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会計検査院長(
重松博之君)
会計検査院は、
国会法第百五条の
規定に基づき
平成二十一年六月二十九日及び二十三年二月十四日
付けで参議院議長から
会計検査及びその結果の
報告の
要請がありました「
在外公館に係る
会計経理について」等の計三
事項につきまして、
関係府省、
関係独立行政法人を対象に
検査を行い、
会計検査院法第三十条の三の
規定に基づき二十三年十月五日及び二十四年一月十九日にその結果の
報告書を提出いたしました。その
報告書の
概要を御
説明いたします。
最初に、「
在外公館に係る
会計経理について」を御
説明いたします。
この
報告書は、二十二年十月六日に提出いたしました
報告書におきまして、引き続き
検査を
実施して、取りまとめができ次第
報告することとしておりました
事項に関するものであります。
検査しましたところ、
会計事務の体制に関して、
歳出を異なる会計
年度から行っていた事態、
資金の
受入れ、保管等に関して、必要以上に現地通貨に交換していた事態、
収入及び
支出に係る
会計処理に関して、現地職員が領事手数料を領得していたり、前渡
資金の
使用残額の国庫への返納が遅延していたりしていた事態、施設及び
物品の
管理等に関して、他の
在外公館では美術品として
管理している作品を美術品として
管理していない事態、監査に関して、査察
実施後長期間が経過しているのに査察で
指摘を受けた事態が十分に
改善されていない事態などが見受けられました。
検査の結果を踏まえた本院の所見といたしましては、外務省は、今回及び二十二年
報告に記述した
事項について
改善に向けた
処置を引き続き確実に
実施するほか、監査
制度の一層の充実等を通じて、
在外公館に係る
会計経理をより適正かつ適切なものとする必要があると考えております。
本院としては、今後とも、
在外公館に係る
会計経理が適正かつ適切に
実施されているかについて、多角的な観点から引き続き
検査していくこととしています。
次に、「
特別会計の
実施状況等に関する
会計検査の結果について」を御
説明いたします。
検査しましたところ、
特別会計の事務事業の合理化、
効率化に向けた取組等については、業務の一部が
一般会計等に移行したことなどが
特別会計全体の人件費等を
減少させた大きな要因となっている
状況となっており、特定財源等の見直し等については、
エネルギー対策特別会計の特定財源について
一般会計から必要な額を
特別会計に繰り入れることとするなどしたが、
不用額の発生が見込まれる場合でも
予算どおりに繰り入れることとされている
状況となっていました。また、
剰余金、積立金等の活用等については、
剰余金の一部が
歳出の財源等として翌々
年度まで活用されていない
状況となっており、国の財政
状況の透明化については、
一般会計が
特別会計に対して将来的に繰入れの義務等を負っているものなどの情報が開示されていない
状況となっていました。
検査の結果を踏まえた本院の所見といたしましては、
特別会計から
一般会計等に移行された業務等がより効率的に
実施されているかを検証する必要があり、また、
エネルギー対策特別会計において、
一般会計からの繰入れの減額を行えないことが
剰余金が多額となる一因となっていることを踏まえて、
剰余金の
減少のための取組について検討すること、
特別会計への
一般会計からの繰入れを可能な限り抑制するなどして
剰余金を縮減したり、翌々
年度に活用される
剰余金を可能な限り翌
年度に活用するための方策について検討したりすること、国の財政
状況を
説明し十分な
説明責任を果たすためにも情報の開示について検討することが必要であると考えております。
本院としては、
特別会計における改革の
実施状況等について、今後とも多角的な観点から
検査を
実施することとしております。
最後に、「大
規模な治水事業(ダム、放水路・導水路等)に関する
会計検査の結果について」を御
説明いたします。
検査しましたところ、放水路等事業において、事業計画策定時等の
関係資料を保有していないとしているため、事業主体は必要とされる計画
規模等について明確にできず、事業に対する
説明責任が果たせない
状況となっている事態や、ダム建設事業等において、事業が完了していないのに事業期間の延長が行われないまま計画上の事業期間が過ぎているものが見受けられました。また、高規格堤防整備事業において、国土交通省は整備延長及び整備率を五万六百三十メートル、五・八%としていましたが、基本断面が完成していると認められる延長について改めて算出すると九千四百六十三メートル、一・一%となった事態が見受けられるなどしておりました。
検査の結果を踏まえた本院の所見といたしましては、
説明責任を果たせるよう
関係資料を整備するとともに、事業の目的、必要性等についての再検討に活用できるようにすること、事業の
実施状況を反映したものとなるよう適時適切に事業計画の見直しを行うこと、高規格堤防の整備延長及び整備率については、高規格堤防整備の目的、効果等を考慮した算出方法を確立することなどに留意して、大
規模な治水事業を適切かつ効率的、効果的に
実施するよう努める必要があると考えております。
本院としては、今後とも、事業の必要性等の検討や進捗
状況等について多角的な観点から引き続き
検査を
実施することとしております。
これをもって
報告書の
概要の
説明を終わります。
会計検査院は、
会計検査院法第三十条の二の
規定により
国会及び
内閣に対して、
平成二十三年九月二十二日、十月五日、同月十七日、十一月二十九日に計十一件の
報告書を提出いたしました。その
報告書の
概要を御
説明いたします。
最初に、
国営東郷土地改良事業及び国営ふらの
土地改良事業の
実施について農林水産
大臣に対して
意見を表示したものを御
説明いたします。
農林水産省は、昭和四十七
年度から、北海道富良野市等において
国営東郷土地改良事業及び国営ふらの
土地改良事業を
実施しておりますが、両事業の一環として築造した東郷ダムに安全に貯水することができない状態が続いておりますことから、両事業の
実施状況等について
検査いたしました。
検査の結果でございますが、三十八年という長期間にわたって国から多額の事業費が
支出されている両事業について、かんがい用水の水源が確保できていないため、現在も受益地において安定的にかんがい用水を利用できない
状況が発生しているのに、適時適切に事後評価を行わないまま現在まで事業効果が発現していない事態は適切でないことから、農林水産
大臣に対して、両事業について、速やかに事後評価の対象として、総合的かつ客観的に評価して、その結果を両事業に適切に反映させるとともに、かんがい用水の水源確保の方法についても十分に検討して複数の選択肢を整理し、
関係機関と調整を図りながら可能な限り経済的で効果的な方法を速やかに選定して、事業効果の早期発現を図るよう
意見を表示いたしました。
次に、各
都道府県に移管された
高校奨学金事業の
運営について文部科学
大臣に対して
意見を表示したものを御
説明いたします。
文部科学省は、各
都道府県に対して高等学校等奨学金事業交付金を交付しており、同交付金として約二千億円を交付することとすれば、貸与水準を維持しつつ各
都道府県において奨学金事業を交付金の交付終了後も継続かつ安定して
運営していくことは可能であるとしています。そこで、奨学金事業を将来にわたって継続かつ安定して
運営していくことが可能となっているかなどについて
検査いたしました。
検査の結果でございますが、貸与水準を維持しつつ奨学金事業を将来にわたって継続かつ安定して
運営していく態勢が十分に確保されておらず、交付金の効果の発現が将来にわたって継続しなくなるおそれがある事態が見受けられましたことから、文部科学省に対して、各
都道府県における奨学金事業の
運営状況等を的確に把握し、これに基づいて必要な助言等を行うなどして、奨学金事業の適切な
運営の確保を図るよう
意見を表示いたしました。
次に、「
航空自衛隊第一
補給処における
事務用品等の調達に係る入札・
契約及び
予算執行の
状況に関する
会計検査の結果について」を御
説明いたします。
航空自衛隊の第一
補給処等における
事務用品等の調達について
検査しましたところ、適正な
予算科目を
使用することについての
支出負担行為による統制が必ずしも的確に行える体制とはなっていなかったり、二者以上から提出を受けることとされている見積資料について、一者のみから提出を受けている
契約が多数あり、このうち見積資料を徴取した会社が実際の
契約の相手となっている
契約が数多くある
状況が見受けられました。
検査の結果を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、防衛省は今後とも同省が二十二年十二月に公表した
改善措置を的確に
実施していくこととしているところですが、その
実施に当たっては、
支出負担行為による統制が的確に機能するよう必要な体制等を検討し整備すること、
契約事務の過程において仕様書の
内容についてより的確に検証することなどの点についても確実に取り組み、より効果的に
実施していくことが必要であると考えております。
会計検査院としては、これらの取組が効果的に
実施されているかについて引き続き
検査していくこととしております。
次に、
緊急人材育成支援事業の
実施状況及び
求職者支援制度について厚生労働
大臣に対して
意見を表示したものを御
説明いたします。
厚生労働省は、中央職業能力開発協会に交付金を交付し、同協会は交付金を財源として造成した基金を活用して、基金訓練の
実施、訓練・生活支援給付金の支給等の
緊急人材育成支援事業を行っております。この
緊急人材育成支援事業について
検査いたしました。
検査の結果でございますが、訓練・生活支援給付金の支給等の
状況、事業効果の把握及び発現のための体制について
改善を必要とする事態が見受けられたことから、厚生労働省において、
緊急人材育成支援事業の
制度を基に
平成二十三年十月に創設される
求職者支援制度の
実施に当たり、職業訓練受講給付金が適正に支給されるよう、また、事業効果を適切に把握し十分に発現される体制となるよう
意見を表示いたしました。
次に、
独立行政法人住宅金融支援機構の
証券化支援勘定等における
政府出資金の
規模について国土交通
大臣及び
独立行政法人住宅金融支援機構理事長に対して
意見を表示したものを御
説明いたします。
国は、
独立行政法人住宅金融支援機構の証券化支援事業等を円滑に
実施させるため、証券化支援勘定及び住宅融資保険勘定へ出資を行っております。この
政府出資金の額の算定や
規模等について
検査いたしました。
検査の結果でございますが、
証券化支援勘定等における
政府出資金について、国土交通省において、二種類の
政府出資金が果たしている役割に重複があることを必要額の算定に反映しておらず、また、同機構において必要額を超えて
政府出資金を保有している事態が見受けられましたことから、国土交通省及び同機構に対して、真に必要となる
政府出資金の額を検討し、適切な
規模とするよう
意見を表示いたしました。
次に、
エネルギー対策特別会計の
周辺地域整備資金の
状況について経済産業
大臣に対して
意見を表示したものを御
説明いたします。
周辺地域整備資金は、発電用施設等の立地の進捗に伴って必要となる電源立地地域対策交付金に対応できるよう
設置されたものであります。
検査の結果でございますが、原子力発電施設の着工までには今後も長期間を要することが見込まれますことから、経済産業省に対しまして、当面の間は、着工済みの原子力発電施設のみを
周辺地域整備資金の積立対象とするなどして、
資金残高の
規模を縮減させるとともに、今後
資金に係る需要額の算定が必要になる場合には、算定対象とする原子力発電施設を選定して積立目標額の
規模を見直すなどして、当面需要が見込まれない
資金を滞留させないような方策を検討するよう
意見を表示いたしました。
次に、「
国庫補助金等により
都道府県等に
設置造成された基金について」を御
説明いたします。
都道府県等が
国庫補助金等の交付を受けて
設置造成した基金について
検査しましたところ、緊急経済対策等の一環として、
平成二十、二十一両
年度の補正
予算により
設置造成された基金の基金総数に占める割合は六五%などとなっており、これら基金のうち、二十三
年度までに事業終了予定である基金事業の
執行率は、事業終了を一年後に控えた二十二
年度末においても四五%にすぎず、事業終了後に多額の
執行残が生ずると思料されます。また、運用型等の基金については、事業実績が低調でありました。
検査の
状況を踏まえた本院の所見といたしましては、緊急経済対策等の一環として、二十、二十一両
年度の補正
予算により
設置造成された基金は、取崩しが進まないと効果が限定的になってしまうおそれがあることから、事業期間内での
執行に留意し、
執行残が多額に生ずると見込まれる場合には、基金保有額が過大とならないよう基金
規模の見直しを行う必要があり、
資金を有効に活用する必要があると考えます。また、運用型等の基金は、基金の必要性、基金
規模等について検討し、
資金の効率を高めるよう努める必要があると考えます。
会計検査院としては、今後も基金事業の
実施状況等について引き続き注視していくこととしております。
次に、「
独立行政法人における
運営費交付金の
状況について」を御
説明いたします。
平成二十二年三月末において
運営費交付金の交付を受けている
独立行政法人八十三
法人を対象として
検査いたしましたところ、
運営費交付金の額の算定について、控除する自己
収入の額とその実績額との間に相当な乖離が生じているものが見受けられました。また、
運営費交付金に係る収益化基準について、業務達成基準又は期間進行基準を採用することが可能であるなどと認められるのに、費用進行基準のみを採用している
法人が見受けられました。そして、中期目標期間の最終
年度における積立金の
国庫納付について、業務
運営の財源に充てられずに残った
運営費交付金債務の
額等が、
国庫納付されず、
法人内部に留保されているものが見受けられました。
検査の結果を踏まえた本院の所見といたしましては、自己
収入は適切な額を控除すること、業務達成基準又は費用進行基準を採用することについての見直しを行うこと、業務
運営の財源に充てられずに残った
運営費交付金債務の
額等については保有する必要性等の検討などを行うことに留意することなどが必要であると考えております。
本院としては、今後とも
独立行政法人における
運営費交付金の
状況について引き続き注視してまいりたいと考えております。
次に、「
消費税の
課税期間に係る
基準期間がない
法人の
納税義務の免除について」を御
説明いたします。
消費税法は、
法人については設立二年以内における
納税義務の判定基準として
基準期間の課税売上高に代えて資本金を採用し、その事業
年度開始の日における資本金が一千万円未満の
法人を免税事業者としております。そこで、この事業者免税点
制度が有効かつ公平に機能しているかに着眼して
検査いたしました。
検査しましたところ、資本金一千万円未満の新設
法人において設立二年以内の事業者免税点
制度の適用を受けている
法人の中に、設立当初の第一期事業
年度から相当の売上高を有する
法人が相当数見受けられたり、
法人成り後も相当の売上高を有しているのに、第一期
課税期間及び第二期
課税期間において免税業者となっている
法人が相当数見受けられたりなどしました。
検査の
状況を踏まえた
会計検査院の所見といたしましては、今後、
消費税に関する幅広い議論が十分なされるよう、
財務省において、事業者の免税点
制度の在り方について、引き続き様々な視点から不断の検討を行っていくことが肝要であると考えております。
会計検査院としては、今後とも、事業者免税点
制度を含む
消費税全般について、引き続き注視していくこととしております。
次に、高速増殖原型炉「もんじゅ」の研究開発経費及びその関連施設の利活用等について
独立行政法人日本原子力研究開発機構
理事長に対して
意見を表示したものを御
説明いたします。
独立行政法人日本原子力研究開発機構は、「もんじゅ」の研究開発に要したとされる総事業費を公表しております。また、「もんじゅ」から発生する
使用済核燃料を基に再
処理施設で
使用する機器の研究開発を行うため、リサイクル機器試験施設の建設を行っておりましたが、
平成十二年七月以降中断しております。そこで、「もんじゅ」の研究開発に要した経費等が適時適切に把握され公表されているか、関連施設の
状況はどのようになっているかなどについて
検査いたしました。
検査の結果でございますが、「もんじゅ」及びその関連施設の研究開発経費について一層の
透明性の確保を図るとともに、
使用可能な関連施設の利活用を図るよう、
独立行政法人日本原子力研究開発機構に対して、「もんじゅ」及びその関連施設の研究開発に要した経費の全体
規模が把握できるよう公表すること、リサイクル機器試験施設については、当面の利活用方法について早期に結論が得られるよう
関係機関との協議を行うよう
意見を表示いたしました。
最後に、「情報システムに係る
契約における競争性、予定価格の算定、各
府省等の調達に関する情報の共有等の
状況について」を御
説明いたします。
情報システムに係る調達は、
府省等ごとに行われており、毎
年度多額なものとなっております。そこで、予定価格の算定は合理的なものとなっているかなどについて
検査いたしました。
検査したところ、十八年十月の参議院からの
検査要請に基づく
報告と比べ、競争
契約の割合は大幅に
増加しておりますが、応札数を見ると一者応札の割合が依然として半数以上を占めておりました。また、予定価格につきましては、ハードウエアの調達における割引率等が区々となっていたり、調達
事例データベースの活用が低調となっていたりしておりました。
検査の結果を踏まえた所見といたしましては、
契約の競争性の確保について引き続き
努力すること、予定価格の算定に関する情報について
政府全体として共有し活用することについて検討することなどの取組を進めることにより、
契約の経済的及び効率的な
執行に努める必要があると考えております。
会計検査院としては、国の情報システムについて今後とも多角的な観点から引き続き
検査していくこととしております。
これをもって
報告書の
概要の
説明を終わります。