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小森参考人 NPO法人ジェントルハートプロジェクトの
小森美登里と申します。きょうはどうぞよろしくお願いいたします。
子どもの心と命を守る、これは全ての大人に課せられた責務と思います。次の時代をつくる
子どもたちの問題が何よりも
優先されることを望みます。
その実現のため、
先生方のお力をぜひとも拝借したく、
NPOの
理事としてだけではなく、本日は、我が子を
いじめ自殺で失い、その後、
学校の
隠蔽と闘った一人の親としても陳述させていただきます。
まず、
大津の
事件での
学校の
隠蔽は、残念ながら
全国で昔から続いている一般的な現象です。今から二十年前に富山県で起きた
岩脇寛子ちゃんの
いじめ自殺事件では、クラスメートが亡くなった
寛子ちゃんに書いた
追悼文まで、
家族に見せないまま
学校は
焼却処分をしていました。今も、多くの御
遺族が、このような
隠蔽という厚く高い大きな壁の前で苦しみ続けています。
学校の中の
情報は全て
学校がコントロールできますので、
情報が表に出ず、我が子の
いじめ自殺という
現実に泣き寝入りせざるを得ない御
遺族は数え切れないほどいます。
また、私は、この活動の中で、
真実を知るためだけに、
最後の切り札である
民事訴訟という形をとり、結果、
隠蔽がほとんど勝っている
現実も多く見ています。
全ての
情報を
学校が握っており、都合の悪いことは、
個人情報にかかわります、または、親御さんに見せると
生徒との
信頼関係が壊れますと、一切
情報を
家族へは見せず、結果、我が子の身に起きた、それも死へと追い詰められるほどの苦しみを、本人に準ずる一番近い
立場の親が知ることができないのが
現状です。
ここで、
子どもたちの
自殺人数について話します。
二〇一一年度、
警察庁は、
高校生までの
自殺を三百一人と発表しています。また、
平成二十四年
内閣府
発行自殺対策白書では、こちらは十九歳以下になるんですけれども、男性四百十八人、女性二百四人です。この数は、きょうもどこかで
若者がみずから命を絶っているということをあらわしています。
日本は、
若者の
死亡原因のトップが
自殺です。
自殺と
いじめの
因果関係が非常に深いということは言うまでもありません。そして、深い心の傷を抱え、数年後に亡くなる子もいます。
また、
いじめの
内容は、昔と全く違います。
例えば、裸の
写真を撮られ、それを
もとにおどされ、
恐喝や万引きなどを強要されるということがあります。
お金が用意できなければ、または言うことを聞かなければ、撮られた
写真を
ネットで公開されるかもしれないのです。この手法で、今までどれほどの
子どもたちが
自殺をしているでしょうか。これは、より死へと追い詰められる確率が昔よりふえたということです。
このように、毎日どこかで
子どもたちが死へ追い詰められ、心に深い傷を負い、苦しんでいる
現状に対して、すぐにやらなければならないことがあります。それは、
実効性のある
再発防止策を立てるということです。
しかし、残念ながら、それに対する一番の弊害が、
学校の
隠蔽です。
真実に向き合い、しっかり
検証作業をしなければ
再発防止策を立てられないのですが、
隠蔽により、
真実にたどり着くことができません。
子どもを守るという当たり前のことを、
隠蔽が阻止しているのです。
実は、天国の
子どもたちは既にさまざまな事例を残してくれています。なので、今からデータを集める必要はありません。すぐに動けます。これから
子どもたちが死ぬのを待つ必要など、どこにもないのです。
そこで、当法人が、
文部科学省と児童
生徒の
自殺予防に関する
調査研究協力者
会議へ提案した四つの項目について説明させていただきます。
一番目、
事件事故後三日以内に
基本的な
調査をすること。これは初動捜査という
意味です。二番目、
調査内容を
当事者や親と共有すること。三番目、全ての
学校に事故
報告書の作成を
義務づけること。四番目、事故
報告書に
家族が知る
情報や
意見を記入する欄を設けること。
一の、三日以内の
調査ですが、
大津の場合、初動捜査があったことにより、その後の
調査の足がかりとなりました。もしあの
隠蔽がなければ、事実を打ち明け、
事件に向き合うことにより、
子どもたちの心の安定につながったはずです。もし
子どもたちがその後傷ついているとしたら、それは、事実を書いたからではなく、
隠蔽により自分が書いたことを先生に否定されてしまったからだと思います。
二の、
情報の共有については、
情報の共有がなされていれば裁判は激減していると思えるからです。ほとんどの御
遺族は、
真実を知るためのすべとして裁判をしているのです。
三番目の、事故
報告書ですが、自治体により
内容が違っていたり、提出も任意なので、実態
調査ができていません。これを国が主導してやれば、より
真実に近い実態
調査ができます。
四番目の、
家族の持っている
情報の記入については、
学校が持っている
情報だけで事故
報告書が作成できないようにすれば、
隠蔽防止に役立ちます。
遺族が知らない間に一方的に提出することを阻止できます。
これらの要望は、全て、
お金と時間はかかりませんので、すぐにできることです。今まで、
学校の中で起きた命にかかわる
事件や事故に対して、このような初動捜査の
基本も存在していなかったことが大きな問題と考えます。この
基本を国が提示しなければならない、そう思います。
また、現在は、
調査というものに対して素人の先生がそれぞればらばらの
調査をしています。そのような
状況で、
因果関係まで導き出すことはできないはずです。そして、その
学校が全ての
情報を握り、その
情報をコントロールできてよいはずもありません。再発防止のためという目的があるにもかかわらず、我が子の死因にかかわる重要な
情報を親が一切知らされないのは、本当に
個人情報保護に当たるのでしょうか。
子どもたちは、とうの昔から、
真実に向き合う準備はできていました。しかし、
文部科学省は、重大な問題は慎重に対処しなければならない、ですから、
調査には
専門家やカウンセラーの配備が必要だと言い、今まで、
調査そのものがやりづらい
状況を生み、結果、初動捜査が先延ばしになっていたのです。
子どもたちにとって本当に必要なのは、
専門家とカウンセラーなのでしょうか。私は、一番大切なのは、安心して全てを吐き出せる
状況を大人が生み出すことだと思います。見たこと、聞いたこと、感じたことを吐き出し、その後、大人と一緒に、反省も含め、みんなでその
現実と向き合い、
再発防止策を考えることだと思っています。それができれば、もう一度、しっかり生き直しができるはずです。
しかし、それでも心の安定に不安が残る子もいるかもしれません。そのような場合に対処できるよう、カウンセラーの紹介ができる体制にすればよいと思います。
専門家とカウンセラーがいなければ
調査ができないのではないのです。
また、
文部科学省は、長い歴史の中で、私たちのような
当事者から話を聞いたのは、わずか四十分しかありません。その時間は、
調査研究協力者
会議でのヒアリングで、私たちが頼み込んでつくっていただいたものです。平野大臣が設置する支援チームには、ぜひとも、
当事者の経験から生まれた知恵が利用できるよう、私たちを参加させてほしいと思っています。
最後に、
大津の
学校で最初にやった
調査書について説明させていただきます。
あの
調査書は、当法人がつくったものをたたき台としており、
調査研究協力者
会議が昨年三月にまとめとして発表した中にあったものです。
しかし、私たちが最も重要としていた、「ご
家族にも報告することをご理解ください。」という部分はカットされ、
生徒の初動捜査より先生への
調査を
優先していました。そしてその次は、亡くなった
子どもと
関係の深い
子どもへの
調査という流れになっています。
しかし、皆さんも御存じのとおり、
大津では、先生は一人も
いじめに気づいていなかったということになっています。
どちらの
調査を
優先しなければならないのかは一目瞭然です。
また、亡くなった親御さんへのメッセージを書く項目もカットされ、それどころか、
調査する場合、親の承諾書がなければ
調査はできないと、私たちの質問に文書で回答しており、調べた
内容も
遺族へそのまま知らせないということになっています。
調査と
情報共有を阻む、幾つもの伏線があったのです。
ここで、例の
大津の
中学校にお子さんを通わせている方から私が伺った話を紹介します。
子どもたちがうわさとして書いた部分の
意味がとても大きかった、それがあったのでPTAの連携の中でその事実確認ができた、聞いたことを書く欄がなければ
アンケートの
意味はなかったと思う、実際に見たことだけではちょっとね、
調査が全員でよかったというものです。
また、別の方ですが、
学校は事実から逃げている、この姿勢は
生徒を守っていない、この姿を
子どもたちは見ているんですと言っていました。
この声をどう感じられるでしょうか。
まだ伝えたいことはあるんですけれども、以上が、
いじめ自殺遺族となった私が、自分の経験を通し感じ、提案させていただくことです。
配付
資料にアンダーラインなど引かせていただきましたので、そちらで陳述
内容を御確認いただけましたら幸いです。
ありがとうございました。(
拍手)