○渡辺
参考人 お答え申し上げます。
その前に、これから申し上げることは、特段、国際協力銀行の役員としてということではなくて、私の個人的見解ということで述べさせていただきます。
このロイターの記事は、二十五分ぐらいしゃべったものをまとめてありますので、そういう意味で、少しつながりが直接的になっているかもしれませんけれども、表題に即して申し上げますと、まず、
中国の場合には、今世紀の初めにかなり銀行の不良債権が積み上がっていったんです。その後、中央
政府が努力をして引き下げをしていったんですが、やはり、二〇〇八年のリーマン・ショックの後に、
中国も景気を刺激しなければいけないということで、地方
政府がさまざまな
投資をやり、あるいは中央
政府も国債の発行をしてまで
投資を行ったわけですけれども、それが必ずしも効率のいいところに回っていたわけではない。
それから、地方
政府の場合、その後、若干惰性がついて、もうそろそろやめてもいいようなタイミングであってもなおかつ
投資を続け、そのときに、地方の銀行あるいは中央の銀行の地方の支店に、ある程度一緒に金を出せという形で資金手当ての割り振りをしたものがありまして、これがかなり今不良債権化しているのではないかというふうに言われております。
銀行業監督
委員会の方でも、既に、二〇〇五、六年に比べると、かなり比率が上がっているということが言われておりますし、外の方の見方は、多分、
中国政府の発表しているものより何倍か多い不良債権があるのではないかということが言われているというのがまず
一つございます。
それから、もう
一つは
年金でございますけれども、
中国の場合は、
日本と同じような形で高齢化がかなり進行しておりますし、特に一人っ子政策をとっていたということから、ある程度の時期からはかなり
日本より早目に高齢化が進んでいくということになりますと、
年金制度もつくり上げられているわけでありますが、制度をつくりましたのが比較的遅かったものですから、過去においてまだ支払いがないときにどっと積み上げておいてそれを取り崩していくという
日本型の期間というのはそう長くはとれない。かなり早く、
年金の支払いが始まった瞬間から、いわゆるペイ・アズ・ユー・ゴーで、毎年払うものは毎年調達しなければいけないという時期に入ってくるということが予測されております。
そのときに、もちろん若い人から保険料を取る、あるいは増税をするということもありましょうけれども、必ずしもそういうことが許されない場合には、何らかの形で調達をしろというプレッシャーがかかってくるだろうというふうに言われておりまして、
一つのやり方は、どこの国でもそうですが、とりあえず国債でということを考えるわけでありますけれども、国内的にこれからさまざまなことをやるのに、国債の発行をそういう
年金の支払いだけに回せるかどうかということについて若干懸念がある。
それから、国内で調達をするのか海外で調達するのかという、そこの選択はあるわけで、とりあえず今のところ
中国についての信認というのは余り崩れておりませんので、今世紀に入ってから、かなり大規模に海外で国債の発行をしておりますけれども、最近、少し
中国の今後の政治あるいは経済情勢について懸念が示されている中で、国債の発行が外でもなかなかしにくいということになりますと、
年金の支払いに必要な資金の調達を、保険料の引き上げ、あるいは増税、あるいは国債の調達ということで必ずしもうまくいかない時期が来るおそれがあるというふうに言われております。
そうなりますと、どこでもよく議論があるんですが、外為の準備の方を結構今持っております。公式ベースでも四兆ドルありますし、それから、既にCICや何かに委託したものも含めれば五兆ドル近く持っているわけでありますから、これを使えという話は必ず出てくるだろうということがあります。
特に、
中国の場合は、銀行の不良債権処理については、今世紀の初めに、外準から資本注入をするということを既に先例としてやっておりますので、そういうことがあり得るというのは、かなり高い確度でみんなが懸念しているわけであります。
そうなりますと、外準を売るということは、かなりの部分を米国債で持っております、もちろん
日本の国債も持っているわけですが、圧倒的なウエートを米国債で持っておりますので、その外貨準備を使ってそういう
年金の支払い、あるいは不良債権処理のための資本注入のために資金を使うということになりますと、その段階において米国債を売るということが起こってくる
可能性がある。
それをなるべくやらない、あるいはやるにしても、非常にいわゆる秩序立って、どかっとまとめて売ることなしに、マーケットを散らさないようにしてほしいという話は、我々もあるいは
アメリカ政府も既に
中国としているわけでありますが、そうはいっても、せっぱ詰まったときに何が起こるかということについては我々としては少し準備をしておかなければいけないということで、少なくとも、先進国側のマーケットを持っておりますG7等においては、そういうことについてもある程度頭の体操というか準備をしておかなければいけないというのが、ここで書いていただいた
趣旨でございます。
長くなりましたが、申しわけありません。