○玉木(雄)
委員 ありがとうございます。
私自身、香川県の小さな田舎町の田んぼの真ん中で生まれ育ちましたので、農地や農業あるいは農村風景の持つすばらしさというのは身をもって感じてきております。また一方で、単なるノスタルジーではなくて、今
総理がおっしゃったような、成長産業としての可能性が実は極めて強い分野だと思っておりますし、これをぜひ
地域の活性化、
日本の活性化につなげていくことが、これからの大事な我々の政策の柱になるというふうに思っております。
しかし一方で、よく
指摘されるように、今、
日本の農業が直面している問題、高齢化の問題、そして耕作放棄地が急速に広がっている、大変厳しい
状況に直面をしております。そんな中で、民主党、我が政権になってから、我々の政権になってから、
一つの切り札として打ち出されたのが農業の戸別所得補償
制度であります。私は、この所得補償
制度、マニフェストの中でも大変
評価できる政策の
一つだと思っております。
まず、お手元の資料一を見ていただきたいと思うんですが、まず
評価をするときには、受益をされるというか、対象になる方に御
意見を聞くのが一番だと
思います。これは農水省のアンケート調査ですけれども、大まかに言って四人のうち三人の方が、この所得補償
制度モデル
対策事業に加入された方、四人に三人の方が
評価をされている、こういう結果が出ております。
また、昨日、農林水産省から発表された数字によりますと、農業者の所得、ずっと下がり続けてきたんですね。ピーク時の半分になっていると言われています。しかし、このモデル
事業を行ったことによって、昨年、農業所得は対前年度比で一七%ふえております。
もう
一つ大事なことは、水田経営体の方、去年、あれだけ米価が下がったと言われました。大問題だと言われました。しかし、米価が下がったにもかかわらず、経営を下支えするこの所得補償
制度のおかげで、水田経営については三四%も所得がふえているんです。これが経営の安定に役立つ。
我々は、単に米の増産のためにこの政策をやっているのではなくて、水田というすばらしい生産装置を守っていかなきゃいけない、そのためにこの
制度をやり、転作を奨励し、自給率を上げる作物をつくってもらう、でもそのベースは、この大事な水田を守ろう、これが実は所得補償
制度の大きな柱の
一つであります。
しかし、残念ながら
野党の
皆さんからは、これはばらまき四Kだという批判をいただいております。しかし、私は、実は、単に薄く広く配っていくという意味でのばらまきではないということを少しお示ししたいと
思います。
資料の二をごらんください。
二つの円グラフを描いておりますけれども、左側をまず見ていただきたいのですが、支払い件数シェアを見ていただきますと、確かに配っている件数、これは〇・五ヘクタール未満の小さな農家に半分以上配られています。しかし、右側のグラフを見てください。実際に支払われた
金額ベースのシェアです。これを見ると、この左側の図とは全く違う姿が見えてくるのは、実は、この所得補償
制度モデル
事業に使われた
予算は約三千億円、たしか三千六十九億円だったと
思いますが、この三千億の
予算の実に約六割は、二ヘクタール以上の規模の大きな農家に集中的に配られているんです。これを見ていただくとわかるように、件数は半分以上小規模農家ですけれども、
予算の配分は極めて重点的に、いわば大規模農家に集中的に配られています。特に、五ヘクタール以上に四割が配られている。
これは、旧政権時代の経営所得安定
対策のように、面積要件を課していって、ただ四ヘクタール以上、二十ヘクタール以上に配るという面積要件がないにもかかわらず、集中的な配分になっていることに実は極めて大きな意味があって、このことを少し説明させていただきたいと
思います。
まず、なぜこのようになっているか。資料三をごらんください。
生産コストというものは、当然規模が大きくなればなるほど減っていきます。これは経営費と家族労働費を足したトータルのコストを書いています。右肩下がりになっています。つまり、規模が大きくなればなるほど効率化が進んでコストが下がっていきます。ここに、この所得補償
制度は全国一律の交付水準で配分するという仕組みを導入したわけですね。
それで何が起こったかというと、ここを見ていただくと、二十二年度、これはコストがいろいろありますけれども、販売価格の平均が一万二百六十円。これだと、よく見るとどの規模の経営体も赤字になってしまうわけですね。しかし、変動部分、定額部分を合わせて六十キロ当たり三千四百円を交付することによって、二ヘクタール以上の農家では初めて利潤が出てきています。ただし、それ未満の農家については残念ながら十分な利益は出てきていない。
ただ、ここがポイントで、集約して、右側に寄っていかないと利益が出ないことによって、実は、規模を拡大する、集約化を進めていくというインセンティブが
制度そのものに内在しているわけですね。全国一律基準によって、事実上の規模加算になっている、こういうことが
一つ言えると
思います。
もう
一つ、資料の四を見ていただきたいんですが、この所得補償
制度は、そうはいっても、物すごく小さいところには配分しません。全ての販売農家を対象にするんですが、十アール、我々一反と呼びますけれども、一反未満、一反の人はちょっと控除して、それを除いた面積に対して交付するということにしています。ただ、
一つ特典がございまして、集落営農、これを組織していただくと、幾つか農家が集まって、集落で大きな共同の経営がなされるということになると、全体から十アールを控除すれば残りには全て払うということで、ばらばらに十アール控除を受けるよりも、集落営農として十アール控除を受ければ一人当たりの受取額は多くなるということで、集落営農組織化を進めていきやすい
制度もまた入っています。
そのことによって、これを見ていただきたいんですが、この間ずっと集落営農、組織化を進めてきたんですが、
平成十九年以降、一貫して新設数は下がり続けてきました。しかし、二十三年度を見てください。新設が一気に増加に転じています。
私は、申し上げたいのは、実は、ばらまきだというのは、小さな農家にどんどん配って、しかも一時貸し剥がしと言われました。せっかく集落営農ができているのに、
自分ができるからもうやめて、ばらばらになっていこうということで、集約化、集積化を阻害する
制度なんじゃないのかということが言われましたけれども、今お示ししたデータを見ますと、この所得補償
制度は、決して農地の集約化や集落営農組織化を阻害するものではなくて、むしろ緩やかな構造
改革を促していくような効果が
制度そのものにビルトインされている、巧みに設計された
制度だと私は思うんですが、この点について鹿野農水
大臣の御
意見をお伺いしたいと
思います。