○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。
私は、ただいま
議題となりました
平成二十四年度総
予算案に対する
反対の
討論を行います。
我が党は、先月八日の
衆議院予算委員会において、
平成二十四年度総
予算案に対する修正動議を提出しました。この修正動議は、私自身、この十年間にわたり心血を注いで開発した国家
財政ナビゲーションシステム、国ナビを用いて作成いたしました。
私が
政治家を志した原点は、公会計
制度改革、すなわち、国家
財政の複式簿記化を通じて、
政府の意思
決定、とりわけ
財政政策の
責任を数字で明らかにしたい、そして、そのことによって
日本の
財政を持続可能なものとし、世代間の公平を実現したいと考えたことにあります。国ナビを用いて作成した様々なシミュレーション結果を含む財務情報は、国家を経営すべき
立場にある私たち
政治家にとって極めて重要です。
国家経営とは、ビジョンを実現する力です。すなわち、ビジョンを示す数値
目標の設定、そしてその実現のための
政策手段の選択、
政策実施の進捗管理、
経済効果のフィードバック、そして
政策手段の補正。これら一連の国家経営のプロセスにおいて、バランスシートを始めとする複式簿記による財務諸表の数値は、国家の経営者たる
政治家が
政策判断を行う上でなくてはならないものです。
さて、公会計の観点からすれば、
参議院での
予算案の否決は問責決議案の可決と同等の意味を持ちます。それほど重大な意味を持つ
政府の
予算案に対する
反対の
理由は、以下の三点です。
第一に、純計ベースで二百二十八兆円にも及ぶ国の総
予算、すなわち、一般会計、
特別会計の組替えが全くなされていません。
政権交代時の
民主党マニフェストでは、国の総
予算二百七兆円を全面組替えし、十六・八兆円の
財源を捻出するとうたっていました。しかし、現実には、一般会計、
特別会計、
政府関係機関予算という総
予算の組替えは一切なされていません。それどころか、
平成二十三年度の
予算編成過程では、一般会計の
歳出総額から
国債費、
地方交付税、
社会保障関係費、そして予備費を除いた僅か二十四・九兆円に総
予算組替え対象経費という、羊頭狗肉、竜頭蛇尾の名称を用いていましたが、
平成二十四年度の
予算編成過程ではさすがに恥ずかしくなったのか、そのような名称も姿を消しました。
平成二十四年度
予算案で見れば、純計ベースでの総
予算は二百二十八兆円に達します。これの全面組替えがなぜできないのか。
官僚主導で編成される
予算案には、どうしても逃れられない欠陥があります。
憲法八十三条に言う国の
財政処理権限の
国会中心原則によれば、単なる法の執行機関にすぎない
官僚の意思
決定には、
国民の代表として
選挙で選ばれたという正当性の根拠が欠けています。したがって、最強の権力を誇る財務
官僚といえども、
予算編成に当たり、直近で
国会での議決を経た前年度
予算をベースとするほかはなく、対前年度比で幾ら増額するか、
削減するかという限られた範囲内でのみ査定権限を行使できるのです。また、立法府である
国会の議決を経ることなく、既存の法
制度に基づく義務的経費を一方的に
削減することもできません。要するに、立法府である
国会に属する我々
国会議員自身が意思
決定しない限り、総
予算の組替えなど、しょせん不可能なのです。
我が党の修正動議において、我々は、一般会計、
特別会計を連結した国の総
予算二百二十八兆円を文字どおり全面的に組み替えました。国ナビによるシミュレーションを実施した上で、一般会計の歳入
歳出二千六百七十一
項目、三十兆八千三百四十五億円を
削減、
特別会計の歳入
歳出八百九十五
項目、九兆八千二百九十七億円を
削減、総
予算全体では実に四十兆六千六百四十三億円の
削減を実現しました。
第二に、
政府案では、本来、一般会計に計上されるべき基礎年金の
交付国債二・六兆円、そして、震災を
理由に新たな
特別会計に区分経理された
復興関連
予算三・七兆円を加えれば、九十六兆円を超える史上
最大の当初
予算案となります。
消費税を始めとする
増税のみ先行し、
歳出の圧縮は全く不十分なままです。
これに対して、我々が国ナビを用いて作成した修正動議の概略を説明します。
消費税収十・四兆円を全額
地方移管し、その分、
地方交付税を圧縮します。いわゆる埋蔵金八・五兆円を吐き出し、
政府資産・負債を両建てで圧縮します。補助金等の移転支出を一律二割カットすることにより、十七・九兆円を捻出します。まず、一律大幅カットという大なたを振るった上で、緊急性と重要性のあるものだけを復活させる査定にしなければ、
歳出削減は絵にかいたもちとなります。
議員歳費三割、公務員人件費二割をカットし、一・一兆円の身を切る節約をします。そして、歳入庁の設置により、国税庁と
日本年金機構の法人情報を統合するだけでも三兆円の増収効果が見込めます。
これらの
予算修正により、総
予算全体では、
政府案に比べて、
行政コスト二十一・一兆円の
削減、負債残高二十二・六兆円の減少、
債務超過額十四・一兆円の改善を実現します。また、総
予算全体のプライマリーバランスの
赤字は、
政府案よりも十二・六兆円改善し、七・一兆円にまで縮小します。
また、
政府案では、
社会保障関係費の増大を放置したままであり、既に一人当たり一億円にも達する世代間格差が更に拡大するばかりです。
野田総理は、
消費税を全世代で公平に負担を分かち合う安定
財源とおっしゃいますが、
消費税のライフサイクルを通じた負担の変化を考えれば、
消費税の
増税は世代間格差の是正にはほとんど効果がありません。また、全世代
対応型の
社会保障というのも名ばかりで、
政府の資料によれば、
消費税増税を
財源とする子供向けの
歳出増加は僅か七千億円にすぎません。
我々は、世代間格差を是正するため、即時に世代別積立方式に移行する新たな公的年金
制度とともに、世代別勘定を設置した新たな公的医療保険
制度の
法案を準備しています。一般会計から移転される
社会保障関係費を最小限度に抑制する、安定的な
社会保障制度を一日も早く確立すべきだと考えます。
第三に、
政府案では、
財政・
金融政策、すなわち、全体としての
マクロ経済政策の方向性が全く見えません。
バブル絶頂期の一九九〇年から二〇一二年の現在に至るまで、マクロ
経済指標の上で
日本経済は一貫して衰退してきました。名目GDPは四百六十兆円前後のままでありながら、かつては年間七十から八十兆円台にあった貯蓄も純投資も、ほぼゼロにまで落ち込みました。付加価値を生む新たな産業に対する有効な投資がほとんどなされていません。
今、
日本社会には、至るところに既得権の塊がごろごろしています。既得権益化し、付加価値を生まなくなった分野に資金が流入し続ける一方で、新たな付加価値を生み出すイノベーションも生まれず、あらゆる分野で新規参入が阻害されています。競争なきところに付加価値なし。GDPとは付加価値です。商売上の言葉で言えば粗利であり、売上総利益です。売上げが全てを癒やし、利益こそ
経済持続の要件となります。
政府がなすべきは、敗者復活のセーフティーネットを
整備した上で、あらゆる新規参入規制を撤廃し、自由で公正な金融資本
市場、そして流動性の高い労働
市場を形成することにあります。その上で、新たな付加価値を生み出す可能性は高いけれども、その分、リスクも高く、大
規模な資本を要する産業分野に
政府自らが投資を行うべきです。
私はこれまでも、
政府が日銀に百兆円
規模の
経済復興基金を設置することにより、
政府債務を増加させることなく、例えば
再生エネルギーや大容量の蓄電池の研究開発等を
財政政策として実施すべきだと主張してきました。
デフレ脱却と同時に、新たな
経済成長に資する未来への投資を
財政・
金融政策を一体化させる中で進めるべきだと考えます。
以上、国家
財政の複式簿記化と、
予算編成における国ナビの活用を通じて、国家経営におけるイノベーションを起こすべきときであることを指摘して、私の
反対討論を終わります。(
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