○
参考人(
竹村公太郎君)
日本水フォーラムの
事務局長の
竹村と申します。今日、お招きいただきまして、心から感謝申し上げます。
後ほど、討論のところで細かいことはお話ししますが、まず冒頭に、なぜ今、
水ビジネスが国内外で話題になっておりますが、その背景を
先生方に御理解願いたいと思って、主に
写真をざっと流しますので、キーになる紙はプリントしてございますので、
パワーポイントを見ていただければよろしいかなと思っております。(
資料映写)
二十一
世紀、私どもを待ち受けているのは温暖化の気候変動、
地球環境の悪化、
資源の逼迫、これはもうほぼ間違いなく来るであろうと考えております。でも、その危機は全て水の姿になって現れます。
洪水、干ばつ、水質汚染、氷河融解、海面上昇、もう全ての地球上の問題は水の姿となって現れるということがポイントでございます。
人口はべらぼうに増えていきますが、これが
一つの例でございますけれども、一九〇〇年から二〇〇〇年までの人口は約三倍に伸びたんですが、水需要は六倍に増えております。つまり、人口の増え以上にはるかに大きく水の伸びが多いということは特筆すべき事項だと思っています。
この中で、
地球環境の悪化が極めて激しく行われています。今の
アラル海の話がありましたのでこれはざっと流しますけど、私も、これが
アラル海で、
アラル海の近辺の
方々が観光客に説明しているところですけど、こんなふうな大きな、琵琶湖の百倍の
アラル海がだんだんなくなっちゃって、今はこうなっちゃっているということで、干上がってしまったということの、これは目の前にあるのは貝ですが、ちらっと見えるのはラクダですね、全く生態系が変わってしまった。
これは、
上流で完全に取水を大量にしているからです。これは決して天然現象でも何でもなくて、人為的な営みです。べらぼうな水を引いていると。なぜこんなべらぼうな水を取水しているんだというのは、これ綿花です。主なことが綿花でございます。
ひどいことするなと
日本人は簡単に思いますけど、実はこの綿花を利用しているのは
先進国でありまして、我々のユニクロだとかH&M、今私は
自分の人生の中で一番コットンが安い時代に生きているんじゃないかと。これほど安いコットンを僕たちは着ていいのかと思うほど安いわけです。その分どこかに
環境負荷が掛かってくるのは当たり前でして、これが
地球環境問題の
一つ。
もう
一つ、大陸の話がありますが、一個だけ海の話をします。一番
日本に近い渤海という、
中国の閉鎖性水域の渤海が死の海と化したという朝鮮日報の報道です。
クルマエビ、ハマグリ、スズキ、イカが一切姿を消しちゃったということで、それはなぜかというと、この黄河、黄河の入口は一九七九年の航空
写真がこんなふうになっている。黄河だから砂が出てもいいじゃないかと。実は砂じゃなくて、この黄河
流域からべらぼうな途方もない工場排水が出ている。つまり、この工場排水、重金属を含んだ途方もない大きな排水が流れてきてこの渤海が死の海と化してしまったというのが現状で、朝鮮日報の伝える話でございます。
じゃ、
中国ひどいことするなというんですけれども、実はこれは、私どもは百円ショップで買っているわけです。あの百円ショップ、私も行きますけど、
日本で作ったら五百円ぐらい掛かると思います、あるものが。じゃ、その差額の四百円は何かというと、その差額の四百円は
中国の
環境に負荷を与えているということでございまして、今僕たちが、
先進国が文明を享受していることは実は
世界の
環境問題とまさにリンクしているということを御理解願いたいから、
世界の水問題とか
世界の
環境問題は実は
日本の問題であるということを御理解願いたいわけです。百円ショップ潰せということじゃありません。そういうことを知った上で百円ショップへ行こうよねという、その程度です。
この雪の景色は、雪じゃありません、ブラジルです。つまり、
世界の食料基地はこのような形で
環境に負荷を与えながら
先進国に様々なものを与えているということでございます。ですから、
世界の水問題は
日本の問題であるという認識を是非取っていただきたいということです。
バーチャルウオーターを沖先生から話されたと思いますが、これは私は違った形で整理しました。
日本の国内の
農業用水の取水量、工業用水、上水道、これはもうはっきり
データで表れていますので、それに
バーチャルウオーターを足してみますと、僕たちの
日本国内の水の自給率は六〇%でしかなかったと。つまり、四〇%は
世界の
方々の水を食料を通じて飲んでいたということが明らかになってきました。
そして、僕たちの、
日本人の役目は一体これから何かというと、
資源をほかの国から買って付加価値を付けて、それを工業製品で大もうけして、そして、なおかつ水まで僕たちは
世界に支えられていると。そして、今
世界が水問題で苦しみ出してきたということで、
日本のやることは何かというと、この水という分野で、持続可能で尊敬される水の
国際貢献がしたいと。
なぜ持続可能かというと、ODAというのは持続可能じゃない、
日本の
国家の
資源が、金という
資源がなくなればもう続きませんので。ところが、
水ビジネスというのは永続的な、持続可能な手法でございます。あるリターンを取りながら、その国の
水ビジネスをやりながら、そして尊敬される
国際貢献をしていきたいというのが
水ビジネスに流れる根底だと私は思っております。
日本は本当にそんなことができるのかということなんですけれども、実は
日本はできます。過酷な地形と気象を克服して、水
紛争を技術で克服した唯一の私は民族だと思っています。もったいないという文化を持ち、物質循環の遺伝子を今でもまだ持っております。
これを、限られた水の分かち合いということですが、これが
一つの例です。これは、
渇水のときに
日本も年がら年中、血で血を洗う
水争いをしていたんですが、武田信玄が、
一つの水が流れていまして三つの集落に対して均等に水を流そうと。
渇水になっても同じように苦しめと、水があるときは同じように享受しろと。普通、
水争いというのは社会的強者が必ず勝って社会的弱者は必ず負ける、
世界中の
一つの原則があるんですけれども、その原則を打ち破って、水は技術で解決しようと、水の分かち合いは技術で解決しようと言ったのは私は武田信玄が最初じゃないかと。もっと古いことがあったら是非教えていただきたいんですけれども、今探しているところですけれども、見当たりません。その後、
日本は水の分かち合いというのを技術で克服しようと言ってきた民族でございます。
さて、このように、ちょっと前までは女性たちはこんなふうな過酷な、これは昭和三十年代です、筑後川です。そして、水道が出ると、これは大阪ですけれども、こんなふうな形で私の母親なんかは洗濯しておりました。各戸に水道が入ると、今度は水がなくなって大
渇水になったわけですけれども、
ダム等のインフラができて、今洗濯はロボットがやっています。そして、女性たち、私の家内もそうですけれども、女性たちは社会参画をして、そして付加価値の高い活動ができるというのが今
日本の姿ですけれども。
このように
日本は、何を言いたかったかというと、インフラをきちんとやってきたと。
自分たちの与えられた金をきちんとインフラに投資したということが今のこの
日本を形成しているということでございます。
さらに、これは東京都の漏水率ですけれども、どんどんどんどん低くなって
世界最低の漏水率をやっております。これは
世界に誇れる
一つの
日本のシステムでございます。
このような、
日本が水を分かち合って、そしてインフラをきちんとやってきて、そしてなおかつ水を大切にしているということを
世界に広めていくことは絶対これは役に立つことだということでございます。そのためには、技術と社会制度、ガバナンス、インフラ整備、これが
日本にはあったからなわけですけれども。
ただし、
日本も大きなミスをしています。これは隅田川、昭和四十二年です。これが多摩川です、ごみです。そして、私が小さいころ、このような形で子供たちは遊んだわけですけれども、もう川に入るべからずという看板が立って子供たちは川に行かなくなったんですが、最近、多摩川で泳ぎ出しました、子供たちが。つまり、これは何かというと、もうお分かりのように、下水道整備とインフラができて、そして水に対する
環境整備を
国家として、また地方自治体挙げてやってきたということで、
日本国がすばらしい国に、きれいな国に今戻りつつあるということでございます。
これが、工業用水が今まで排水、先ほどの黄河じゃありませんけれども、
日本は非常に汚かったんですが、工業用水の回収率はもう八〇%になっていまして、つまり工業をする水の二〇%しかよそからもらわない、あと全部リサイクルしているということでございます。このような国は皆無でございます。
そして、子供たちは、水俣病で僕たちが苦しんだ
一つの大きな
失敗を今学びつつあるということでございます。このような、ここで言いたいことは、
日本も
失敗をしたんだと、つい最近
失敗をしたんだということをきちんとお伝えすることが僕は大きな社会貢献だなと考えております。
さて、これからの大事なことは
資源の再生利用ということでございますけれども燐鉱石がピークを打ってなくなっていきます。燐鉱石というのは、もうお分かりだと思いますけれども、一九九六年をピークにしてどんどんどんどんなくなっていきます。燐鉱石は化学肥料の原料ですので、これから化学肥料がなくなっていくと。今
世紀中にはほぼ間違いなく化学肥料はなくなると思います。一体どうするんだと。この食料の一番危機のときに大事な化学肥料がなくなっていくわけですけど、もう既に
中国は、これ朝日新聞ですけれども、今まで数%の関税を一一〇%にしちゃったということで、もうほとんど
中国は輸出禁止に入ってきて、今大暴騰に入りつつあります。
じゃ一体何するといったら、僕たちのこのメモリーとしての
自分たちの排せつ物を肥料にするんだと。こういう物質循環文明をもう一度つくっていけばいいんだという手法を知っていますので、これが、京都駅ですけど、つい最近までこのような形で僕たちの排せつ物は有機肥料として使っていたわけです。ですから、今の下水道システムをあれは肥料工場にすべきだという
概念でインフラ投資していけば、技術開発をしていけば私は
世界の肥料問題は解決すると、間違いなくそう思っております。
次に、これは御承知のとおり、GDP当たりの一次エネルギーの総量でございます。
日本は圧倒的にエネルギー量は少ないわけです。圧倒的に少ないエネルギー量で
生産をやっているという国でございます。このようなすばらしい
日本が不足しているものがあります。それは行政と企業の枠を超えた連携です。そして、縦割り行政の物すごい壁です。そして、過去の昔の僕たちの伝統の知恵と先端技術を融合するシステム、そして未来への明確な道筋が明らかにされていないという、
日本はすばらしいことはあるんですけど、不足しているものもあるということでございます。
僕は行政の縦割りは宿命だと思っています。これが縦割り行政を私が作ったモデルなんですけれども、この下に、コースターが所管法です、行政はその所管法の上にあります。この所管法から横へはみ出しちゃいけないわけです。はみ出したら余分なことであり、無駄な行政なんです。だから、各行政はこのコースターの上にずっと立っているわけです。そして
国民はこの間に落っこって苦しんでいるわけです。どうしてもこのすき間に落っこって、助けてくれない。行政はますます今シュリンクしていますので、もう瓶の中に閉じこもっている。ちょっと前まではこの瓶から出てきて、こうやって救ってくれた部分があったんですけれども、今はもう全然瓶から出なくなってしまったということで、じゃ一体どうしたらいいのか。
僕たちはこの行政を否定するのではなくて、その行政の間に砂粒を入れて、そこに
国民が落っこちないような社会システムをつくらなきゃいけない。それが
一つのイメージでして、この砂をうずめるのは誰かというと、私は、民間企業、NPOであったり、政治的なリーダーであったり、学識者、様々な行政以外のセクターが力を合わせてこの砂粒を入れていかなきゃいけないと考えております。
そのために私どもは水に関してチーム水・
日本という
一つの運動体をつくりました。これは水の
安全保障戦略機構と申しまして、バーチャルです、権力は一切持たないという約束です。これは故中川昭一先生の発想で私どもがお手伝いしてつくりました。これは超党派の
国会議員と学識者と民間企業がみんな連携しようと。まさにこのイメージのモデルをつくろうと、水に関してですね、ということでございました。
このチーム水・
日本、水の
安全保障戦略機構はバーチャルであって、組織を持たない、法律も持たない、資金も持たない、つまり権力を持つのをやめようと。ただし、高い見識だけを持とうというようなスタートで始まりました。
これはぐちゃぐちゃしておりますが、要は行政と民間の
方々の間をうずめる水の
安全保障戦略機構で、民間と行政の間に立って三角の
一つの軸になって民間の
方々の、先ほど、すき間に落っこっている人たちを救っていこうというような作業です。
超党派の
国会議員とありますが、おかげさまで、政局が自民党政権から民主党政権に替わって僕たちははらはらしたんですけれども、その政局の大混乱の中でも、実はこの水の
安全保障戦略機構には超党派の先生が
出席されていただきまして、あの中でも超党派の国会の先生がこの水の
安全保障戦略機構に参加していただきまして、今でもこの水の
安全保障戦略機構は政局ではないと、超党派で勉強していこうということでつながっております。
最近のこの新聞記事の報道でございますが、ブルーが水問題全体でございます。これは全体の話ですけど、急激に二〇〇六年、二〇〇七年、二〇〇八年と伸びております。この急激に伸び出したのが、水の
安全保障戦略機構が言われたときから水問題がだんだん増えてきたんですが、特にこのチーム水・
日本、そして水の
安全保障戦略機構が設立して以降、
水ビジネスという新聞記事が非常に多くなっております。これは四大紙だけ、メジャーの大きな新聞だけなんでございますけど、電通さんの分析によって得た
データですけど、このような形で
水ビジネスが非常に多くなってきているということでございます。
私どものODAの限界、まあ限界があるということと、持続可能な
国際貢献するには民間の力を借りるんだということでございます。この辺は、また後ほど御
議論することによって、どうしても私がお話ししておきたいのは、
最後の五分で、国内の水問題が大変なことになっていますので、それの話に行きます。
国内が今危機的な状況だという認識をしております。これは下水道の陥没の
写真です。これはバスです。何で陥没しているのか。中が腐っているんです。そして、平成十九年の四千七百か所の陥没の分析してみると、三十年を過ぎたら途端に陥没が増え出すんです。三十年を超えると急激に腐っていくんです、硫化水素があって。
つまり、三十年、四十年たったものは更新していかなきゃいけないんです、コンスタントに。それができなくなっているんです。それがもう全くできない。つまり、三十年ってつい最近です。昭和二十年代、三十年代に造ったものはもうとっくに三十年過ぎていますので、そういうのがこれから大問題になってくるということなんです。
ところが、これは上水道も下水道も全く同じなんですけど、十万人以上の都市では百人以上の技術職員がいますけど、十万人以下の自治体は僅か五人です。五人の職員がやれって言ったって無理なんですね、これ。全部見回りをやったり料金を徴収したりですね。
自分たちで水を守りたいなという悲鳴が、これは北海道の石狩市の職員の
パワーポイントです。
中小規模は物すごい問題を抱えています。特に、職員の高齢化とか技術の伝統、予算の圧迫、維持
管理費、更新施設の削減、どんどん削減されていく。つまり、当面首長さんは
自分の時期の四年の中でやりたいこと、やれることは何かというと、分かりやすいことをやりたい。ところが、もう三十年前に造ったものを更新するというのは、そんなお金はないよと、そんな金使ったらほかのものは何もできないじゃないかということで、目に見えないインフラはどんどん先送りされています。
そして今、これからのテーマは何かというと、広域の上下水道
管理が必要なんじゃないかと。今は各市町村単位が水を取り水を排水し、水を取り水を排水する、それを繰り返しております、大きな川では。それを一緒の、同じ水なんだから水を取るところも一か所にして、排水もきちんと
計画的にやったらどうかと。どうせこの三市町村が同じことをやるんだから、上下水道の広域のセクターをつくったらどうだろうと。そのときには、これも水道の
一つのイメージです。個別のばらばらでやっておるのをこのような連携をして、無人にするところは無人にして、そして有人のところは有人にするということをやったらどうかということです。
最後に、首長さんがなぜやらないかというと、この浄水場又は下水処理場を更新するとなると何十億掛かってしまうんです。何十億掛かってしまうやつを今
自分のときにやったら、それでピーク立っちゃってほかのことできなくなっちゃうわけです。起債を取ろうといってもなかなかできない状況なので、じゃ一体どうしたらいいかというと、これからは、
日本に大量に眠っている、民間資金がべらぼうに眠っていますので、優良な。その民間資金を投入することによって、そして三十年オーダーでそれを返していくと、民間資本に。そのときはやっぱり三%のリターンぐらいは付けていこうよということでございます。
これは私もファンド系、銀行系の方また証券系の方に聞いたんですが、
日本国内だったらいつでも投資すると言っているんです。こんなリスクのない投資はないと。
日本人は水も盗まない、お金もちゃんと払う。問題は人口予測だけをきちんとしておけば、今幾ら投資して、二%又は三%で二十年間三十年間、
自分たちは投資できるんだと、そのシステムがないんだということの悩みが現在ございます。
これから
関係者にお願い、
支援づくりというようなことで、官民連携した
環境、新しい形の公共事業をやっていかなきゃいけないなというのが、これはある地方の、やっぱり
パワーポイントの、悲鳴でございます。
以上が私のプレゼンの内容でして、あと言い足りなかったところは、また後ほどのディスカッションの場でお話しする機会がありましたら御説明させていただきます。
ありがとうございました。