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参考人(大槻奈那君)
メリルリンチ日本証券で金融アナリストをしておりまして、ソブリン問題、欧州の問題ですとかも調査をさせていただいております者です。どうかよろしくお願いいたします。
私の方からは、お手元に資料もお配りさせていただいておりますけれども、昨今の欧州問題、これが
日本にどういった影響を与え得るかといったようなお話をさせていただければと思います。
まず、簡単に、今回の欧州問題の原因ということで資料の三ページ目にお示しをさせていただきました。こちら、広い意味では、私ども
市場関係者の目から見ますと、僣越ではございますけれども、先進国共通の問題だと考えておりまして、
日本も含め、昨今の民間セクターの
財務問題、例えば景気の低迷ですとか銀行の不良債権の増加、地価の下落など、そういったことを直接、間接的に
政府が公的資金などを使う形で支援はしてきたと。そういった形の中で徐々に
政府部門の負債の増加が増強をされてしまったということが根底にあるというふうに思っております。そこにもってきて、二〇〇七年、御記憶のとおりでございますが、サブプライム問題が勃発して、改めて
政府の負債の大きさ、そして
償還能力の不安にまで発展したという、そういったケースだと思っております。
政府セクターの負債ですとか信用力の問題というのが
市場の者から見て非常に難しいと思いますのは、金融危機の場合は、
皆さん御存じのとおり、四ページ目とかにもございますが、これ、
日本の九〇年代の例を書かせていただきましたが、金融機関の場合は、結局、その資本の増強というのを
政府のセクターで公的資金を注入すればバランスシートがある程度改善していくということでありますが、これを突き進めていったときに、
政府部門の
財務が悪化した場合というのはどこからも資本注入するということはできないということでありまして、バランスシートが悪化してしまうと、最終的にはデフォルトに行く以外に即効性のある解決がないと。その前に止めなければいけないということが大きな問題でありまして、欧州はその事前の策を取らなかったということが大きな問題だと思っております。
これに対しまして、遅まきながらということで、五ページ目にございますように、欧州でも、十月二十七日でございましたが、首脳会合で様々な対策が
合意されましたわけですが、
市場から見ますと、非常に問題点も多くて、しかも各国の政治情勢によって実施に至っていない、実施が見えないということが昨今の不安要素が残ってしまっているというところだと思います。
この後の六ページ目から十一ページ目に様々な申し上げました問題点というのをまとめさせていただいておりますが、幾つかかいつまんでお話ししたいと思います。
一つ目なんですが、六ページ目辺りに書いてございます。
市場が結局疑心暗鬼になってしまっているということが、これが
日本に対しても今後、特に
国債の問題でも、足下、影響も多少出ているやにも聞いておりますが、そういった問題の一番の懸念材料かと思っております。結局、何をやっても、御存じのとおり、ちょっと一瞬マーケットは安心してまた戻ってしまって
国債の金利が上がってしまうということが続いているというところでございます。
加えまして、次のページにも多少書かせていただいておりますが、過去、
皆さんも御記憶のとおり、
財政の破綻によるソブリンのデフォルトというのは今回に始まったことではございませんで、ロシアもございましたし、ラテン
アメリカも遠い意味ではそうだったと思います。しかしそれが、今回は初のケースということが幾つかございますが、そのうちの
一つが信用保険の
市場ということであります。要は、デリバティブによって
市場の声がより現物、この
国債の価格に影響を及ぼしやすくなっているということが大きな問題になっていますので、今までのやり方どおりのことをやっていたのでは解決しないと。もしも
日本に波及した場合ということも考えると、新しいやり方を今のうちから考えていかなければいけないということかと思っております。
さらに、後ろの方に
国債の問題というのを書かせていただいております。御存じのとおり、十一ページ目になりますが、最近もう、これからも多分格下げの問題というのが続くと思っております。
私、格付会社にいたこともございましたが、格付の問題、特にソブリンの問題は、どうしても相対観で判断されやすいという問題がございます。企業の格付の場合は、ある程度のデフォルトの実績などもありますので、それによって判断が比較的しやすいというデータのサンプルの多さというのがあるんですけれども、ソブリンの場合はそうではないだけに、ある
一つのところが格下げをされると、それを基準にほかのところがそこと比べてどうかという目線になって、例えば米国が格下げをされましたけれども、そこに対してほかの国、例えばフランス等がうわさになっておりますけれども、そういったことの、フランスも格下げになるんじゃないかですとか、
財務的に見たら米国より悪いんじゃないかと、そういったような問題が出てきてしまって、スパイラル的に、負のスパイラルになってしまう可能性があると、そういった問題があると思っております。
しかも、今回のケースで、かつ、
日本に問題が仮にあれば同じようなことになりますが、過去のソブリンの問題というのは、ほとんどのケースでトリプルBですとか、低い信用力のところに発生していたと。今回はそうではなくて、A格以上の高い信用力のところに問題が起こってきたということになっております。これは何を意味するかといいますと、個人的にはこれが欧州の問題が生んだ最大の
日本に対しての影響だと思っておるんですけれども、いいところ、信用力がいいと思われていたところであっても、
国債の金利が上がってきてしまうことがあると。御存じのとおり、先週ぐらいからイタリアの方では
国債価格が跳ね上がっておりまして、七%になるなど、相当な高いところになってきてしまっております。
これらの結果として、
日本の金融機関に対する、あるいはシステムに対する影響というのを後半の
部分で書かせていただいておりますが、十四ページ目、
皆さんも御存じのとおりだと思いますが、本来的な直接的な影響というのは、実はそんなには多くないということであります。しかし、今後、中長期的には、私ども
市場の者はやはり広い意味での影響は懸念されざるを得ないと思っております、
日本に対しても、と思っております。
一つには欧州の金融機関なんですが、ニュースにも多少出ておりますが、アジアを中心とした資産の売却ですとか貸出しの抑制の動き、これは、この中にも少し触れているんですが、銀行資本規制、新しい資本規制が二〇一三年から始まりますが、そういったことも相まって、これから拡大してくる可能性があると思っております。
弊社では、こういった欧州金融機関の資産圧縮が今後三年間で一兆ユーロ、ケースの置き方によってはそういった
規模になり得るとも考えておりまして、そうしますと、ひいてはアジア頼みになっているこの景気の回復、あるいは何とか持ちこたえているということが危うくなってくる可能性があるかと思っております。
そして、もう
一つの問題点なんですが、邦銀の
国債投資意欲ということに若干の心配をしなければいけない可能性があるのかどうかだと思います。
先ほども申し上げましたように、ドイツの
国債が先週来、五〇ベーシスぐらいですとか、一月から比べますと拡大してしまっておりますけれども、
日本にも、まだ短期的なお話ではありますが、先週の後半ぐらいから
国債の金利が多少上昇してしまっております。
二十ページ目にございますように、
日本の金融機関の
国債保有残高は、もちろん御存じのとおり、右側のグラフにございますように、過去においても余り例がない形で二〇%前後にまでなってございますので、よくマクロの
方々の方で消化能力についてまだ相当な時間的猶予があるというふうな
議論を聞くと思いますが、私の方で金融機関の
方々と
議論を足下で直近でもしておる中では、やはり金融機関もプライベートの銀行でございますから、金融機関投資行動といたしましては、今後徐々に消化が難しくなってくるということになれば、リスクを回避する行動に出なければいけないと。
実際に、若干保有
期間、債券の保有
期間は短くしておりまして、リスク管理の一番の手法は何かと聞きますと、他の金融機関が売るよりも先に売ることであるということをやっぱり考えざるを得ないわけであります。それ以外に、これだけの大きなマーケットでこれだけの価額、例えば大手金融機関だと四十兆円以上保有していますので、どういうヘッジ手段を使ってもこれ無理なわけでありまして、結局はリスクがあるところから回避をしていくということにならざるを得ないということかと思います。
こういった
市場の不安心理、不安要素を増したということが今回の欧州からの影響の個人的には最大のところであると。
国債にもリスクがあるよということを認識させつつあるということが一番大きな影響で、我々が最も注意することなのかなと思っております。
そういったことでございますので、
日本に対してこれから影響が及ばないようにするということが最大の肝要なポイントだと思うんですが、まずそれに、具体的にはやはり根幹であります欧州問題に対して、もし
日本に対して
協力要請があれば応じるという、そういう準備をすること、それから、何らかの
市場に対しての影響がないように、万一不安要素、不安心理が拡大したときにも、
日本の
財政については改善方向にあり、改善の可能性が高いということを
市場に示していくことが大事なのかなと。実行性は
皆さんの御専門でございまして、私の専門外ですが、少なくとも
市場がこれから伝播してくる不安に対して、そうではないというような確たるエビデンスが欲しいなといったところかと思っております。
これが
市場からの望まれている現在のことかと思っております。
私からの御
説明は以上でございます。ありがとうございました。