○笠井
委員 日本共産党の笠井亮です。
冒頭、本日の審査会は、四月十一日の
幹事会で、
国会が波静かならという条件つきで設定されていたにもかかわらず、一昨日、与党がいわゆる〇増五減に関する法案の
委員会付託を強行したもとでこうして開会されたことに強く抗議するものです。
第七章
財政で重要なことは、
冒頭の八十三条で
財政民主主義を総則的に宣言したことを初め、国の
財政運営においても
憲法の
国民主権の
原則が貫かれ、恒久平和主義、
国民の人権保障に資するよう、その
規定を定めたことです。これは、単に手続的、形式的なものではありません。
明治憲法下では、
財政に対する
議会の
関与が厳しく制限されるもとで、日本が起こした侵略戦争遂行のために国債を乱発し、国の
財政と
国民生活を破綻させました。このことへの反省から設けられた重要な
原則なのであります。同時に、一二一五年のマグナカルタ以来の、
財政立憲主義、
財政議会主義の思想を取り込んだものです。
だからこそ、第七章では、
財政に関する
国会によるコントロールについて
規定しています。この第七章の
規定に照らせば、現実の
財政運営にはさまざまな問題があることを指摘しなければなりません。
第一は、税金の集め方の問題です。
戦後、日本の税制は、
憲法の
租税法律主義に基づいて、直接税中心主義、生計費非
課税と、負担能力に応じた累進
課税、申告納税
制度という
原則のもとに出発しました。これらの
原則は、経済所得格差の縮小、緩和を図り、所得再配分機能を果たすという点で重要な意義を持つものです。
ところが、歴代
政府はこの
原則を踏みにじって、累進性の緩和、消費税の導入などによって所得再配分機能を著しく低下させ、富める者はますます富み、貧しい者からは厳しく取り立てる
制度へと変えられてきました。
所得税は、かつて七五%だった最高税率が現在は四〇%となり、
課税の累進性が大幅に緩和されています。その結果、所得が一億円を超えると、大金持ちほど税負担率が減少するという不公平が生じているのです。
消費税は逆進性が強く、生活に必要な
支出にも容赦なく
課税されるという点で、直接税中心主義、生計費非
課税、累進
課税という
原則のいずれにも逆行する最悪の税制です。
政府は消費税一〇%への増税を実施しようとしていますが、税制による貧富の格差を一層広げるもので許されません。
一方で、大企業、富裕層に対してはさまざまな優遇税制を設けています。かつては四三・三%だった法人税は、現在、二五・五%にまで引き下げられています。中小企業の七割が赤字であることから、その恩恵の大部分は大企業が受けています。ほかにも研究開発減税、連結納税
制度など、大企業には至れり尽くせりです。株の配当、譲渡所得への
課税も証券優遇税制で二〇%から一〇%に、半分に減税されています。預貯金利子所得への
課税が二〇%であることから見ても極めて不公平であります。こうした税制を本来の
原則に立って正すことこそ
憲法の要請なのであります。
第二は、税金の使い方の問題。三点述べます。
一つは、
国民生活にかかわる
予算が抑えられてきたことです。
憲法が要請する
財政運営で最も求められることは、
国民の人権保障に資するということです。ところが、歴代
政府は、自助、共助の名のもと、福祉、
教育などの
予算を削減してきました。特に
憲法二十五条に基づく生活保護は最も手厚い
財政措置を必要としています。にもかかわらず、歴代
政府は
財政難などを口実に生活保護費を削ってきました。さらに
政府は、物価下落などを理由に、生活扶助費を三年間で最大一〇%も削減しようとしています。月額二万円も減らされる世帯もあり、貧困と格差を一層広げるものです。
地方交付税の削減も生活保護の切り下げに連動するものです。これらは
憲法が保障する
国民の生存権を脅かすものと言わなければなりません。
二つは、人権保障に資するべき
予算を抑える一方で、大企業支援には多額の税金がつぎ込まれてきたことです。
最近では、成長戦略の名のもとに、国際競争力
強化、海外展開を支援するために
財政援助をしたり、
他方で、産業空洞化対策と称して、そのほとんどが大企業向けである国内立地補助金を出したりしてきました。金融システム安定化を口実とした金融機関救済のための公的資金投入の仕組みや、福島第一原発事故を起こした東京電力を救済するための公的資金投入のスキームを設けるなど、大企業の利益優先の
予算を編成してきたのであります。
三つは、
憲法九条のもとでは許されない軍事費が米国への従属関係のもとで確保、増額されてきたことです。
一九五〇年、米国の強い指示のもとに警察予備隊が創設され、日本の再軍備とともに軍事費が確保されるようになりました。サンフランシスコ条約、日米安保条約締結後は、米軍の補完部隊としての自衛隊増強のために、一九五八年から防衛力整備
計画が策定され、それに従って軍事費も着実に増額されてきました。九〇年代後半以降、五兆円規模の軍事費を維持していることは極めて重大です。
在日米軍に対しても、一九七八年、日米地位協定上も何の根拠もない思いやり
予算を計上したことを初め、最近でも米軍のグアム移転のための経費を
支出しています。この現実を、
憲法上、
財政法上、どう
説明するのかが根本から問われています。税金の使い方についても、
国民の人権保障に資するという
憲法の要請に沿った
財政運営へと根本から転換すべきです。
以上、
意見表明とします。