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2011-05-19 第177回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十三年五月十九日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         浜田 昌良君     理 事                 中村 哲治君                 前川 清成君                 金子原二郎君                 桜内 文城君     委 員                 有田 芳生君                 今野  東君                 田城  郁君                 那谷屋正義君                 丸山 和也君                 溝手 顕正君                 森 まさこ君                 山崎 正昭君                 木庭健太郎君                 井上 哲士君    事務局側        常任委員会専門        員        田村 公伸君    参考人        東京大学大学院        法学政治学研究        科教授      中田 裕康君        関西学院大学人        間福祉学部教授  才村  純君        財団法人全国里        親会運営委員会        委員       青葉 紘宇君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○民法等の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人から御意見を伺います。  本日御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授中田裕康君、関西学院大学人間福祉学部教授才村純君及び財団法人全国里親会運営委員会委員青葉紘宇君でございます。  この際、参考人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  参考人皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方について申し上げます。  まず、中田参考人、才村参考人青葉参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと思います。  それでは、中田参考人からお願いいたします。中田参考人
  3. 中田裕康

    参考人中田裕康君) 御紹介いただきました中田でございます。  本日は発言機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。  私は民法を専攻しておりますが、今回の法案に関する法務省厚生労働省審議会、あるいはそれに先行する法務省研究会のメンバーだったわけではありません。また、特にこの問題について専門的に研究してきたというわけでもありません。ただ、七、八年前から家族法改正について考える研究者グループ研究会に参加してきましたので、そのようなことからお呼びいただいたのではないかと思っております。  こういう立場ですので、本日は、言わば第三者的な観点から、しかも民法以外の部分には余り及ばないかもしれませんが、この法案を拝見して感じたこと、考えたことを申し上げたいと思います。  私は、本法案は二つの意味意義深いものであると考えます。一つ基本理念を明確に示していること、もう一つ現実に即していることです。  基本理念を明確に示しているというのは、親権の効力の部分冒頭規定親権は子の利益のために行われるべきことを明文規定したことです。親権が単なる親の権利ではなく義務でもあることは、既に現在の民法八百二十条に規定されています。親権義務であることは、明治二十三年の旧民法には書かれておらず、明治三十一年の民法で入ったものですが、この義務が誰に対するものなのかについて古くから議論があります。国や社会に対する義務か、子供に対する義務か、両方かなどです。これは、国家と親と子の三者の関係の理解にかかわる大きな問題です。  しかし、この大きな問題はそれとして、親権が子の利益のためであるということは、明治民法起草委員である梅謙次郎博士親権喪失制度法典調査会に提案する際に既に述べておられたところですが、それから百年以上経た現在、学界においても実務界においてもほぼ異論がないところだと思います。親権が子の利益のためのものであることは、このように共通認識となっていると言っていいでしょうし、児童虐待防止法にも児童利益を尊重するよう努めなければならないという規定がありますが、これを民法明文で示すことは非常に意義が大きいと思います。それは、一つには法律児童福祉専門家にとって具体的な解釈の指針になるという意味があります。しかし、それ以上に大きいのは、一般の方々条文を御覧になった際、親権という言葉の持つ意味を正しく理解することが容易になるだろうということです。このことは今回の法案のとても重要な意義であると考えます。  次に、本法案のもう一つ意義として、本法案は単なる理念をうたうだけではなく、現実に即したものであるという評価ができると思います。現実に即したという表現には幾つかの意味があります。  第一に、それは現実に発生している問題の解決を図るために柔軟な考え方を取ったということです。児童虐待防止を図り、子供権利利益を擁護するためにどうしたらよいかについて、これまでの考え方にとらわれずに具体的方策を提示しています。  親権停止制度の創設はその一つの例です。現行法には、親権喪失宣告規定とともに、その宣告の取消しの規定があります。これらを組み合わせれば、一旦親権喪失させ、しばらくした後に復活させるという方法対応することも理論的にはできるはずです。しかし、現実には親権喪失制度の利用が極めて少ない。そこで、理論的にはできるはずだからといって放置するのではなく、なぜ利用されていないのかを詳しく分析した上で、より使い勝手の良い制度を創設したということです。  もう一つの例として、未成年後見において、後見人複数でもよいし、法人でもなり得るとすることがあります。後見人を一人にするか複数にするかについては明治民法制定時にも議論がありました。起草委員の原案は複数案でしたが、法典調査会で一人だけにすると修正されました。その後、平成十一年に成年後見制度を設ける際、成年後見人については複数でも法人でもよいとされたのに対し、未成年後見人については一人だけという規律が維持されました。その理由は、未成年後見人の職務の性質上、後見人複数いて方針にそごが生ずることは未成年者福祉観点から相当ではないというものでした。この理由自体は現在でも十分に理解できるものです。しかし、実際にはそもそも未成年後見人になろうという人が極めて少ないという問題が生じています。そこで、その理由を分析した上、未成年後見人を得るための門戸を広げたのが今回の改正案だと思います。  つまり、これまでそう考えてきたのだからということに固執せず、現実の問題を解決するために、もちろん十分な調査検討を経ておられることと思いますが、柔軟に制度改正をしようとしているのだと思います。  更に一つ付け加えますと、この法案民法児童福祉法という別の法律について双方の連携を明確にし、児童虐待の問題を一体的に解決しようとしていることも現実への対応という観点から大きな意味があると思います。  現実に即していることの第二点として、問題解決のための具体的方法が示されていることを挙げたいと思います。  例えば、医療ネグレクトの場合において、児童相談所長が一時保護を加えた児童などについて、一定の要件の下に親権者の意思に反してでも必要な措置をとれることにし、機動的な解決をするための方法が用意されています。また、これと並行して、親権停止やそれについての保全処分もできるのだろうと思います。このように具体的な対処方法が盛り込まれている点も大きな特徴であると思います。  第三点として、本法案裁判所児童福祉のプラクティスを踏まえているという点があります。  面会交流養育費について明記することはその一つの例です。これについては、もちろん学界での研究の蓄積もありますが、長年、家庭裁判所裁判外実務において実践されてきたところでもあります。ただ、従来は、その根拠は民法七百六十六条一項のその他監護について必要な事項一つとされてきました。今回、面会交流養育費現実的重要性に鑑み、これを明記しようというわけです。これによって離婚の際に取り決めるべきことが一層明確になり、またその取決めの重みがより高まることが期待できると思います。  もう一つの例として、親権喪失停止要件の定め方があります。現行法の下での親権喪失手続においては条文は著しい不行跡など親に対する非難を伴う表現になっていますが、実際の運用では子の利益保護を考えていると言われています。このような実務はもちろん学界の支持も得ているわけですが、これをはっきりと表に出すということも実務の生きた規範を明文化するという意味があると思います。  また、本法案準備段階での審議会専門委員会研究会検討状況などを拝見しますと、現場からの具体的な御意見がたくさん出されています。今回の改正案はそれをよく考慮して作成されたものだろうと思います。  四番目に、少し違った角度ですが、現実に即しているという言葉には、現実的ではあるが理想的ではないというニュアンスがあるのかどうかについて申し上げます。  例えば、親の懲戒権規定した民法八百二十二条については、この法案のような形ではなく、現在の規定を全て削除し、その代わりに、子は暴力によらず教育される権利を有するといった規定を置くという改正も考えられます。冒頭に申し上げました私の参加する研究会の案はそうですし、私自身もそれに共感を覚えています。  それに比べると、今回の案はやや控えめです。そうすると、それは現実的だが理想的ではないのかということになりそうですが、私はそうでもないと思います。私は、この研究会議論やその成果を発表した私法学会という学会のシンポジウムの際の議論を聞いていまして、家族法については一人一人が御自分の理想を持っておられることを痛感しました。ただ、それをぶつけ合っているだけですと前に進みません。それぞれの理想を保ちながら、どうすれば今よりも少しでも良くなるのかを考える必要があると感じました。  今回は懲戒権規定は削除にはなりませんでしたが、八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でとすることによって、懲戒はあくまでも子の利益のためにのみなされるという理念が明確にされたと思います。懲戒については、今後、親子法制全体の中で更に考えられていくべきテーマだとは思いますが、今回の改正はやはり大きな一歩であると評価したいと思います。  以上が私の感想です。  最後に、本法案可決成立を見た場合について、その運用面と、さらにその後のことについて希望を申し上げます。  まず、運用面です。  今回の改正は、子供権利利益を守るための現実的方策を提供するものとして大きな意義があると思いますが、それを十全ならしめるために運用面での工夫も必要かと思います。  第一に、今回の改正関係機関の御判断がますます重要になってきます。  まず、家庭裁判所では親権停止審判請求が多くなると思います。その際の判断基準は、恐らく速やかに形成されていくのだろうと思います。なお、期間満了後、更に親権停止が必要な場合、新たな請求審判がされることになりますが、その際のつなぎ方をどうするのかの工夫検討されるのだろうと思っています。  次に、児童相談所長児童福祉施設の長などの御判断が求められる場面が増えています。これについては、関係当局で既にお考えになられていることと存じますが、ガイドラインの作成や情報提供等が必要になるだろうと思います。  第二に、未成年後見人なり手確保の問題があります。  今回、その要件が緩和されたわけですが、これだけでは直ちになり手が飛躍的に増えることにはならないかもしれません。既に指摘されていることですが、未成年者のした行為により後見人が負うことのある不法行為責任に備える保険や、未成年後見人の報酬の問題などを考える必要があると思います。成年後見の場合は被後見人財産を持っておられる場合も少なくないかもしれませんが、未成年後見の場合は未成年者財産がないことが多いのだろうと思います。そうすると、サポートが必要な子供たちのために要する費用をどうするのかが問題となります。国が出すかどうかということはもはや民法の領域を超える問題ですが、児童福祉法上の諸機関未成年後見人とを子供利益のために協力するべき存在としてとらえ、費用の点もそのような視点で考えるという発想もあるかもしれません。これはまた、行政と司法との連携ということにもなると思います。  最後に、より広い範囲での立法への期待について一言申し上げます。  本法案は、平成十九年の児童虐待防止法児童福祉法改正の際の附則を受けたものであり、見直しの視点もそのための期限も限られた中で作成されたものだと思います。児童虐待防止及びその権利利益の擁護という観点はもちろん極めて重要なことであり、本法案はそのための適切な改正案であると思います。  ただ、問題はほかにもいろいろとございます。この法案の御審議を終えられました後も、引き続き親権法親子関係法、さらには家族法全体にわたる、より広い範囲での改正について御検討を賜りましたら有り難く思います。  私の意見は以上のとおりです。どうもありがとうございました。
  4. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) ありがとうございました。  次に、才村参考人にお願いいたします。才村参考人
  5. 才村純

    参考人(才村純君) ただいま御紹介いただきました関西学院大学の才村と申します。よろしくお願いします。  本日は発言機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。  私は長年、児童相談所児童福祉司をやっておりました。法律専門家ではございませんので、法律の在り方に関する包括的といいますか理論的な話は御専門でいらっしゃる中田参考人が今お話しされたところでございます。私の方からは、虐待対応実践現場からこの度の改正法案をどのように受け止めているかについて若干意見を申し上げたいと思います。  そして、何よりも、これら法制度を担う児童相談所などの体制が強化されないと、制度改正も結局絵にかいたもちになるのではないかといった問題意識から、今児童相談所などはどういった現状にあり、どういった課題を抱えているのかということについて、お手元にお配りしたレジュメに沿ってお話をさせていただきたいと思います。  まず、一番の改正法案意義課題でございます。  特に重要な意義でございますが、一つは子の利益が明確にされたことでございます。  現行民法は、親権者について、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負うと規定しておりますけれども、改正法案では、親権はあくまで子供利益のために行使するんだという旨の規定が設けられてございます。つまり、親権を有することを理由に行われる虐待行為は、それが子供利益を著しく損なうがゆえに一切認められないということが明らかになるわけでございます。親権者親権を有することを理由に自己の虐待を正当化し、介入を拒否する事案に苦慮している児童相談所にとっては、よりスムーズな介入子供保護が可能になるものと期待したいと思います。  これ以外にも、改正法案では、親が協議離婚をする際、子供との面会交流養育費の決定などの話合いについても、子の利益を最も優先して考慮しなければならないと規定するなど、改正法案親権の行使において子供利益を優先させるべきことを明記したことは、画期的なことだというふうに思っております。  次に、②の親権の一時停止制度が新設されたことでございます。  必要な医療子供に受けさせない事案や、親権者虐待を正当化するなどして、児童相談所の指導を受けたり養育態度を改めたりする姿勢が見られないような事案がございます。現行制度においてこのような事案対応するには親権喪失宣告制度の活用が考えられるわけですが、親権喪失宣告制度は全ての権限を無期限に制限するなど、その影響力は極めて大きいことから、ほとんど活用されていないことは御案内のとおりでございます。今回、家庭裁判所審判によりまして二年を限度に親権停止させる内容が盛り込まれましたことは、親権者の理不尽な言動に振り回されてきた児童相談所児童福祉施設里親などにとって、子供利益確保する上で極めて有効なものではないかと存じます。  次に、③の施設長里親等権限親権者親権よりも優先する枠組みが設けられたことでございます。  施設長里親などに付与される監護教育懲戒の各権限親権者親権との関係が曖昧であるために、例えば親権者が日常的な投薬や予防接種、入通院、手術といった医療について反対する場合や高校受験を認めない場合など、子供福祉を十分守れない実態がございます。今回の改正、これは児童福祉法になりますが、改正によりまして、親権者施設長里親などがとる措置を不当に妨げてはならないとされるなど、親権者の不当な主張を排除する枠組みが盛り込まれております。親権を包括的に制限するほどではないけれども、親の不当な主張のために子供を十分保護し切れないことに苦慮してきた現場にとりましては、歓迎すべき内容ではないかと思っております。  次に、(2)の課題でございます。  一つは、円滑な法施行に向けた省庁間の連携でございます。  このように、改正法は重要な意義を持つわけですが、施行に際して様々な課題もございます。その一つは、円滑な法施行に向けた省庁間の連携ではないかというふうに考えております。施設子供予防接種を受けさせたいと思っても、親権者の同意がないとの理由から拒否される事案はよくございます。パスポートの申請でも同じような問題があると伺います。これらは、たしか現行制度運用で何とかなると思うんですが、行政縦割り対応にずれが生じて、結局子供利益を損ねてしまっているわけです。  この度、改正法案には重要な改正事項がたくさん含まれておりますけれども、子供利益保障観点から、省庁間の緊密な連携を図ることが大きな課題ではないかと考えております。  次に、ガイドライン策定でございます。  改正法の円滑かつ適正な施行を図るために、基本的な考え方や具体的な対応方法などを記したガイドライン策定を強く求めたいと思います。例えば、児童福祉法改正法案には、先ほど申し上げましたように、親権者施設長里親などがとる措置を不当に妨げてはならないと規定しております。どのような行為が不当とされるのか、親権者判断に優先してとられなければならない措置とはどんなものか、この辺りのことを具体的に示していく必要があると思われます。  また、手術などのリスクを伴う医療について親権者が反対している場合、これを受けさせるかどうかの判断施設長里親のみに委ねることは非常に酷ではないかというふうに思います。その場合の判断基準や手順などについても具体的に示す必要があるのではないかというふうに考えます。  これらが曖昧であれば、現場は混乱して、子供利益を損ないかねないと思います。法案が成立した暁には、是非詳細なガイドライン策定していただきたいというふうに思います。  その次に、二番、この改正法案の円滑適正な運用体制確保、特に児童相談所等現状課題でございます。  制度改正のたびにこの児童相談所権限は強化されつつあります。今回の改正案でも、一時保護児童について、新たに児童相談所長監護懲戒教育権限が付与されるなど、児童相談所権限がますます強化されてございます。  子供の生命や福祉を守るためにはこのことは本来歓迎すべきことではありますけれども、一番懸念されるのは、これら種々の権限を行使する児童相談所体制が極めて脆弱で、これらの権限をどこまで適時適切に行使し得るのか、疑問がなくはないことでございます。このことは、一つ間違えば、子供を守ることができなかったり、家庭への不当な介入などの人権侵害になりかねないことを意味しておりまして、極めて重大な課題ではないかというふうに思っております。  そこで、児童相談所に的を絞りまして、その現状課題について申し上げたいと思います。  まず、業務量増に見合った職員配置でございます。そこに表一を掲げてございますが、これは、相談種類別業務量指数年度別の推移を表しております。それを御覧いただきまして、この一番下の心身障害相談、つまり、従来は児童相談所業務量というのは件数でもって議論されてきたわけでございますが、ただ、相談種別によって、同じ一件でもそれに費やす業務量が著しく異なるということでございます。  まず昭和六十三年度を御覧いただきますと、心身障害相談一件に掛かる業務量を一・〇とした場合に、例えばこの虐待相談が含まれている養護相談につきましては三・二倍、三倍の業務量を費やしております。さらに、平成七年度では五・四倍、平成十六年度にはこの養護相談心身障害の九・五倍の時間を費やしております。特に、この平成十六年度の研究では、特に虐待について別途業務量をはじき出しております。それによりますと、十二・八倍、つまり心身障害の十三倍近くの時間を費やしているということでございます。こういった膨大な業務量を費やす虐待相談がここ二十年で四十倍以上に増えているということでございます。にもかかわらず、児童福祉司の数は約倍にしか増えていないということで、年々その業務の負担が大きくなっているということでございます。  次に、表二は、特に先進国主要先進国においてソーシャルワーカー一人当たりどの程度相談件数を抱えているかという調査結果でございます。  まず、我が国でございますが、ワーカー一人当たり担当ケース数、百七件ですね。特に我が国特徴は、虐待相談だけじゃなくて子供に関するあらゆる相談対応するということになっていますので、それらを含めた数でございます。そのうち虐待だけでも三十七件を持っているということです。また、カナダ、アメリカ合衆国、イギリス、ニュージーランド、韓国、それを御覧いただくと、大体二十件前後でございます。これは国によって制度、事情が違いますので単純に比較することはできないわけですが、やはり格段に我が国の場合、一人当たりケース数が多いということはまず間違いないというふうに思います。  そういった中で、非常に深刻化しているのは、保護者による児童相談所職員への加害・妨害事案が非常に増えているということであります。それが表三、表四でございます。  また、そういった状況の中で、児童相談所職員のストレスとかバーンアウトの問題、これも非常に深刻化しています。表五は、MBI、マスラック・バーンアウト尺度ですが、児童福祉司に対してこういうテストを実施しております。その結果、情緒的消耗感、もう仕事で精神的に消耗し切ったと、そういう値が高い、傾向が高いというふうに出たのが児童福祉司の五一・四%、半数以上が情緒的消耗感が高いという結果が出ています。次に、脱人格化ですね。これは、業務が余りにも忙しいために、いわゆる相談に来られた方をその人格の持ち主として見るのではなくて、あたかも物であるかのように扱ってしまっている、そういう気がするという、その値が高いというのが二一・三%の児童福祉司に見られております。さらに、仕事の達成感、これが低いという児童福祉司が七二%ですから、大半の児童福祉司は達成感を感じていないということであります。  そういった状況の中で、国の方は、児童福祉法施行令を平成十七年に改正いたしまして、従来、児童福祉司の配置基準、人口おおむね十万人から十三万人に一人であったところ、五万人から八万人、大幅に人員増を図っております。公務員の定数削減が重要な課題となっている中、児童福祉司を大幅に増やすのは非常に困難なことは重々承知しているわけですが、OBの雇用や非常勤の雇用等いろいろと工夫していただいて何とか増員に努めていただきたい。そうでなければ子供の命と権利は守れないというふうに思います。これが児童福祉司がまだまだ足りないという話ですね。  もう一つは、この児童福祉司専門性の問題であります。  表六を御覧いただきますと、これは厚生労働省調査ですが、全員が福祉職、つまり専門職で充てているという自治体が一六%でございます。全員が行政職であるというのが一三%。大半は福祉職と行政職の混在であります。特に行政職の場合、異動サイクルが非常に短くて、なかなか組織の中でベテランが育たない。つまり、その組織の中で専門性が蓄積されないという問題があります。全員が行政職のところは、みんなが二年、三年でころころ替わっていくわけですから、言うなれば素人集団と言わざるを得ないわけです。そのために、専門性、特にこの福祉職採用をいかに進めていくかということが喫緊の課題ではないかというふうに考えております。  もう一つは、市町村、児童福祉施設体制についても同じことが言えます。市町村につきましては、平成十七年度から相談の一義的窓口として位置付けられ、また新たに虐待事案の通告先とされるなど、その業務はどんどんどんどん膨らんでおります。しかし、相談対応職員は事務職のところが多く、しかも非常勤職員が対応している実態も少なくなく、専門性や迅速な対応に大きな課題を抱えております。  また、児童福祉施設につきましても、今や施設は野戦病院と化していると言われるように、体制が脆弱な中で子供たちの問題行動に振り回され、子供一人一人のニーズにきめ細かく対応していくという本来の機能を発揮することができなくなっております。  最後に、お願いでございます。  以上、この児童相談所や市町村の施設などの体制強化の必要性について申し上げました。今、現場は想像以上に大変な状況にございます。そのため、最初は使命感と責任感を持って一生懸命仕事に励んでいた職員も、やがて燃え尽き、ぼろぼろになって職場を去っていく現状がございます。これでは、到底子供権利福祉を守れないことは明らかであります。親権制度改正を始め、幾ら制度が充実されても、これを担う人材が疲弊し切っているというのでは、結局制度そのものが絵にかいたもちになってしまいます。今こそ子供たち福祉を担う人材にもっと焦点を当てた議論をお願いしたいなというふうに思います。  以上でございます。ありがとうございました。
  6. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) ありがとうございました。  次に、青葉参考人にお願いいたします。青葉参考人
  7. 青葉紘宇

    参考人青葉紘宇君) 御紹介いただきました青葉です。  私は、里親という立場でここに臨んでいるつもりでおります。全国里親会といたしましては、この虐待対応の流れについて、早期の実現をお願いしたいと思っております。一日も早い成立をお願いしたいと思っております。監護教育についての親権子供利益のためにあるという考え方は画期的なものと思っておりまして、我々子育てに従事する者として肝に銘じてまいりたいと思っております。  また、児童施設里親親権問題と隣り合わせに組み立てられております。絶えずぎくしゃくといいますか、いろんなすり合わせのあるところです。親権が今まで非常に強かったものですから、なかなかいろんな子育てしにくい面がありましたので、今回の改正に期待しているところです。  もう一つ、我々の特徴としては、親権停止された後、その空白部分を埋めるのが施設とか里親とか子供を養育する者の責務というか立場というふうに理解して今日臨んでおります。したがいまして、親権停止に至るまでの法的手続とか、そういう部分については、私は今回述べる能力がありません。子供保護して生活が普通に流れ始めた段階からの問題提起ということになります。  私の場合は、もうこの年ですので、子供を二十人ほど里子として世の中に送り出しております。今三人、中高生の男の子と日夜戦っておりますので、その経験を述べながら、何か選んでいただければと思っております。  非常に親というのは大切なものだということは大変分かっているんですけれども、親の中には、その責任に、重さに耐えられないような、そういう実親さんもいらっしゃいますし、かなり突っ込んで支援しないといけない、そういう親御さんもいらっしゃいます。そういう人たちと一緒に子育てをしていこうというのが里親であり、施設の職員だろうと思っております。  そのときに、やはり親が全てを握っているというふうなことになりますと、我々、意見を差し挟む余地がなくなりますので、そこは柔軟に、ケース・バイ・ケースに子供福祉ということで対応できるような、そういう環境といいますか法体系ができてくれないかなというのが切なる願いです。全てを我々によこせとか、全て親だとか、そういうのではなくて、ケース・バイ・ケースにできたらいいなというのが里親仲間のいつも話で出てくるところです。  それからもう一つは、今日のポイントで申し上げたいことは、どう言ったらいいんですか、制度的には未成年後見制度は一応整備されますし、今回の法改正でも法人後見とか複数後見ということで成立するんですけれども、今までの運用面財産管理というところに焦点が絞られておりまして、子供を世話するとかそれから人権を守るとか、そういう部分視点がなかったものですから、そういうふうな部分を強く打ち出せるような、運用面で御配慮いただくような、そういうこれからの作業をしていただければ有り難いと思って、そう希望しております。つまり、子供の人権を後見人は守るんだという、財産を守るんではなくて子供の人権を守るんだという視点をどこかで強く打ち出していただければと思っております。  ということを前提に、幾つか、三つほどテーマを抱えてまいりました。  一つは、これは総論的になりますが、今回の子供のために云々という部分は、教育監護権というふうな、たしか上に冠が付いていたと思いますので、ほかの就労だとか契約だとかいろんなことを含めまして、幅広い親権でも子供のためにあるんだということを是非主張していただけるような、そういう環境をつくっていただければと思います。今回の法改正をきっかけに、その一歩を踏み出していただくような環境になっていただければと思っております。  それから、具体的な表れとしては、子供にかかわる我々にとっても、実親による子育てを支援する立場にある、子育てを支援するんだという立場にある、承知の上なんですけれども、日常生活上の簡単なことは現に養育している者、里親だとか、おじさん、おばさんも入るんでしょう、施設の先生だとか、そういう人にかなりの部分委ねていただけないでしょうかということです。  具体的には、もう今まで何回もいろんなところで例が出ておりますけれども、高校生のアルバイトも就労許可権とかいう話になりますと親以外には承認できなくなりますので、この程度の日常的な内容、それから携帯電話の契約なんというのもどこでも話題になりますけれども、そういうのは日常的な営みというふうに解釈して、現に養育している人に任せてもらえないかと。かといって、親の立場を否定するものでもないんですけれども、そう人権を侵害するようなことが、アルバイトするぐらいのことは、思っておりますので、そういうふうな解釈ができるような民法といいますか、大本のところが変わっていただけると有り難いと思っております。  それから、もう一つのテーマで、未成年後見制度を普及していただきたいという思いが強くあります。今のところは、子供財産がある場合には各方面から未成年後見が付けられるようにということで実際に付いているわけですけれども、財産のない子供についてはもうほとんど後見人の話題が出てきません。それで、社会的養護で保護された子供については、多くが財産がありませんので、後見人という発想は出てきておりません。なかなか受け入れてもらえないという実情があります。ですから、とにかく全ての子供後見人が付けられるように、子供の人権を守るんだという立場で、是非そういう環境になっていただければと思っております。  それから、これは解釈が分からないんですが、親権停止期間中、二年というふうに伺っておりますが、一つの区切りが、その期間中も未成年後見が付けられるのかどうかというのをどこかで質問していきたいと思っておりますけれども、それはまた分かりません。どういうふうな解釈するのか分からないところです。一応付けていただければと思っております。  それから、後見人なり手がないから、未成年後見なり手がないから後見人を推進しないんだという話もよく関係者から伺いますが、これは、子供の場合は財産管理というのがメーンにどうしても歴史上なると思いますけれども、身上監護といいますか、子供の世話、それからアドバイス、そういうのを踏まえてが期待されますので、地域性がどうしても出てくると思います。なるべく近くに未成年後見がいて、現に養育する者と一緒に子育てをするという体制が組めたら有り難いと思っております。地域の中に未成年後見人を育成する、そういう取組をお願いできればと思っております。実際に私の方の経験から、学校の先生なんかが、かなり卒業後も、十八歳の後も親とのトラブルの間で中に入っていただいているというケースを何件か私も経験しておりますので、行政のOBとか、それから学校の先生とか校長先生とか、そういう方に後見人を振ることも可能かなというふうに思っております。  それから四番目、四つ目としての意見ですが、子供の戸籍に実は後見人がずらずらと載ってしまいます。後見人の本籍から氏名からみんな子供の戸籍に載ってしまうんです。そうすると、結婚するときに戸籍を二人で持ち寄りますので、そこで、これ何ということになって、別に知れて、秘密でもないんですけれども、黙って通り越せるのであればその方がいいだろうというふうに思って、戸籍に記載しないで登録制に、いわゆる成年後見制度が登録制になっておりますので、そういうシステムが組んでいただけないかというのが切なる願いです。  もし、今回の法改正なりガイドラインで登録制が間に合わない、できないという枠組みであれば、戸籍の記載の方法ですね、何か一行ぐらいで済むような方法実務的にできるのか私分かりませんけれども、最低そこに行っていただきたいと思います。そうしないと、子供に、後見人あなた付いた方がいいんだよ、付けるよと言ったときに、後々まで記載が残るようなことはなかなか提案できませんので、是非記載については御検討いただければと思っております。  一つは、実務的に日々の生活で未成年後見人里親の接点の事例を一つ挙げておきましたので、これを読み上げるような形で、一、二分時間いただきたいと思います。  この子は、幼児期に相次いで両親を亡くしまして、保険金が、大分大きなお金が下りました。養護施設におりましたので、そこの施設長さんが後見人ということで通帳を預かったということです。里親に言った方がいいだろうということで里親宅に行きまして、里親宅で使ったお金は矯正歯科で百万円、それから高校を失敗しまして入り直して余分に七十万掛かりました。ここまでは普通の財産管理なんですが、十七歳ぐらいになるとアルバイトもしたりいろいろありまして、バイクをアルバイト代で買いたいと、ここに書いておきましたけれども、自分で働いたんだからどうしてもいいんだろうということで里親に申出がありまして、なかなか返答が難しいので、自分で働いたお金ですので、なかなか断れないというか、駄目という根拠も難しかったものですから、ここで、里親には財産管理権がないから判断できないよということでここでは逃げております。この子は、後見人判断してもらえということになりまして施設長さんのところに飛んでいきました、買ってくれということでね、判こを押せと、買うときのですね。そうしましたら、施設長さん、この子のことをよく知っていたものですから一喝して、怒られて帰ってきたというような場面がありました。  我々実際に子育てしている者としては、未成年後見人だとか、それから支援する人、児童相談所の職員も含めまして、こういう関係を望んでいるわけです。つまり、他人の子供を一人で全て育てるというのは大変重たいといいますか負担になりますので、是非こういう形で、法律専門家なり、こういうお説教できる人を後見人になっていただければと思っております。先ほど申し上げたように、学校の先生なんかがとっても子供にとってはおっかない存在なんだなというふうには思っております。  それから、もう一つの例として、これは里親になってから後見人里親自身がなったという例ですが、これは無国籍の子供措置された関係で、児童相談所相談をして誰が国籍取得の事務をするかという話になりまして、里親さんやってほしいということで、児童相談所と一緒にやるわけですけれども、日々に大使館に、領事部ですが通ったり、そういうところは里親がみんなやりました。たまたまその国では里親というのは大変ステータスの高い国柄だったものですから、大変丁寧に領事さんに扱っていただいて、難しい手続もかなり厚意でどんどん話が進んで国籍を取ることができたという事例です。  じゃ、これが全て里親ができるかというと、たまたまこの人はそういうことができたんで、逆の事例もありまして、下の二行に書いておきましたけれども、真実告知をまだ子供にしていないから手続ができないんだということでいろいろ難渋した話も聞いております。  こんなところが実務的に、日々の生活の中で、この民法改正の中で感じたり考えて、お願いしたいことであります。  以上です。
  8. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 田城郁

    田城郁君 民主党の田城郁です。よろしくお願いをいたします。  まず、お三人の参考人の方のそれぞれの立場からの意義深いお話をお聞かせいただきました。大変ありがとうございます。  まず、聞きたいこといっぱいあるんですが、十五分ですから、懲戒権ということが一つの論点になっていると思うのですが、懲戒というのはしつけというふうに考えてよろしいと思うんですが、しつけがあるから虐待をしてもいいんだというところに結び付いてしまうというような、短く言えばそういう問題があると思いますけれども、しつけと虐待の境界というのもまたどこで線を引くかということは非常に難しいんではないかと思うんですが、今回の改正でも懲戒権といいますか残りましたが、そこいら辺のことに関する問題意識、その境界線はどこなのか、あるいは懲戒権について今後どうしていったらいいのか、それぞれお三人の方にお聞きいたします。よろしくお願いいたします。
  10. 中田裕康

    参考人中田裕康君) 懲戒権の問題は、今御指摘のそのしつけの在り方の問題と、それからもう一つ親権の概念との関係と両方があると思います。  先に親権の方を申しますと、親権の概念がかつては父ないし親の権力であるという時代があったんですけれども、そういう発想だと懲戒権は当然のことだと、こうなるわけです。ところが、だんだん親権の概念が日本の中でも外でも、親の権利とともに義務である、あるいは親の責任である、あるいは親が子のことを配慮する義務ないし権利だというふうに変化してきますと、親権の中で懲戒権をどう位置付けるのかが微妙になってきます。せいぜい監護教育権の一内容とすればいいんじゃないかということになります。  そこで、そのしつけなんですけれども、本当に適切な懲戒であれば子供教育にとって意味があると思うんですけれども、現実には理想的に懲戒権を行使するというのはなかなか難しい。中には、体罰によって結果的に子供の心身に傷を付けるということもある。さらには、懲戒という名前の下で虐待するという親も生じかねないと。そこで、民法の中から懲戒という規定をもう取ってしまうのがいいんじゃないかという考え方があるわけでして、私もそれに共感を覚えてはおります。  ただ、しつけについてはいろんな御意見がありますし、いきなりその懲戒規定を削除しますと、世の中に何か誤解を生じさせるおそれもあるという懸念を持たれる方についても理解できるところでありまして、そうしますと、今回の改正はまずは大きな一歩を踏み出したと考えまして、今後、親子法制全体の検討の中でいろんな御懸念に対する解決を慎重に図りながら、廃止の方向に進むのがよいのではないかと思っております。
  11. 才村純

    参考人(才村純君) まず、このしつけと虐待関係、どこで線引きするか、これは非常に悩ましい問題ではあります。ただ、これは厚生労働省ガイドラインでも虐待の定義がなされていまして、その中でやはり子供の心身の発達を著しく損ねる養育、これは全て虐待であるというふうに定義しています。つまり、子供からの視点が大事であって、幾ら親に愛情があるとか親が我が子に善かれとして一生懸命していることであっても、結果的に子供の心身の発達を著しく損ねておれば、それは全て虐待というふうに定義されています。  そういうふうに考えますと、今回この懲戒権等の行使に当たって、やはり子供利益に配慮しなければならないということが盛り込まれているわけですから、子供利益に沿わない、つまり子供利益を損ねるということはやはり子供の正常な心身の発達を損ねるということに等しいわけですから、そういう意味で、どういいますか、虐待は許されない、つまり懲戒権の行使の下に虐待を正当化することは許されないということが明確になって、そういう意味では評価したいなというふうに思っております。ちょっと回りくどい答えになりましたが。
  12. 青葉紘宇

    参考人青葉紘宇君) しつけについては、一応一つの目安として暴力が介在するかどうかという部分で考えますと、私の経験から、私の育てた子供のうち半分ぐらいが虐待保護された子供でした。それで、十八歳になったときにどういう振る舞いをしたかということですが、親が病気とかそういう理由で我が家に来た子供は、親との交流が進んで、何かとアパート生活しても親子交流が進んでまあまあの人間関係だと思います。ただ、暴力を振るわれた子供についてははっきりと結果が出ております、親元には帰らないと。  ですから、しつけ云々という話も、結局、子供自身が十八なり、まあ人によって違うんでしょうが、一つ、十八ということで子供が答えを出す時期が必ず来ます。そのときに、まあそのときじゃ遅いわけですけれども、そういう意味で暴力を振るった親についてははっきりと子供は帰らないということを言っておりますので、明確だと思います。
  13. 田城郁

    田城郁君 ありがとうございます。  それでは、先ほど才村先生の方から非常に厳しい労働環境、施設で働く方々の労働環境の問題がお話がされました。私の姉も県職員で、そういうところで働いていまして、転勤が多い、十年ぐらいで移るんですが、今の学校に行ったらもうちょっと行きたくないというふうに最近何か非常に顔が暗くなっているような状況があります。今のお話を聞いて、本当に悲痛な労働環境で働く人の声というものが私も想像が付くんですけれども。  職員はそれでも業務量が四十倍になった中で要員は二倍増と、大ざっぱに言えばそのようなお話もありました中で、理想的にはあとどのぐらい増やしたらいいのか。あるいは、イタチごっこだと思うんですけれども、これは、この法も含めて、そういう子供になってしまってからの法整備なり施設の問題だと思うんですが、そういうものを予防するといいますか、これが対症療法だとしたら、この根治療法というものなど、もし構想などがございましたら、それぞれお三方にあればお聞かせいただきたいと思います。
  14. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) まず、才村参考人
  15. 才村純

    参考人(才村純君) そうですね、理想的にどれぐらいの人数であればいけるのかという御質問ですが、これはなかなかはじき出すのは難しいわけですが、先進国のデータを見るとおおむね一人当たり二十件ということになっています。我が国は百七件ですから、約五倍のケースを持っているということになります。  一方、これは幾つか児童福祉司を対象としたアンケート調査があって、大体どの程度職員が増えればきちっときめ細かく対応できるかということを聞いているわけですね。それを見ると、大体やっぱりその五倍ぐらい増やしてほしいというのが出ています。したがって、その五倍というのはあながち全く根も葉もない話ではないのかなというふうに思います。  ですから、約五倍近く増やすのが妥当ではないのかなと、これは確たる根拠があるわけではありませんが、そういうふうに思っております。  それと、これは虐待防止するための根治療法という御質問でしょうか。
  16. 田城郁

    田城郁君 虐待にとどまらず、大きな意味で、例えば社会の在り方も含めて、こういうふうな親が育ってしまうからこうした方がいいんだよとか、そのような観点で何かお考えございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  17. 才村純

    参考人(才村純君) 従来、この虐待対策というのは、その事後対策に極めて重点が置かれてきて、やはり大事なのは、事後対策もさることながら、その予防の部分だと思うんですね。  やはり今の家庭が置かれた状況というのは、都市化がどんどんどんどん進んで、親だけで全てこなしていかないといけない。昔はその地域におせっかいを焼くおじさん、おばさんがいて、若い親が悩んでいるときにもいろんなそのサポートをしたわけですよね。ところが、今はそういう人がどんどん少なくなって、全て親だけでこなしていかないといけない。そういう状況の中で追い詰められていくということがあると思います。ですから、そういうふうに考えると、やはりその困っている方を早期にキャッチして、早めの支援に乗り出して、そのことで追い詰められるのを防ぐ、そこがポイントになってくるのかな。  じゃ、どういう支援をすればいいのか。やはりこれはいろんな子育て支援サービスを充実させることだと思うんですが、ただ、従来の子育て支援サービスというのはやっぱり一つ大きな弱点を持っていると思うんですね。それは何かといいますと、やはり申請主義なんですよね。つまり、その本人がアクションを起こさないといけません。勇気を振り絞って相談に行かないといけない、叱られるのを覚悟で健診に行かないといけない。  ところが、考えてみると、やはり追い詰められて子育てに自信をなくしている親というのは、いろんなサービスが用意されても自ら積極的にアクションを起こせないんですね。ですから、そういうふうに考えると、やはりこちらから出向いていく。昔は自然発生的にそういうおせっかいを焼く人がいたわけですけれども、今はいないわけで、そこは行政とか市民が意識的にかかわっていく、アウトリーチといいますか、こちらからやっぱり訪問して、おせっかいを焼いて、いろいろとその気持ちに寄り添いながら公的サービスにつなげていく、そういう役割の事業ですね、これの充実が必要ではないかというふうに考えています。
  18. 田城郁

    田城郁君 ありがとうございました。
  19. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) では、続きまして中田参考人青葉参考人、簡潔にお願いします。
  20. 中田裕康

    参考人中田裕康君) 私は、実態については今の才村参考人のお話を伺って感銘を受けたということしか申し上げられません。虐待を含めた根治療法についてですが、単発の妙薬というのはなかなか難しいと思います。  そこで、今回の改正はその一つなんですけれども、いろんな制度を組み合わせることによって防止策、是正策を講じるということかと思います。ただ、その際に注意すべき点は、家族像が多様化しているということを踏まえて、その制度全体としてどうあるかということも併せて考える必要があるということもあろうかと思います。  以上です。
  21. 青葉紘宇

    参考人青葉紘宇君) 児相の職員が何人が適切かというまず最初の御質問ですけれども、私の実務的な経験だけ申し上げますと、実は里親が、これは東京都の配置基準でやっておりますので全国的に該当するか分かりませんが、里親三十人に対して担当児童福祉司というんですかね、責任者が一人付いております。大体そのくらいですと、日常的な電話のやり取りやちょっとした相談もできるなというところで、先ほどの百人という数字が出ておりましたけれども、もう論外かなと思っているんです。三十人ぐらいで一人の担当職員が我々をケアしているというのが現実です。私はそれでいいのかなというイメージです。  それから、根治的な虐待云々については、これはこういう国政の場ですので是非申し上げたいと思っております。  というのは、最近、学校だとか保育園も含めて、里親施設子供が非常に、ちょっと保護される子供の様子が昔と違います。どこが違うかというと、愛着障害という言葉が今盛んに出ておりますけれども、どうも幼児期の親のかかわり方が非常に無機質なかかわり方が多いからだというふうに私は今経験的に思っております。これは、もう心理とか医療とかいろいろな見解があるんでしょうけれども。ポイントは、幼児期をどうだっこしてあげるか、ほっぺをふっつけてあげるか、そこがポイントだと思います。  それで、私のところに来た二十人ぐらいの例で全部を推し測るのは間違いなんですけれども、非行にしても何にしても、うまくいくなと思う子供は、お付き合いする中で、どこかでおばあちゃんがだっこしたとか、離婚しちゃったけれどもお父さんが大事にしてくれたとか、そういう思いを持っている子は十八で大体自分の人生をつかんでいきます。コミュニケーションが取れない、何言っても分からないという感じの何か別世界の子供も実はおりまして、その子の乳児期の話を聞くと、やはり無機質な関係で、もう本当にネグレクトだったりほったらかしで、誰も要するにほっぺをふっつけてくれなかったというところですので、ここはもう本当に国の施策として、乳幼児期にだっこしてあげる、おんぶしてだっこしてという関係をどうつくるか、これがもう勝負だと思っております。  以上です。
  22. 田城郁

    田城郁君 ありがとうございました。大変参考になりました。
  23. 森まさこ

    ○森まさこ君 自民党の森まさこでございます。  参考人の皆様、本日は大変参考になるお話ありがとうございました。また、参考人の皆様の日ごろの福祉に関する御活動に敬意を表します。  本日は、震災孤児について御意見を伺いたいと思います。  私、福島県のいわき市に住んでおりますが、震災孤児が被災地全体で百四十人を超え、今もなお増え続けております。福島県だけで申しましても、五月十七日現在で十八人であります。浜通りの新地町、相馬市、南相馬市、浪江町、いわき市、こちらの方で、津波で又はその他の原因で震災により両親を亡くされたという孤児がおります。  今ほど、児童福祉司のマンパワーが足りないでありますとか、そういったお話がありましたけれども、この三月十一日の東日本大震災で一気に百四十人を超える震災孤児が出ました。これに対して、果たして今現在の体制できめ細かい対応が取っていけるのかということ、大変私は心配をしております。  まず一つには、震災孤児がどれぐらいいるのかというその調査自体でございますが、福島県においては、児童相談所の職員さんたちが一軒一軒避難所を回って、そしてその孤児の存在を確認をしていくというような作業になっているそうでございます。そうしますと、避難所以外でありますとか、そういったところに孤児がいてもなかなかそれをすくい上げることができないし、役場機能も、役場自体が壊滅して移転しておりますし、役場職員も、今自分たちが被災をして家族と離れ離れで、大変な業務の負担が増えている中での仕事でございます。ですので、まずこの孤児の数が、今現在福島県で十八人ですけれども、本当はもっといるのではないかというようなこと、それに気付かずに放置をされている孤児がいるのではないかということを大変心配をしております。  こんな話がありました。五月十一日の時点でツイッターに投稿されたんですけれども、ボランティアの方が南相馬市の避難所に行きましたら、二歳か三歳ぐらいのお子さんが一人でいたので、周りの方に聞くと、親がどこですかと聞いても皆さんがはっきり言わないと。ちょっといないんだよねというような形だけれども、何時間もいるうちにこれは親が行方不明ではないかということが分かってきたと。それで、いろいろ捜してみたら、大変御高齢な祖父の方が一人、一緒に避難所にいらっしゃって、祖父の方と二人きりであると。祖父の方もお話を聞いてももう茫然自失の状態で、とても小さい幼児のお世話をできるような状態ではないと。誰かこの子を助けてあげてくださいと、私たちはボランティアなので今日帰らなければいけないというような投稿がございまして、私の方で調査をしましたら、今現在はいわき市の祖父の弟さんのところにいるかのような情報が、まだ未確認ですが、得ることができたんですけれども、祖父の弟さんということでもやはり御高齢には変わりがないでしょうし、その方が親族里親になるのかどうかもまだ不明なのでございますが、そういった状況があるということです。これが調査の点です。  そして二点目は、そういった震災孤児の養育を、これをきめ細かくしていけるのかどうかということでございます。  今、才村参考人の方からも、愛情豊かに育てる必要性というようなお話がありました。お書きになった文章の中にも、四つの側面の人間関係が保障されることが必要不可欠、一つは愛情を独占できる大人の存在、もう一つが濃密な関係である、三つ目が安定した関係である、そして四つ目が永続的な関係であるということで、これは本当の親であれば、通常は何があってもどんなときも自分を守ってくれるという、そういう四つの側面が満たされますけれども、それがないお子さんについては社会的に我々がそれを満たしてあげなければいけないわけでございますが、震災孤児について、例えば里親が見付かった、その後、親族のところに預かることができたと、そこまでは分かったとしても、その先のフォローアップ、ここまでしていけることができるのか、できないとしたらどのような点を改善していったらいいかということ、三人の参考人の皆様にお聞きしたいと思います。  三つ目は、その費用の点でございますけれども、里親になった場合の養育費用でございますが、これは一般的な生活費が五万円前後ですね。月に五万円前後、一般的な生活費が支給される。それと、教育費が必要な分支給されるということでございます。ただ、親族里親の場合には、通常の里親に支給される里親手当、月額七万二千円が支給されないということでございます。  しかし、震災孤児の皆さんのときにも、よく指摘されるのは、やはり地域的な関係や又は親族的なつながりまでも、それを引き離して遠くに行かせてしまう。また、お友達との関係ですね、そういったものをなるべく維持した形で養育していった方が望ましいんだと。そういうことで、親族里親ということになった場合に、一般的な里親の七万二千円の手当がいただけない中でいくのは大変厳しい条件だというふうに思うんですけれども、そこはいかがでございましょうか。  そして、四つ目ですが、福島県の場合は原発事故がありまして、放射線被曝についての対象地域の子供へのいじめや差別、虐待といったものが指摘をされております。この震災孤児についても、引き取られていった後、又は学校等でこういったいじめが行われている場合に、そこをどう守っていくかということについてお知恵をお借りしたいと思います。  こういった四つの問題点、調査をどうするか、養育をどうするか、そしてその費用をどうするか、そして原発、放射線被曝に関するいじめに対する対応ですけれども、これについて、非常に人数が激増したということ、その予算も必要ではないかということから緊急の立法が必要ではないかということに関しても御意見をいただけたらと思います。お願いいたします。
  24. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) 三人からでよろしいですか。
  25. 森まさこ

    ○森まさこ君 はい。三人の皆様にお伺いしたいと思います。
  26. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) 最初に、じゃ、才村参考人から、引き続き青葉参考人そして中田参考人の順番で簡潔にお願いしたいと思います。
  27. 才村純

    参考人(才村純君) まず、実数把握なんですが、これは先ほど申し上げたように、どこが把握するかは別にして、やっぱりかなり人員を投入していかないといけないというふうに思います。そういう意味で、例えば児童相談所がやるのであれば、やはり特別措置として、ほかの児相以上に手厚い配置をしてきちっと把握していく。さらに、発見した場合にやはりきちっとケアをしないといけないわけですが、今の児童相談所はなかなかそういう当事者の痛みを共有していく余裕がありませんので、そういったことからもやはり人員の手厚い配置というのが不可欠だろうというふうに考えます。  それと、フォローアップですね、施設へ入った後の。これにつきましても、先ほど申し上げたように、施設自体が子供たちのパニック行動に追われてなかなか個別のニーズを踏まえて個別に丁寧にかかわっていく余裕がありませんので、そこは手厚くする必要があるのではないかというふうに思います。  それと、養育費につきましては、ちょっと私はここは余りよく存じ上げないんですが、特に生活保護とか他の制度との関係でどうなのかというところが検討していく余裕があるのではないかなというふうに思います。  以上でございます。
  28. 青葉紘宇

    参考人青葉紘宇君) 具体的な事例の今話が、実はそのツイッターが全国里親会の相談室にも金曜日の日に入りまして、金曜日なのでとにかく、行政が休みだから里親会何かできないかというメールが最初に入りました。その後でいろいろやり取りして、臨床心理士会だとか何かに一応はつないであるんですけれども、委員の御説明の中にもう一つ実は加わっておりまして、ツイッターの中に入っている内容ですけれども、おばあちゃんとおじいちゃんと二歳の孫が新潟の方に避難したと。そこで、実はおばあちゃんが亡くなっているんですね、避難先で。それで、小さい女の子ですけれども、二歳の女の子がいじめを受けて、それでいわき市に戻ったということでした。  これを総合して考えますと、このおじいちゃんにとっては自分の娘夫婦、息子夫婦、二人が死んだわけです。それで、避難先で自分の連れ合い、奥さんが亡くなったわけです。それで残されたのが二歳の孫娘ということになりまして、これは半端でないダメージです。これは、そう思いましたので、臨床心理士会と今どうしようかという全里会で話し合っておりまして、その場で話題にさせていただきまして、一応絶対フォローが必要だと、ただし、じゃ、誰がどうフォローするんだと、その家に行ってとんとんとたたくわけにもいかないしというところで、昨日、厚労省のそのセクションの方に事情をコピーでお伝えしました。厚生省の方から何か、児童相談所もこの子はかんでいますので今どうという心配はないんですけれども、そういうことでやっぱり公の力がぽっと入らないと民間も介入できないということですので、どういうつなぎ方になるか、期待して待っております。  これからこういう事例がぼろぼろ出てくると思います、いわき市に限らずですね。ということで、行政とそれから民間ボランティアといいますか、まあボランティアといってもいろいろですが、私の方は心理の専門家だとかお医者さんとかそういうイメージですけれども、きちんとした立場を持っている人が行政とタイアップしてシフトを組む必要が絶対あると思っております。これは是非お願いしたいと思います。  それから、里親手当云々の問題ですが、私どもが、親族里親も、いわゆる自分の子でない、血はつながっているんですけれども自分の子供でない子供を育てるというのは非常につらい場面がいろいろ出てきます、いろんな意味で。そのときに一つの支えといいますか、ある程度のお金が出るということがトラブルを避ける唯一の方法だと実は思っております。  今回の百四十何人のうち、親族里親の提案、児童相談所が提案しているわけですけれども、応募したのは二人というふうに聞いております。百何十人は親族里親を今のところまだ希望していないという、情報提供が足りないといえばそれまでですが、現状、日本の家族はどうもそういうところで、身内で面倒を見る、何か人様のお世話にならないというのがあるのかどうか分かりませんが、まだまだ日本の家族はそういう根っこがあるのかなと思っております。  ですから、そこで、ただ、長い間、十八まで面倒を見るとなると、やはり経済的な問題というのが世話する人にのしかかってきますので、そこは何としてでも使える制度にしていただければと思っております。  以上です。
  29. 中田裕康

    参考人中田裕康君) 私の方からは二点だけです。  今の緊急事態については、まずこのお二方の参考人がおっしゃっていただいたような対応ということになると思うんですが、民法関係してくるとすると、その次のステージで未成年後見人をどのように活用するかということかと存じます。それについては、先ほど申しましたとおり、更に利用しやすくできるような運用がなされればと思います。  それからもう一点は今の養育費の点ですが、これは私全く存じ上げないのですけれども、親族の場合に出ないというのがなぜなのかがよく分からなくて、ひょっとしたらそれは親族間の助け合いの義務だとか、あるいはもっと近い親族の場合の扶養義務ということと関係があるのかないのかがよく分からないんですけれども、もしあるんだとすると、そこら辺を更に考えてみる必要があるかなと思いました。
  30. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございました。  終わります。
  31. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今日は三人の参考人の方、本当に貴重な意見をありがとうございます。  まず、才村参考人にお尋ねをしたいと思います。  先ほども御指摘あったように、親権喪失宣告については効果の大きさから申立てにちゅうちょするということが指摘されて、実質的にはほとんど利用されずに今回親権停止制度が導入されるということになったわけですけれども、やっぱりこの親権停止制度を導入した場合、児童相談所運用において留意すべき点とか懸念について、もう少し御意見があれば伺っておきたいと思います。  例えば医療ネグレクトの場合、医療以外の面では問題のない親が多いというようなことですが、もし、法的対応がなされたこと、これをきっかけにして養育の意欲をなくすおそれがあるというようなことも指摘をされておるということでございますが、実際この見極めはなかなか簡単じゃないと思うんですが、この点についても併せて御見解があれば伺っておきたいと思います。
  32. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) 才村参考人でよろしいですか。
  33. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 才村参考人です。
  34. 才村純

    参考人(才村純君) まず、この親権停止制度の効果ですね、もう少し具体的に申し上げたいと思うんですが、一つは、親子分離される親というのは、もう未来永劫我が子を児童相談所施設に奪われてしまうのではないか、そういった不安が強くて、このことが親子分離に難色を示す大きな要因になっているのではないかというふうに考えられます。そういった意味で、停止期間が二年以内という枠組みが設けられることによって、運用いかんでは、児童相談所としては親を説得しやすくなるのではないかというふうに考えられます。  さらに、今非常に大きな課題になっています、その親子分離をしてもやはりできるだけ早い時期に子供が平和な家庭に戻っていく、つまり家族再統合をいかに実現するか、これが非常に重要な課題になっています。  こういった家族再統合援助においても、二年後という大きな節目が設けられることによりまして、援助目標やそれまでに達成すべき課題について親と児童相談所が共有しやすくなるのではないか。また、停止解除の申立てを条件として児童相談所が親に対して指導を受けるよう説得するといった運用を行えば親の動機付けにつながる、そういったことも期待できるのではないかというふうに考えております。
  35. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 才村参考人、もう一点。先ほど青葉参考人の方から、今のこの児童虐待というか親子関係の問題について、かなり変わってきたところもあるというような御指摘、無機質なというような御指摘もいただいたんですが、やっぱり児童虐待について、流れの中で、やはり例えば親が人と関係を持たないというようなケースがかなり増えてきたとか、最近ではいわゆるステップファミリーですね、再婚家族における虐待も目立つというようなことも言われておるんですが、才村参考人がお感じになられる最近の虐待の傾向というんですか、それに伴う新たな対策の必要性等について、御意見があればこれも伺っておきたいと思います。
  36. 才村純

    参考人(才村純君) 一般的に言われることですが、やはり以前の虐待といいますか、戦前、戦後直後ですかね、は、いわゆる非常に経済的に苦しくて、そのために、どういうんですか、子供の養育が難しくなってネグレクトをしてしまうとか、非常にゆがんだ家族病理を抱えていて、それで子供虐待というわなに巻き込まれていくという、そういう虐待が多かったというふうに認識しています。ところが、その後高度経済成長とともに都市化、核家族化が進んで、やはり親自身が孤立してしまう。だから、必ずしも経済的に逼迫しているとかそういうことじゃなくて、親自身が子育てに自信を持てない、周りの応援が得られない中でどんどんどんどん孤立の度を深めて虐待してしまう。そういった虐待が最近増えているんではないかというふうに考えられます。  つまり、虐待の発生の要因がやはり大きく変わってきている。つまり、社会的な要因から個人的な要因に変わってきているんではないか。そういった中で、先ほど青葉参考人がおっしゃった、小さいときから自然のかかわりが取れない、そういう親も増えているんではないかというふうに考えております。
  37. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 青葉参考人にお尋ねをしたいと思います。  里親委託を推進するため様々な施策が講じられているんですが、施設なら同意するけれども里親では同意しないというような親もいらっしゃると。この親権停止制度ができれば、親権停止させた後で、親の同意が得られなくても里親に委託する可能性もあると、これは私どもが前回児童相談所を視察した際にそういうこともお聞きしたんですが。  その委託後にトラブルが、そういうことをやればこれは起こってくるんじゃないかなという心配もあるし、里親現場として、立場として、親権停止制度がこれは導入されるわけですが、これについて、どう利用されることが望ましいのかなというふうに、お考えがあればこれも伺っておきたいと思うんです。
  38. 青葉紘宇

    参考人青葉紘宇君) 虐待が中心だと思いますけれども、措置後のトラブルということで、実は里親としては安心しております。と申しますのは、児童相談所でもう既に戦いが済んだ後の措置ですので、そう直接今までの経験で実親が何か迫ってくるということは、余り聞いておりません。大体、トラブルがあると、今児童相談所が垣根、何というんですかね、城壁になっていただいて、そこで全部受けていただいていますので、我々としては安全に子育てできます。  ただ、子供がどっちに懐くかという問題がありますので、ここは実親と育ての親で難しいところです。ただ、ある程度の年齢がいけばある程度、何といいますか、子供判断しますので、その流れで自然に流れるのかなと思っております。ただ、ある時期しつけを非常にちゃんとしなきゃいけない段階では、やはり養育者は一本に絞っておかないと、あっち行って乱れ、こっち行って乱れということになりますので、そこも一応児童相談所が、何といいますか、コントロールしておりますので、我々は安心して子育てしております。
  39. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 例えば接見禁止命令ですか、利用されていない状況にあるというふうに聞いているんですけれども、必要となる実態がないというふうに考えていいのかどうか。もっと言うと、虐待する親の中には、例えば暴力団関係者なんかがいらっしゃったりして面会の強要みたいなことに遭われたことはないのかどうかとか。  つまり、里親親権者の間でトラブルというのが生じた場合、具体的に里親としてはどういうふうな解決を具体的になさっているのか、もし何か例でもあれば青葉参考人からお聞きしておきたいと思います。
  40. 青葉紘宇

    参考人青葉紘宇君) 具体的な親が迫ってきたという例は、実は二十年やっておりますけれども、ありません、はっきり。確実に児童相談所が垣根になっていただいております。  それから、親も里親個人には余り迫らないというふうに思っています。ただ、施設の話を聞きますと、施設には大分迫るという話は伺っております。それで、児童相談所里親宅の住所とかいろんなものは全部公にしていませんので。  以上です。
  41. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それでは、中田参考人にお聞きします。  今回、児童虐待防止という観点から親権法の一部について改正が行われたわけでございます。ただ、現代においては、夫婦の別居、離婚、再婚、珍しいこともなくて、やっぱりそれに伴って子に対する親権監護の在り方など、全般的な検討も必要な問題もあるでしょう。先ほども、中田参考人自体も検討しなければならない課題があるということもおっしゃっておりました。  今回のとにかく民法改正は、親権の中でも児童虐待防止という観点から行われたということですが、大きな課題一つは、例えば離婚後の共同親権の問題ですね、こういった問題については今回触れられていないわけですが、今後の課題として家族法の分野でどのような検討事項があると中田参考人はお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  42. 中田裕康

    参考人中田裕康君) 今後、家族法の中で、親権法で申しますと、先ほど申しました懲戒権ですとか子供の奪い合いとの関係での居所指定権ですとか、あるいは今御指摘になりました共同親権、これも離婚後の場合と婚姻関係にないカップルと両方あると思うんですけれども、あるいは面接交流の一層の拡大等々の問題があると思います。  もうちょっと広げると、親子法ですと、実親子の間ですと、親子関係の規律の基本的な枠組みをどう考えるのかですとか生殖補助医療の問題ですとか三百日問題とかありますし、それから、養子法ですと、成年養子と未成年養子との規律を分けて考えるのかどうか、特別養子縁組の成立要件を緩和するか、あるいは実親子、養親子通じて子の氏をどうするか。  もっと広げると、婚姻・離婚関係ですと、婚姻、離婚において当事者の意思をどうやって確認するのか、婚姻適齢をどうするのか、夫婦の氏、夫婦の財産関係離婚原因、再婚禁止期間、あるいは婚姻関係でない異性又は同性のカップルについて法的にどう位置付けるのか等々、たくさん問題がございます。  その中の共同親権の問題なんですけれども、これは方向として検討に値することだろうと思っておりますが、いろいろ課題もあると思います。つまり、育てている親がやはり単独でできることも決めなければいけない。そうすると、共同でのみできることと単独でもできることと振り分けなければいけないんですが、それをどうやって決めるのか。法律で決めるのか、裁判所が決めるのか、当事者の合意に委ねるのかということがあると思います。  それから、育てていない親が共同親権を持っていて、それを不適切に行使したり濫用するという場合もあるわけでして、親権理由にして、親権を持ち出して復縁を迫るために付きまとうなんということがあったりすると、例えば親権停止あるいは保全処分との連結ということも考えなければいけないと思います。  さらに、根本的に言うと、協議離婚の在り方ですとか離婚後の男女の関係の在り方とかということにも関係してまいりますので、日本の実態とか外国の例がありますので、そういった調査も必要だと思います。  こういった課題検討しながら更に考えていくべき問題だと思っております。
  43. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 最後に、中田参考人にもう一つだけお聞きしたいんですが、間もなくどうもハーグ条約について日本政府は大きく動きそうな流れがあるようでございます。家族の在り方とかいろんな問題というのはその国によって大きな違いもある。一方で、国際結婚なんかの問題で、こういった条約とか国際法の関係でどう調整していくかという問題も出てくる。いろんな課題を抱えた中で、今家族の在り方そのものが問われているところもあると思うんです。  中田参考人に何をお聞きしたいかというと、いよいよそういうふうに踏み込もうとしているんですが、私はもうちょっと慎重な検討をしていただきたかったなという気がしてならないんですが、間もなくハーグ条約に日本が進もうとしていることに関して、中田参考人、もし御意見があれば伺っておきたいと思います。
  44. 中田裕康

    参考人中田裕康君) ハーグ条約について詳しく勉強したわけではございませんので十分な発言はできませんですけれども、これは、そもそもは国際結婚をした夫婦が別れる際に、子供親権あるいは監護権をどの国の裁判機関で決めるのかについてのルールだというふうに理解しております。争いのある場合に、既成事実を優先するんじゃなくて公的な機関で判定すると。それは、子供の常居所のある国の機関だということは理屈の上では非常にすっきり分かるんです。ただ、現実には、外国でつらい目に遭って日本に帰国された母親とお子さんという例がしばしば見られますので、それに対して返還命令というのは酷な感じもいたしますし、何とかしたいという気持ちになるわけです。  ただ、非常に難しくて、自信持って言えないんですけれども、例えば家庭内暴力のような一定の事由がある場合には返還しなくてよいということになるんだろうと思いますけれども、その事由をどうやって適切に設定できるのかと、この辺りが決め手かなと思っております。それから、返還を命じた場合にどのようにしてそれを強制するのかも問題になるわけなんですが、これは単なる手続のことだけではなくて、そういった手続の中で一番傷つくのは子供でありますので、その子供のケアが非常に重要になると思います。  それから最後に、子供の奪い合い自体は国内でも起きている問題ですので、併せて国内での問題をどうやって規律するのかも考える必要があるかと思っております。
  45. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。
  46. 桜内文城

    ○桜内文城君 みんなの党の桜内文城でございます。  本日は、三人の参考人の皆さんの御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。  まず一つ目に、中田参考人民法改正案についてお尋ねいたします。  親権が子の利益のために行われるべきことという理念が明確に示されて、この点は私自身も大変評価するところでございます。それとともに明文化されましたのが面会交流及び養育費であります。ここについてお聞きしたいんですけれども、現実の実践を踏まえてこのような面会交流養育費明文規定されるに至って、そのこと自体は確かに大変大きな前進だと考えるわけですけれども、その実効性の担保ということと、それから、先ほども話題になりましたけれども、我が国協議離婚の際の親権の在り方、これは単独親権ということでございますけれども、ちょっと派生して単独親権の立法趣旨というものが今学説上どのように理解されているのかというのも併せてお聞きしたいんですが。  親権をそもそも離婚の際にどちらに認めるかという、家庭裁判所なりで最終的には審判で決せられるわけですけれども、実際の事例をいろいろとお聞きしますと、例えば虚偽のドメスティック・バイオレンスの申立てがなされた際に、今のDV防止法上は十分な適正手続といいますか、真実発見という点でやや十分でない側面もあるとのことでして、言い得というか、現状追認といいますか、先に子供確保して、そして虚偽のDV申立てをすれば親権を取れる。そして、その場合、いろいろと夫婦間のことですので、なかなか公権力としての家庭裁判所介入できない。  そういった中で、面会交流がなかなか履行されないですとか、特にそういった場合に問題になりますのが、やはり親権のない側が養育費を負担するわけですけれども、養育費の負担はするけれども面会交流できない、そしてまた、そもそも親権が得られなかったという理由が虚偽のDV申立てにあるという事例も少なからずあるというふうなことが言われております。  こういった場合に、立法論としては、親権の変更ですとか、そういったものも制度化していくべきだと考えるんですけれども、民法観点から、今申し上げた点についてどうお考えになるか、まずお聞きいたします。
  47. 中田裕康

    参考人中田裕康君) まず、単独親権の立法趣旨というのは、恐らく子供を親の紛争に巻き込まない、子の福祉を考えているというところから元々はきているんだと思います。その結果として、今御指摘のような幾つかの問題が出ている。  虚偽の申立てがどの程度あるのかということはちょっと私は存じ上げませんけれども、ただ、よく古くから言われておりますことは、まず子供を実力で確保するということがいいじゃないかという勧めを受けることがあるなんということも聞いたことはあります。それに対しましては、従来は人身保護手続が中心だったんですけれども、近年では家裁の方の判断でなされるということになっておりますが、さて、その上で、どうやって現実に養育する人を決め、養育費を履行してもらえるのかということが問題となってくると思います。  その際に、余り養育費の支払と親権の在り方とか面会等の在り方というのを駆け引きの材料にしてしまって子供のためにならないということはまず防ぐべきだと思うんですが、さて、最後にそうやって決まったんだけれども、養育費は払わされるけれども、しかし面会はさせてもらえないというときにどうするのかというのは、確かに大きな問題だと思います。  従来は、むしろ逆に養育費の支払がないということについて随分議論がありまして、そのために民事執行法の改正等々の対応がされてきたのですけれども、面会がされないというのは、これはいろんな事情があると思いますので、それは更に詰めて、事実関係を更に調べて詰めていく必要があると思っております。
  48. 桜内文城

    ○桜内文城君 ありがとうございます。  二つ目に、三人の参考人の皆さんにお聞きしたいと思います。  今、単独親権をどちらにするかというような話があったわけですけれども、私がこれは勝手に素人ながら推測するに、元々日本の旧憲法下におけます家族制度というのは、家というものがありまして、仮に、別れた、離婚した場合に、家で子供を養育するというふうな大前提があったんだと思います。戦後そういった家制度というものがなくなりまして、しかしながら、離婚の際の親権の在り方というのは単独親権のまま残ってしまったんではないのかなと。  何を三人の方にお聞きしたいかといいますと、この家族法ですとか、特に相続法ですけれども、十九世紀前半のアメリカを見て回ったアレクシス・ド・トクヴィルというフランス人の方の「アメリカの民主主義」という非常に分厚い著作があるんですけれども、その一節の中に、家族法ですとか相続法というのは民法の一部であるけれども、実際には社会の基盤を構成する、最小単位を構成する家というものを規定しておって、これは実は公法的な意味での非常に大きなインパクトがあるものであるというふうなくだりがございます。  そういった意味で、日本の過去の家族制度の在り方というのを見ていきますと、国会図書館に聞いてみたら、日本の家制度の原型というのは律令時代からあると。ただ、旧憲法下の民法の家族制度というのは江戸時代の武家の家制度を模範としたために長子相続であるとかそういったものが残ってきたということですけれども、少なくとも、江戸時代とはいえ場所によっては、あるいは商家とかそういったところは、別に長男だからというわけじゃなくて、娘さんであったとしても誰かが家督を引き継いでいくと。  その家という制度の中で子供の養育を行い、かつ隠居した高齢者の面倒もきちんと行っていくという制度が恐らく千年以上この日本においては続いてきたと思われるわけですけれども、この六十数年間でほぼ二世代を経た中で、こういった家制度というものが恐らくほぼ壊れてきた。  その中で、これは言い過ぎかもしれませんけれども、例えば年金の問題であるとか、あるいは今回の子ども手当ですとか、社会で子供を育てるという概念、決して悪いとまでは言いませんけれども、やはり家が、あるいは家族が、家庭子供を育てるというそもそもの在り方からしていかがなものかなと私は考えるところでございます。そういった意味で、この家族制度の在り方とこういった児童虐待等々について自由な御意見をお聞きしたいと思います。  一言申し添えておきますと、戦前の例えば家とか村とかそういったものに個人が縛り付けられるというのは私も良くないと思うんですけれども、立法論としては家制度というものを考え直すべきときに来ているんではないのかなと考えるところでございます。  御意見をお願いいたします。
  49. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) それでは、中田参考人、才村参考人青葉参考人の順番でお願いしたいと思います。
  50. 中田裕康

    参考人中田裕康君) 明治民法ができる前に旧民法というのがあったわけですけれども、その旧民法の持っていた家族というのと、それから明治民法の持っている家族という間にも若干のずれがあるように思います。特に親権制度について言うと、むしろ明治民法の方がより今に近いということではないかと思っております。他方で、おっしゃるとおり家制度というのがありまして、ただ、その家制度と実態との違いというのはかねてからあったということだと思います。  その上で、現代にあって家族の在り方をどのように考えるのかなんですけれども、先ほどもちょっと申しましたけれども、家族自体が非常に多様化しているわけでございまして、その多様化した家族の中で、それぞれが持っている家族のイメージが違っているのではないかと思います。そうすると、法制度をつくる際に、どのような家族モデルを想定するのか、あるいはそもそもモデルを想定すること自体についてそれがいいのかどうかというようなこともあろうかと思います。  ちょっと抽象的なお答えになっておりますけれども、そんなことを考えております。
  51. 才村純

    参考人(才村純君) 今、中田参考人がおっしゃったように、家族そのものが非常に多様化していることは事実でございます。ただ、その中で大きな傾向でとらえますと、昔は直系家族ですよね。ところが最近は、夫婦家族といいますか、いわゆる核家族が一般的になってきた。したがって、これは我が国の子育ての歴史いろいろと調べてみますと、やっぱり今のように親だけで子育てを担っていた時代というのはなかったんですね。先ほども申し上げたように、地域ぐるみで子育てが行われていた。まず、その家の中でも、大家族の中でいろんな人たち、同居の家族からの応援が得られたわけですよね。ところが、今はそういう核家族の中で全て親がこなしていかないといけない、そういう中で追い詰められている。そういう状況が一般化していると思います。  そういうふうに考えますと、これはお年寄りの介護の問題もそうなんですが、やはり親だけに子育てを委ねることにはもう限界があるんではないかと。そういったところから、今議員お示しのやはり子育てについても社会化、まず社会の責任でもって一人一人の子供たちを養育していくんだと、そういう枠組みが必要ではないのかなというふうに思っています。  強調したいのは、やはり親だけに全て委ねていてもこれはますます虐待問題は深刻化していくだろうと、そういうことでございます。
  52. 青葉紘宇

    参考人青葉紘宇君) 家族については、私は大切にしていくべきだと思っております。縁組里親は血がつながっていなくても結構仲よくやっています、見ていると。ですから、血がつながっている、つながっていないだけでなくて、人間が何人かで寄り添って生きていくというのは絶対必要だと思っております。  それと、心の教育という意味でも、例えばうちの例でいいますと、両親の位牌を持ってうちに来た子もいます。そういう場合には、お盆の送り火とかお迎え火のときに一緒にやりまして、なかなか言うことを聞かない荒々しい男の子ですけれども、そういうときは神妙に、お母さんとお父さんがこの煙に乗ってやってくるんだぞ、おまえ、と、こういう言い方で、その間大変神妙に何か家族というのを意識したり、そういうふうな場面もありますので、やはり家族というのを、つまり一緒に暮らしていた思い出とかそういうのを大事にするような環境を大人はつくっていくべきだと思っております。  壊れた壊れたといってもまだ立て直しは利くと思いますので、とにかく根本的なところを国政で動かしていただければと思っております。
  53. 桜内文城

    ○桜内文城君 ありがとうございます。これで終わります。
  54. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  三人の参考人の方、本当に貴重な御意見ありがとうございます。  まず、中田参考人にお聞きいたします。  今回、親権に子の利益のためにということが書き込まれましたけど、一方で懲戒権が残ったということもありました。法制審などではなくせという声がもう圧倒的に多かったわけでありますけれども、これをなくすと必要なしつけもできなくなるというような誤解も生じるというようなことも言われて残ったわけですね。  まず、監護教育という言葉で十分にしつけが全部私は含まれると思うんですが、そこに監護教育の概念に入らないようなしつけがあるのかどうか、その辺、学界の動向も含めてお教えいただきたいのが一つと、それから、少なくとも私の周りには、親には懲戒権というものがあって、それでしつけしているんだなんて考えているような人には私は直接会ったことないんですね。保育園の保護者会運動とかいろいろやりましたけど、ないんです。  ですから、これをなくせばしつけができなくなるという懸念という言葉がよくあるんですけど、そういうことが何か具体的に示されているような統計であるとか調査とかそういうものがあるのかどうか、それも教えていただきたいと思います。
  55. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) 中田参考人でよろしいですか。
  56. 井上哲士

    ○井上哲士君 中田参考人です。
  57. 中田裕康

    参考人中田裕康君) 懲戒については、先ほども申し上げたこととも関連するのですけれども、学界の一般的な見方というのは、懲戒権というのをなくしても監護教育の中で必要な部分は読み込むことができるからわざわざなくてもいいのではないかというのが多分多いのだろうと思います。  親に懲戒権があると思ってしつけているわけではないというのも、それもおっしゃるとおりでして、ただ、具体的な統計などについては私は持ち合わせておりませんけれども、ただやはり伝統的に、さっき申しましたとおり、親権という概念が親の権力であるというイメージがかつてはあったわけでして、そうすると懲戒権というのはごく自然に出てくることではないかと思います。それは、旧民法の前の草案の段階から懲戒権というのはもう高らかにうたわれていたわけです。  それが、親権の概念が変わってきた今において、親権の中で懲戒権というのがわざわざ強調するようなことではなくて、監護教育の一環として位置付けるだけで足りる、むしろ体罰をしてはならないと、子供は暴力によらずに教育される権利を有するというように、ドイツのように書く方がいいんじゃないかというのが私たちの研究会で出た案ですし、私もそれがいいなというふうには思っております。  ただ、今回の改正について申しますと、しかしいろんな御懸念もあるでしょうから、その懸念を今後解決していく課題として残しながら、しかし今回やはり大きな一歩であったと評価したいということでございます。
  58. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございます。  先ほどの意見陳述の中で親権の一時停止について触れられたときに、再審判とのつなぎ方が大事だというふうに言われたんですけれども、このつなぎ方というのは具体的にはどういうことを言われているのか、もう少し詳しくお願いしたいと思います。
  59. 中田裕康

    参考人中田裕康君) 今回は更新制度を取らなくて、新たな請求をし、新たな審判をするということになっていると思います。そうすると、例えば二年が過ぎる辺りのところで、一体どのタイミングでその申立てをすればいいのか、それについての審理期間がどのぐらい掛かるのか、もしすき間が空いたらそのすき間の部分をどういうふうにして埋めたらいいのかというようなことがもう実際には問題になってくるのではないかと思います。  あるいは、その前の審判の資料などは、新しい審判になったらば別のものになるとは思うんですけれども、どうやってそれを活用できるのか、あるいはできないのか。それから、その二年間の期間中の実態というのをどうやって反映しているのかというのが、特に再度の請求のときにはいろいろ考えておくべきものがあるかなというふうに思った次第です。
  60. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございました。  次に、才村参考人にお聞きいたします。  児童相談所におられたこともあって、大変現場の生々しいお話も聞かせていただきました。全体として人手不足ですけど、やっぱり児童相談所に一番の矛盾が集中していると思うんですね。先ほどの資料の中で、非常に消耗感が高いというのも出ていましたけど、割と福祉現場の人は、そういうことはあっても達成感があるから何とか頑張っていらっしゃるということが多いんですが、児相の場合に達成感が低いというのが七二%というのも、やっぱり大変深刻だなということを改めて今思いました。  その一つは、やはり、青葉参考人が先ほど城壁と言われました。才村参考人もあるテレビで鬼になるというようなことを言われたこともあると思うんですが、やはり親の同意なくとも相談所長の権限判断で一時保護もできるという大変大きな権限もあるわけですね。常日ごろ敵対的な場面もあると。今回、それが更にその権限が強化をされたわけですから、私はやはり適正手続というのが非常に大事になってくると思うんです。  従来から、こういう一時保護等に司法が関与するべきだという議論があります。ただ一方で、今の体制ではなかなかできないという現状もあると思うんですが、方向としてはこういうことが必要というふうに思われるかというのが一つ。  それから、今回、二か月以上、もう一度二か月を超えて一時保護する場合には児童福祉審議会意見を聴くということになりましたけれども、これの評価、それからこれをうまく機能する上でどういう運用などが必要とお考えか、この点をお願いいたします。
  61. 才村純

    参考人(才村純君) まず、一時保護の司法関与の問題でございます。  ただ、まず児童相談所、おびただしいケースを抱えていますので、なかなかこの手続が極めて膨大になるだろうという懸念はございます。  子どもの権利条約につきましては、やはりこの親権者の同意なしの分離というのは認められない、そういう場合、司法関与させなければいけないということで、本来は司法関与が必要だという考え方もできるとは思います。しかし、今申し上げたように、現実問題、今の児相の体制業務量が膨大になるだろうということと、やはり緊急保護、しかも原則二か月という短期保護というところであれば、今はやはり司法関与をするというのは時期尚早ではないのかなと。これはちょっと将来にわたる検討課題になってこようかなというふうに思います。  それと、今回の改正案で、二か月を超える場合の一時保護について、これは児童福祉審議会等の意見を聴かなければいけないという仕組みが盛り込まれています。これも、二か月を超える事案というのは、それこそいろいろとありますので、なかなか一概には言えないと思うんですが、ただ、その先の見通しがない中で、いつまでも宙ぶらりんな状態で一時保護がなされるというのは、その子供利益を考えた場合にやはり問題であろうかと。だから、そういう意味で、この二十八条申立てを除く一時保護については、そういう第三者機関である児童福祉審議会意見を聴くというふうにされたことは非常に妥当ではないかというふうに思います。  ただ、適正な実施を図るにはということなんですが、これも専門委員会の中で議論があったんですが、今の児童福祉審議会にどこまでそういう専門性とか実質的な中身が期待できるのかと、そういう議論もありました。確かにそういった面も否定できなくはありませんので、やはりこの児童福祉審議会の運営の在り方について今こそ問われているんではないか、そういう問題意識が必要ではないかというふうに考えております。
  62. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございました。  才村参考人青葉参考人に更に聞くんですが、いろんな問題を抱えたときに対して家族の再統合ということが大変大事だと思うんですが、最近の月報司法書士に才村参考人が書かれたのを読んでみますと、家族再統合に向けて援助が行われているのは児童養護施設では八・九%と極めて低調であるというふうなことが書かれておりました。体制の問題が非常に大きいんだろうと思うんですが、先ほどあったように、児童相談所が一方で家族に対しては鬼の顔を見せながら、一方で援助をするという根本的矛盾があると思うんですね。例えば、担当するところのライン、部署を全く分けてしまうというやり方もあれば、全く違う機関をつくるということもあろうかと思うんですが、そういうことについて才村参考人どうお考えかということと、それから、この問題で厚労省が数年前にガイドラインを作ったということがあるんですが、その実効性というんでしょうか、まだまだこれは研究途上だと思うんですけれども、その辺をどのように評価をされているかということです。  青葉参考人にも同じように、このガイドラインの評価も含めまして、家族の再統合という点でどういうことが今課題で求められているのか、それぞれお願いしたいと思います。
  63. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) まず、才村参考人、お願いします。
  64. 才村純

    参考人(才村純君) 今委員御指摘のように、家族再統合に向けた援助というのは極めて低調で、そういう状況の中で、子供たち家庭復帰の見通しがない中で長期の施設生活を余儀なくされているというのは事実でございます。  その要因として三つ考えられるのではないか。一つは、御指摘のように体制の問題であります。これは先ほど申し上げてきたところです。二つ目は、やはり技術的な要因ですね。つまり、家族再統合の必要性は重々承知しつつも、じゃどうすれば家族再統合に至るのか。これはなかなか簡単なわけではございません。技術論として確立されていないというのが二つ目の要因です。三つ目が、いわゆる児童相談所は鬼の面と仏の面があって、非常に相矛盾する機能を担っている。したがって、最初の時点で職権で保護して親と熾烈な対立関係を引き起こせば、その後なかなか援助に持っていきにくいという問題があります。そういう意味で、やはり強権の部分と援助の部分、それぞれ機関を分けたらいいんではないかという議論があることも事実です。  ただ、そうはいいましても、これはもう現場の方から最近よく言われるのは、やはり雨降って地固まるじゃないですけど、最初は熾烈な対立関係があるけれども、一歩も揺るがない、そういう中に児童相談所の職員の誠意を見てかえって強い信頼関係ができる、そういうケースがむしろ多いんではないか。これは、我々も実際そういう調査をしたんですが、データの面でもある程度裏付けられているんですね。したがって、その権能を機関によって分離させるということについては、かなり慎重な議論も一方で要るのかなと。  ただ、いずれにしましても、今回、親権の一時停止制度、これが導入されたことによってその部分はかなり突破できる、そういう期待もできるのかなというふうに思います。つまり、その二年の中で何をすべきなのか、いろんな約束を課す。そのことで、もちろんそれが達成されなければまた更に再度親権停止ということになるわけですから、それを圧力にしながら親を説得していく、そのことで一つは期待もしたいなというふうに考えております。
  65. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) 青葉参考人、お願いします。
  66. 青葉紘宇

    参考人青葉紘宇君) 親子の再統合の問題ですけれども、私の生活経験の中で見ている限り、親子というのは切れないなという印象です。どれほどけんかしても、どれほど対立していても、ある程度のところで一瞬にして氷が解けるといいますか、恨みつらみが恩讐のかなたに消え去るときが大体ありますね。そういうことで、だから、再統合を諦めてはいけないと思っています。  これが、ただ、いつどういうふうに現れるかというのは人間の力を超えているような感じがしておりまして、我々大人としては準備はしておくけれども、どこでそれが現れるか、これはもう十年、二十年というスパンで、三十、四十になって親子関係が解けるかも分からないし、そこは期待していきたいと思っております。  まあ、そんなところでございます。
  67. 井上哲士

    ○井上哲士君 ありがとうございました。
  68. 浜田昌良

    委員長浜田昌良君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  御礼の気持ちの一つとして、ここで皆様に、三人の参考人にもう一度拍手をお願いしたいと思います。(拍手)  本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時一分散会