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参考人(
石橋克彦君)
石橋です。どうぞよろしく
お願いします。
ちょっと私、目の手術をしてから日が余りたっていないものですから、ちょっとまだ見るのが不自由で、もたもたして少し時間をオーバーするかもしれません。あらかじめお許しください。
インターネット中継にはこういうスクリーンの方がよかったのかもしれませんけど、何か
委員会の審議は基本的に紙ベースだと伺っておりましたので、私の
資料は紙だけです。お手元にありますダブルクリップで留めたものです。
資料一から七までと、それから追加が二点とじてあると思いますけど、時間が限られていますので、この一枚目のA4の「(要点)」と書いてあるレジュメに沿って御
説明します。細かいところは、御関心があればまた後で質問していただければと思います。
まず、0と書いてあります。六年前、二〇〇五年の二月の二十三日の第百六十二回国会の衆議院の予算
委員会の公聴会に私、
出席しまして、
原発震災というお話もいたしまして警鐘を鳴らしたつもりだったんですけれども、残念ながらこの国会の中ではそれが響かないで、役に立たなかったようで大変残念に思っておりますということを最初にちょっと言わせていただきます。今日の私の
意見が多少なりともお役に立てばいいと願っております。
次に1.でありますけれども、
福島第一
原発の大
事故は、大津波によって非常用ディーゼル発電機が全部死んでしまった、全電源喪失が起こって冷却ができなくなったからであるというふうに言われておりますけれども、実は、津波の前に
地震の揺れそのもので
重大事故が発生した
可能性がかなり大きいと思います。これは非常に重要なことなんですけれども、殊更何かそれに触れないように社会の中ではされている感がありますので、ここで強調しておきたいと思います。
田中三彦さんという方が、既に四月の初めに発売されました岩波書店の「
世界」の中に書いていらっしゃいますし、それから四月の末に発売された「科学」の中でも書いていらっしゃいますけれども、要するに、
地震の激しい揺れによってまず一号機では配管の破損がどこかで生じたであろうと、それによって冷却材の喪失が起こった、つまり冷やすという機能が喪失した、これがメルトダウンにつながったという推定です。田中さんの議論は、
東京電力から公開されておりますデータ、圧力
容器の中の水位、圧力、それから
格納容器の中の圧力、そういうデータを詳細に点検されての議論であります。
二号機では、
地震の激しい揺れによって圧力抑制室に損傷が生じた
可能性が大きい。これは閉じ込める機能が喪失されたわけです。これで
放射能も漏出しますし、それから水素が漏れ出てそれが二号機の水素爆発につながったのであろうという、そういうことを田中さんは主張しておられます。
これは、私は
地震学が専門でありますけれども、
地震学的にも十分あり得ることです。
東京電力から公表されております
原子炉建屋の一番下の基礎版というところの揺れが、耐震
設計で
想定している揺れより、二号機、三号機、五号機の東西方向の揺れではそれをオーバーしています。それから、たしか十六日にほかの
地震のデータも公表されましたけれども、地下の記録なんかでも、耐震
設計の
基準とする
地震動を、これは今後更に分析してみなければ正確なところは分かりませんけれども、オーバーしていた
可能性があります。
ただ、その
想定より超えた度合いは二〇〇七年の柏崎刈羽のときに比べるとそれほど甚だしくはないんですけれども、超えているということ自体非常に重要ですし、今回
地震学的に大変注目すべきことは、振動の時間が非常に長かったわけです。M九・〇という。地下で
地震波を出している時間自体がべらぼうに長くて、三分ぐらい出していたんですけれども、それを受けた
福島第一
原発の揺れも非常に長時間続いたために、その長時間の繰り返しですね、繰り返し荷重というものによって損傷を起こしたことは十分考えられるわけです。
一方、非常に重要なことは、五つ目の黒ポツに書いてありますけれども、
福島第一
原発は、二〇〇九年に
原子力安全・保安院と
原子力安全委員会によって耐震安全性が確認されています。つまり、止める、冷やす、閉じ込めるという機能がちゃんと備わっているというふうに認められたわけです。ですけれども、今回それは誤りであった
可能性が大きい。ですから、これはまだ断定はできませんけれども、この問題は非常に重要ですから厳重に議論する必要がある。
ところが、今のところはそこを何となく避けているようです。何か聞くところによりますと、本日、
東京電力から何か発表があるみたいで、津波が来るまでは配管の破損なんかは生じなかったんだというような発表があるようなことをちらっと聞きましたけれども、とにかくこれはもう公開の場で厳重に議論されなければなりません。
想定の揺れを既に超えているということ自体、二〇〇六年に
改定された耐震
設計審査
指針に問題があるということを
意味していますし、それから、もしその
重大事故が
地震の揺れで起こったとすればなおさらのこと、全国の
原発の耐震バックチェックというのが二〇〇六年、二〇〇七年以降行われておりますけれども、それの審議のプロセス及びその結果、その信頼性が失われるわけで、これは全部やり直す必要が出てまいります。
それから、二番目ですけれども、2.、三月三十日に
原子力安全・保安院が
電力会社に
指示を出しまして、全国の
原発について津波の緊急安全
対策をするようにという
指示を出しました。これは、全国の
原発が
福島第一
原発のような大津波を被って全電源喪失、全交流電源喪失というような事態になっても大丈夫なように緊急安全
対策をしなさいということで、全部の
電力会社が電源車を用意したり、それから高いところに応急的な貯水槽を設けたり、ホースをたくさん用意したり、それを操作する訓練をしたり、そういうことをやっていまして、これでその安全性がまた格段に上がったようなことが言われていますけれども、この一連の事態は非常に大きな問題を含んでいます。
二つありまして、一つは先ほど言いました第一点の問題を無視していることです。津波
対策だけすれば大丈夫だなんてものではないわけで、耐震
設計審査
指針を見直してバックチェックもやり直さなければ安心とは言えません。それから二つ目の問題としては、保安院自らが全国の
原発で大津波と全電源喪失ということを
想定しなさいと言ったわけですけれども、そういうことを
想定すること自体が
原子炉立地審査指針というものに反しています。
この
原子炉立地審査指針というのが
資料三に一枚紙で付いておりますけれども、これは一連の安全審査
指針類の一番本に来るものでありまして、昭和三十九年に
原子力委員会が決定したものです。
この一枚紙、以下を略してあるんですけれども、この最初のところだけが書いてあります。
原子炉立地審査指針の基本的な考え方として、
原則的立地条件として、その一・一の二行目の終わりから、「万一の
事故に備え、公衆の安全を確保するためには、
原則的に次のような立地条件が必要である。」。その(1)ですね、「大きな
事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。」、こういうことが
原則的に立地条件として必要であるとうたっているわけです。
ところが、大津波等、それによって全電源喪失という大きな
事故ですね、これを全国の
原発で
想定しましょうというわけですから、これは驚くべきことです。そんなものはその立地の条件に反しているわけです。
そもそも
人間の良識というか常識から考えて、大津波をかぶるおそれのあるような場所で
原発を運転するということ自体、私は正気のさたではないと思います。これはあたかも真冬に暴風雪警報が出ている北アルプスで六十歳、七十歳代の熟年ツアー登山をやろうなんて言っているようなもので、とてもおかしい。要するに、たかが
原発です、要するに、たかが
発電所なわけです。例えば、遭難した漁船を救うための巡視船なんというのはどんな荒波でも航海しなきゃならないでしょうけれども、発電するために何もこんな危ないものを大津波のあるところで頑張って運転することはないと私は思います。
それから三番目、
原子力安全・保安院と
原子力安全委員会というものが、現状では残念ながら、これが
原発擁護機関になっています。
福島第一
原発の
事故、三・一一以降を見ていてもそうでありますけれども、今までお二人の
参考人からもそういうお話ありましたけれども、私が直接かかわった例としては、二〇〇七年、柏崎刈羽
原発が新潟県中越沖
地震で
被害を受けて全七基が止まったということがありまして、そのとき私は新潟県の小
委員会の
委員として議論に加わっていたんですけれども、運転再開に向けて、何人かの研究者から存在が指摘されている柏崎刈羽
原発の沖合の海底活断層、非常に長大な海底活断層、これを無視しました。
東京電力は、長さ三十六キロの断層だけ、その一部分だけを取り上げて、そこにM七・〇の
地震を
想定したんですけれども、
可能性としてはもっと長大な六十キロぐらいの長いものがある
可能性がある、そういうものは
原発の場合は安全サイドに立って当然考慮しなければいけないんですけれども、それを無視しました。これはある
意味、もう
原発耐震偽装と言ってもいいことでありまして、これは詳細は
資料四に書いてあります。そういうことを保安院、安全
委員会も率先してというか、組織的に行ったわけです。
これに関しては、
資料四の追加という別の、後ろの方にあると思いますけれども、私はそのことをこの
資料四のように岩波の「科学」という雑誌に書いたんですけれども、さらに、毎日新聞に一般向けに投稿しました。ところが、それに対して
原子力安全委員会は、毎日新聞社に私が書いたその「発言席」という原稿、だから書いた
責任は私にあるわけですけれども、私には何も言ってこないで、毎日新聞社にあの記事はおかしいから訂正しろ、何か取り消せというようなことを言っていった。そういうことまでありまして、非常に問題であると思います。
実は、こういう
原発を擁護するについては、非常に多くの
地震、地質の専門家、研究者、それが加担しています。海底活断層を無視することに加担している。これは、
日本活断層研究会という学会のシンポジウムのときの議論なんかでも、もうあからさまにそういうことが出てまいりました、ちょっと詳細は省略しますけれども。
こういう状況は、研究者の倫理ということもありますけれども、もっと根深くは、
政府系の研究機関あるいは国立大学、有名旧国立大学、そういうところの研究者が加担せざるを得ないような構造的な問題があります。反対
意見があっても、まあ良心的な人はせめて黙っているぐらいのことしかできないという構造があります。これは国民にとって非常な不幸であります。
それから四番目、そもそも
日本列島は、
地球上で最も
原発建設に適さない場所です。
資料五というのに一枚紙で地図がありますけれども、これ、
世界中の
地震をプロットしますと、
地球上では
地震というのは線状ないしはベルト状に起こっているわけですけれども、非常に活発な
地震活動のベルトの中に
日本列島は全域がすっぽり入ってしまうわけです。これが、面積でいいますと、
日本の国土とそれから領海と排他的経済水域の一部を合計した場合、
地球の表面積の〇・三%弱ですけれども、その範囲内に実に
地球の全
地震の約一〇%が集中しています。
こういうところには、そもそも
原発は造るべきではないのです。それはもう欧米では常識なことです。ドイツやアメリカの
原子炉の規制の条件、それから、現実に
日本だったらごみみたいな活断層が問題になって
原発が閉鎖されたというような実例を見ても、もしフランス人やドイツ人が
日本列島に住んでいれば、彼らは絶対にこんなところに
原発は造らないであろうと。もう常識的なことです。
日本が異常なんだと思います。
省略しましたけど、レジュメに書いてあります(1)から(4)まで、非常に基本的な
原発とそれから
地震に関する条件というものがありまして、そういうことを考えれば、
地震列島における
原発は、制御された安全の範囲で大丈夫だから運転しようというのでは困るのです。先ほど
後藤さんのお話にもありましたけれども、それでは困る。本質的な安全でなければ
日本列島の上に住んでいる
人間にとってはもう全く不幸であって、本質的安全というのは
原発が存在しないことであると思います。
これに関して、一番
最後にあります
資料五の追加という漫画がありますけれども、これは昨日、思い付いて急いでかいたんですけれども、もうこういうことでもかかなければ余りにも分からない。特に経済界の人、あるいは
政治、
行政、そういう話を聞いている一般国民、どうもまるで分かっていないらしいというのでかきました。
原発というのは、本質的には
世界中で同じ問題を抱えています。これは、
小出さん、
後藤さんから御
説明があったような深刻な問題があります。ですけれども、私、
地震学をやっている
人間として、現実的なことを考えると、やっぱり
日本の
原発はフランスやドイツやそういうところの
原発とは違うんです。何が違うかというと、
日本の
原発は
地震付き
原発であると。フランスやドイツと同じ
原発があって、それを
日本列島に建てた場合、たまたま近くで
地震が起こるかもしれませんよなんというそんな生易しいものではなくて、もう
日本の
原発が全て、まるでおんぶお化けみたいにこうやって
地震がくっついているわけで、
地震とセットになってあるわけです。ですから、
地震付き
原発なんていうものはあっては困ると、そういうことであります。
したがいまして、今後、新設、増設というのはやめてほしい。建設
計画中のものもやめるべきでしょう。耐震
設計審査
指針に不備がある
可能性が非常に高いとさっき言いましたけれども、現に今不備がある、その
基準地震動の策定に不備があるわけで、それを再
改定しなければいけないというような議論もありますけれども、もうその新設、増設をしなければ設置許可のための
指針というのは要らなくなるわけで、私としては、むしろリスク
評価のための
指針あるいは安全運転を管理する保安のための
指針というものを厳重に作り直した上で、早急に第三者機関を設立して
日本列島の全
原発に関してリスク
評価をして、順位付けをして、リスクの高いものから順に今あるものも閉鎖していくということを真剣に考えなければいけないと思います。
筆頭は浜岡
原発でありますけれども、これは、津波
対策が完了するまで取りあえず閉鎖なんてものではなくて、永久に閉鎖する必要があります。といいますのは、東海
地震による
地震の揺れ、それから大きな余震の続発、それから地盤の隆起、変形、それから大津波、それら全て恐ろしいのでありまして、津波
対策さえすれば大丈夫というものではありません。
これ、
資料六にありますけれども、私、二〇〇九年に新政権が誕生したときに期待を込めて、浜岡を止めてほしい、
原発震災を回避することが新政権の
世界に対する
責任であるということを書きましたけれども、残念ながらそれはやっと
福島第一
原発の悲劇を経験した後でなければ実現しなかった。
この
資料六の
最後に書いてありますが、「手をこまぬいていれば、薬害エイズやBSE問題を超絶した不作為の大罪を犯すことになるだろう。」と、二〇〇九年に私は書きましたけれども、結局、その不作為の大罪を犯してしまったことになります。これは、でも決して現在の
政府の
責任だけではなくて、二十七年間の歴代の
政府が積み重ねてきた国民に対する、あるいは
世界に対する罪であると思います。
それからもう一つ、浜岡以外の
原発は大丈夫というふうなことが言われていますけれども、とんでもないことでありまして、もうこれはちょっと省略しますが、下に五つ黒ポツが書いてありますようにいろんな理由があって、若狭湾の
原発群を始めとして、
日本全国、危険な
原発はたくさんあります。それらについて早急に点検をして、順次閉鎖に向かっていくことが必要です。
済みません、あと
最後に一つだけ5.を追加します。
そうはいいましても、まだ我々は当分
原発に付き合っていかなければなりません。それから、止めたからといってそれで安全なわけではなくて、使用済核
燃料が
原発に保管されている、それをあともう何十年も安全に管理しなければいけない。その間には
地震が起こるでしょう。そういうことで、
原子力災害
対策特別措置法であるとか
原子力防災指針、あるいはそれによるEPZの範囲、そういうものは早急に改めなければなりません。
最後にちょっと紹介したいのは、この
資料七にありますものですけれども、これはアメリカのコネティカット州で出ているこういう冊子ですけれども、(
資料提示)これ二十ページぐらいのこういう冊子がコネティカット州、ニューヨークの北東にあるところですが、そこで出ています。これは何か。コネティカット州
原子力発電所非常事態
対策ガイドというものです。平常時からこういうものが近隣
住民に漏れなく配られていて、そこには、非常事態とはどんなものであるか、つまり、私
たちは非常に安全なように
原発を運転していますけれども、それでもなおかつ非常事態が生じるかもしれませんということで、非常事態とはどういうものか、屋内退避、
避難を
指示されたらどうするか、
避難移動を
指示されたらどうするか、それから子供が学校、保育所に行っている場合はどうするか、そういうことが簡潔ですが漏れなく記されています。こういうものが常時配られているわけです。それから、電話帳にもちゃんと
避難場所が出ています。
そういうことを
日本では何もしてこなかった。いきなりもう
避難しろ、飯舘村なんて四十何キロ離れていても急に出ていけ、もう牛も置いていけ、何も置いていけと、余りにもひどいわけで、これからは早急にこういうものを
原発周辺の人々に配る必要があると思います。
以上です。