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委員長(
増子輝彦君) 次に、先般、本
委員会の
委員を中心に構成され行われた議員派遣につきまして、本
委員会の審議に資するために、派遣議員団の団長を務めました私からその概要を御報告いたします。
平成二十三年度重要事項
調査第一班は、スリーマイル島原子力発電所視察及び米国における原子力
政策に関する実情
調査のため、本年十月十日から十五日までの六日間、アメリカ合衆国を訪問しました。
派遣議員は、
岡崎トミ子さん、
金子恵美さん、小西洋之君、米長晴信君、愛知治郎君、岩城光英君、岡田広君、森まさこさん、浜田昌良君、松田公太君、井上哲士君、荒井広幸君、吉田
忠智君、
亀井亜紀子さん及び私、
増子輝彦の十五名であります。
以下、
調査の概要を御報告いたします。
まず、スリーマイル島原子力発電所を視察しました。スリーマイル島原子力発電所は、一号機が一九七四年に、二号機が一九七八年に営業運転を開始しましたが、一九七九年三月、二号機において炉心溶融を伴う事故が発生いたしました。事故から三十二年余を経た現在も二号機は保管状態に置かれております。
同発電所において、二号機を管理しているファーストエナジー・ニュークリア・オペレーティングカンパニーより、事故の経過、除染・燃料の取り出し等事故後に講じた措置、廃炉の見通し等について
説明を受けました。事故発生時に、弁の故障による冷却材の流出に運転員が気付くのが遅れ、燃料の溶融が生じたこと、事故後、六年にわたる除染と周到な準備の後、燃料の取り出しには一九八五年から一九九〇年までの五年間を要したこと、現在でも少量の
放射性物質が原子炉内に残っており、廃炉措置は、現在稼働中の一号機と合わせ、二〇三四年に開始すること等の
説明を受けるとともに、
意見交換を行いました。
また、二号機のタービン建屋、事故発生時のままの状態で保管されている中央制御室等の視察を行いました。
次に、米国原子力規制
委員会、NRC
本部を訪問いたしました。NRCは、一九七四年に設立され、一九七五年に活動を開始した連邦の独立機関であり、原子力利用促進とは独立した安全規制機関として原子炉の許認可等の業務を行っております。NRC
本部では、ウィリアム・ボーチャード運営総局長等より、NRCの概要、NRCにおける検査官の養成・教育等について
説明を受けるとともに、
意見交換を行いました。
NRCの概要については、NRCは約四千人のスタッフを有しており、意思決定機関は五人から成る
委員会であり、
委員は大統領が任命し上院が承認すること、スリーマイル事故の教訓を踏まえ
委員長職が導入されたこと等の
説明がありました。
NRCにおける検査官の養成・教育等については、検査の基礎となる規制・法律や、原子炉の技術に関して十分な知識を有すること等を重視しており、多くの職員が修士号、博士号を有していること、
本部とテネシー州の訓練センターにおいて講義やシミュレーターを用いた訓練を行う一方、実地訓練も行うこと、検査官としての資格を得た後も、緊急事態に対処する計画の立案等、十の特殊な分野について資格を選択的に得ることができること、高い能力を保証するために、検査官に対しては三年に一度、資格の再取得が求められること等の
説明がありました。
また、派遣議員からの質問に対して、事故が起きた場合、直ちに二十名規模のチームを現地に送ることができ、
本部のエマージェンシー・オペレーションセンターに、
委員長以下、六十ないし七十名の
専門家が参集する体制となっていること、
東京電力
福島第一原子力発電所事故の教訓を学び、規制内容等を変更する必要があるかは現在
検討中であり、全交流電源喪失への
対応等、約四十の分野において更なる
評価が必要だと
考えていること等の
説明がありました。
次に、米国エネルギー省、DOE
本部を訪問しました。
DOEは、エネルギー安全保障と核安全保障を担う省として、一九七七年に設置されました。DOEは、過去に核兵器の開発を行ったオークリッジ国立研究所等多数の国立研究所を有し、これらの施設のうち、
放射性物質に汚染された区域の除染を行っております。DOE
本部では、ピーター・ライオンズ原子力担当次官補等より、米国のエネルギー
政策、除染技術等について
説明を受けるとともに、
意見交換を行いました。
米国のエネルギー
政策については、オバマ大統領は、原子力がクリーンエネルギーの重要な位置を占める旨、事故後も
表明しており、NRCに対して、
福島の事故からどのような教訓を学ぶことができるか、短期的・長期的視点から見直すよう指示していること、原子力はクリーンで
廃棄物の管理ができるエネルギーだからこそ推進していること等の
説明がありました。
除染については、DOEは除染について二十年以上の経験があり、
放射性物質の貯蔵、
処理、損傷した燃料の取扱いと回収、廃炉等の技術を有していること、化学的技術から機械的技術まで多種多様な技術があるので、事例に合った技術を用いる必要があること、包括的な計画を策定し、最終的に目指す
状況を定めることが重要であること等の
説明がありました。また、DOE所管施設の除染に要する費用は、年間五十億ドルから六十億ドルであるとのことであります。
次に、全米科学者連盟、FASを訪問いたしました。
FASは、一九四五年、核兵器の開発に携わった科学者を中心に、核戦争の防止という目的で設立され、核セキュリティー、エネルギー安全保障等幅広い活動を行っている科学者団体であります。FASでは、チャールズ・ファーガソン会長と、原子力など今後の日米両国におけるエネルギー
政策の在り方等について
意見交換を行いました。
ファーガソン会長からは、米国と日本は、天然資源の有無等の違いがあり一概に比較できないが、日本にとり、エネルギー安全保障と気候変動
対策という二つの面で、原子力は必須なエネルギーであり、原子力に対する信頼を取り戻すために、国民との対話を行っていく必要があるのではないかとの発言がありました。
その後、派遣議員からの質問に対し、東日本大震災後の我が国のエネルギー
政策について、各地の原子力発電所を徹底的に審査し、結果を恐れず国民に開示する必要があること、原子力のみならず他のエネルギーも含めて、リスクも示しながら、国民に選択してもらえばよいとの
説明がありました。
次に、米国環境保護庁、EPA
本部を訪問しました。
EPA
本部では、
冒頭、リサ・ジャクソン長官から挨拶があった後、国土安全保障担当のデボラ・ディートリヒ長官補等から、EPAの概要、
放射線防護に関する規制、緊急事態時における
対応、除染作業を行う
専門家へのトレーニング等について
説明を聴取いたしました。
緊急事態時における
対応については、
放射性物質が漏れるといった緊急事態が発生した場合の
対応方針を定めたプロテクティブ・アクション・ガイド、PAGがあり、事故後数時間から数日後までの、避難の適否を
判断する早期の段階、数か月後から数年後までの、避難した人がいつごろ戻れるかを
判断する中間の段階、除染を行う最終段階という三つの段階ごとに
判断を行う等の
説明がありました。
また、除染については、航空機を用いて短時間に放射能を調べることができること、米国の除染技術の幾つかは既に我が国でも活用されており、これらの技術を幾つか組み合わせて使う必要があること等の
説明がありました。さらに、除染作業は、費用、時間、
廃棄物の量を
考えて取り組むことが必要であるとの助言をいただきました。また、除染作業の
専門家に対するトレーニングは官民共同で
実施し、ワシントン州ハンフォードにあるEPAの施設で教育訓練を行っているとのことでした。
次に、ジェフ・ビンガマン上院エネルギー・天然資源
委員長を訪問しました。同氏は、ニューメキシコ州
選出の上院議員で、二〇〇七年から上院エネルギー・天然資源
委員長を務めております。
冒頭、私から、今回の
東京電力
福島第一原子力発電所事故は我が国にとって初めての経験かつ未曽有の国難であり、この間の米国
政府、国民の御支援に感謝の意を
表明するとともに、事故の収束、除染、避難
住民の帰還の問題など、適切な支援を
要望いたしました。これに対してビンガマン上院議員からは、米国
政府も支援を行うとともに、米国も今回の事故から学ぶことが多い旨の発言がありました。また、米国の除染技術による支援については、DOEには除染技術等の蓄積があるので、
要請があればエネルギー省長官に伝えたい旨、
説明がありました。
次に、米原子力エネルギー協会、NEIを訪問しました。
NEIは、原子力産業界のための
政策機関であり、原子力発電所の運営会社、大学等、約三百五十の団体が参加しております。同協会のファーテル会長より、米国の原子力エネルギーの概要について、また、ベクテル・コーポレーション等より除染の技術等について
説明を受けるとともに、
意見交換を行いました。
米国の原子力エネルギーの概要については、米国における原子力発電所の数は百四基あり、電力需要の約二割に相当する年間約八千億キロワット・アワーを発電していること、オバマ大統領は原子力は米国のエネルギーミックスの重要な部分を占めると述べており、超党派で原子力に対する支持があること、現在四基の原子力発電所が建設中であること、既存の原子力発電所の運転期間は四十年間であるが、NRCが承認すれば二十年間延長することが可能であり、百四基の原子力発電所のうち七十一基が運転期間の延長を認められたこと等の
説明がありました。
除染の技術等についての派遣議員からの質問に対し、ハンフォード、スリーマイル、チェルノブイリ等における除染の実績、建物・土壌等についての除染技術、
東京電力
福島第一原子力発電所事故についての日本側との協力体制等について
説明がありました。
以上が
調査の概要であります。
なお、詳細につきましては、後日、議院運営
委員会に報告書を提出することといたしております。
今回の
調査に当たって、短い準備期間にもかかわらず、御協力をいただきました在外公館の
方々、また、訪問を快く受け入れてくださいました訪問先の
方々等
関係各位に対し、この場をお借りして心から感謝を申し上げ、報告を終わります。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十一分散会