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佐藤ゆかり君
お金に色は付いておりませんので、
日本銀行が幾ら成長資金を供給していろいろな条件を付けたとしても、場合によって資金の流れが回り回って
金融機関を通じて
金融円滑化法の適用先として経営健全化計画を出さないような
中小企業の温存のために資金が流れるというようなことも結果としては排除できないわけであります。
ですから、その辺りは十分に制度設計で何ができるかというのは大きな問題だと考えておりますが、是非、日銀が成長資金の供給というふうにうたう以上は、ある
意味、産業界というのは新陳代謝が起こるわけでありますし、特に
中小企業の新陳代謝というのはこれから成長基盤の再構築のために非常に重要な課題だと思いますけれども、温存型の資金供給ではなくて、やはり成長基盤をしっかりつくっていく、ある
意味、事業転換をきっちりと後押しするような資金の供給の仕方は何かと、そういう観点で日銀にはしっかりと取組をしていただきたいと思うわけであります。
デフレの観点で考えますと、最近
産業構造というのが大きく変わってきていまして、
一つに、昨年のタイの洪水もありましたし東
日本大震災でサプライチェーンの寸断も起きましたけれども、そういう事例で表れたように、従来、五年前、十年前であれば国内の仕入れ
構造、サプライチェーンで成り立っていた産業が競争の激化、グローバル化の進展によって仕入れ
構造そのものがグローバル化してきたという現実があるわけでございます。
そうしますと、国内の仕入れだけで成り立っていた産業が大きく、また産業の中身が変容してきているという時代を迎えているわけでありまして、この仕入れ
構造をグローバル化することによって規模の
経済を仕入れにも獲得することができる大
企業と、そして仕入れをグローバル化できない
中小企業と、この間に大きな競争力の
意味での溝というものが
一つの同一産業の中でも生まれてきたということが事実としてあるんだと思います。
配付資料を御覧いただきたいと思いますが、一ページ目で「プライスリーダーとプライスフォロワーの業績比較」、これ大変貴重な調査結果、経産省の二〇〇二年の古い調査結果で、その後残念ながら調査を更新していないということなんですが、非常に重要な調査結果だと思っております。
これは、産業界をそれぞれ調査をして、業界の中には大体一社や二社プライスリーダーという、
単価を設定して大幅値下げを行ったりリードしていくプライスリーダーという大手
企業があるわけでございます。そのプライスリーダーの一社、二社が大幅に
単価を引き下げる、それが販売
単価、プライスリーダーのところを御覧いただきますと一一・六、これパーセンテージですね、単位が書いてありませんが、パーセンテージ
引下げ、そして、それが行われますと大方残りの九割方は、今度は
中小企業が多くなってくるわけでありますが、やはり
単価を引き下げざるを得ない、追随せざるを得ないという競争
関係にあります。そこで、プライスフォロワーは同じように大体一一・七%引き下げた。これが実例でございます。そういう
状況になる。
そうすると、売上高を比較しますとどうなるか。プライスリーダーはどおんと引き下げます。仕入れ
構造もグローバル化していますからコストも安い、バッファーもあるわけで、体力があり、マーケットシェアを大きく獲得することによって売上高が八・四%逆に増えたと。要するに、
単価をどおんと下げても売上高が増えた。それだけ数量、マーケットシェアを獲得したということであります。それに対して、逆にプライスフォロワーの方は売上高が三・九%減少。
そして、原材料の調達費は、それぞれコストカットしていますから減っていますけれども、事業コスト、物流コスト、販売コストについては、プライスリーダーは値下げをしてもマーケットシェアが獲得できるのでこういったところにきちっと販管費などの費用を積み増しして競っている姿があります。プライスフォロワーは当然これもカットしています。
そしてさらに、総人件費になりますと、マーケットシェア拡大で
単価は下げてもプライスリーダーは六・八%人件費は逆に増やしている。それに対してプライスフォロワーは大幅な人員削減等人件費カットで三・八%人件費減と。こういう
状況にあるわけであります。
要は、プライスリーダーというのはその業界で一社、二社でありまして、残りの大方の
企業というのは
中小企業、プライスフォロワー。ここがその業界、一業界としての雇用の大方を抱えているわけであります。
ですから、プライスリーダーが仕入れのサプライチェーンをグローバル化して大幅にカットしてくると、残りの九割方の雇用の受皿の方で大幅な人件費カットも行う、そういう
対応を余儀なくされる。その結果、人件費の
デフレ、業界としての
デフレが深刻化すると。それが、最近のこの仕入れ
構造の変化によって起きている、
一つの立証する調査結果だというふうに私は思うわけでございます。
そうしますと、
日本銀行の
デフレ対策として伺いたいわけでありますが、こういう
状況になって、プライスリーダーが来て、仕入れ
構造が大きくグローバル化して変わって、規模の
経済を大
企業が獲得することができるようになった。そういう産業に変容した場合には、やはり
中小企業としては、同じ
価格競争でいることでは生き残れない。したがって、非
価格競争帯での付加価値化、ブランド化などにやはり転換をしていく、事業転換をしていかないと
中小企業として生き残りは図れないということだと思います。
その事業転換を後押しする成長資金というものを、事業転換資金というものを日銀が源でどういうふうに設計をして供給することができるか、それがやはり大きな問題だと思います。そういう
意味で、もう一度、この小口資金の供給、貸付けの枠組みですけれども、そういうことも踏まえて制度設計をお考えになる気はありませんでしょうか。