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細野参考人 おはようございます。
細野真宏といいます。
今回は、なぜここまで
年金不安というのが
国民で広がり続けているのかということを、ちょっと今までの
議論とは全く別の視点で、教育という視点から、改めて僕の方から語らせていただきたいと思います。
そもそも、私がこうやって
年金にかかわることになったのは、二〇〇八年の自公政権下の
社会保障国民会議というものがあったときに、そこの
委員から始まったんですけれども、正直言って余り、政治とは距離を置くようなスタンスで、できるだけ中立でいたいと思っていたので、そういう
政府の
委員とかというのは抵抗があったんです。
ただ、余りにも
年金問題というのがひどかったので、ここはやはり、何か
自分にできることがあるんだったら、しっかりやらなくちゃいけないということで参加をしたんですけれども、そうしたら、そこでだんだんわかってきたことというのは、何か物すごい勘違いが起こっていたというところから入るんですね。
その後、私は、昨年でいえば
民主党政権下の、総理官邸でやった
社会保障改革集中検討会議というものの
委員もやったりとかはしているんですけれども、そこの
段階でよりはっきりしたのは、とにかくこれらの問題というのは教育問題に行き着くんだというところで、再三その場で
民主党の議員、幹部の方たちにも訴えさせていただいて、そこでようやく、私の肩書は今回、
社会保障の
教育推進に関する
検討会委員という形になっているんですけれども、それは今、文部科学省さんも一緒にここに加わってもらって、
社会保障の教育をどう進めていくべきかというところで進めているところなんですね。
今回、僕がお配りしている最初の
資料の一枚目が、まさに先週行われた
社会保障教育推進に関する検討会で配られたペーパーなんですけれども、そこで、タイトルが「
社会保障に係る正確な理解について」というところがあります。そこをまず簡単に読み上げますと、「
社会保障教育の実施に当たっては、これまでのご
議論の中で、以下のような注意喚起がなされている」。具体的にどういうものなのかといったら、
社会保障は世の中の常識と実際の間の乖離が大きい、これは天動説と地動説くらいのレベルであるというふうなところなんです。
まず、この言葉自体で物すごく距離感をきっとお感じになると思うんですけれども、まさに、この後解説しますけれども、例えば未納がふえると
年金が破綻するという話がそうだと思うんですね。さすがに、今ここにいらっしゃる議員の方で、未納がふえると
年金が破綻するということを信じられている方はいらっしゃらないとは思うんですけれども、ただ、二〇〇八年の五月の
社会保障国民会議のシミュレーションが出るまでというのは、もう大手の新聞から一般の
国民から全部それを信じ込んでいたんですね。もっとわかりやすく言うと、僕自身も、未納がふえると
年金が破綻すると思い込んでいました。
これは何を
意味しているのかといったら、これほど見事なひっかけ問題というものがそもそもないと思うんですね。逆に皆さんに考えていただきたいのは、すんなり、今の
年金制度というのは仕送り方式だ、子供が減って
高齢者がふえていけば当然もたない、その中で未納者がふえていくんだから、より破綻に向かっていくのは当然だろう、この論で全ての人がスルーしてしまうわけです。だから、こういうちょっと信じがたいようなひっかけ問題が
年金とか
社会保障の分野は物すごく多いんだということが、
会議を通じてだんだんわかってきたんですね。
非常に深刻な話としてあるのが、その次のところの
真ん中あたりの「特に
年金については、」というところで、三つぐらい項目を挙げているんですけれども、具体的な、天動説、地動説ぐらいのレベルのひっかけ問題でいうと、例えば1、
年金は四百兆円以上の
債務超過を抱えているというような事柄が何かもっともらしく語られていた時期もあったし、ちょっと信じがたいんですけれども、教科書にこの記載があったりするんです、あれだけ検定とかたくさんいろいろ通り抜けているはずの教科書に
年金は超過
債務を抱えているという。これはちょっと
専門的な話になってしまうんですけれども、要は、仕送り方式というものと積立方式という概念を取り間違えている話なんですね。
こういう話があったり、
あとは典型的な話として、今説明したような、未納がふえると
年金が破綻するというような、もっともらしい論が当たり前のようにまず入ってしまっているところに大きな問題があるんですね。
では、
年金についてとりあえずどういうふうに理解していけばいいのかというところで、そもそも何でここまで混乱が広がっているのかというところを、
残り十分ぐらいの中で簡単に説明していきたいと思うんですけれども、次の
ページを見ていただいていいですか。
「そもそも「
年金」とは?」ということで、「
年金の考え方と
論点の整理」ということで書いています。
まず、テーマの一として、一番わかりやすい話として
年金のひっかけ問題ということで、そのひっかけ問題としてあるのが、まず未納がふえると
年金が破綻するという話ですね。
あとは、今の少子
高齢化で
年金が破綻する、こういう論があるんですけれども、こういう形で、そもそもスタート地点でかなり誤解が起こっている。
それの具体的な、新聞だったり、それを受けた
社会保障国民会議のシミュレーションとかというのをそこに並べたりしているんですけれども、いずれにしても、細かな説明は現時点では省きますけれども、結果だけを言いますと、実は、未納者が幾らふえても
年金の財政というのにはほとんど影響がないというふうな仕組みになっているんですね、そもそも論が。
もう
一つ、ひっかけ問題が本当に厄介だなというところが、この
ページの一番
最後の図を見ていただきたいんですけれども、そこの
人口構成の比率なんです。これもすばらしくよくできたひっかけ問題だと思うんです。
というのは、よくテレビなんかで使われる話なんですけれども、例えば、一九六〇年ぐらいは九・五人で一人を支えていた、一九九〇年になったら、それは五・一人で一人を支えるようになった、これから二〇三〇年になると一・七人で一人を支えるような感じになって、この先どんどんどんどん少子化が進んで大変になっていくよ、こんなんじゃ
年金は破綻するよねというふうな、もう一瞬でわかるぐらいの図としてこれが使われるんですけれども、ただ、これもすごく残念なひっかけ問題なんです。
というのは、そもそも、このデータというのは何なのかといったら、これは、今の
年金制度の試算の前提になっている数字なんですね。つまり、今後、出生率が一・二六になるだろう、長期的に。一・二六で推移したときに
人口構成はこんなふうになりますよという話なんです。
だから、そもそも、今の
年金制度というのは、二〇三〇年に一・七人で一人を支えるということを想定して組んでいるものなんですけれども、そこはちょっと政治家の方でも、何か、いろいろふだんのテレビとかで見ていると、担当大臣が最近語っていてちょっと目を疑った話としては、今の
年金制度は
人口増を前提にした
制度みたいな話をもっともらしく語っちゃったりしていたんですけれども、ただ、それは本当に
年金の初歩的な話で、今の
年金制度は一・二六を前提にしているんですね。
人口増を前提にするというのは、要は出生率を二・〇六以上にしないといけないんです。それは単純な話で、カップルがいて、そこから
人口が減らないためには子供が二人必要なわけですよね。ただ、その子供はずっと生き続けるわけじゃなくて、中には途中で死亡しちゃったりする場合もあるので一・二六とかという細かい数字になるんですけれども、それ以上で設定していないと
人口増を前提にした
制度という話にはならないんです。ところが、今、一・二六という数字を前提にして計算をしているものだ。
しかも、幸い、前回の推計が出てから、五年に一度の国勢調査に基づいて
人口推計というのは五年に一度改定されるんですけれども、この前の一月の
段階で最新のものが出たわけです。それだと、一・二六から一・三五で、上方修正された。だから、とりあえずは
年金の財政においてはどちらかといったらプラスの
方向には進んでいるはずなんですね。
ところが、そういう話が出ても、いや、これはより深刻なことを
意味しているんだみたいな解説がいまだにテレビとかで多いのは、余りにも勉強不足というか、そもそも、ではそういう勉強不足はどこから始まっているのかといったら、こういうひっかけ問題のところから入っているわけです。
次の、テーマの二に移りたいんですけれども、
年金の未納問題、これはかなり重要な話としてあるわけです。ただ、これも実は大きな教育問題なんです。というのは、実は、結論から言いますと、教育が機能していくと、そもそも未納、未加入者が存在するということ自体がおかしいという話に気づくんです。
それはどういうことかといったら、まず基本的な知識として、今の
国民全員に共通する
基礎年金というのは、半分が税金から出されているわけです。それで、
年金の未納者という場合は、大きく二通りに分かれるはずです。一通り目は、まず
所得があるのに未納にしている人、もう
一つが、
所得がなくて未納にしている人、その二パターンに分かれると思うんです。
所得があって未納にしている人というのはどういう状態なのかといったら、一言で言うと、単なる税金の払い損になってしまっているわけですね。つまり、
年金で必要な税金は出し続けているけれども、あくまで、
年金の保険料を払うというのは、将来、
年金をもらえる権利なんですね。保険
制度とはそういう仕組みで、その権利を放棄しているわけだから、単に税金の払い損になってしまっているだけなんです。だから、そんな損することないよということで、早く加入した方が得だよということをまず説明すれば、
所得があって未納にしている人というのはちゃんとその誤解に気づくことができるんですね。
では、
所得がなくて払えない人もいるじゃないかと。そこは本当におっしゃるとおりなんです。そのために、今、日本の
年金制度はどうなっているのかといったら、そこの表にあるように、実は、四種類にもわたって細かく保険料の免除
制度というものが存在しているんです。だから、
所得が少なくて保険料を払えないという人は、まさにこの免除
制度を活用することによって、将来、無
年金とかということを抜けられて、最低限の、少なくとも税金分の
年金はちゃんともらえるようにはなるんですね。だから、どっちにしても、そもそも未納、未加入というものが存在すること自体があり得ないんです。
未納、未加入者がふえることによって生涯
年金がもらえないというような、実はそういう社会問題も大きくなっているわけですよね。
では、何でここまでこうなったのかといったら、やはり選挙で、とにかく
年金が余りにも、天動説、地動説ぐらいみんなが誤解してしまうぐらいの、だから本当に、間違ったこととかうそが通用しやすいような世界ではあるんです。ただ、そこで本当に
年金というものを政治の道具にしてしまってはいけなかったんですけれども、結果としてそういうことがあったわけですね。
ここで改めて整理しておきたい話として、要は、
民主党の新
年金案になろうとなるまいと、
年金の未納者というのは救われないわけですよね。だから、今、とにかく
民主党政権下であれば、大臣等々、
民主党の方々にお願いしたいのは、とにかくどっちに進むにしても、今の未納にしている人たちというのは損なんだということを、ちゃんと広報をきちっと徹底して、まさに一言で言うと未納者ゼロキャンペーンみたいなものを打ち出すということが、
国民の将来にとっても非常に大事なんじゃないかなというふうに思います。
次ですけれども、そもそも、
年金って難しい難しいというところから入っているところに、何かいつまでも教育が進まない大きな原因があると思っているんです。ところが、実は
年金というのは非常にシンプルだと思うんです。
年金の捉え方としては、例えるのなら、まず、日本の
年金というのは老後に国から死ぬまでもらえるお弁当だというふうな捉え方をすると多分一番わかりやすいんだと思うんです。つまり、
年金だけで、そもそも
負担している保険料とか税金とかは低いわけで、それだけで暮らしていけるというような存在じゃまずないんですね。だから、あくまでお弁当ぐらいな、死ぬまでとにかくちゃんと食べていけるというふうな捉え方で考えるべきなんですね。
そういったときに、
年金というのは大きく二種類に分けることができるわけですね。まず
一つは
自営業者、
あと会社員と公務員の場合。その二つというのは何が違うのかといったら、要は定年があるか定年がないかの違いなんですね。定年がない
自営業者については、とりあえず六十歳を超えても働いていけるので、保険料を安くして、だから最低限のお米だけをもらえるようにしようというふうな位置づけになっているわけですね。ただ、会社員とか公務員というのは定年があるから、
国民年金よりも多目に保険料を払うことによって、将来ちゃんとおかずつきの弁当を食べられるようにしようというような仕組みになっているわけですね。
ただ、
国民年金の場合の人でも、会社員や公務員と同じような感じで、ちゃんとおかずつきの弁当を食べたいという人も当然いてもいいわけですよね。そういう人たちの仕組みもまさにあるんです。ところが、教育が機能していないからその仕組みすら伝わっていないんですけれども、
国民年金基金というものがあるんですね。そこは今いろいろ要望が出されている、まさに積立方式なわけですね。だから、そうやって
自分でもっとふやしたいという
自営業の方たちは、
国民年金基金に入ることで、ちゃんと将来おかずつきの弁当を得ることができるような
状況になっているんですね。
簡単な
最後のまとめとして、
年金の仕組みはこうなんですけれども、では、これで本当にもう
年金というのは問題ないのかといったら、それは違うんです。
年金にも問題はあるんです。それはどういう問題なのかといったら、要は派遣の人たちなんですね。
派遣労働の人たちは正社員と同じような感じで働いているわけなので、本来であればおかずつきの
年金がもらえる厚生
年金の方に入ることができるはずなんです。ところが、なぜかわからないですけれども、派遣の人たちが
国民年金に
差別されて追いやられているような面があるわけですね。だから、ちゃんと派遣の人たちも厚生
年金に入ることができるようにしないといけないわけです。
そこで、具体的にそういう……