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公述人(
藤井聡君) 本日はかような
機会をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございます。
京都大学大学院並びに
京都大学レジリエンス研究ユニット長を務めさせていただいてございます
藤井でございます。よろしくお願いいたします。
本日は、
皆様におかれまして、お
手元の
資料、私の名前の記載させていただいておりますこちらの
資料を御覧いただければと思います。なお、この
資料は
京都大学の
藤井聡のホームページでも公表いたしているものでございます。
本日は、
我が国日本の
国家予算の在り方を考えるに当たりまして極めて重大な
お話をいたしたいというふうに考えております。それは、
専門家の
皆様方の中には少なくともその一部、少なくともその一部でございますが、もちろん全てではございませんが、極めて重大な虚事が含まれていることがあるということであります。多くの
先生方、国民の
皆様方は、そんなばかなというふうにお感じかもしれません。しかし、世の中、うそ話がまかり通るということは何も珍しいことではございません。
例えば、
資料の二ページ目を御覧ください。今から七百年も前、鎌倉時代の吉田兼好の徒然草の一節でございます。「世に語り伝ふることまことはあいなきにや多くや皆虚事なり」、これは、つまり世間で言われていることはほとんどうそ話だということでございます。さらに、「いひたきままに語りなして筆にも書きとどめぬればやがてまた定まりぬ」、つまり、学会やテレビ等で好き勝手なことを言って、そのうち筆にも書きとどめぬれば、すなわち教科書とかペーパーになってしまえば、どんなうそ話でも正しいものとされ、挙げ句に政策や法律にまで定まってしまうという恐ろしい
お話でございます。これは、今より
日本人がずっとずっと立派であったであろう大昔の話でございますから、今はそうであっても何も不思議ではないということが御理解いただけるかと思います。
では、本当に
専門家の
皆様方の中に本当に間違ったことを口にしておられる方がいるのかどうかということについて、本日は、中でも特に
予算編成上極めて重要な三つの虚事ではないかという疑いのある
お話を告発申し上げたいと思います。
一つ目の
お話、それは三ページ目を御覧ください。
消費税増税のインパクトは限定的だという
お話でございます。
四ページを御覧ください。これは、まず異なった
理論的見地からのグラフでございますが、宍戸駿太郎先生のマクロモデルDEMIOSに基づいて、
消費税増税のインパクトを幾つかの
ケースで計算したものでございます。御覧のように、
増税後すぐには
影響は出ないのですが、どの
ケースでも三年目辺りから景気が大きく減速します。これは、ある年次の
消費税増税のインパクトは数年間、単年度ではございません、数年間続くこと、そして、三年ほどたてばその前年、前々年の
増税インパクトが累積をして大きく景気が減速していくこと、これが原因でございます。言わば、
消費税増税は幻の格闘技の技の三年殺しのような
効果を持つわけでございます。
もちろん、これは特定のたった
一つのモデルの計算結果ではございますが、真っ当なモデルであれば、それらはいずれも同様の
効果を算定していることが知られております。
五ページを御覧ください。御覧のように、
一つの例外を除いて、たった
一つの例外を除いて、どのモデルも、五年もたてば、一年ではないです、五年もたてば
消費税増税によって四から六%
程度GDPが毀損することが示されております。
なお、その挙動不審のモデルとは、何と
政府の
内閣府のモデルでございます。驚くべきことに、このモデルは
消費税増税の破壊的インパクトは年々なくなっていくという、私ごときには
理論的には全く理解できない挙動を取ってございます。
このような重大な疑義をはらんだモデルをいまだ使い、これによって
消費税増税を正当化しているのだとすれば、それは
政府の国民に対する詐欺、詐称であるという重大な疑義が、断定はしておりません、疑義が浮かび上がります。是非、本モデルの抜本的見直しを
政府に強くお申し入れいただきますよう、国会の
先生方に平にお願い申し上げたいと思います。
さて、以上が
理論的な指摘でございましたが、経験的にはどうかという点について六ページを御覧ください。
これは、幾つかの事例があるんですが、最も分かりやすい事例を今日は持ってまいりました。一九二九年のアメリカの大恐慌のときの
政府の借金の対GDP比率のグラフでございます。御覧のように、
消費税の導入を始めとした緊縮
財政をしいたフーバー大統領期、
財政は明確に
悪化し続けております。借金は増え続けております。
増税をしたのに借金が増え続けていると。ちなみに、積極
財政をしいてからそれが減っていくという
構造でございます。このときの
消費税導入後、GDPは何と約半分にまで失速しております。
この歴史的事実を踏まえれば、
消費税増税の
影響は限定的だという話が単なるうそ話であるという疑義が、当然ながらこれ疑義でありますが、疑義が濃厚であるということが分かります。
では、次の
お話に参りたいと思います。七ページを御覧ください。
それは、
社会保障費の自然増に対応するには
増税するしかないというものでございます。これは、学者の
先生方のみならず多くの政治家、メディアが繰り返し喧伝するもので、国民もそれはそうだと信じ、だから
増税も仕方がないと考えている風潮があるように思います。しかし、これも極めて悪質な、真っ赤なうそである疑義が濃厚であります。
八ページを御覧ください。この図の棒グラフがGDP、赤の折れ線グラフは
税収なのですが、御覧のように全くもって両者はぴたりと一致してございます。これはもう当たり前のことでございますが、GDPが増えれば
税収が増えるという、当然の結果、ことを
意味してございます。
こうした
関係は、一般に、先ほども
お話ございましたですが、
税収弾性値という数値で表現されているのですが、先ほど御紹介のあった昨年末の
財政制度等審議会のペーパーが、こちらがあるんですけれども、これを精読いたしますと、このグラフに示されている名目GDPと
税収がよく一致しているという事実を、何と、あえて科学的でないと、これだけ一致しているんですけれども、あえて科学的でないといって切り捨てて、あえて
経済成長による
税収増分は低いと、先ほど数値のあった一・一という数字を、これは私の目から見て、私は林知己夫賞という統計学の賞を取ったことがあるんですけれども、私の統計学の
専門家の見地からして、何言うてはんのやろうというふうな感触を受けるような結論を付けておられます。しかし、学者として断定いたしますが、その部分の議論は極めて非科学的であって、統計学的にはでたらめとすら言い得るような議論が掲載されています。
したがって、
経済成長による
税収増分は低いという結論は極めて重大な誤謬が潜んでいる、これもまた疑義でありますが、疑義が濃厚であり、そのペーパーに書かれているよりもずっと高い
税収弾性値が実態である
可能性が極めて濃厚であると申し上げたいと思います。
更に言いますと、
消費税率には常識的な上限があって、ずっと上げ続けていくということはこれは不可能であります。しかし、
社会保障費は当面の間増え続ける見込みだということは皆さんも御案内のとおりでございます。ですから、
増税で高齢化社会に対応という論理そのものがはなから破綻している疑義すらも考えられるわけであります。一方で、国民と
政府の努力さえあれば、
経済成長には制限がありません。ですから、高齢化社会に対応するために今目指すべきは、
増税ではなく
経済成長しか考えられないということを断定的に申し上げておきたいと思います。
では、
経済成長は可能なのでしょうか。もちろん、それは可能であります。しかし、多くの
専門家の皆さんは、もう
経済成長なんてできないという論調をいつも、いつも、いつも口にされます。しかし、もちろんそれは真っ赤なうそである疑義が濃厚であります。
九ページを御覧ください。これは、本日最後の、三つ目のうそである疑義があるのではないかという
お話の紹介でございますが、それは、積極
財政では
経済は
成長しないという
お話でございます。
彼らは、積極
財政は民業を圧迫したり、円高を誘発したりして、結局、積極
財政の
効果は相殺されると、これはノーベル
経済学賞のモデルもあるんですが、相殺されると主張をいたします。そうした論理の全ての根底にあるのが、
国債を発行すると
金利が上がるという論理なのですが、これがそもそも事実と乖離しているということを
お話ししたいと思います。
十ページを御覧ください。御覧のように、
国債発行が年々増え続けてございます。しかしながら、この
理論に反して
長期金利は年々、これ
理論的には上がっていくはずでありますし、
理論が間違っていれば一定でもいいんですけど、何と真逆に、低下し続けているという訳の分からない、
理論的には訳の分からない行動を取ってございます。したがって、このグラフ一枚で、積極
財政では
経済成長しないという
理論、論理そのものが現在の、現状の
日本においては破綻している、適用できないということが分かります。
そのことは、十一ページのグラフからより明確に示されております。このグラフは、いろいろな情報を掲載しておりますが、一番下のちょっと分かりにくいんですが、緑色の
財政収支の折れ線だけに御着目ください。これは、
政府の収入、つまり
税収と出費との差額、
財政収支を示してございます。
御覧のように、バブル期、右肩上がりで
財政収支は改善していきます。しかし、九一年のバブル崩壊で、当然ながら一気に右肩下がりに
悪化します。赤の矢印書いているとおりであります。しかし、このとき積極的な、徹底的な積極
財政を行った結果、九三年ごろから
財政は改善し、
財政収支の
悪化は和らいでいきます。
ところが、九七年に、
増税をする、緊縮
財政を採用した途端に、
財政は再び右肩下がりに
悪化いたします。ただし、それを見かねた小渕先生が九九年に徹底的な積極
財政を果たします。そうすると、右肩下がりだった
財政収支は一気に、これは一気にですよ、V字回復をし、右肩上がりに改善していきます。しかし、翌年には、残念ながら小渕先生は他界されます。そして、残念ながら、本当に残念なんですが、その後、小泉
内閣による徹底的な緊縮
財政が再び始められ、御覧のように二〇〇〇年ごろ、せっかく
財政収支が改善していたのに、その改善がぴたりと止まってしまったのであります。
つまり、この経緯を素直に、虚心坦懐に御覧いただきますと、積極
財政は確実に
財政を健全化させていることは明白でございます。
一方で、緊縮
財政を始めた橋本
内閣、小泉
内閣は
財政を
悪化させてしまったということが過去の
日本の実際の経験なのであり、これはさきに紹介したアメリカの大恐慌の経験とぴたりと符合しているのであります。このことはつまり、
財政出動は無効だという話が完全なるうそ話である疑義を明確に示しております。
その点をより具体的に示したのが十二ページでございます。この赤い線は名目GDP、青い線は公共事業費、この左肩が上がるのが公共事業費で、右肩がこう伸びているのが、灰色の線がこれは輸出であります。御覧のように、赤い線のGDPは、公共事業が多いときには伸び、あるいは輸出が伸びるときにも伸びているのであります。そして、どちらも小さくなればGDPは
縮小をすると。
これは定義上当たり前なんでありますが、定義上自明なのですが、統計
分析からは、公共事業のGDP
上昇効果が輸出のそれの実に四倍
程度であるということが示されています。この手の
分析は、いろんなやり方によっていろいろと変わってくることはあるんですが、いずれにしても、この結果は、積極
財政では
経済は拡大しないという説が明らかにうそであるという重大な疑義を、これもまた疑義でありますけれども、明白に示しているのであります。
このように、
消費税増税のインパクトは限定的だとか、高齢化社会では
増税は不可避だとか、積極
財政では景気拡大は無理だとかいう話は、全て論理的に実証的に簡単に論駁できる完全なうそ話である疑義が極めて、極めて濃厚であるのでございます。
では、真実の正しい
経済政策というものはどういうものなのでしょうか。
十四ページを御覧ください。この表は、インフレ期と
デフレ期でなすべき
経済政策を完全に入れ替えるべきであると。インフレのときはインフレ
対策、
デフレのときは
デフレ対策をすべきであるということを主張するものであります。
インフレとは、そもそも
経済が過熱し過ぎている
状況ですから、その熱を冷ますために緊縮
財政、
増税等が当然必要になってまいります。一方、
デフレのときには、
経済が冷たくなっている
状況ですから、
経済を暖める
対策が必要であります。だから、
デフレのときには
消費税増税、例えば、あるいは公務員人件費削減等の
対策などは論外中の論外なのであるということを強く申し上げたいと思います。それとは逆に、投資減税などの積極
財政などが必要なのであります。つまり、インフレか
デフレかの
状況を見ながら、適切なタイミングで適切な
経済政策を図ることこそが正しいやり方なのであります。
しかしながら、これは言われてみれば本当に簡単な話で、中学生でも分かるような話だと思うんですが、
専門家の方はこの簡単な
お話を口にされません。なぜか。その答えを十五ページに書かせていただいております。
実は、大恐慌以降、ケインズ先生の
理論のおかげで、
日本という唯一の愚かな例外を除いて、
デフレは世界中で生じなくなりました。その結果、皮肉にもケインズ先生は、ケインズ自らのお力のおかげでケインズは死んだと言われてしまったわけであります。そして、インフレを前提とした
理論だけが発展し、それが学会や定説の教科書として定まってしまったのであります。だから、今多くの
専門家が
デフレに対する処方箋を知らないという事態を迎えることとなったのであります。
ただし、リーマン・ショックを経験したアメリカでは、既にここで申し上げた正しい
経済政策の議論が始められております。是非、
我が国日本でも、そんな当たり前の、
理論的、思想的な大転換を全ての学者の
先生方、そして全ての政治家の
皆様方が果たさなければならないのではないかと、一人の学者として強く、強く強く強く申し上げたいと思います。
では、結論でございます。十六ページを御覧ください。
論理的、実証的、理性的に考えれば、
デフレの今、
消費税増税などによる緊縮
財政は、
デフレを
悪化させ、
財政を
悪化させ、倒産と失業者を増やし、そして自殺者数を増やし、挙げ句に被災地復興の大きな妨げになるということは、ささいなもので恐縮ではございますが、私の学者生命の全てを賭して断定いたしますが、明々白々なのであります。景気
対策、被災地復興、円高
対策、そして
財政健全化のために、
財政健全化も含まれてございます、
財政健全化のために今求められているのは、積極
財政をおいてほかに何もございません。折しも、東
日本の被災地に必要なのは積極
財政であることは万人が認めるところであります。
さらには、
我が国は今、首都を壊滅させ得る直下地震が十年以内に十中八九の
可能性で起こるであろうことが、そして、東
日本大震災の十倍以上もの被害をもたらし得る西
日本大震災も、二十年以内に同じく七、八割の
可能性で生ずることが予期されております。それに対する備え、すなわち国土強靱化には、例えば年間で十兆円や二十兆円といった規模の
予算が求められております。
しかし、今回の
予算ではそれはたった四千八百億円しか計上されておりません。これは本当に必要な水準のたった数%、
消費税よりも低いぐらいの水準のことしか計上されておりません。この
程度の
予算であれば、
我が国は何百兆円もの
経済被害を受け、何万人、何十万人もの民が、無辜の民があやめられることとなるでしょう。逆に、十年累計で例えば百兆円、二百兆円の
財政出動があれば、
日本の
デフレは終わり、力強く
経済が
成長し、国土が強靱化され、多くの、多くの
日本国民が救われることとなるでしょう。
この当然の理性的議論を全て忘れ去り、万が一にも
財政を出動せず、
財政規律を過度におもんぱかりつつ
消費税を
増税するような愚策がまかり通ったとするならば、その方針は経世済民、つまり、民を救うどころか、ただただ何百万、何千万という民を苦しめ続けることになることは必定なのであります。
そうである以上、
政府そして国会の
先生方には、もうこれ以上虚事に惑溺されて国民をあやめ続けるような蛮行を今すぐに、今すぐにおやめいただく勇気をこそ今まさに持たれませんことを、私が懸けることができる全てのものを懸けまして、心から強く強く祈念いたしまして、私の公述とさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。