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河村公述人 年金コンサルタントの
河村でございます。
最近、
年金コンサルタントというと評判が非常に悪いんですけれども、実は、私は
年金受給者ですと言った方がいいんですね。コンサルタントの仕事は昔やっていましたけれども、もともと余り好きじゃないので、来たら一応選んでやるかという程度の話で。実は、だから
年金受給者なんです。
信託銀行で三十年ぐらい
年金の仕事をしていまして、その後投資顧問会社に行って少しそういう仕事をしましたけれども、きょうは非常に具体的に公的
年金の
財政にかかわる問題についてちょっと御
説明をさせていただきたい、ぜひ聞いていただきたいと思います。
それで、消費税は
反対です。もっとほかにやることがあるだろうというのを、きょうは、だからお話ししたいと思うんですね。
最初の一枚、二枚は、
年金制度を支える基本的な問題というのは、当然ながら
労働力の変動ですね。受給者の数がどう変わるか、それからもちろん被
保険者がどう変わるかです。
図の一を見ていただくと、過去、九〇年以降、それから将来は、平成二十一年の基本ケースの予想計算ですが、右側の赤い四角にありますように、被
保険者は最少で三千百五十万、
最大が三千四百六十万、非常に安定しております。受給者は、九〇年の七百九十万から一〇年二千九百十万、莫大にふえたわけです。これはもちろん
高齢化ということですね。
今後の、一〇年度から三〇年度の予想を見ますと、この間は、今後の出生率がどう変わっても、この
人たちはすぐ
労働力になりませんから、
年金制度としては出生率の
影響を受けない期間なんですけれども、被
保険者が二百三十万減って受給者が三百十万ふえる。比較的変動は小さいと見た方がいいわけです。
問題は、被
保険者をふやせば支え手がふえるわけですから、ではそれをどうするかというのが一番重要な政策
課題だと思うわけです。今度の
改革案にもそういう観点はあるわけですけれども、それをもうちょっと立ち入って申し上げたいと思うんです。
次の
ページの表の一をごらんください。これは、就業者、雇用者、
被用者年金の
加入者を八〇年以降五年ごとに並べた
数字であります。一番下に簡単に書きましたが、就業形態の雇用化が著しく進行している。これは、一番右の端ですが、働いている人の七割が雇用者だったのが、今や八七・七%と九割近いことになっているわけですね。ところが、雇用者のうち
被用者年金の占める比率は、八割弱のところから一〇%ぐらい下がっているわけですね。これは、比率的には非常に大きな減少だと思います。人数は、そこにありますように、
割合安定してふえているわけです。やはり、雇用化が進んだにかかわらず
被用者年金の加入率が
低下したのは、これは非正規雇用が原因だと思います。
それから、下にありますように、三公社及び農林漁業共済組合は、今、
厚生年金に移っているんですけれども、その人数が九十万ぐらいありますね。ですから、そういう
意味では、公務員、共済
年金はそんなには減っていないんですね。それから、最近の雇用事情からしますと、役所で働く人は
厚生年金の
適用者というのがかなり多いんですね。全部共済じゃないんですね。ですから、そういうことなどを考えると、公務員は多分そんなに人数としては減っていないんだろう。ただ、共済
年金としては、こういうふうに縮小はしています。
ですから、こういう
状況からすると、二〇〇〇年の有識者会議で
社会保障をどうするかという
議論があったわけですが、あのときに一番強調されたのは、支え手をふやす。
三つテーマがあったんですけれども、一番大きいのは支え手をふやすという問題なんですね。ですから、支え手をふやすということをぜひ政策的に検討することが重要ではないかと思うわけです。
三
ページをごらんください。三
ページは、
厚生年金の収支
状況の過去と将来の
数字を兆円単位で掲載してあります。五年ごとの
数字です。
私は一番重要だと思うのは、先にお話しになった方もいろいろおっしゃっていますが、
マクロ経済スライドなんですけれども、二〇〇四年の
改革で、
マクロ経済スライドというのは
保険料固定方式と言われるわけですけれども、あれは、再計算というシステムをなくしたんですね。それまでは
厚生年金は、五年ごとに
財政再計算をしていました。それで、結果に基づいて、必ず国会に
保険料の改定案と
制度の改定案を出していたんですね。
ところが、二〇〇四年以降は、そういう作業はなくなりました。ちょっと、誰がということは申し上げませんが、厚生省の役人とのつき合いもありましたので、そのころ言っていたんですけれども、とにかく
年金国会が一番嫌だと言う人が多いんですね。なぜかというと、もうとにかくつるし上げに遭うと。だから、何とかあれをやめるようにしたいというのが
マクロ経済スライドです。
それから、やはり一番問題なのは、
調整率の考え方の中に、雇用者の人数の総計に平均給与を掛けるという考え方があるんですけれども、雇用者がどんどん減っていくと、そういう
意味では
調整が進んでしまうという問題点を持っているわけですね。
ですから、
マクロ経済スライドそのものの考え方を本当にどうすべきなのかということをもう一回根本から考え直すべきではないかというのが、私のまず基本的な
意見です。
次に、標準報酬というのがあるわけですが、皆様御存じのとおり、標準報酬というのは、
厚生年金においては、そこに書きましたけれども、九万八千円から六十二万円の三十等級なんですけれども、これも長い間変わっていないんですね。一方、健康保険は、五万八千円から百二十一万円という四十七等級です。
私は昭和四十八年から
年金の仕事をしているんですけれども、その年に物価スライドが入ったんですね。このときまではたしか、標準報酬は健保も厚年も一緒でした。四十八年の改正というのは、物価スライドが入って、それまで修正積立方式の
厚生年金をシミュレーション法に変えたんですね。
シミュレーション法というのは、パラメーターが非常に多いんです。もちろん、
運用利回りをどうするかとか
労働力
人口などの変動が一番大きいんです。もちろん、どのぐらい結婚するかとか、子供はどのぐらいいるか、障害になる確率とか、本当はその表をつけようかと思ったんですけれども、これは余りに複雑なので、そんなものを見たって別に、だから何だということになるので、とにかく非常に複雑な計算をしていることは事実なんですね。
それから、もっとまずいことに、経済成長の予測は厚生
労働省の権限じゃないわけですよ。これは内閣府の権限なんですね。そうすると、成長率の
数字を厚生省がつくるわけにはいかない。これは厚生省の役人と話したときに言っていましたけれども、強烈な縦割りがあって、あれはできないと。要するに、厚生
労働省ができることというのは、ある程度限られているわけです。
そういうわけで、
マクロ経済スライドというのが、やはり限りなく
保険料が上がり、給付が下がるのではないかという、確かに
西沢さんがおっしゃるように、もっとよく周知させるべきだというのはあるんですけれども、仮に周知させたとしても、恐らくそういう懸念を
国民は持つと思うんですね。
ですから、そういうことなどを含めて、もう一度、こういった構造が適切かどうかということについて、やはり議会はきっちり
議論をして、それを検討すべきだと思うんですね。結局、再計算をやめたということが非常にきいているんですよ。やはり、
国民の関心が行き届かないところで厚生省というのは何をやるかわからないから、別に僕は厚生省の敵じゃないんですけれども、そういうところはあるので、その辺をよくお考えになったらどうかと思います。
したがって、標準報酬を健康保険並みにすれば、そこに書きましたように、ざっと計算すると、これは健保のデータで、九千五百億円の増収になります。もちろん、これは一遍に上がると、
事業主負担も本人
負担もありますから、そんなことは簡単にはできないわけです。しかし、どこかでこれは改定して、やはり財源を立て直さなきゃいけないので、それが本来、
厚生年金の
制度をどうするかのもっと基本的な問題じゃないかと思うんですね。
御存じの方もおられると思いますが、アメリカの公的
年金は、基礎給与の上限はたしか一千万円ぐらいなんです。これは為替レートがいろいろ変わるから、もう少し低いかもしれません。上限はそのぐらいなんですけれども、給付については三段階になっているんですよ。低い方は一〇〇%、次の段階が四十何%で、その上が一五%だったかな、折れ曲がっているんですね。だから、日本もそういう折れ曲がり方式にすれば、拠出金は大きいけれども給付には余り
影響しない。これは完全に
所得の再分配なんですけれども、そういうやり方を検討してはどうかと思います。
それから、このシミュレーションは
運用利回り四・一という非常に高い
運用利回りなんですけれども、積立金は大体四年分持っているというのを前からずっと厚生省は言っているわけですけれども、これは四年分には根拠がありません。さっき申し上げたように、段階
保険料方式からシミュレーション法に移る間に、何となく四年というのを既成事実化しただけなんです。積立金が大きいと実は運用リスクが大きいですから、実際に
年金積立金運用基金はリーマン・ショックのときにたしか八兆円ぐらいマイナスになりましたけれども、積立金を減らしてしまえば運用リスクはないわけです。それで、今ある積立金というのは、多くは団塊の世代が拠出した資金ですから、それをこれからの給付に使っても世代間の問題は起きないわけですね。
ですから、私は、何年分がいいかというのはちょっとよくわかりませんというか、これは
議論しなきゃいけないと思いますけれども、何年分か減らせば、さっき申し上げた、これから比較的受給者と被
保険者が安定している期間に、何とか
保険料も余り
影響を受けないような形で、かつ、
制度を改定するということができるんじゃないかと思うんです。それがもう本当に今度、まあ、ことしかどうかはあれとしても、もうこの数年が
最後のチャンスだと思うんですね。それをぜひお考えいただきたいと思うんです。
やはり、立法府がそういうことをきっちりと
議論してやっていただきたいと思うんですね。ですから、それは赤い字で書いた「積立金の取り崩し」という問題で、幾らという案はありません。
それから、企業
年金が専門なので、私は三井物産とかソニーとか新日本製鉄の
年金制度をつくったんです。もっとたくさんつくっていますけれども、そういう関係で、ちょっとこのことはぜひ知っていただきたいのが、
年金にかかわる特別法人税という問題ですね。
これは、九九年に特別法人税を凍結したんですけれども、このころ、実はバブル崩壊でマーケットがかなり低調で、マーケットの人ならすぐに
調整と言うわけですが、
調整していて、いずれにしても何とか救済しなきゃというので、一%の税金をただにした。ただというか凍結したわけです。取らないようにしたんですね。それから、何と今まで十三年間、税金を取っていないわけですね。
どういう計算で一%は決めたかというと、その下に書きましたように、これは税務大学校の吉牟田先生の有名な本なんですけれども、そこに書いてあるんですけれども、
所得税率と地方税率を加えて、それに延滞税を掛けたものを比例案分したという考え方なんですね。
なぜかというと、
年金の権利を得ると、そのときは課税されないわけです。それで、運用益も課税されない。課税されるのは将来の退職のときなんですね。だから、その間は繰り延べにしようというのが特別法人税です。もちろん、関係者の中には、こういう
制度は世界に例がないとかいって
反対する人がいますけれども、実際には三十年以上、特別法人税を払っているんですよ、企業は。それで、これは実際の納税事務は資産を運用している信託銀行や保険会社が納税しますから、別に取り漏れはないんです。非常に徴税コストは安いんです。
もし、これを一%でやりますと、そこに、
年金基金というか
年金制度の、日本の上位十社、これが本当に上位十社かどうかはわからないんですけれども、恐らくこの十社が、これは十社か十一社かちょっと数えていないですけれども。NTTは特例で
制度が二つあるんです、ほかはみんな一個しかないんですけれども。上の方はみんな、二兆円とか一兆何千億とか、すごい資産を持っているわけです。ここで一%本当に税金を取ると、そこにありますように、千二百億円ぐらいの税金を取れるんですけれども、さっきの計算式にありますように、今、では一体何%の延滞税かというのは、ちょっと現実性はないわけです。
今、金利が低いですから、多分一%ぐらいにしないと今のあれとしては理解されないし、もちろん
所得税率も地方税率も、特に
所得税と地方税の関係が逆になりましたから、そういう
意味ではここは変わりますけれども、いずれにしても、同じような考え方で計算し直すと、多分〇・三%とかそれぐらい、〇・二か〇・三ぐらいになっちゃうと思いますけれども、それでも、もらっている企業の方は、余りこういうことについてすごく喜んでいるわけじゃないんですね。まあ、よかった、やるんだったらやればという程度の話で。
これは
厚生年金基金はかからないんですよ、非課税なんです。掛け金の三倍ぐらいのところまでは非課税ですから、そういうふうになっています。
時間かな。前の人が少し短かったから、ちょっと延ばしていいですか。