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参考人(
船田元君)
船田元でございます。どうぞよろしく
お願い申し上げます。
本日は、
小坂会長からの御要請に基づきまして、
憲法改正
国民投票法の提出者の一人といたしまして同法の
附則に
規定されておりますいわゆる
三つの宿題につきまして御
説明させていただきますが、このような機会を与えていただきましたことは大変光栄なことでございまして、心から感謝を申し上げる次第であります。
時間も限られておりますので、お
手元配付のレジュメと
幾つかの
資料に沿いまして、早速内容に入らせていただきます。
まず、
三つの宿題の
経緯を御理解いただくために、その
法律の成立一年前、
平成十八年五月の末に提出されました自民・公明案と
民主党案の
論点対比表、これは
資料一になりますが、A3判でございます、これを御覧をいただきたいと思っております。
まず、一覧表の左右両端に当初提出の両案を掲げております。そこでの主な相違点は、それぞれ、自公原案は水色、それから民主原案が黄色で網掛けしておりますけれ
ども、特に三大
論点と言われましたのは、
一つは、
国民投票の対象として
憲法改正
国民投票に限定するか、それともそれ以外の一般的
国民投票も含めるか、これが
一つです。二つ目には、投票権者の範囲を二十歳以上とするか十八歳以上とするか。そして
三つ目には、投票用紙の記載方法と
国民投票における過半数の判定母数について、マル・バツを記載させた上で有効投票の過半数とするか、あるいはマルのみ記載させた上で投票総数の過半数とするか。やや複雑でございますが、要するに、明確な賛否の意思表示をしない票や無効票などを過半数判定の分母に加えるかどうか。こういう
三つの
論点でございました。
そのほかの点におきましては、基本的な
制度設計を共通にしておりました。といいますのも、
憲法調査特別委員会発足後、諸外国の
国民投票
法制の
調査も含めて、与野党を問わずに私
ども現場の理事、
委員の間には相当共通の認識が形成されていたからだと言っても言い過ぎではないと思います。これが法案の審議を経る中で更に歩み寄りがなされていくことになりました。
その
一つの具体的な現れが、
平成十八年十二月十四日、その年の
最後の
委員会での自公案提出者を
代表いたします私と
民主党案提出者を
代表する
枝野先生のそれぞれのいわゆる歩み寄り
発言でありました。一覧表では、自公修正要綱、
民主党修正要綱と記載されている、両端から
一つ中に入ったところでございます。
この段階になりますと、二番目の投票権者の範囲については自公側が譲歩をして十八歳とする、
三つ目の投票用紙の記載方法と過半数の判定母数については
民主党側が自公側に歩み寄るという形で整理をされましたので、残された
論点は一番目の
国民投票の範囲のみとなっていきました。しかも、残された
国民投票の範囲については時間を掛けて検討しようということでほぼ
共通認識はできておりましたので、新たに出てきました新聞の無料広告枠あるいはスポットCMの取扱いといったやや
技術的な
論点を実務者間で解決をすればすぐにでも合意は可能である、そういう状況でございました。
しかしながら、年が明けた
平成十九年、この六月には
参議院選挙があったわけでございますが、その
参議院選挙を前にした与野党間のいわゆる政局に巻き込まれた形で、やむなく
民主党の最終的な賛成が得られないままに三月二十七日に自公のみの最終修正案を提出をするということになります。これに対して、
民主党側も
委員会採決二日前の四月十日になって最終修正案を提出をされております。
自民党の中では、民主が乗ってこないんであれば元々の自公案でいいではないかという強硬な
意見もございましたが、
中山先生の、現場の信頼関係は大切にするべきだ、特に
憲法においてはなおさらであるとの御指導の下で、私
どもは、それまで
枝野先生始め現場の理事の
方々と協議してきた事項については決してほごにすることなく全て修正案に盛り込むことといたしました。その修正案を、自公案、
民主党案のいわゆる併合修正案、非常に珍しい形式でありますが、そういう併合修正案にまとめて提出したというのも私
どものそんな気持ちの表れだったと記憶をしております。
さて、この両修正案の対比でございますが、この段階になりますと、
一つは、唯一残っていた大きな
論点である
国民投票の対象のほか、二つ目には、十八歳投票権に関する
経過措置の
規定についての相違点、そして
三つ目には、公務員の政治的行為の制限に関する
規定の適用の是非に関する相違点、こういったものも登場いたしました。そして、この
三つの
論点こそが次に御
説明申し上げますいわゆる
三つの宿題となったものでございます。
以上を踏まえまして、
三つの宿題の内容について御
説明いたします。
まず、御承知のことと存じますが、基本的なことから確認をさせていただきますと、これらはいずれも
憲法改正
国民投票法の
附則に検討事項として
規定されたものであります。
まず
一つ目は、
附則第三条に定められております十八歳
選挙権実現等のための法整備であります。お
手元配付の
資料二を御覧ください。A4判でございます。
すなわち、
憲法改正
国民投票法の本則では、
憲法改正
国民投票の投票権者は十八歳以上とされております。しかし、同じ参政権なのに、
国民投票が十八歳以上、国政
選挙等の
選挙権は二十歳以上というのでは立法政策としての整合性が取れないのではないか、さらには民法などの成年年齢もこれに合わせる必要があるんではないか、そういう観点から、
附則第三条第一項におきまして、国は、この
法律が施行されるまで、すなわち公布後三年を過ぎる
平成二十二年五月十八日までの間に、十八歳
選挙権が実現すること等となるよう、公選法や民法その他の法令の
規定について検討を加え、必要な
法制上の措置を講ずるということを定めたものであります。
ここで御注意いただきたいのは、十八歳
選挙権が実現することといったように、少なく
ともここで明示されている十八歳
選挙権の実現は、この
法律を制定した
国会によって既に意思決定がされた事項であるということです。したがって、この検討事項によって検討に委ねられているのは、
一つは、公選法などの年齢引下げが少年法や未成年者喫煙・飲酒防止法などその他の法令のどこまで及ぶべきかということ、二つ目には、公選法などを含めて年齢を引き下げるべきとされた
法律について、その改正法施行のための準備期間や
環境整備はどの
程度必要なのかといった事項でありまして、これが自公案、
民主党案、双方の提出者の共通理解となりました。
しかし、この時点で、立法者が引下げの意思を明確にしていた法令の範囲については、実は提出者相互の間で微妙な食い違いもあったやに記憶をしております。
一般的には、
法律名が例示として挙がっている公選法と民法、そしてこれに当然随伴する
法律と理解されておりますが、しかし、法文においては十八歳
選挙権が実現すること等となるようとして、具体的には十八歳
選挙権についてだけその方向性を示しておりまして、
国民投票の投票権と同じレベルの参政権に関するものだけと理解することも可能だと思います。このいずれかにつきましては私
どもはそのときそのときの
国会が判定するものと考えており、その条件が成就したときにこの
附則第三条の言わばストッパーを改正、削除するということを想定をしたわけでございます。
なお、これらの関係
法律の整備法は、
附則第三条第一項の
規定によって三年間の準備期間の間に成立させなければならないものとされておりますが、法整備が三年以内に行われた場合でも、その施行までには更に一定の周知期間あるいは準備期間を要することが予想されておりましたので、
附則第三条第二項におきまして、前項の
法制上の措置が講ぜられた後、それらの改正
法律が施行されるまでの間は
経過的に
憲法改正
国民投票も二十歳投票権で実施する旨の
規定が設けられたところであります。これが
経過規定でございます。
現在は、この三年間の準備期間が
経過しているにもかかわらず、十八歳
選挙権実現のための公選法改正等の整備法が成立していませんから、この
附則第三条第二項に定める前項の
法制上の措置が講じられという条件自体が達成されておりません。そのため、本
条項は字義どおり適用できないという不完全な状況に残念ながら置かれております。このようなことは当時全く考えていなかったことでございました。その意味では、広い意味での立法の不作為があって、それで
国民投票法が不安定な状態になっていると申し上げるしかないなというふうに思っております。
なお、この
条項による成年年齢引下げのための法令は、多くの省庁の所管
法律にまたがるために、法案提出者においては、この整備法案自体は基本的には閣法によって提出されるべきものと想定されておりました。
憲法改正
国民投票法を所管する
憲法審査会においては、そのような
内閣による法案提出を
監視し督促するものと理解していたところです。これをイメージ図にしたものを
資料二の二枚目に添付しておりますので、御参照いただければ有り難いと思います。
二つ目は、
附則第十一条の公務員の政治的行為の制限に係る法整備であります。お
手元配付のA4判の
資料三を御覧いただきたいと思います。
現行の国家公務員法や地方公務員法、裁判所法その他の一般職、特別職の様々な公務員に関する法令の
規定では、その政治的行為の制限に関する
規定が幅広く設けられ、それぞれの
法律によってややばらつきはありますけれ
ども、例えば自分の
意見表明はいいけれ
ども他人への投票の勧誘などはできないこととされています。しかし、そのような公務員
制度の土台ともいうべき
憲法論議の場面においては、公務員といえ
ども一人の
国民であり、地位利用を伴うようなものは別としまして、純粋な他人への賛否の勧誘行為などまでは許してもいいのじゃないかというのがこの
附則第十一条の
規定でございます。すなわち、
国民投票に際して行う
憲法改正に関する賛否の勧誘を含め、その他の
意見の表明が制限されることとならないようというのはその意味でございます。
この
条項による法整備は、あくまで
憲法改正
国民投票に限定したものでありますので、
法制的には
憲法改正
国民投票法の一部改正法という形で立案されることが念頭に置かれています。その意味では、さきの十八歳
選挙権実現のための法整備と異なり、この改正法案の立案、審査はこの
憲法審査会の所管事項となるものと解されているところです。このことについては、
資料三の二ページ目にイメージ図を添付しておきましたので、御参照願いたいと思います。
以上の二つは、先ほど申し上げた三年間の準備期間の間に結論を得て法整備まで済ませるべきものだ、言わば締切りのある宿題だったということでございます。
最後の
三つ目の宿題は、このような締切りがない検討事項でございます。すなわち、
附則第十二条に
規定されている
憲法改正以外の
国民投票
制度の
導入の検討であります。お
手元配付の
資料四を御覧いただきたいと思います。
これは、
民主党案では
憲法改正以外の一般的な
国民投票の
導入を
最後まで主張されておられたことに配慮したものでありますが、その検討の範囲については少々異なっておりました。
すなわち、
民主党の最終修正案では、当初案のように国政上の重要な問題一般を対象とするのではなくて、国政における重要な問題のうち、
一つ、
憲法改正の対象となり得る問題。ここには、例えば
女性天皇問題などは、
法律的には皇室典範の改正でも済むんですが、
憲法問題ともなり得るものである、こういったものが例示として挙げられます。②として、統治機構に関する問題。これは、
国会議員からの発議が必ずしも機能しない可能性があることを想定されたものと推察されます。一院制にするのかしないのかというこ
ともこういったところに入ってくると思います。
三つ目には、
生命倫理に関するような政党政治を超えた
国会議員、
国民の倫理観、死生観などに関する問題などを例示として掲げた上で、その詳細は
国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に
法律で定めるとされておりました。これが
民主党の案でありました。
これに対して、成立した
法律の
附則第十二条の検討範囲は、
一つ、
憲法改正を要する問題。つまり、最終的には
憲法改正
国民投票の対象となるような事項について予備的に民意の動向を探ろうとする場合、これが
一つです。そして二つ目には、
憲法改正の対象となり得る問題とされております。その見出しが、
憲法改正問題についての
国民投票
制度の検討として、直接の検討対象を
憲法改正関連事項に限定しているというのがこの最終の特徴でございます。
いずれにいたしましても、この
国民投票の対象範囲の検討は
憲法審査会の所管事項と解されています。妥当と判断された場合には、
国民投票を改正する形で新たな
国民投票の対象が追加されることになると思われます。
以上、
憲法改正
国民投票法
附則に定められました
三つの検討事項の
経緯とその意味について、大変複雑で恐縮でございましたけれ
ども、法案提出者の一人として想定しておりましたことを御
説明を申し上げさせていただきました。
御清聴ありがとうございました。