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古川俊治君 ありがとうございます。
さすが、私の大変尊敬する細川
先生からの御答弁をいただきまして、本当うれしいところでございます。
矛盾はないとおっしゃっていただきましたけれども、この刑事訴訟法の体系を引き継いだから矛盾ではないというのは、ちょっと形式的な議論だと私も思うんですね。大きな元々の矛盾というのはこの刑事訴訟法二百二十九条に基づく体系にございまして、この矛盾のある体系をそのまま引き継げばやっぱり矛盾が残っちゃったというのが今回の
法案だと思います。
そもそも刑事訴訟法が予定している犯罪に起因しないことが明らかな
死体というのは、実際にこれはどういうものが考えられるかと考えたときに、ほとんどないんですよね。例えば、公衆の皆さんの前で自殺のような行為をされた方がいるかもしれない。ただ、この方も、何か薬物を飲まされて、その結果として幻覚に陥って飛び込んだのかもしれないわけですね。あるいは、高齢者の方が独り暮らしのように見えて、老衰で亡くなった、これは老衰死だろうと思う。これは今まで非犯罪
死体の典型として扱われてきたやつですよね。しかしながら、それをよく考えてみますと、家族が衰弱した方を意識的に放置したと、これは当然犯罪なわけですね。こういうことも十分
可能性としては考えられるんですね。
実際、よくよく考えて本当に犯罪ではないと言えるような明らかなものというのは、病院における病死、これ以外はやっぱりほとんど考えられないんですね。ですから、今まで非犯罪
死体と言われて扱ってきていたものに、皆さん御存じのようにたくさんの犯罪死があるんではないかと、こういうことが言われてきたわけでございまして、抜本的には、やはりこの刑事訴訟法の二百二十九条に基づく体系というものを変えていかないと本当に中途半端な
死因究明になってしまうと。
元々、もう細川
先生よく御存じなんですが、
先生方が野党時代に進めていらっしゃった民主党の
法案、非自然
死体の
死因等の究明の適切な
実施に関する
法律案、これは
国会提出されておりますが、この
法案は、まさに今私が申し上げたような科学的な観点に立って非自然
死体を全部やっていこうと、こういう体系になっていたわけですね。ところが、やっぱり与党になるといろいろ御事情があるんだろうと思います。刑事訴訟法を変えるのはなかなか官僚にとっては負担が大きいですから、これはだから、それじゃ駄目だよということになったんだと思うんですけれども、やっぱり間違いは間違いですから、これは正さなきゃいけない、これは
国会の責務だと思うんですね。
これ、今のままでは、この抜本
改正を予定していないということになりますと、今の矛盾がずっと引き継がれるわけですから、これ、私、
法律家でございますから、生徒に教えられないですよ、刑事訴訟法ってどういうものかと。
やっと今、これは暫定的なものとして、取りあえず今の悪いところを直すということで進めるためにやるんだけれども、しかしながら、将来、より良い制度に抜本的に
改正すると、そういう立法者のお言葉があって初めて、これは私は
法律的にも何とか整合性が取れるという気がするんですね。
そのほかにも、例えば、今の
死体解剖保存法における解剖の制度と今回の
法案の第六条に基づく解剖の制度、これは両方あるんですけれども、ほとんど重なっております。ところが、制度が二つ並立しているんですね。これもやっぱりちょっとおかしいところですし、あるいは、検疫法とか食品衛生法の中にも
行政解剖の措置がありまして、遺族の承諾要件の有無というのが全く統一が取れていないんですね。この点もやっぱり、これから先に我々が抜本改革をやるというときには、そうした整合性もしっかり取れたものをつくるべきではないかと、私もそう思いまして、是非これは超党派で皆さんで話し合っていかなきゃいけないというふうに思っているところでございます。
ただ、この抜本改革というためには、当然法制度の改革が必要になってくるわけですけれども、今回の
死因・
身元調査法案の方には、何らこの法制上の措置という言葉が、言及がないんですね。何とか探すとすれば、
死因究明
推進法案の方に、この基本
計画を作って法制上の措置をとるということが書いてありますので、そこで恐らく抜本改革を担保できると、私もそう思いますね。しかしながら、特にこの
死因究明
推進法案は、二年間の時限立法になっているということからも、二年間たったら速やかに我々は抜本的制度に改革するんだという意思が、
国会のはっきりとした意思と見えるわけですね。
ところが、もう一方の相対のこの
死因・
身元調査法案の方は実は時限立法になっていないんですね。そうすると、片っ方が時限立法になっているのに、もう片方はこれ時限立法になっていないということになりますと、いかにも、もう片っ方は永続的に残すというような
趣旨で出しているんではないかと、こう考えられもするわけですよね。
私は、やはり抜本改革において、警察庁が今度もらった
権限ですね、いや、うちだってこういうことはできるはずだと、法令に書いてあると、これに固執して抜本改革が本当にできないようだと、これは非常にまずいと思うんですね。ですから、これも是非、時限立法という形で出しているんだと、この辺のことを是非立法者の方にも、細川
先生にもう一回御答弁いただきたいと思っているんですけれども、お願いします。