることについて、あらかじめ念頭に置いていただければ幸いに存じます。
さて、以上の
附則第十一条の概要に引き続きまして、あわせて、これが
規定されるに至った経緯についてもごく簡単に御
報告させていただきたいと存じます。
同じ
衆憲資七十四号をおめくりいただきまして、その四ページの「
法案・修正案の推移」をごらんいただければと存じます。
この表にありますとおり、提出当初の
法案におきましては、自民・
公明案においても
民主党案におきましても、
公務員の
政治的行為に関する
規定は設けられてございませんでした。それは、
国民投票法の問題ではなくて、一般的な
公務員法制の問題であると考えられていたからでございました。
しかし、
先生方が御
議論を進められていく中で、
資料を一枚お戻りいただきまして三ページをごらんいただきますと、現行の国公法、人事院規則による規制と地方
公務員法による規制とのごく単純な対比を記した図表がございますが、国公法も地公法もともに、
憲法改正国民投票のような制度を念頭に置かずに
制定されているものですから、
国民投票のためだけの純粋な勧誘行為のようなものを想定いたしました場合、国公法と地公法とでその規制にばらつきが生ずることがわかってまいりました。
この現行法の規制の詳細につきましては、後ほど人事院及び
総務省の御担当者の方から御
報告があると存じますけれども、いずれにいたしましても、全国一律に行われる
国民投票の場面に関しては、国家
公務員も地方
公務員も基本的に同様の規制に服するような制度設計が望ましいとの
観点から
検討がなされるべきとされていたところでございます。
その趣旨が、この
附則十一条に定められているところであり、ここに盛り込まれました
法整備の方向性というものは、先ほども御
報告いたしましたように、
一定の行為についてはこれを許容すべきこと、そして、許容されない行為の範囲を明確に切り分けることというものであったわけでございます。
以上、
附則十一条
制定の経過も含めて、その
意味及び趣旨に関する基礎的な事項について御
報告をさせていただきました。ありがとうございました。
〔
会長退席、
武正会長代理着席〕