○
参考人(
吉田数博君) 私ども、一年四か月避難をしているわけですが、私どもの議会の思いというものを若干述べさせていただきたいと思います。
まず、原発事故による避難というのは自然災害に伴う避難とは全く異質であるということを御認識いただきたいと思います。と同時に、原発は多重防御に守られているので事故は起こらないという安全神話の下ではなかなか思った避難は当然できませんし、避難がうまくいくはずがありません。
今回の避難に当たって、我々は、冬期間は西に逃げるということで
対応してまいりましたが、その中でも、特に阿武隈の山並みを越えれば一安心という思いがございました。また、感覚的に長期の避難はないだろうという思いでございましたが、ましてや、三十キロ地点の津島支所に
対策本部を移したわけですが、その
対応は非常に困難を極めたものであります。まず、想定を超える避難者の数、それに伴って、その避難者の場所の確保、あるいは食料、燃料の不足、すぐに風評被害がありまして、救援物資が届かない、あるいは救援に向かうバスが全てキャンセルされるという陸の孤島化の
状況でございました。その中でも、何とか十五日には二本松市に移動し、温かく迎えていただきましたが、まずこれほど多くの町民がばらばらに避難をするとは思っておりませんでした。
その中で、少しずつ避難生活が落ち着いた中に大飯原発の再稼働の話があったわけでございますが、私ども浪江町議会は、六月の二十日に本
会議で原発の再稼働決定の撤回を求める意見書を採択をいたしまして、直ちに
関係大臣に送付をさせていただきました。
政府は、再稼働決定に当たっては、事故防止の
対策と体制は整っており、安全基準を
確認したとされております。しかし、我々被災町民、被災県民から見れば、これを認めるわけにはいかないというスタンスであります。
今、我々被災者はふるさとを追われて、今もって童謡の「故郷」の歌が歌えません。また、このようなあしたが見えない過酷な
状況の中にあって、事故の検証のない今、なぜ福島の悲劇を二度と繰り返すようなことになるのかということで撤回を求めたものであります。
私どもの自治体、浪江町が浪江町として残っていけるのかどうかが問われている事柄でもあります。また、全国の、先ほどから
議論をされております原発立地自治体あるいは周辺自治体の方々においては、経済優先あるいは雇用の確保等を考えれば、ある程度その容認やむなしの
立場も一部理解をいたしますが、一方、人の命の重さ、特に何の責任も持たない子供たちにその将来を奪っていいのかということが大人の責任として問われていると思っております。安全の担保を国だけに委ねていいのかということであります。
また、最終的には、それを地元自治体に、自分自身の背中に返ってくるということだと考えておりますので、私は再稼働を認める
立場にはありませんけれども、再稼働を考える、あるいは判断をされる場合、その一助として被災地の現状をそれぞれの目で
確認をしていただきたい、そんな思いでございます。
また、先ほど
佐藤先生から言われたように、原発の
対策に当たって覚悟が必要だとおっしゃられました。まず、原発事故の
対策、原発再稼働
対策、あるいは新しいエネルギー
対策のもろもろの課題について、国、
国会の覚悟が問われていると思います。この国の十年後、五十年後、百年後を見据えたあるべき姿を国の責任において明示していただいて、覚悟を持って取り組んでいただきたい、そんな思いでございます。