○
参考人(
藻谷浩介君) おはようございます。
では、座らせてやらせていただきます。
本日はお呼びいただきまして、ありがとうございました。
藻谷でございます。
何の資格でここに来ているのかということでございますが、まず
被災地域を一応通り一遍、北から南までよく事前に知っていたと。知っていたって、まあ
場所が少なくとも旧
市町村名で順番に言えてどこがどうなっているということが言えたというようなことからだと思うんですが、
復興会議の
計画部会、下の方の会の
委員をやっております。その過程で今日は恐らくお呼びいただいたと思います。
今回、
復興に関しては
あれこれマスコミなどで
発言する機会がたくさんいただけましたので、総論についてはあちこちで話をしております。今日はもうごく絞って、
十分程度ということで、
特区について話を特に聞きたいという話を聞いておりまして、絞ってまいりました。
この
震災復興特区というのは
言葉が独り歩きしているけれども、
実態がよく分からないものでございます。私も、
提唱者本人、私が言い出したわけではございませんので、これ
現場から見てこういうのが本当に必要かどうかについての
意見を陳述させていただきます。
一枚めくっていただきますと、これもっとページを大きく書けばよかったんですが、右上に小さく、①と書いてある右上に小さい字で2と書いてあります。二ページ目でございます。二枚だけ、
被災地の
課題というのを①、②ということで書きました。
実際には
被災地は仙台市から野
田村まで実に様々な大きさのところがございまして、また、今日いらしている
相馬市のように強いリーダーシップを持って
マスコミには登場せずに粛々と進んでいるところもあれば、
マスコミには出てくるけれども実は
余り進んでいないところもございます。だから一概には全く言えないわけですが、恐らく
市長さんからうちは違うぞという話が後であると思います。もう全体としての平均はこうだということです。
その中でも多々
課題はあって、
瓦れきとかいろいろあるんですが、今一番問題になっているものは、一に
住宅、二にいわゆる
医療、
福祉、
教育、三に
雇用ということが
地元でよく聞かれます。
住宅は、
仮設が半分弱まで進捗し、そして
本格住宅の
再建については早いところで七月上旬からどこに造るんだという
計画を
市町村が出して
議論が始まるということですが、そこから
土地がどうやって手当てするんだ、
住宅ローンをどうするんだという問題がその後で本格化すると思います。
二番目の
医療、
福祉、
教育、二ページ目の下なんですが、これは
地元で非常によく聞かれる声なのですが、広範に
病院、
福祉施設、
学校が被災しております。それで、その中で公立のものについては
市町村が
マッチング予算を出さないと
再建ができないわけで、特に
学校、
病院はそういうのが多いわけですが、
特殊施設は。正直後送りになっていて、それどころではないといいますか、工事に手が付いていないように見受けられるところは大変多いと思います。
一ページめくっていただきまして、三枚目でございます。さらに
雇用でございますが、
水産施設が壊滅したところでかつ
都市部に通勤可能ではない
地域、具体的には
石巻以北、
相馬以南でございますが、
仕事がないので
住民が出ていくということが、いっとき盛んになったというんだけれども、だんだんだんだん増えているんではないかと思います。
ボランティアではなくて
地元住民を
雇用してやるという
自治体、先進的な例が多々あるわけですが、なかなかそれが進んでいない
地域もありまして、かつ
ボランティアを
住民雇用に変えた瞬間に、
人件費誰が払うんだ、
市町村の
お金はどうするんだという問題が出ています。
そして、その他、足元の
問題点として書いたのが二つありまして、これも
地域差はあるのですが、
余り東京で報道されていない話として、三陸などで実はいまだに
物資支援がちゃんと行っていないところがあるということを
現場の
目撃談として聞いています。これは
市町村がやっているはずなんですが、手が足りていないんですね、実は。あるんです、そういうことがあるんです。配られている食事の質に関しても、
相馬市のように栄養士が最初から管理しているところもありますが、ほとんどのところでは栄養を
考えずに緊急避難的に続いて三か月というような例が結構あるんです。
その一方で、それは
マンパワーという手段で何とかしなきゃいけないんですが、県庁、県の
部局の
縦割りで多数の
予算メニューが下りてきています。これ善意です。何とかしろということで、たくさんの
予算をやはり潤沢に付けるということで下りてくるのですが、従来それを
市町村側が使いこなさなきゃいけないんですけど、そもそも役場、
地域が壊滅しているような町の場合、それをもうやっている余裕がないということで、実際には使いこなせていないという大変大きな問題があります。
以上のような総括を経まして、四枚目から①から⑤にわたりまして、こういうことに対していろんな手が当然打てるわけでございますが、
特区ということが何か役に立つかということを書いています。なぜ
特区に絞るかというと、申し上げたように
実態が
余りないまま
言葉が独り歩きしているので、一応
意味があるのであればこういうことかということで、整理してみました。
①をちょっと二枚にわたって、四、五ページと書いております。これが私が一番重要だと思うんですが、各
省庁の制度を
市町村がそれぞれ利用するというのが従来の行政の仕組みで、しかも何とか
基本計画を一年掛けて作ってから造るようなのが多いですよね。今それをやっている時間がないというか、
病院、
学校の
再建は急務なんですが、実際にはないんですね。それで、御案内のとおり、町によっては、津波にかぶった
学校をそのまま
再建しようとして、PTAが怒ってほかの
場所に移させようとしたというケースもあります。
それから、
学校はまだいいんですが、特に
介護系の
施設に関してはもうないので、
体育館の
避難所でそのまま同居している。それからさらに弱者になりますと、
障害者の方ですね、例えば
脳性麻痺の方ですとかあるいは認知の方になった人とかが
一緒に入っていて、そこは
施設が
再建されないまま放置されているというのがすごく多いんですね。これは本当は従来の理屈で言うと
一つ一つちゃんとやるべきなのでしょうが、実際はこれは進まないし、さらに三、四年たってからようやく今までどおり別々の
場所にそれぞれ
予算をもらって全然ばらばらに
再建されるということになる
可能性が高いと思います。
そこで、それに対して
省庁が
統合窓口を
国交省が幹事になって
設置するという、一歩進んだことを今やるわけ、と聞かれたんですが、
一つ問題があって、その町でどこに何を造って何が必要でどこが無駄でどこを削るかという話は、やっぱり
現場に立って
考えないと
一般論では分からないんですね。それで一々、結局最終的に
個別予算のところに戻って折衝をしてという作業が結局発生してしまうんですね。
窓口だけあっても、最終的に
予算を出す個別の
部局のところまで、霞が関まで行かないと進まないんです。
五ページでございます。
この
課題に何か
特区が使えるかということなんですが、
運用緩和特区ということを
考えました。すなわち、
特区というのは普通は
規制緩和でございまして、単純だと
法令違反になることを取りあえずやるのが
特区なんですが、私のここで言っている話は
法令違反ではございません。
法令どおりに本当はできることなんだけれども、
法令どおりやっていると三、四年掛かることを三か月でできるように、もう
現場で決めて、取りあえず大筋間違っていないことであれば進められるようにできないかということです。
ここで言っているのは、ネガティブリストという
言葉を二行目に書いていますが、取りあえずこれだけはやめてと。それに反さない限り進めましょうと。進めておいて、
後付けで、
予算も取りあえず出しておいて、
後付けでチェックをして大筋間違っていなければそのままオーケーという
やり方で進めるべきじゃないか。
その際に、
施設複合体にすべきではないかと。つまり、従来の
予算ですと、やっぱり
幼稚園と
保育園の
予算が別々に下りてきますので、別々の
場所に、
皆さんも思われませんか、
幼稚園と
保育園が
一緒にできているのを御覧になったことありますか。
東京でもほとんどありませんよね。だけど、別に、
被災地で、人口も減って、みんなで
一緒になってやるときに、
一緒に
隣同士にあったり
一つの
建物が二つに分かれても誰も怒らないんじゃないかと思うんです。いや、原則はいかぬとか、いろんな
議論はあるのかもしれませんけれどもね。あるいは、ここにあります
デイケアセンター、よくあるのは
デイケアセンター、元気なお
年寄りが集まって昼間いるところと
保育園がくっついているのはいいじゃないかということで、
先行事例はあるわけですが、こういうのを意図的に同じ
建物に造ったっていいはずだし、あるいは小中
学校の
体育館が公民館になっているとか、いろんなことが実はあり得るので、この際、
相乗り施設を造れるチャンスを増やした方が結果的に
予算の合理的な
運用になる、額の膨脹も防げるのではないかと思うわけです。
従来、これを阻んでいるのは、やはり役所の方が真面目に
運用をやるので、例えば私が見た
事例では、ある
脳性麻痺の方とお
年寄りの
介護の
デイケアセンターが
一緒になっている
施設、有名なのが山口県にあるんですが、
脳性麻痺の方の
補助金と
デイケアセンターの
補助金を同時に使っているものですから、中に
ビニールテープで線を床の上に引いてあって、ここから先は
脳性麻痺でここから先は
デイケアセンターですと、無理やり、実際は同じ
廊下なんですよ、
廊下の真ん中に線が引いてあるんですね。そういうふうにしないと
補助金を出した人が怒るとか、じゃ
脳性麻痺の子供はこの線から右側だけ歩くんですかというと、そんなことはないんですけれどもね。そういう
類いのことというのが真面目なお役人の方がやるんですね。そういうふうにならない、同じ
厚生労働省の中です、それはですね。でも、あるんです。
ですから、これを何とか、
地元に
特区事務局というのをやっぱりつくって、そこのところで、
市町村はそこまで行けばもう
調整ができると。後々は、そこから先、本当によほど変な
違反がない限りは
補助金が下りるということを何かやるべきではないかと思うわけです。これは
運用緩和特区でございました。
さて、残された時間で、六、七、八、九、短く御説明します。
六番目、
②課税特例措置の
柔軟運用。六ページ目でございます。
課税特例措置の
柔軟運用ですが、これ意外に反対が少ないんではないかと思うんですが、もう
被災地では取りあえず
企業を
復興しなきゃいけないですし、更に進んで
企業誘致をしなきゃいけないんです。まだそれどころじゃないとおっしゃるかもしれませんが、既に動きは出てきています。
特に
福島は、
NHK番組にもちらっと出させていただいてやっていましたが、私が関西などに講演に行きますと、やはり
福島で今人材が余っているので、あれを採りに、いや、こっちに来てもらうんじゃなくて、
福島に工場を出したいという人に私実際にお会いした。二人知っています。ただ、そういうことをするときに、やはり
税制優遇というのはあってもいいんじゃないか。これはありていに申しますと、
被災地域、
発電所があるところは除いてそんなに大きな税源はございませんので、逆に減免したからといって国の
予算がそんなに大きく傷つくという話では実はないですね、
東京でやったら大変かもしれませんが。そこで、むしろ法人税含めいろんな
税制の
優遇というのを
被災地に限ってやるということは当然お
考えになると思うんですが、そういうのを
特区を設けてやったらどうかということです。
一枚めくっていただきまして、七ページでございます。あと七、八、九でございますが、
まちづくり会社の活用、
③まちづくり会社。
これも
特区と並んで
言葉が独り歩きしていて、何か怪しいなとお
考えになっている方も多いと思うんですが、
まちづくり会社自体は怪しくございません。実例もございます。昔、三
セクと言ってやっていたものを天下りなしでやっているもので、世の中では今、
指定管理者という形で非常に普及していますが、いろんな
公共施設の運営を
民間に委託すると。ですが、
指定管理者と三
セクの中間ぐらいで、
一つかっちりとした、
経理が透明で独立したことが、やっている内容は
公社がやっているのと同じと、そういうのが
まちづくり会社でございます。道の駅を運営するとか、財団がつくった
旅館、町の
旅館を運営している
会社ですとか、そういうのも全部広義の
まちづくり会社、
地域づくり会社というか、
公共が昔ならやっていたものを
民間の
経理基準で明快にやって、採算が独立で何とか取れるようにある
程度補助金を入れてやるというものです。
これ、
被災地においては市街地の再
整備や漁港の再
整備、あるいは道の駅みたいなものを造って
集客交流、そういうようなことに使えると言われているんですが、当然ながら
公共がやる本来の
仕事ですので
補助金が必要なんですが、
まちづくり会社も複数の
補助金をたくさん取ってきてうまく組み合わせて
公正運用をしなきゃいけないということで、実はこういう難しいことができる人がなかなかいないんですね。それで広がりません。
それで、例えば
被災地において
住宅開発をして、その周りに
コミュニティーカフェをつくって、いろんな新しいその町の小さい中心を運営するのを昔なら
土地開発公社がやっていたのを
まちづくり会社がやるというような話の場合に、そういう
会社が関連する
補助金をこの範囲だったらぱっと取れますと、大筋、これとこれをちゃんと満たしてくれれば申請してすぐこれるよという、そういう
被災地専用のパッケージというものがあると話が進む。逆に、これがないと結局難しいので、全国に数人しかいないこういうのをちゃんと
公正運用できる人が
地元に入らない限り進まないということになります。これが
まちづくり会社でございます。
そして、
最後八と九でございますが、ばん
そうこう型補助金の
運用、私がつくった
言葉ですので、
ばんそうこう型というのは何ぞやということなんですが、取りあえず
臨時に何かに使えておいて、後々別の
補助金の手当てがちゃんと付くようなことであった場合は自後でその
補助金を持ってこれると。つまり、
臨時に
市町村が何にでも使えて、例えば通常の
補助金の
対象じゃないようなもの、よく分からないものに、もうとにかく必要なものに使う。例えば、
漁民の
生活再建のために取りあえず
漁船が足りない、
臨時に
漁船を買って
漁民に貸す、後々でそれは例えば
漁民に買い取らせるとか、そういうふうないろんなことを自由にやる
補助金、
お金を持たせ、後々その
臨時に使った
お金の、
漁民が例えば
漁船買い取って
お金が戻ってくるとか、あるいは別の
補助金が国から後で別途取れたので元使った
補助金が浮いたときにはほかのものに使ってよろしいと。
ばんそうこうというのはそういう
意味なんですが、何かに
臨時に張っておいて、治癒したら剥がしてまた別のところに張ると。本当の
ばんそうこうはそこでもう駄目になりますけれども、この
補助金はそこで何度でもほかのに使えるというようなことはあり得ないのかということを書いています。
一括して自由に使える
お金を出せということで当然
議論がされていますので、それでもいいんですが、自由に使え、かつ後々
既存メニューの
措置が落ち着いたところで取れた場合にはほかに活用できるということで、より自由に使えるんじゃないかと。逆に、
既存の
メニューが
補助金が下りるまで必要なことを後送りするのを防ぐのにこの
ばんそうこう補助金は有効ではないかと思った次第です。
最後の一枚です。
以上のような話は、しかし実際はその全部の
市町村で同時に行くのが無理なんです。本当は
被災者は全部にいるのでやらなきゃいけないんですが、誰かが先行してやっぱり
ブレークスルー、こうやって
補助金を組み合わせて使ってこう
運用するんだというのをモデルをつくった瞬間に、二番手、三番手はばっと動きます。一番手が出てこないとやはり膨大な
事務コストが
特区といっても発生します。
そこで、
是非やる気のある
自治体に、県と国の
担当者が出ていって
本部をつくって、そこでこういうことを一気に進めるぞというのを数か月以内にやられるのがいいんではないかと思うんです。
本部をつくるという話があります。
復興庁とかいう
議論もありますが、これも東北に置くべきじゃないかという
議論がありますけれども、まあ置くのはいいとしまして、
現場の
対象の
市町村、まあ釜石か
相馬か分かりませんが、そういうところに少なくともある
程度権限を持っている
課長クラスぐらいの
担当者が集まって、そこで一通り物事は進めて、
本部との
連絡調整はそこに集まった県や国の
担当者が自分でやる、
市町村の人はそこから動かなくていいと、そういう
やり方ができないのでしょうか。これが
最後の⑤、一部
市町村での
取組先行ということに書いたことでございます。
以上でございました。