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国務大臣(前原誠司君) 私は、
外務大臣就任以来、ダイナミックに変革する
アジア、世界の中で、
日本外交がより一層建設的な役割を果たしていくために、中長期的視点に立った
経済外交を展開していく重要性を強調してきました。
日本はこれまでODAなどを通じて様々な国際貢献を行ってきています。そのような
日本国民の国際貢献への意思は、
国際社会で着実に評価されています。世界の地域のほとんどで、
日本人が親近感と敬意を持って迎え入れられるのもその証左でしょう。
ただ、これらの
支援や
協力、例えば教育を受けたい子供のいる村落に新たな学校を造るにも、新興国で発生をする
環境汚染
対策のために
協力するのにも、
日本自身の
経済力が基盤となることは言うまでもありません。身の丈以上の外交を展開することが困難であるという
現実を踏まえ、
経済外交を戦略的に展開し、
我が国の土台である
経済を
強化することは、
我が国の総合的な外交力を高めることにつながるのです。
しかし、現在、
我が国は、
国内外で様々な困難や
課題に直面をしています。
国内的には、人口減少、少子
高齢化、莫大な
財政赤字という
三つの制約要因を抱えています。国外に目を転じれば、
我が国を取り巻く安全
保障環境は厳しさを増しており、
国際社会には
環境問題やテロなど
課題が山積しています。資源・エネルギーをめぐる競争も激化しています。
我が国が更なる発展を遂げるためには、これらの
変化に柔軟かつ能動的に
対応していかなければなりません。
このような新たな地域・
国際社会の戦略
環境下で、将来にわたって平和で安定した豊かな
日本を
実現し、それに資する国際関係を構築するためには、日米同盟を基軸とした盤石な安全
保障体制が必要不可欠です。昨年末に改定された防衛計画の大綱でも示されたとおり、
我が国自身の防衛力を
強化するとともに、日米安保体制を新たな安全
保障環境にふさわしい形で深化、発展させます。また、
米国そして近隣諸国と
協力しながら
国際社会が直面する様々な
課題への
取組を通じ、新たな地域の秩序
形成にイニシアティブを発揮していくことが大事です。大きな変動期に当たる
国際社会において、法の支配の
確立を一層
推進し、各国との協調
行動の下で
国際社会の共生に向けて主体的な外交を展開していく
決意です。
以上の
方針に基づき、本年の
日本外交の具体的
取組について述べます。
まず、私の掲げる
経済外交の四つの柱について御説明申し上げます。
第一の柱である自由な
貿易体制を
推進するための
取組として、昨年十一月に閣議決定をした
包括的経済連携に関する
基本方針に基づき、各国との間で高いレベルの
経済連携を
推進していきます。EPAに関しては、昨年、インド及びペルーとの
交渉を完了しました。今年も、EUやモンゴルとのEPA
交渉開始に向けて
努力するとともに、豪州等との
交渉の早期妥結と
韓国との
交渉の早期再開を目指します。FTAAPに向けた道筋の中で唯一
交渉が進んでいるTPP協定については、
関係国との間で情報収集、
協議を開始した段階であります。
国民の
皆様の御理解や
対応策の準備などを総合的に勘案し、
協議の
状況を見極めつつ、今年六月を
目途に
交渉参加につき
政府として判断をしていきたいと考えます。また、日中韓FTA
共同研究を
推進し、東
アジア自由
貿易圏構想、東
アジア包括的経済連携構想などの
議論に積極的に参加をいたします。WTOドーハ・
ラウンド交渉の早期妥結に向けましても積極的に取り組んでまいります。
第二の柱である資源、エネルギー、食料の安定供給の
確保のため、在外公館を通じた情報等の集約に一層努めるとともに、要人往来やODA等の外交ツールを活用し、オールジャパンとして戦略的に各国との連携を
強化していきます。特にレアアースを含む鉱物資源につきましては、菅政権発足以後、アメリカ、オーストラリア、モンゴル、インド、ベトナム、カザフスタン等との間で
協力関係を
強化することで一致をしています。今後も、官民連携の下、多角的な資源外交を
推進し、資源国との間で
協力関係を
強化してまいります。
第三の柱は、インフラの
海外展開です。
アジアを始めとする新興国を中心に世界各国でインフラ需要が増加する中で、
日本の優れた技術を積極的に展開をし、
日本経済の
成長につなげたいと考えます。昨年、新興国においては初めて
我が国がベトナムにおける
原子力発電所建設の
協力パートナーに選ばれました。また、昨年十二月の第二回
日本・アラブ
経済フォーラムには私も参加し、魅力的な市場及び
投資先へと変貌しつつあるアラブ諸国との
経済関係の
強化につき一致をいたしました。今後も、重点分野の
原子力発電や高速鉄道、水分野について、
アジアや中南米、中東、アフリカなど、各地域の新興国へのトップセールスを自ら先頭に立って行ってまいります。また、インフラプロジェクト専門官の指名を含む在外公館における
取組の
強化や、JICAによる
海外投融資の再開など、関係
政府機関のファイナンス面での機能
強化を目指し、民間を
支援する必要なツールも含め、包括的な
取組を進めてまいります。
第四の柱は、
観光立国の
推進です。政権交代以降、羽田の国際化やオープンスカイの
推進を図るとともに、中国人個人観光客に対する査証発給要件の緩和や
医療滞在ビザの創設などの措置を講じており、昨年の外国人観光客数は過去最多となる見通しです。訪日観光客の増加による内需拡大、
雇用増を通じ
日本経済の活性化に資するため、在外公館を通じた
海外での
我が国の魅力の発信など、観光庁と連携をしながら、外国人観光客の誘致に向けた
取組を
強化してまいります。
経済外交を展開をし、
日本の総合的な外交力を高めていくには安定した地域・国際
環境が必要不可欠です。日米同盟は、
日本の外交・安全
保障の基軸であり、
アジア太平洋地域のみならず世界の安定と
繁栄のための
公共財であります。昨年の菅政権発足以来、日米首脳は累次にわたり、安全
保障、
経済、文化・
人材交流を三本柱として、日米同盟を二十一世紀にふさわしい形で更に深化、発展させていくことで一致をしています。先般の私の訪米の際も、クリントン国務長官との間で、本年前半に予定されている総理訪米に向けて、日米両国が直面をする国際
環境にふさわしい新たな戦略
目標を策定をし、
共同で対処していくことを再確認いたしました。総理訪米の機会に、二十一世紀の日米同盟のビジョンを
共同声明のような形で示すべく、引き続き両
政府間で緊密に
議論してまいります。
我が国をめぐる安全
保障環境が厳しさを増す中、
我が国は、安保分野における同盟深化
協議プロセスを加速させ、幅広い分野での具体的な日米安保
協力を着実に進めます。普天間飛行場の移設問題につきましては、まず、一昨年の政権交代時の経緯や
沖縄県への米軍施設・区域の過度の集中につきまして
沖縄県におわびを申し上げなければなりません。その上で、
政府としては、昨年五月の日米合意を着実に実施していきますが、同時に、
沖縄の
負担の軽減にも
全力を挙げて取り組み、
沖縄の
皆様の御理解を得られるよう誠心誠意
努力をいたします。また、在日米軍駐留経費
負担特別協定につきましては、速やかに御審議の上、本年度内の御承認をお願い申し上げます。
経済面では、TPP等
貿易・
投資等の
自由化に関する情報収集、
協議を進め、クリーンエネルギー、高速鉄道や超電導リニア、レアアース等戦略資源などの分野のパートナーシップを
推進をいたします。
我が国は、
アジア太平洋地域におきまして、
米国や
アジア諸国と
協力、連携をしながら積極的に外交を展開をし、地域の平和と
繁栄に貢献します。
日中両国は、世界第二及び第三の
経済大国として、今後も様々な面で相互依存関係がより強まっていくと考えています。こうした大局的観点から、戦略的互恵関係を深め、東シナ海資源開発、
環境、気候変動、国際金融といった幅広い分野において具体的な
協力を
推進をします。一方で、
我が国は、中国の透明性を欠いた国防力の
強化や海洋
活動の活発化を懸念をしており、中国が
国際社会の責任ある一員として、より一層の透明性を持って適切な役割を果たすように求めます。
日韓両国は、基本的価値や利益を共有する最も重要な隣国同士です。私は、今月十五日に
韓国を訪問し、先方との間で、
政治、
経済、交流、安保といった幅広い分野で日韓間の戦略的関係の構築に向けて共に
努力していくことを確認をいたしました。日韓図書協定については速やかに御審議の上、今
国会での御承認をお願い申し上げます。昨年の日韓併合百年に続き、本年を未来志向の新たな百年を切り開いていく元年と位置付け、
協力関係を一層深めてまいります。
また、日中韓それぞれの二国間関係を補強し、地域の平和と安定をより確かなものにするためにも、
日本が本年
議長を務める日中韓サミットの成功に向け、三か国の
協力を着実に
推進してまいります。
ロシアとの関係では、最大の懸案である北方領土問題を解決すべく精力的に取り組んでまいります。同時に、
アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい日ロ関係を構築するために、あらゆる分野において関係を発展させるべく
努力をいたします。このような考え方に基づき、なるべく早い時期にモスクワを訪問し、ロシア側と実りある意見交換を行いたいと考えております。
北朝鮮とは、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を図る
方針です。
我が国は、拉致問題を始めとする
北朝鮮の人権侵害問題について、国連を含む
国際社会との一層の連携に努め、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国を
実現するため、
全力を尽くします。
北朝鮮による延坪島砲撃につきましては、
我が国は強い非難を表明しました。また、先般、
北朝鮮が六者会合
共同声明に反するウラン濃縮
活動を公表したことを強く懸念しています。
北朝鮮が六者会合
共同声明を真剣に履行することが大事であり、
米国及び
韓国を始めとする
関係国と連携をし、
北朝鮮に六者会合
共同声明や国連安保理決議に従って非核化等のため具体的な
行動を取るように強く求めてまいります。
東南
アジア諸国連合は、
国際社会で役割が大きくなっています。
我が国は、ASEAN
共同体構築及びASEANの一体性を高める連結性
強化を
支援するとともに、
日本・ASEAN関係を新しい段階に引き上げるべく新たな宣言と
行動計画を策定をいたします。メコン地域との関係も深化させます。
本年、ASEAN
議長国でもあるインドネシアとは、戦略的パートナーシップを抜本的に
強化します。三月には、地域の
災害対応能力向上のため、ASEAN地域フォーラム
災害救援実働演習を共催いたします。また、バリ民主主義フォーラムへの積極的な関与を通じ、民主主義を目指す国との対話を
推進をいたします。東
アジア首脳
会議につきましては、米ロの参加を歓迎し、EASが
アジア太平洋地域の平和と
繁栄のためにより一層の役割を果たすよう積極的に取り組みます。
豪州とは、昨年十一月の訪問の成果も踏まえ、相互依存的
経済関係の
強化に加え、安全
保障分野での
協力を進めます。この関連で、昨年署名を行いました日豪物品役務相互提供協定につきましては、速やかに御審議の上、今
国会での御承認をお願い申し上げます。
インドとは、
経済、安全
保障を始め幅広い分野で
協力を
強化し、両国間の戦略的グローバルパートナーシップを発展をさせます。また、ミャンマーの民主化、
国民和解が一層進むよう、同国との対話を
強化をいたします。
欧州は、基本的価値を共有するパートナーであり、英国、ドイツ並びに本年のG8及びG20
議長国であるフランスを始めとする欧州諸国や統合を深める欧州連合等と緊密に連携をいたします。
国際社会で存在感を飛躍的に増大させているブラジル、メキシコ等の新興国を始めとする中南米諸国との間でも更に連携、協調を深めてまいります。
気候変動分野では、昨年のカンクン合意を発展させた新しい
一つの包括的な法的文書の採択に向け、引き続き
交渉の進展に尽力してまいります。
生物多様性の保全につきましては、昨年の生物多様性条約第十回締約
国会議で得られた成果を着実に実施をしてまいります。これらの
取組を
推進する上で、途上国
支援を引き続き活用してまいります。
ODAにつきましては、
国際社会の様々な
課題の解決に向けて、また、
我が国の平和と豊かさの
実現に向けて、戦略的かつ効果的に活用してまいります。そのため、ODAの在り方に関する
検討を踏まえ、貧困削減、すなわちミレニアム開発
目標達成への貢献、平和への
投資、持続的な
経済成長の後押しを引き続き重点分野とするとともに、さきに述べた
経済外交の
推進への積極的活用を、
我が国と途上国の双方に裨益するものとして、特に重視をしてまいります。また、
我が国といたしましては、人間の安全
保障の視点に立って引き続きMDGsの達成に貢献する考えであり、本年六月、MDGs国連首脳会合をフォローアップするための国際
会議を
我が国で開催をいたします。
特に、
経済成長の反面、紛争、貧困などに苦しむアフリカを
支援するため、
我が国は第四回アフリカ開発
会議でのアフリカ向けODA倍増等、公約を確実に実施をし、この地域の開発と
成長を後押しをいたします。
PKOへの
協力は、
国際社会の平和と安定への貢献の最も有効な手段の
一つです。既にハイチ等において自衛隊が重要な貢献を行っていますが、今後もより積極的な役割を果たすべく、更なる貢献について
検討していきます。スーダン、ソマリアを含む紛争地域や脆弱国家における平和の定着
支援にも積極的に取り組んでまいります。
米国における同時多発テロから十年目を迎える本年、テロ行為や組織
犯罪の撲滅は引き続き
国際社会全体の
課題であり、
我が国としても
取組を継続いたします。
アフガニスタン及びパキスタンの安定と復興は、
我が国及び
国際社会の最優先
課題の
一つです。アフガニスタンについては引き続き、治安、再統合、開発を三本柱としたおおむね五か年で最大五十億ドル程度の
支援を着実に実施をいたします。パキスタンにつきましては、昨年の洪水被害からの復興を果たし、治安
対策と
経済改革の
取組を加速させるよう、
支援を継続いたします。
中東和平
交渉についても、パレスチナ
支援等を通じ、和平プロセスの進展に貢献をいたします。
海洋国家である
我が国にとって、海上航行の安全
確保は重要な
課題です。自衛隊等による海賊対処
行動やソマリア周辺国の海上保安能力向上に向けた
支援を継続をいたします。
核軍縮・不拡散分野につきましては、二〇一〇年NPT運用
検討会議の合意の着実な実施を促進するとともに、昨年
立ち上げた核軍縮・不拡散に関する外相会合の
活動を進め、核リスクの低減を通じた核兵器のない世界の
実現に向けて
国際社会の
議論を主導いたします。また、来年の核セキュリティ・サミットに向けまして、主催国
韓国や
米国との
協力を
強化し、具体的
取組を進めてまいります。イランの核問題につきましては、平和的・外交的解決を目指して、
国際社会と連携しつつ、イランへの
働きかけを継続してまいります。
人権人道分野においては、普遍的価値である人権及び基本的自由が、
我が国はもちろん、世界各国・地域で
保障されることが重要であり、引き続き国連や二国間人権対話等の場を通じて
働きかけてまいります。また、難民問題の解決に向け、今年度より開始した第三国定住による難民受入れを積極的に進めてまいります。
これらのグローバルな
課題を解決するため、G8、G20等における
議論に積極的に参加し、主導してまいります。国連が果たす役割を重視し、その実効性を高めるべく、国連の組織
改革と機能
強化を積極的に
推進してまいります。特に、安全
保障理事会が今日の
国際社会を反映した正統性を備えた機関になるよう、安保理
改革の早期
実現及び
我が国の常任理事国入りを目指し、積極的に取り組んでまいります。また、国連を含む国際機関の邦人職員の増強にも努めてまいります。
最後に、これまで述べてまいりました
政策を効果的に
実行するために必要となる総合的な外交力の
強化について述べます。
在外公館の新設や在外公館職員の再配置を含む体制整備を
推進すると同時に、情報収集・分析能力及び情報保全を含む外交実施体制を
強化をいたします。
予算の効率化、適正な文書管理及び外交記録の公開にも努め、
国民への説明責任を果たします。
また、
我が国に対する諸外国の
国民の理解と信頼を得ることは必須の
課題であり、重要外交
政策の積極的な対外発信に取り組むとともに、戦略的な
日本事情・文化の発信や
日本語の普及に努め、人の交流を更に活発にしたいと考えております。そのことは、外交
政策の円滑な
推進や
日本企業の
海外展開の
支援にもつながるものと考えております。
これらの
政府の
取組に加え、地方自治体やNPO、市民の
皆様との連携を
強化し、オールジャパンで外交を
推進をいたします。世界各地で活躍する多くの
日本人及び
海外に進出する
日本企業が力を発揮できるよう
環境づくりに努めるとともに、適切に
支援し、
日本の国力向上につなげてまいります。
アジアそして
国際情勢は激動の
時代を迎えております。この荒波の中で
日本が引き続き世界の平和と
繁栄のための役割を果たしていくには、
国民一人一人が力の源泉となることは言うまでもありません。今日ある
日本を築いたのも、
日本人の主体性と独自性でありました。その誇りと気概を持って、明日の
日本を築き、
アジア、世界に新しい秩序を
形成していけば、チャレンジをチャンスに変えることができると考えております。私たち一人一人がその
覚悟で
行動していけば、未来を切り開いていけると確信をしております。私はその先頭に立って菅政権の外交のかじ取りを担っていく
決意であることを表明いたします。
議員各位、そして
国民の
皆様の御
支援と御
協力をお願い申し上げます。
ありがとうございました。(
拍手)
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