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土居参考人 慶應義塾大学の
土居でございます。
本日は、本
委員会におきまして、私の
発言の
機会をいただきましたこと、大変うれしく思っております。お
手元にございます
参考資料に沿いまして、
お話をさせていただきたく存じます。
本
委員会で、ただいま
特例公債法案が
審議されていると伺っております。私の
特例公債法案に関する
意見は、この二
ページ目に書かれているとおりでございます。もちろん、
公債発行に依存するような
財政状況はできるだけ
公債に依存しないようにしていくことが望まれるということではございますが、いろいろな
意味で
税収が不足する現在の
財政状況におきましては、
社会保障の
給付等々
行政サービスのためには、
財源を
確保するためにやはり
特例公債の
発行をしっかり法的に担保するということが重要であるというふうに考えております。
もし
特例公債法案が
成立しなければ、市中における
公債発行が円滑にできないということになります。
財務省証券という短期的な
資金繰りの債券によって
資金繰りを何とかつなぐことはできるというような
意見もあるやに聞いておりますけれども、やはりそれは、本来あるべき姿ではないという
意味において不適切であり、かつ、
予算総則において
財務省証券の
発行上限が定められているということからいたしましても、それが、年度末までもつというような
意味で持続可能であるとは私は思いません。その
意味でも、一日も早く
特例公債法案が
成立することを私は望んでやみません。
特例公債法案が
成立しないということになりますと、
国債市場における疑心暗鬼の増幅によって、突発的な
国債金利の
上昇というものが予期せぬ形で起こるという
可能性もあるというふうに私は思っております。
もちろん、
国債金利が
上昇するという話は、
オオカミ少年とか、いろいろな言い方でこれまでにも言われてきました。私も、
財政健全化をしなければいつ
国債金利が
上昇してもおかしくないということをこれまで述べてきましたが、御
承知のように、実際は、
国債金利はそこまで
上昇したことはありません。
しかし、全く
上昇しないで今後も十年間、二十年間安泰でいられるというような
日本経済、
日本財政の
状況であるかというと、むしろ日々刻々そうでない
方向に動いているように私は思います。そういう
意味では、今までなかったから
国債金利の
上昇は今後もないと言い切れるような
状況ではないというふうに私は思っております。
先ほど
國枝参考人もお述べになられましたけれども、
アメリカの
連邦予算の例を引きますと、お
手元の
資料の三
ページですが、昨年の八月の話は
國枝参考人の
お話にありました。実は、ことしの七月末に
アメリカの
与野党は既に二〇一三年度に関して六カ月間の
暫定予算を可決させる
方向で
合意しておりまして、ことしは未然に、昨年のような
債務上限の危機というものに直面しないように政治的な配慮がなされているということであります。私は、この
アメリカの
連邦予算の例に沿って、
与野党による
合意が不可欠なのだろうというふうに思います。
金利上昇については先ほど触れたとおりでありますけれども、四枚目にその
資料を載せておりますが、ますます
我が国の
国内で
国債が消化し切れるというような
状況ではなくなりつつあるということであります。
国債発行は、御
承知のように、毎年のようになされておりまして、
国債残高は累増しております。その一方で、
高齢化ないしは
経済の低迷ということも相まって、家計の
金融資産は伸び悩んでおります。そういう
意味で、いつ
国内で消化できなくなるかわからないというような懸念があります。
もちろん、
国内での消化が円滑に行われなくなったということだからといって、いきなり
財政が破綻するわけではありません。しかし、国際的な
金利裁定がより働く、つまり、
海外の
投資家が保有する
割合がより多くなることを通じて、
海外の
投資家の
影響が
日本国債の
金利により大きく作用する、その
可能性が高まっているという
意味では、今までのような
状況にはないということだと思います。
それからもう
一つ、
日本の
財政構造について、
利払い費の
増加が懸念されます。もちろんこれは杞憂であってほしいわけですけれども、もし
国債金利が予想以上に上がった場合に、それがどういう形で
財政構造に響いてくるかということで、これは
財務省の
試算ではありますけれども、
経済学的な、より精密な分析でも同様の結果が得られておりますけれども、五
ページにありますように、仮に、よい形で
経済成長が促されて
名目成長率が上がるということがあったとしても、
自然増収だけでは、残念ながら、
利払い費の
増加をカバーできないという
日本の
財政構造があります。
これを避けるには、もちろん、無駄な
歳出を
削減するということによって収支を改善するということ、それから、税制を
改革することによって
税収を
確保する、その
二つが不可欠だろうというふうに思います。
続きまして、七
ページに参りまして、ただいま本
委員会で
審議されております
法案の中には、年金
特例公債に関する
部分もございます。年金
特例公債は、まさに、基礎年金国庫
負担の
財源を
確保することとして
発行される
特例公債ということだと聞いております。
その
法案には、その償還
財源を
消費税とすること、それから償還期限を明示しているという点では、私はこれは高く評価しております。やはり、
財政規律を維持するという
観点からしても、
財源を明示し、かつ、いつまでに償還する、いつまでも借り続けるわけではないということを内外に示すことによって
財政規律を維持する姿勢を
政府が示すということは重要なことだろうというふうに思います。
さらに、当然のことながら、償還
財源を
消費税とするということであるとすれば、これは
消費税に関連する
法案も同時に
成立するということが不可欠なわけでありまして、二〇一四年度以降の基礎年金国庫
負担の
財源確保、さらには年金
特例公債の償還
財源の
確保ということについても、二〇一四年、二〇一五年に予定されている
消費税増税ということは不可欠だろうというふうに思います。
もちろん、デフレの中で
消費税増税を行うということについては懸念が示されておりますし、
増税を行うと
経済成長を損ねるのではないかという懸念もあるやに思います。ただ、私が思うには、もはや、デフレが終わるまで
増税を待っているわけにはいかないという
状況にあるのだろうというふうに思います。
八
ページに記しておりますけれども、
経済成長も
財政健全化も、これをともに両立させていくという方策が求められるというふうに思います。
経済成長を先にするということで
増税を後にするというほど、
日本の
財政状況は強固ではありません。むしろ、
増税をしてもなお
経済成長が損なわれないような方策というものが不可欠であり、
経済成長にまつわる
成長戦略も重要なことだろうというふうに思います。
デフレの中で
増税を行えばもっとデフレが深刻になるのではないかという
意見がありますが、私は、そうではないというふうに考えております。
九
ページのスライドにお示ししておりますけれども、基本的に、
消費税の
増税というのは物価を上げるということであります。もちろん、一時的な物価
上昇ということですから、
消費税増税をしたときだけ物価が上がり、
消費税増税をそのまま据え置いた次の年には物価の
上昇はなくなるということにはなります。
しかし、今、国会で
審議されております
消費税増税法案は段階的な
引き上げということであり、かつ、しかもそれが予告されているということになりますので、
国民には広く事前に
消費税が上がるということが知られて、それをもって
国民が賢明に消費活動を行うということなのだろうというふうに思います。
そういたしますと、物価が上がる前にある程度買えるものは買っておこう、特に耐久消費財を買っておこうというような動きは出てまいります。そういたしますと、駆け込み需要ということで、
消費税増税前にそれなりの需要喚起が行われる。
もちろん、一度限りの
消費税増税ですと、
消費税が上がった後、いわゆる買い控えということが起こり、そこによる需要の減退というものがあるかもしれません。しかし、段階的に
引き上げられるということになりますと、一年半後にまた
消費税が
引き上げられるということを知っている
国民、消費者は、いつまでも買い控えてばかりはいられないということになりますので、当然のことながら、二〇一四年四月から二〇一五年十月までの間に、しかるべき買い控えを抑えるような行為が起こる。別の言い方をすれば、消費の前倒し効果というものが起こるだろうというふうに思います。
もちろん、二〇一五年十月以降には何も
消費税の
増税については決められておりませんから、その後は、何もしなければ、物価はもとに戻るといいますか、物価
上昇率がもとに戻るということになります。私は、そのころまでには、金融政策なども連携しながら、
経済成長戦略も連携しながら、デフレが恒常的に脱却できるような体制をこの
消費税増税とあわせて同時並行で行っていけば、デフレ脱却という問題は解決するのではないかというふうに考えております。
さらに、
日本経済をただいま悩ませております
円高の問題との関連で、十
ページに記しておりますけれども、
円高と
消費税増税の関連は、むしろ、
消費税増税を含む
財政収支改善は
円安要因になるということであります。
どうしてかと申しますと、
消費税増税を初めとする
財政収支の改善策というのは、
国債発行額自体を抑制する、減少させるということになります。そういたしますと、
日本国債の増発が抑えられる分だけ
日本国債の
金利上昇圧力が弱まるないしはより低下する
要因になるということになりますので、国際的な
金利裁定を考えますと、円をドルにかえる、つまり、円が、
金利が下がっているということで、ドルにかえる取引がむしろ促されるということを通じて
円安になるということであります。もちろん、為替レートはこの
一つの
要因だけで決まっているわけではありませんから、ほかの
要因があるという点は無視できませんけれども、
消費税増税と為替レートの直接的な
関係ということで申しますと、そういう対応
関係があるというふうに思います。
その
意味では、
円高それからデフレという懸念、当然、
日本経済はこれを克服していく必要があるとは思いますけれども、
消費税増税が大幅にこれらを邪魔するというようなものではなくて、むしろ共存して、デフレ脱却と
経済成長と
財政健全化の両立というものが可能になるのではないかというふうに思っております。
私からは以上です。ありがとうございました。(
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