○徳永エリ君
民主党・新緑風会の徳永エリです。
会派を代表いたしまして、一川保夫防衛大臣に対する
問責決議案に対して、断固
反対の立場から
討論をいたします。
決議案では、一川大臣の幾つかの発言を挙げて辞任又は更迭を求めていますが、そのときの
状況、対応、心情を鑑みますと、防衛大臣として問責の
理由になるものはありません。
以下、
反対の
理由を述べさせていただきます。
第一に、一川大臣が正式に就任する直前に、一部の記者に対し、私は安全保障の素人だが、それが本当のシビリアンコントロールだと述べた点について申し上げます。
まず、この発言は、記者会見やインタビューなどに答えた公式な発言ではありません。日常的な記者との会話の中での発言で、私は素人とおっしゃったのは、物静かで穏やかで、決して自己顕示をしない一川大臣の謙虚さの表れです。シビリアンコントロールについても、
国民目線で判断しながら、
国民に防衛
政策や安全保障を理解してもらった上で
政策を推進しなければならないという気持ちで言ったと大臣は
説明しておられます。
人がどういう気持ちで発言しているか、それはその人の人柄や生きざま、様々な角度から見て理解しなければなりません。
国民の負託を受けた
国会議員たるものが人の心を理解しようとすることができなくては、政治家としての仕事は務まりません。そういった意味で、私は安全保障の素人だが、それが本当のシビリアンコントロールだという発言のどこに問題があるのでしょうか。
昭和四十年から農林水産省の官僚として、また、石川県議
会議員を二期、
平成八年からは
国会議員として衆議院三期、
平成十九年からは
参議院議員として多くの経験を積まれ、その経験の豊かさと政治家としての高い評価があってこその防衛大臣就任なのです。
安全保障関係の
委員会や部門
会議に所属して専門的な経験を積んできた人を防衛大臣にすべきだという主張には、一理あるかもしれません。しかし、国の
行政分野の多様さと限られた国務大臣の数からいって、各分野で経験を積んだ人だけを大臣に任命するというのは物理的に不可能であります。防衛だけが特に重要な分野だから大臣には経験者を充てるべきだという理屈はなかなか成り立ちにくいと思います。国務大臣の役目としては、単に
自分の所掌する省庁を統括するだけではなく、閣僚のメンバーとして
政府の仕事
全般について意見や
賛否を表明するということも重要であります。
こうした点からいえば、高い見識を持ち、冷静で、さらに
国民目線で社会を見渡すことができる一川大臣は、まさに野田
内閣の閣僚として必要かつ適任であります。
第二に、ブータン国王夫妻歓迎晩さん会に欠席し、同僚議員のパーティーに出席、こちらの方が大事だと発言したとされることについて申し上げます。
この発言に対して、野党の皆さんは外交軽視だと批判しておられます。しかし、一川大臣は、
国会の
日程がつかみ切れなかったことから、急遽欠席しては申し訳ないとして、あらかじめ晩さん会への欠席届を出していたものです。決して晩さん会よりパーティーを優先したわけではありませんし、こちらが大切だとおっしゃったのも同僚議員への気遣いだということは皆さん分かっているじゃありませんか。
そして、政治家のパーティーというものは、自らの政治活動を
報告し、考えを伝え、支援者の方々から直接御意見を聞くための貴重な場で、政治家にとっては大事な仕事の一つであります。その際に、先輩や仲間の議員に出席をお願いし、挨拶をしてもらうことは、党の雰囲気や結束を広める大事な機会でもあります。ましてや、忙しい公務の合間を縫って大臣が駆け付けてくださることは、たとえ本当に短い時間であっても、支援者の方々も大変に喜んでくださいます。そのことは野党の皆さんも十分分かっていらっしゃると思います。
一川大臣は、十一月二十二日、ブータン領事館に直接謝罪に行かれました。また、謝罪の手紙も送られたということで、きっと、心からの謝罪の言葉をつづったその手紙に、ブータン国王も一川大臣の思いを理解してくださるものと思います。
最後に、田中前沖縄防衛局長の発言について申し上げます。
田中前局長の発言は、確かに沖縄県民の方々に対する配慮のない、たとえお酒の席でも絶対にあってはならない発言であります。そのことの重大性を、沖縄の皆さんの気持ちを考え、非公式な場での発言ですから事実関係をよくよく確認した上で、一川大臣は直ちに局長を更迭したのです。そして昨日、田中前防衛局長を四十日間の停職処分にする方針を固め、今日発表いたしました。さらに、一川大臣は、在任期間中の給与全額を国庫に返納することとされました。この一川大臣の
責任ある対応、判断のどこに問題があるのでしょうか。
また、普天間基地の問題の発端となった九五年の事件に関する
国会での野党議員からの質問について一川大臣が詳細には知らないと答えたのは、事件のことを改めて口にするのもつらく、
国会の場で詳細に述べることは
被害者の御家族や沖縄の人たちの心を更に傷つけることであります。いかにも、私は、優しい一川大臣らしい対応だったと思います。
そして、一川大臣は、沖縄及び北方問題に関する特別
委員会の理事を務めていた経歴もあり、事件の詳細を知らないはずはないのです。もちろん、一川大臣に田中前沖縄防衛局長に対する監督
責任がないとは申しませんが、喫緊の課題も山積している中、進行中の重要な仕事を途中で投げ出してまで辞任せよという主張は乱暴であります。
我が国では、自民党時代も含めて総理大臣が一年で交代するというような
異常事態が続いていますが、そのことは閣僚においても同じであります。防衛大臣がころころ替わるようでは、諸外国も
我が国を安心して付き合える国とみなすことができないでしょう。安全保障上非常に不利なことにもなりかねません。
一川大臣は、この間、苦しんでおられたと思います。これまでのことをしっかりと胸に刻み、もう二度とこのようなことが起きないように、防衛大臣として
責任ある行動を取っていただけるに違いありません。一川大臣には、沖縄の皆さんや
国民からの
信頼を仕事で回復すべく、全力でその責務に当たっていただきたいと心から希望します。
我が国は、かつてない国難に見舞われています。東日本大震災からの復旧・復興、原発
事故の収束、外交や国防、円高や欧州債務危機などの
経済危機、まさに今、私たち与野党が力を合わせて全力で乗り越えていかなければいけない課題がたくさんあるんです。
このようなときにこのような
決議は、政治の力を今求めている
国民の皆さんに大きな失望を与えるだけだとは思いませんか。また、本当の
責任の取り方とはどういうものなんでしょうか。ここは真剣に考えなければいけないと思います。辞めるということが
責任の取り方なんでしょうか。しっかり考えましょう。
今も強い
責任感を持って誠心誠意職務を全うしようとしている一川大臣に対し
問責決議案を
提出することは、私は
反対です。皆さんも政治家の
責任の取り方ということをしっかりと考えていただき、この
決議に
反対されることを心からお願い申し上げ、私の
反対討論を結びとさせていただきます。(
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